2050年には幕末期レベルに戻ってしまう「世界の中の日本」。「なんとかしなければ」という志で変革を実行する
「今、世界の総GDPにおいて日本のシェアは12~13%です。では21世紀の半ば、2050年にはこの数字がどうなるか。ある調査では3%に落ちると言われています。つまり、日本は間違いなく危機的状況下にあるんです」
大西氏は開口一番にこう語り、「3%」という数字を「幕末期と同レベル。あるいは現在の発展途上国並み」なのだと説いた。
「この国が深刻な危機に瀕していることを正確に認識し、『どうにかしなければ』という強い志を抱いたなら、『やるべきこと』はおのずと見えてくるんです」
そう、これが楽天グループの大胆なグローバル化をドライブする大きな原動力というわけだ。間違いなく、年々人口が減り、人口構成も変わって、いわゆる働き盛り世代が不足していく日本。「先進国の中で最悪」といわれる深刻な財政赤字問題も抱えている。
「企業が日本の中だけで闘っていては、20年後、30年後という未来は描けません。私たちが50年後も100年後も世の中に貢献していこうと志すならば、世界で勝負していく他に道はないのです。これは楽天だけに限った話ではありません。すべての日本企業に課せられた大きなテーマなんです。幸いなことに、我々は特定の商品を作って売っている会社ではない。インターネットという『様々な変化をもたらすもの』の上で多様なサービスを展開する企業です。志を実現する可能性は大いにあるんですよ」
国内でのEC事業成功の先駆けとなり、今なお業界のリーダーとして走り続けている「楽天市場」をはじめ、トラベル、ポータル、金融など様々なサービスをインターネット上で展開し、ワンストップで楽天会員に提供する「楽天経済圏」を確立している同グループ。最近では、一企業としてのビジネスの話題以外でも「楽天」の名前を目にする機会が増えている。例えばネット業界初の業界団体「eビジネス推進連合会」結成の呼びかけ、政治献金サイト「LOVE JAPAN」のオープン、改正薬事法に対する意見書の提出などなど。様々な局面で、積極的に社会とのつながりを密にする姿勢を示してきた。
「世間ではリーマンショックをきっかけに企業の危機意識が高まったと言われています。しかし、私たちはあの事件が起きる以前から、現在の危機的状況に気づき、なおかつその解決に向けた行動を自発的にスタートしていました。ここ数年の事業での成果も、それ以外の活動の成果も、高い危機意識と志、それに基づく行動があったからこそだと自負しているんです。だからこそ、今、このスピードにさらに拍車をかけていける」
- ※EC事業の海外進出状況は、下記の通り。
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2008年5月 「台湾楽天市場」開設(統一超商グループとの合弁企業設立)
2009年9月 タイNo.1のECサイトを運営するTarad社を子会社化
2010年1月 中国No.1検索サイト「百度」を運営するBaidu社と合弁企業設立を発表(2010年後半に「楽酷天」のサービス名で事業開始予定)
2010年5月 アメリカ有数のECサイトを運営するBuy.com社を買収・子会社化
2010年5月 インドネシア最大の複合メディア企業PT Global Mediacom社と合弁企業設立発表
2010年6月 フランスNo.1のECサイトを運営するPriceMinister社を買収・子会社化
目指すのは「真の世界企業」。 だからこそ「脱・日本企業」化を進めている
大西氏が言う通り、楽天の社長 三木谷氏は「ホップ、ステップ、ジャンプでいえば2010年はステップの年。『真の世界企業』への脱皮の1年にする」と宣言をした。大西氏は言う。「それまで私たちは『日本発で世界一のインターネット・サービス企業へ』というテーマを掲げてきました」と。しかし、いざグローバル化が本格始動すると「日本発」という言葉に違和感がある。「世界企業になろうというなら、『どこどこ発』なんて概念はまったく必要ない」ことに気づいたからだ。

「そうして決定したことの1つが、英語を社内公用語化するという改革です。『私たちはグローバル企業です』と言いながら、実のところ内部では日本語という限られた人にしか使えない言語を用いている......そんな会社は日本だけですよね。この当然の矛盾に気づいた私たちは、『内なるグローバル化』『脱・日本企業』の1つのステップとして、英語の公用語化を決定したんです」
壮大な改革実行プランのワン・オブ・ゼムでしかない英語公用語化。しかし、多くのメディアは、これのみをクローズアップして報道。世間でも議論の的となった。だが、大西氏も、三木谷氏も、こうした現象が起こることは予め見えていたのであろう。微笑みながらさらりとこう語る。
「『日本人同士のビジネス・コミュニケーションまで英語? そんなことをしたら社内コミュニケーションの水準が落ちて、事業に影響が出る』、あるいは『英語が絶対条件となれば、自ら採用のハードルを上げ、対象枠を狭めることになる』といった懸念は、もちろんありました。しかし、すべては30年後、40年後を見据えての決定です。『日本企業』から脱しない限り『世界企業』にはなれないんです」
短期的な混乱は覚悟のことだったはずだが、意外にも現状、楽天社内では興味深い現象が起きているという。
「前向きに楽しんでいるといいますか(笑)、いい意味でモチベーションが高まっていますよ」
それが楽天グループの企業文化なのだ。大西氏がここまでに語ってきたような「大きな志」は、確実に社内で共有されている。だからこそ、社内の標示や掲示物まで英語化していく動きを、社員たちはむしろ楽しみながら進めているというわけだ。そして、ポイントはまさにここにある。これから楽天に参画し、活躍しようという人材に対して、大西氏をはじめとする採用・育成部隊は、「まず志に共感できるか」を問うところからスタートするというのである。






















