5~7年かけているミッションをたった2年で3~4つ完遂する
GEには、20~30代前半を主な対象としたグローバル共通カリキュラムのリーダーシップ・プログラムがある。ECLP(Experienced Commercial Leadership Program)は、セールスやマーケティングを担うコマーシャル部門のリーダーを育てるためのプログラム。HRLP(Human Resource Leadership Program)は人事部門、IMLP(Information Management Leadership Program)はインフォメーションマネージメント部門、RMP(Risk Management Program)はリスクマネージメント部門、FMP(Financial Management Program)は財務会計部門、OMLP(Operations Management Leadership Program)は各分野のグローバルサプライチェーン部門のリーダーを育てるプログラムとなっている。
もちろん、プログラムによって具体的な内容は異なる。だが、すべてのプログラムには共通した特徴があるという。

「それぞれの分野に応じて専門性を高めるべく、スキルアップのための講座や、様々なディスカッションもプログラムには含まれています。しかし、一番の特徴は、実務を担い成果を上げていくことが求められる点です。いわゆる"研修"とは、そこがまったく異なります」
そう説明した八木氏は、微笑みながら、こう付け加えた。
「きついですよ。通常の仕事よりもずっと」
GEの一連のプログラムについて、これまでに少しでも見聞きした経験のある人ならば、知っているかもしれない......確実に優れたリーダーを生み出している「成果の高さ」と、プログラムの中で求められていく「能力水準の高さ」を。
短期間で将来のリーダーとして成長しようというのだから、プログラムに備えられたハードルの高さは当然覚悟すべきだろう。だが、あらためてこう言われれば、やはり緊張感が走る。
「おそらく普通の企業にいたら5~7年ほど費やして達成するような目標を、GEのプログラムでは2年間で達成してもらいます。プログラム生はそれぞれ変革すべき部門に派遣され、そこで具体的な成果を上げていかなければいけません。しかも2年間でそうしたプロジェクトを3~4つ遂行するんです」
どんなに少なく見積もっても、通常の大企業の2倍3倍以上の量と質、スピードと成果が同時に問われる。それが最大の共通点というわけだ。きついのは当然。しかし、八木氏は言う。「どんな仕事であろうと、限界に挑戦した人だけが次のステージへと進んでいく現実を多くの人は知っているはずです」と。本来持っているポテンシャルを開花させようというなら、若い年代のうちから限界に挑み続けるしかない。言ってみればリーダーシップ・プログラムは、この「挑むチャンス」「限界点への挑戦権」を提供するものなのである。
激流の対岸には必ず心強いサポーターがいる。そんな企業風土がリーダーを次々に輩出する
もうひとつの共通の特徴、それは一連のプログラムへの参画がイコールGEのリーダー育成への入口となっている点だ。
「私自身は新卒でFMPにエントリーし、それがGEへの就職という形になりました。FMPの場合、入社時から必須となる専門知識の吸収を同時進行する必要性が高いため、新卒者にも門戸が開かれているんです。しかし、すべてのプログラムに共通しているのは、中途入社を希望する人たちに向けても、これらのプログラムのドアが常にオープンになっているという点です」
そう語るのは、現在GEヘルスケア・アジアパシフィックのCFOを務める村上氏。GEへの魅力とともに、FMPというプログラムに強く惹かれたからこそ、アプライをしたのだという。ちなみに村上氏の場合、FMPとしての2年間を卒業した後、CAS(Corporate Audit Staff)というプログラムに5年間参画した後、07年から現在のポジションに就いている。
ともあれ通常、「リーダーを育てるプログラム」への参加者を企業が募る場合、それまでに現場のオペレーション等を経験した者から選出されるケースのほうが多いはずだ。「現場を知らなければ、リーダーは務まらない」という暗黙の了解のもとに。
だが、GEは違う。「当社の現場を経験していないから、いきなりリーダーにはできない」という発想は、そもそもGEには存在しないのだ。
もちろんExpertise(専門性)の有無を問われるプログラムもある。例えばECLPならばセールスやマーケティングについて、IMLPならばIT関連について、というように、一定の専門知識やスキルの水準をクリアした者のみが参画できる。しかし、「一定のスキルがあって、プログラムで実力を証明すれば、プログラム卒業と同時に高いリーダーシップポジションにつく」のは、GEでは当たり前なのだ。

「当然ですが、タフな毎日になります。FMPのプログラム生として日々新しい知識を習得しつつ、業務においては"その道何年"という人たちと一緒に仕事をし、時にはプロジェクトのリーダーを務めるんです。新しい人に囲まれながら、新しいことを覚え、実行し、成果を向上させるんですから。毎日思っていましたよ『どうしよう』と(笑)」
村上氏は当時をふり返ってこう語り、英語でいう「overwhelmed(困惑する、圧倒される、打ちのめされるの意味)」という言葉が、ぴたりとハマるような気分ですごしていたと苦笑い。しかし、「そのoverwhelmed な日々があったからこそ、今の自分がある」と言い切る。
「『どうしよう』という局面を1つ乗り越えるたびに、それが新しい自信になるんです。その自信が次のoverwhelmedな状況を乗り越えさせてくれる。気がつけば、次々に自信を積み重ね、ストレッチした自分がいました」
「どのプログラムにおいても、『自分で考えて自分で実践する』ことが原則です。当たり前ですよね、リーダーなんですから。リーダーは意思決定して実行する存在なんですから。けれども、そこから先が実にGEらしいところだと私は思っています。例えば、ものすごい激流を前にして、泳いで渡らなければいけないとします。それこそoverwhelmedですよね(笑)。しかし、ひとたび泳ぎ始めた者だけは気づくことができるんです。激流の対岸に無数のサポーターがいて、応援してくれることを。危なくなったら浮き輪も飛んできます。でも、代わりに泳いでくれるわけではない。『あなたなら泳ぎ切れる。応援するからやってみなさい』とね。そこがこの会社の凄いところなんです」
意思決定できるかどうか。それは「この会社に何年いるか」や「このチームにどれだけ長くいたか」で決まるわけではない、と八木氏はいう。ディシジョンメイクというリーダー資質は、当人の志や情熱で決まる。いかにoverwhelmedとなっても、決断し、泳ぎ出すのがリーダー。だからこそ、社外からの参画者にもチャンスが与えられるのだ。そして、泳ぎだしたリーダーには惜しみなくサポートをする。それがGEの流儀なのである。
「たしかに『あなたならできる、と信じているからやってもらっているんだ』というメッセージは、必ずしも言葉にならなくても感じることができました。ただし、自分が今置かれている状況をどうすべきか、については自分で考えなければいけない。様々な意思決定をして、それをチームの皆に納得してもらって、実行していく。その繰り返しが何よりの鍛錬になったのだと思います」(村上氏)
「私自身はプログラムに参画した経験はありませんが、転職をした当初、『理想の会社』だと思っていたGEにも、数々の『改善すべき点』を見つけたんです。そこで、この改善に着手し始めた途端、世界中からサポートを得ることができました。そうして初めて思ったんですよ、『ああ、やっぱりここは理想の会社だな』と」(八木氏)
そう、特別なプログラムではなくとも「自分で考え、自分でディシジョンし、リーダーとして行動に移そうとする者」を、尊重し、引き立てていく文化がGEという企業には根づいている。だからこそ、「若きリーダー候補生」を当然のようにストレッチさせていくことができるのであろう。
























