プロフィール
三谷宏治
K.I.T.虎ノ門大学院 教授
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1964年生まれ、45才。三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までボストンコンサルティンググループ、96年から06年まで アクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に小学生から大学生)の道へ。 著書に「正しく決める力 - 「大事なコト」から考え、話し、実行する一番シンプルな方法」(ダイヤモ ンド社)「観想力 - 空気はなぜ透明か」(東洋経済新報社)「トップ コンサルタントがPTA会長をやってみた - 発想力の共育法」(英治出版)「突破するアイデア力」(宝島社新 書)。K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授、グロービス経営大学院 客員教授、早稲田大学ビジネススクール 客員教授(4月より)。

 
虎ノ門大学院
 

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発売/09年8月12日
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1) 毎回の末に「まとめ」として「学び」のビジネス現場への役立ち例を挿入
2)HP未発表の「家族に学ぶ」編が2回分。題は「子に学び、祖母に学ぶ『未来からの使者』『祖母からの贈り物』」
3)SFの回の補筆・増強。

 

季刊「Think!」での連載を基に書き下ろされた「観想力 - 空気はなぜ透明か」が10月末に出版!

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発売/06年10月
発行/東洋経済新報社
価格/1785円税込

「つまらない答えや仮説は聞き飽きた!」今、経営の現場で必要とされているものは、単なるアイデアでも常識的な「仮説」でもありません。真のブレークスルーにつながる「戦略的かつ創造的な思考プロセス」において大事なのは、「視点・視座・切り口」です。渋谷Book1st本店でビジネス書第4位と好評発売中!

 

バックナンバー
ビジネス誌・紙は縦・横に読む(縦編)
ビジネス誌・紙は縦・横に読む(横編)
+祖母からの贈り物
テレビに学ぶ(前編)
テレビに学ぶ(後編)
超長編小説としてのTVゲーム(前編)
超長編小説としてのTVゲーム(中編)
超長編小説としてのTVゲーム(後編)
大型二輪免許をとってみた
天井画と襖絵と建築と
教えず導く(小学生編)
教えず導く(大学生編)
教えず導く(社会人編)
教えず導く(小学生 その二)
三谷文庫創設記念授業(前編)
三谷文庫創設記念授業(後編)
台風9号東京直撃!
諸先輩の金言集(前編)
諸先輩の金言集(後編)
七転び八起き
ケーススタディの誤謬
クレームすることで何を学ぶのか
エレベーターの罠
トヨタvs.パワーポイント
渋滞百態
Teach For America
オリンピックメダリスト誕生の秘密
発見物語(1)発見は周縁から
発見物語(2)発見は対立から
ヒマと貧乏とお手伝い:お手伝い編
『正しく決める力』出版記念!
『正しく決める力』出版記念:第2弾!
ペンギンをハカる
理系対文系
「ソクラテス人事」の使い方
なぜ、どうやって、と問うてはいけないとき
私的発想力:序論
未来を見通すための視点:統計と『その他』
フレームワークをちゃんと、理解しよう
リフォームで育む「考える手足」
リフォームで育む「考える手足」2
新しいハカり方への挑戦1:ハッブル宇宙望遠鏡
新しいハカり方への挑戦2:MEMS
M

 

三谷宏治の学びの源泉
 
(2010.2.15)
 

 新しいハカり方は、テクノロジーによるものに限らない。創意工夫でさまざまなブレークスルーを作りうる。
 第3回目は、グラミン銀行の話から。

 #返済能力を仲間からの信頼でハカったグラミン銀行

 現在、世界では30億人もの人々が貧困状態にあるという。貧困層の子どもたちの就学率は低く、それが就業での困難に繋がる。いわゆる「貧困の連鎖」が生まれている。
 これを断ち切るための手段として期待されているのが「マイクロ・クレジット」というものだ。数百円〜数万円といったごく少額の無担保融資であり、融資の対象を女性としているものが多い。

 1974年、バングラディシュの大学教授だったムハマド・ユヌス氏 は、ポケットマネーから27ドルを出し、飢饉にあえいでいた42家族に融資した。
 大変喜ばれ、かつ全額が返済されたという。
 76年にはそれが大学の実証実験プロジェクトとなり、大学周辺の村が対象となった。
 活動は爆発的に広がり、83年にはグラミン銀行が立ち上げられた。
 2009年時点で貸付対象者は787万人、貸付総額は81億ドル(平均1人103ドル)、支店のある村の数は8万以上に上る。
 利率は年20%程度。バングラディシュにおけるインフレ率10%、もしくは、貧困層向け高利貸しの年200%に比べれば、非常な低金利(*1)と言えよう。

 当初、大部分のヒトが、グラミン銀行の成功には懐疑的だった。貧困層にお金を低利で貸すなんてありえない、と。
 お金を貸すのに担保を取ったら簡単だが、それでは借り手がいない。逆に無担保なら借り手はいるが、その返済能力や意志が分からず、貸し付けリスクが大きすぎる、と。
 確かに100ドル貸すのにいちいち与信審査、個人調査なんてやっていられない。

 そこでグラミン銀行は、与信でのハカり方を変えた。「借り手の返済能力」を、担保ではなく「仲間からの信頼」でハカることにしたのだ。
 借り手は同性5人1組のグループを作り、個々人の資金計画についてグループ内でチェックすることを求められる。お互いに連帯保証人ではない(*2)が、同じ村の中同士なので互いのことは、分かっている。
 ムリな資金計画を出そうとしても、バレてしまうから、過大な融資は受けられない。
 結果として返済率は、98%を超える高率となっているという。

 自律的なマイクロ・インベスティゲイション(少額融資審査)という、新しい枠組みによる「ハカる」が、マイクロ・クレジットを支え、数千万人への融資を可能にしたのだ。

(*1)もちろんこれに対して「高金利すぎる」という批判もある
(*2)「連帯保証人」だとしている資料も多いが、グラミン銀行はこれを明確に否定している。但し、連帯保証人「的」である、という批判もある
 

  #返済意志を手のたこでハカったバンク・オブ・アメリカ

 バンク・オブ・アメリカの創設者はアマデオ・ピーター・ジアニーニ氏。イタリア・ジェノバからの移民の子として生まれ、12歳から継父の青果物卸の仕事を手伝い始めた。
 14歳で学校を辞めてフルタイムで働き始め、19歳のときには共同経営者となり、31歳でいったんリタイアした。
 翌年金融会社に幹部として転身したが、2年後には独立し銀行を立ち上げた。
 その名もバンク・オブ・イタリー、「イタリア銀行」! 古巣の向かいのビルに借りた、たった1部屋からの出発だった。

 数年後、バンク・オブ・イタリー本拠地のサンフランシスコを、大地震 が襲った。人口の半分以上が住居を失うほどのものだった。
 多くの金融機関が営業を停止する中、ジアニーニ氏は周りの反対を押し切って、融資活動を翌日には再開した。店舗は、酒樽2つに板を渡しただけのもの。
 個人や中小企業主に、地震からの再建資金を貸し付けたのだ。もちろん、無担保で。
 そのときの貸付条件は「その人の手にたこがあること」だった。それを彼は「懸命に働く意志、返済する意志がある証拠」と考えたのだ。

 その果断な行動は実を結ぶ。
 「1ドルの損失も出ませんでした」
 「それどころか、何千人もの新しい友人を得たのです」
 友人とも言える親密な顧客の獲得を可能にしたのは、ジアニーニ氏の決断と「手のたこで返済意志をハカる」枠組みだった。

 その後もバンク・オブ・イタリーは、業界の常識 (*3)を破りながら成長を続け、28年にはニューヨークの古い貸付機関だったバンク・オブ・アメリカを買収する。
 そのムダのない、消費者や中小企業主に向いた革新的な経営は、VISAカードを生み出し、ネーションズとの合併を果たし、そしてサブプライムショックを乗り切って、メリルリンチを買収した。
 今や米国最大の金融機関、彼の夢を名実ともに超えた「アメリカ銀行」となった。

 

 創意工夫による新しいハカり方が、世界を変える。
 あなたの身の回りに、そのチャンスは見えますか?

(*3) 「銀行は農業や畜産・水産業者には融資しない」「他州には支店を出さない」など

 

参考資料:
『ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家』ムハマド ユヌス、アラン ジョリ、早川書房
『成功にはわけがある』ウィリアム・J・オニール、講談社