アジア圏から世界に打って出る。それが日本企業のチャンスとなる
2008年夏以来、長期にわたり世界の産業を覆っていた暗雲。だが、少しずつではあるが晴れ間を覗かせるようになった。その兆候はM&Aの現場でも垣間見えるようだ。
「世界市場での競争のため、急拡大していたM&Aですが、さすがに近年は減少傾向にありました。しかし、2009年の12月にようやく前年割れを脱しました。もちろん、まだ局地的な回復基調が見え隠れしている程度だと捉えています。3月あたりでこの傾向が強まるのかどうか。私どもとしては、注視しているところです」
そう語る岡氏。アビームグループの戦略チームを率いると同時に、アビームM&Aのトップを務める人物だ。では、今後の世界のビジネス界はどうなるのか? 岡氏の視点を聞いてみた。
「日本企業にとって重要なのはアジアとの関係です。もはや日本一国の経済圏で企業活動を捉える時代ではありません。日本企業はアジア圏に軸足をどう置くのか。そこから世界に向けてどう動くのか。それが問われています。」

岡氏によれば、大きな視野で展望した場合、アメリカは、ラテン・アメリカ諸国との深いつながりをバネに成長していく。欧州は、歴史的なつながりがあるアフリカ諸国をバネに成長していく。そうして「日本においては、アジアとの連携の強化が不可欠」となる。
ただし岡氏は、「かつてのような上から目線での関係は成立しない」とクギを刺す。インドは急成長し、中国・韓国という大きなライバルも存在する。M&Aの局面でいえば、「日本企業がアジアの企業を吸収して世界に打って出るパターンばかりではなくなる」という。
「うかうかしていたら、アジアで置いていかれる。それくらいの危機感が必要です。時には『買う側』ではなく『買われる側』になることで、競争力を身につける日本企業も出てくるはずです。買われることをマイナス要素とばかり見てはいけません。アジア圏が持っているポテンシャルを、いかに自社の成長につなげるか。そのためにはどんな事業戦略を打ち、どんなM&A戦略を実現していくか。これが問われているのです」
「すでにアジア進出を果たしている」といっても、それが単に「アジアに工場を持っている」程度では意味がない。アジアという大きな商圏に、例えばどんなサプライチェーンを築き、どれだけ効率的なオペレーションを実現しているか。「拠点がある」というレベルではなく、アジアにしっかり根を下ろし、そこから世界に向かっていく体制作り。これを日本企業は急ぐべき、というわけである。
しかし、世界不況からの脱出の糸口が「見えたかもしれない」程度の今、岡氏の言うような大きな成長戦略を実行に移せる状況が、日本企業にはあるのだろうか?
「企業によって大きく状況は異なります。一部の企業には、すでに再生局面を乗り切り、一気に成長路線へ移行する動きがあります。再生の真最中という企業も多いのですが、同時に成長局面にも比重を置き始め、再生と成長の両方を追う態勢をとっている企業もある。アビームとしても、再生はもちろんのこと、成長のための戦略策定実行、そしてM&Aディールにおいて役割を果たしていく状況にいます」
アビームのアジアにおける強さは、今に始まったことではない。このグループに期待をかける企業が今多いことも、十分納得できる。
今こそ若手コンサルティング人材に期待を寄せている

以上のような情勢下、アビームコンサルティングは戦略コンサルタント人材の獲得と育成に、あらためて注力を開始した。しかも、現状活躍しているメンバーに30歳前後の若手が多いだけでなく、今後もそうした若手人材を獲得していく考え方があるという。昨今の世界不況もあり、余所では聞けないような話ではあるが、これにもちゃんと理由がある。
「日本が本当の意味で成長戦略をダイナミックに実行していたのはいつでしょう? その戦略内容の是非はさておき、おそらくバブルの時代が最後だったはずです。その当時を知っている世代となると、今や40代以上の人たち。つまり、言い換えれば40歳以下の人たちは『本当の成長局面を体感していない』という点で同じなのです。せいぜい経験してきたのは、従来の枠組みを改善して、事業を『再編』するような取り組み。しかし、私が先にお話ししたアジアを起点にした世界戦略を実施するとなれば、非常にダイナミックな『変革』を起こしていくことになります。『再編』経験の多い少ないは、あまり関係がない。むしろ型にとらわれず、大胆に夢を実現していくようなコンサルタントを、実は企業も必要としているんです」
だからこそ「若手にチャンスあり」とアビームは考え、実際に現役の若手メンバーたちが活躍を開始しているのだ。
岡 俊子 氏
アビームコンサルティング株式会社 戦略事業部長兼
アビームM&Aコンサルティング株式会社 代表取締役社長
1986年に等松トウシュ ロス コンサルティング株式会社(アビームコンサルティングの前身) 入社。トーマツ コンサルティング(グループ内異動)、朝日アーサーアンダーセン株式会社を経て、2002年9 月にデロイト トーマツ コンサルティング(アビームコンサルティングの前身)にてプリンシパルに就任。2005年4月より 、アビームM&Aコンサルティング株式会社(アビームコンサルティングの100%子会社)の代表取締役社長。2009年4月よりアビームコンサルティング株式会社 戦略事業部長に就任。
また、内閣府対日直接投資専門部会の委員、M&Aフォーラム理事、明治大学グローバルビジネス科(MBAコース)や青山学院大学法学研究科大学院の講師、ネットイヤーグループの取締役等も務める。
一橋大学卒(マーケティング専攻)、ペンシルベニア大学ウォートンスクールMBA(ファイナンス及びアカウンティングのダブルメジャー)修了。米国公認会計士試験全科目合格。























