スペシャルインタビュー 博報堂ブランドコンサルティング

 

 
「さすがにかつてのCIブームの頃とは違って、ブランドに対する正しい理解と深い洞察を企業は持つようになりました」  

そう首藤氏は語る。バブル崩壊前後の80年代後半から90年代初頭にかけて日本企業で広がったのがCIブーム。当時は企業ロゴを新しいデザインにしたり、経営理念をスローガン化して公に表現することがコーポレート・アイデンティティ(CI)あるいは企業ブランド作りだという理解が一般 的だった。そうした動きを企業のパートナーとなって主に支えたのは大手広告代理店。かつて首藤氏が在籍していた博報堂も、このCIブーム時にはコンサルティング的な機能を果 たしてきた。  

   
だが今振り返れば、「デザイン先にありき」で「企業の依頼によって代理店がメディアを動かしていく」という当時のブランド作りの手法では、経営の根幹を変革する内容にはならないことを多くの企業が学習した。もちろん、博報堂はこのことにいち早く気づいた。だからこそHBCも別 会社として生まれたのだ。  

とはいえ、「ではなぜ今ブランドなのか」という質問への最優先の回答はといえば、「モノが簡単には売れなくなった」ことが背景にあるのだと首藤氏はいう。

「モノが売れている時代ならば、ブランド作りはそれこそCIブーム時のような"お化粧"の要素程度で見過ごされていたでしょう。しかし、どんなに景気が回復してきたといっても、企業の経営環境は決して順風満帆ではない。しかもあらゆる業界が熾烈なグローバル競争の中にいます。必要なのは"お化粧"ではなく、もっとリアルに"勝つための戦略"。それを追求した結果 、多くの経営陣がブランド戦略の重大さに気づいたわけです。つまり現代のブランドは"勝つための経営ツール"なのです」  

競争は例えば価格面に影響する。低価格競争下で必要なのは売上志向ではなく利益志向。いかに高い利益率を確保できるか、はブランド価値の如何によってくる。「売れない時代」にもかかわらず「値段が若干高くてもこっちの方が欲しい」と消費者に言わせるブランドは間違いなく勝利をおさめている。必要なのは「ここのモノやサービスは確実に他とは違う」というブランド意識をユーザーサイドに定着させることだ。
「ブランド・マネージャーと呼ばれる担当者や担当部署のレベルの課題ではないのです。トップをはじめあらゆる部門が一丸になって動くことで、実現できるのがブランド作りなのです」  

こうした現象を首藤氏は「日本が大人の社会になろうとする動き」だと分析する。 「日本は『不況だから買わない』のではなく、『納得できたモノだけ買いたい』社会になってきているのだと考えます。買う側の目や耳が肥えてきた。そうなれば、売る側も『いい性能のものさえ作っていればいいじゃないか』という日本的職人文化では支持してもらえません。

また、『不況で売れない』時期には内省的作業としてのコーポレート・ブランド戦略が中心でしたが、それら一連のアプローチは多くの企業で一巡しつつあります。今や守りではなく、攻めにうって出る新しいブランド戦略への摸索が始まっています。BtoBブランディングなども、これからニーズが高まっていくでしょう。一方で企業の合併や提携が頻繁に行われる時代でもある。2つの企業文化がぶつかりあうような場面 で、どうブランドを1本化できるか、という戦略も必要になってきています」  

さらに働く人達の価値観も変化した、と首藤氏は指摘する。
「最近の人達は『会社に帰属する意識が薄れてきている』とよく言われます。けれどもその一方で『ソニーで仕事をしたい』、『ディズニーランドで働きたい』、あるいは『ホンダで物作りがしたい』といった希望を口にする人は一向に減らない。なぜかというと、そうした言葉を発する彼らはこれら企業が発信するブランドとしてのソニーやディズニーやホンダに強くひかれているんだと思うのです。会社よりもむしろブランドにコミットメントする就業意識。これもまた広がっている」  

例えば「○○社が生み出す製品群は必ずデザインが優れている」というのがコーポレート・ブランド、「◇◇社の△△事業はいつもかゆいところに手が届くサービスをどこよりも早く発表する」というのが事業ブランド。こうしたプラスイメージを維持・定着できるか否かで「売れるか売れないか」が決まるばかりか、「そこで働きたいかどうか」も決まる時代というわけだ。
「顧客にとっては『期待』、企業にとっては『約束』、これを端的に象徴するのがイコール、ブランドなんです」  

多様な意味合いで重要性を増しているブランド。しかもそれを構築・維持するには企業全体が取り組まねばならない。だからこそ、重要な戦略として、そして継続的な経営努力目標としてブランディングが注目されているのだ。


 

「当初は博報堂内部の一部門として活動を始めました。ブランド戦略の中心がデザインをはじめとするクリエイティブなものやメディア展開だった時代ならば、広告代理店本来の仕事の一環としてコンサルティングを提供すればよかったでしょう。しかし、実はクライアント・サイドのほうから徐々に『ブランドコンサルティングだけを切り離して提供して欲しい』といったニーズが高まっていったんです。コンサルティングを提供する我々としても、ブランドコンサルティングが経営戦略に直結する時代の到来を考えれば、従来型の広告業の付帯サービスレベルでは通 用しなくなることを予感しました」  

 
   

そうして99年、社長直属の独立組織が生まれ、01年4月に分社。現在のHBCが誕生した。
「欧米型のビジネス・コンサルティングのスタイルが日本にも定着してきましたから、当社のコンサルタントやプロジェクトマネージャー、アソシエイトらがクライアントサイドのメンバーとともに問題解決していくスタイルは自然な形で受け入れられる環境にあります。経営に直結する課題に取り組む点でも、これら戦略系コンサルティングファームと共通 する点は大いにあります」  

だが同時にHBCは当然のことながら博報堂グループの一員だ。
「ブランド戦略の出口部分、つまり何かしらブランド構築につながる形あるものを生み出したり、それをメディアを通 じて周知化していく上では博報堂が保有するパワーをシームレスに動かすことができる。この点がビジネス・コンサルとの大きな相違であり、広告業との交わりの部分でもあるんです」  

首藤氏はこう説明した上で、HBCの独自性を示唆する。
「戦略系ファームが持つ経営のインサイトと、広告企業が持つユーザー理解のインサイトとを併せ持つ。そうしたハイブリッド性が明らかに他との違いであり、強みになっているのだと自負しています」




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