新しいハカり方は、テクノロジーによるものに限らない。創意工夫でさまざまなブレークスルーを作りうる。
第3回目は、グラミン銀行の話から。
#返済能力を仲間からの信頼でハカったグラミン銀行
現在、世界では30億人もの人々が貧困状態にあるという。貧困層の子どもたちの就学率は低く、それが就業での困難に繋がる。いわゆる「貧困の連鎖」が生まれている。
これを断ち切るための手段として期待されているのが「マイクロ・クレジット」というものだ。数百円〜数万円といったごく少額の無担保融資であり、融資の対象を女性としているものが多い。
1974年、バングラディシュの大学教授だったムハマド・ユヌス氏 は、ポケットマネーから27ドルを出し、飢饉にあえいでいた42家族に融資した。
大変喜ばれ、かつ全額が返済されたという。
76年にはそれが大学の実証実験プロジェクトとなり、大学周辺の村が対象となった。
活動は爆発的に広がり、83年にはグラミン銀行が立ち上げられた。
2009年時点で貸付対象者は787万人、貸付総額は81億ドル(平均1人103ドル)、支店のある村の数は8万以上に上る。
利率は年20%程度。バングラディシュにおけるインフレ率10%、もしくは、貧困層向け高利貸しの年200%に比べれば、非常な低金利(*1)と言えよう。
当初、大部分のヒトが、グラミン銀行の成功には懐疑的だった。貧困層にお金を低利で貸すなんてありえない、と。
お金を貸すのに担保を取ったら簡単だが、それでは借り手がいない。逆に無担保なら借り手はいるが、その返済能力や意志が分からず、貸し付けリスクが大きすぎる、と。
確かに100ドル貸すのにいちいち与信審査、個人調査なんてやっていられない。
そこでグラミン銀行は、与信でのハカり方を変えた。「借り手の返済能力」を、担保ではなく「仲間からの信頼」でハカることにしたのだ。
借り手は同性5人1組のグループを作り、個々人の資金計画についてグループ内でチェックすることを求められる。お互いに連帯保証人ではない(*2)が、同じ村の中同士なので互いのことは、分かっている。
ムリな資金計画を出そうとしても、バレてしまうから、過大な融資は受けられない。
結果として返済率は、98%を超える高率となっているという。
自律的なマイクロ・インベスティゲイション(少額融資審査)という、新しい枠組みによる「ハカる」が、マイクロ・クレジットを支え、数千万人への融資を可能にしたのだ。 |