世界の製薬産業が迎えようとしている新時代。
そこで開拓と冒険に携われる幸せがここにはある
約130年にもおよぶ歴史を持ち150ヵ国以上でビジネスを確立しているアボットラボラトリーズ(以下、アボット)。その盤石なバックボーンを携えて誕生したのがアッヴィだが、天野氏ははっきりと言い切る。「我々はチャレンジャーです」と。この言葉の背後には、世界の、そして日本の製薬産業に訪れている厳しい状況が存在しているようだ。天野氏は自身がボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)から転職を決意した時の経緯も含め、こう説明する。
「イミュノロジー(免疫)領域で世界をリードするグローバル企業であり、日本でもアボットを前身として確固たるプレゼンスを築きあげているのがアッヴィ ジャパン。ですから2014年にこの会社から『マーケットアクセスを担ってほしい』というお話をもらった時には、正直言って驚きました。国民皆保険の日本において、なぜわざわざマーケットアクセスに力を入れるのか、と。しかし、説明を聞いて納得したんです」
天野氏によれば、医薬品を選択する際、従来は有効性と安全性で判断されていた。ところが近年、ここに3つめの大きなポイントが加わったという。それが経済性。世界的に起きているジェネリック医薬品の普及や薬価の低下傾向をはじめとする医療費抑制の波は、当然のことながら新薬開発領域に影響を及ぼしている。
「日本でもジェネリックの普及は始まっていますし、政府もまたそれを後押ししています。また、薬価の改定もこれまでは2年に1度の周期でしたが、それを短くしようとする議論も出ています。その一方で、アベノミクスに代表される政府の経済政策においては医薬分野の成長が大いに期待されてもいる。厳しくなる競争と高まる期待のジレンマの中で、製薬メーカーは変革を迫られているんです」
アジア市場の行く末にも大きな影響力を持つ日本のマーケットへのアクセスを最大化する、そこを任されているのが現在の天野氏である。従来のビジネスモデルで日本市場に定着した医薬品企業とて、安閑としてはいられない情勢と向き合っているわけだ。
「たとえばアッヴィには、ヒュミラ®という圧倒的な製品があります。世界初のヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であり、2002年にアメリカで承認された後、日本を含め90ヵ国以上で使用され、現在、世界で最も売上高が大きい医薬品です。
しかし、世界の医薬品にまつわる情勢と企業経営とを考えれば、一日も早くヒュミラ®に代わるような製品を生み出す必要がある。そしてそれらの製品に、医師によって適切と判断された患者さんがきちんとアクセスできるようにする努力を続けなければいけないわけです。
具体的にいえば、医薬品の経済的価値を訴求する上で、米国本社と連携しながらしっかりとしたエビデンス(根拠)を準備し、日本でも今年から試行が開始されたHTA(Health Technology Assessment:医療技術評価)に対応していかなければいけない」
だからこそアッヴィに来て、この重責を担ってほしい、という要請に、天野氏は大いに納得し、モチベーションを駆りたてられ、転職を決意したのだという。
「アボット、アッヴィという確立されたグローバル企業にいながらにして、製薬業界全体が直面している課題に真っ向からチャレンジしていく新たな業務領域は、まるで未開のジャングルを切り拓いていくような、あるいはドン・キホーテのような冒険をすることができる。本当に魅力的だと感じたんです」
重い課題を突きつけられた製薬業界。だが、そこでどこよりも前向きにチャレンジしている集団にいる喜びを天野氏は強調する。そして、同じようなメンタリティの持ち主を今まさにアッヴィは求めているのだという。
プロフィール
天野 進 氏
マーケットアクセス・コマーシャルディベロップメント本部 本部長
東京大学大学院 応用生命工学専攻博士課程を修了後、PRTM(現PwC)に入社。ヘルスケア領域を担い、主に製薬企業を対象にコンサルタントとして数々の経営変革案件に携わった。その後、ボストン コンサルティング グループへ転身した後も、ヘルスケア関連プロジェクトをリード。新薬等の開発分野にも深くコミットできる希少なコンサルタントとして実績を重ねた。2013年にアボット社の医薬品事業部から新薬部門がアッヴィとして分社独立、日本でアッヴィ合同会社が設立され新たなチャレンジを開始すると、その変革の最前線を担う役割としてオファーを受け、2014年より現職。
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