
2012.02.01
第11回 コンサルタントの価値
アビームM&Aコンサルティング ディレクター
加藤 靖之 氏
コンサルティングという言葉は、非常に定義が広いものであり、ひとえにコンサルティングサービスといっても、その内容は多種多様です。クライアントのニーズも多岐に渡り、それ自体を明確に把握できていなかったり、またプロジェクトを進めていくにつれて、状況とともに変わっていったりすることが多々あります。
つまり、コンサルティングという仕事は、クライアントとコンサルタントの間で、"固有の状況に合わせて作られていくもの"と言えます。
だからこそコンサルタントは、
「クライアントは、なぜ私たちを必要としてくれたのか」
「クライアントの成果のために、私たちだからこそ果たせる役割は何なのか」
ということを"問い続ける"ことが求められます。
そして、その問いに答えるために、"コンサルタントの価値のありか"を
知っておく必要があります。
コンサルタントの価値は、大きく4つあります。
まずは、"問題解決への示唆"です。
これは、コンサルティングの最も代表的な価値です。
まさしくクライアントが抱える課題の本質を見極め、それに対する解決策、戦略施策を提供することです。ここで重要なのは、価値の本質は、クライアントにはできない、コンサルタントだからこそできる"違い"があることです。
誰もが導き出せる当たり前の答えを出しても価値とは言えません。
示唆を提供するために、コンサルタントが果たす役割を分解すると、
① 複雑な事象の整理、②見えていなかった情報の収集・発見、③洞察、分析
の3つがあります。これらに加えて、クライアントにはなかった④新しい視点・アイデアを出すことを求められることもあります。
問題の原因、それを解決するためのアイデアがすでにある場合は、それを実行するための体制・アクションプランなど⑤一歩先の視点を提供することも求められます。
過去のプロジェクトでは、徹底的にマーケットと競合の状況を分析し、成功要因を深堀した結果、クライアントが考える方向性とまったく逆の戦略を提言したこともあります。また、 新規事業を創出するために数十個のビジネスアイデアを考え続けたというプロジェクトもありました。このようにクライアントに、一歩深い、一歩先の思考、新しい視点を提供し、解決に向けた示唆を提供するという役割をいただいています。
2つ目は"第三者の目・専門家の目"です。
例えば、大きな投資案件、M&A案件の費用対効果が妥当な評価になっているのかを検証する必要がある場合です。投資したいと思っている当事者が作った投資計画を、第三者、専門家の目で検証し、経営陣の意思決定に対して進言します。
第三者、専門家の目を提供するためには、意思決定に影響する重要な要素を見極める力と、経済合理性を判断するに資する定量化力が求められます。意思決定に直接影響するメッセージを提供することが多い分、ファームとしてのリスク感覚も求められます。
最近のプロジェクトで、クライアントから"ある企業を買収したいのだが、本当に買うべきなのか判断しきれない。シナジー効果を算定したが、それが合っているのかわからない"といったリクエスト受け、M&A戦略の検証を行いました。結果としては、買収自体の方向性は間違っていませんでしたが、想定している定量効果に作成者の強い思いが入りすぎて、過大であったことが判明しました。このように、第三者、専門家の立場だからこそできる検証・評価を行う役割をいただくことも多いのです。
3つ目は"背中を押してあげる役割・組織間の緩衝材"です。
クライアントが成果を出すためには、クライアント企業の従業員の方々のやる気・行動が必要不可欠です。どんなに優れた戦略や施策があったとしても、クライアント企業の方々に実行していただかなければ成果に結びつきません。多くの企業が、やることが明確になっていたとしても、現場がなかなか動き出さない、組織間の利害関係が折り合わないといった悩みを抱えています。
新しいことを始めるとき、何かを変えるとき、最も難しいのは、初めの第一歩を踏み出すことです。その踏み出しをサポートさせていただくために、分析し、答えを出し、資料を作るといったタスクを共にして、"一緒に汗をかき、背中を押してあげる"役割を担わせていただくこともあります。
組織間の利害関係、人間関係が複雑な場合は、私たちコンサルタントが緩衝材となることもあります。本来は本人同士が直接言い合えば良いことではあるのですが、人間関係は複雑ですから、そう簡単に議論が進まないこともあります。そのような時、コンサルタントがサウンドバックのようになってお互いの言いたいことを受け止め、組織間のコミュニケーションを促進していく、緩衝材の役割を担うこともあります。
PMI(M&A後の組織統合)のプロジェクトでは、コンサルタントはこの役割を担うためにいます。例えば、合併をする当事者間は、お互いの縄張り、文化を守りたいがために、本音を言わない、相手のこともよくわからないのでいいたことがあっても言いにくい、といった状況になります。そのような時、私たちが間に入って両者の発言を促したり、あるいは言いたいことを代弁したりするのです。合併当事者の2社が争うのではなく、本来の目的である2社で競合に勝つ方向に議論を持っていく手助けをします。
4つ目は"手を動かす高度のマンパワー"です。
これは単なる時間や作業を売るという風に聞こえがちですが、違います。
企業は、有事が起きた際、短期間で多くの情報を取扱い、正確な意思決定を行うことが求められます。平常時であれば、それに対応できる体制とプロセスが確立されていますが、有事は文字通り、定常的に発生するものではないので、そのようなものは準備されていません。
例えば、数兆円の企業が、デューデリジェンスを受けなければならないといった状況にある時、提出資料の管理、インタビューの設定、提出する事業計画のとりまとめ、全体のロジスティクスなど、膨大な作業が発生します。
このような状況でより迅速に、効率的に、正確に作業を進めていくためには、日ごろから鍛錬したコンサルタント一人一人の高いスキルが求められます。
起こりうる事象をシミュレーションする設計力、一度に多くの方を統制するために必要なコミュニケーション力、ドキュメンテーション力、企業組織に関する基礎的知識、短期間に多くのことをこなす体力などの総合力が求められる、高度な役割です。
実際のプロジェクトでは、上記の4つの価値を組み合わせて、どのように総合的にクライアントの成果に貢献できるかを常に追求し続けています。
わたしは個人的に、一つのプロジェクトで3回、始めと中間地点と最終報告前に、自分たちが提供する価値の換算をします(実際には、箇条書きにして1バリュー、2バリューと指を折りながら積み上げ換算しています)。いただく報酬よりも高い価値を出し、クライアントが成果を得られれば、次の機会にも"リピート"いただけると信じているからです。
コンサルティングの価値は、製品のように目に見えないからこそ、自分たちの使っていただき方、自分たちの価値のありかを、自分たち自身がはっきりと理解しておくことが重要だと思います。
さて、明日報告のプロジェクトは何バリュー出せているでしょうか。

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加藤 靖之 氏
アビームコンサルティング 戦略事業部 兼
アビームM&Aコンサルティング ディレクター主に経営戦略策定、グループ戦略策定、M&A戦略策定のプロジェクトに従事。 主な(共)著書・レポートに「ビジネスデューデリジェンスの実務」、「外国企業のM&Aによる対内直接投資の企業価値に与える影響実態調査」など多数。 マーケティング戦略、企業価値評価、戦略思考などの研修講師多数。

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杉山 孝史 氏
アビームコンサルティング 戦略事業部 兼
アビームM&Aコンサルティング ディレクター経営戦略・M&A戦略策定、営業・マーケティング戦略、新規事業開発、アジアを中心とした新規市場参入支援、持ち株会社化やグループ経営基盤構築のプロジェクトに従事。最近では、地域の企業再生や買収後のPMM(Post M&A Management)のプロジェクトなど戦略と現場が一体となって推進しなければならない難易度の高いプロジェ クトを担当。主な(共)著書には「M&Aにおけるプライシングの実務」がある。

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西川 裕一朗 氏
アビームコンサルティング 戦略事業部 兼
アビームM&Aコンサルティング ディレクタービジネスデューデリジェンスや企業再生・グループリストラクチャリングプロジェクトに従事。最近は新規事業立ち上げやグローバル戦略策定のプロジェクトを主に担当。主な(共)著書には「ビジネスデューデリジェンスの実務」がある。M&A戦略や企業価値評価等の研修講師多数。













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