メンバーに求めるのは「やりたいかどうか」
ここまで読んでくれば、察しはつくはずだ。GTCが求めているのは高度な技術力ばかりではない。ビジネスに対する理解と、経営戦略の成功を何よりも最優先する姿勢である。そこで、今度はストレートに「望んでいる人材像」について森氏に尋ねてみた。
「私の想像では、こうした記事を読んでくれる人たちはきっと、自分の持っている力とGTCが求めている力とのマッチングをしてくれているのだと思います。でも、もしそれが当たっているとしたら、ちょっと視点を変えて欲しいんです。現在の自分の能力や経験値のマッチングをするのではなく、これから自分が『やりたいかどうか』のマッチングをして欲しい。実はそれが何よりも大切だからです」
さらに森氏は、ITの世界において経験値を時間軸の長さで判断するのは間違っていると指摘。「今、企業で稼働しているシステムを支えている技術は、生まれてからせいぜい数年しか経っていないし、めまぐるしく変遷する」と説く。つまり、『この技術、何十年の職人』というようなIT技術者はそもそも存在していないというわけだ。いかに経験豊富なエンジニアだとしても、デビューしたてのエンジニアとの間には、わずかな差しか持ち得ていないはず。経験よりも「新しいものをどれだけ吸収できるか」というポテンシャルの方に重みがあるというのだ。
「吸収する精度やスピードを問う時、そこに能力とか素養が関わってくるのは当然です。しかし、何よりも吸収力を決定するのは、どれだけ『やりたい』と思っているかどうかではないでしょうか。ですから、もしもGTCに興味を持ってくれたのなら、『経験が浅いから無理』というような思考をしないで欲しいのです。GTCが手がけているような先進的な案件を本当にやりたいと思っているかどうか。それを確認しながら、この記事も読んでもらえると嬉しいですね」
もちろん経験値を軽視しているわけではない。経験値とポテンシャルのグッドバランスをGTCは必要としているのだという。とりわけビジネスに接した経験については、大いに評価するとのこと。「特定業界の業務知識に通じている」という意味合いではなく、「どういうビジネスがどういうタイミングで動くのか」という経験則を持っているかどうか。顧客の意向を理解することが大事になってくるGTCでは、こうした経験値がものをいうというわけだ。そこに『やりたい』という姿勢が加わることで、成長するのだと森氏は考えている。
How toよりもWhyに対する答を持っているかどうか
ただし、森氏にさらに話を聞いていくと、単に「意欲満々」なだけではいけないようだ。 「私自身もエンジニアとして歩んできた経緯がありますから、気持ちは理解できるのですが、どうしても技術者は『やり方』を知っているかどうかを重視しがちです。"How to"にばかり興味が行き、ともすれば"Why"や"What"が抜け落ちてしまう。『こうすれば作れる』を語ることはできても、『なぜそうするか』を説明できない。そうした傾向を持ったままではGTCのミッションを果たすことは無理です」
例えば、「なぜJavaなのか。どうして.netではいけないのか」、「なぜRFIDを用いるのか。そうすることで顧客企業に何のメリットが生まれるのか」といった質問に明快に答えていける人。森氏はそうしたエンジニアに期待をするのだという。「なぜ」を常に心の根底に持つことは、イコール、ユーザーの満足を優先する姿勢へとつながっていく。
「私は面接で『この人がもしもアクセンチュアに入ったら、本当に幸せになれるだろうか』という視点をいつも持っています。今、日本のGTCのメンバーは約90名。その大多数はこの数年で中途入社してきた人たちです。この人たちが幸せだと感じられなければ、アクセンチュアも不幸な状態になります。だから、やりたいことがあるなら叶えてあげたいと思うのです。幸いなことに『アクセンチュアだから叶えてあげられること』は多数あります。そうした気持ちもあって『やりたいかどうか』『何がやりたいか』を重ねて聞いていくのです」
森氏は、もしも志望者の「やりたいこと」がアクセンチュアとは別の場にあるのだと判断したら、それをはっきりと伝えてもいるという。また、「なにもカッコイイことを言わなくたっていいんですよ」と笑いながら語る。15年前まで大手通信機メーカーでデータ交換機のエンジニアをしていたという森氏自身、転職を志したきっかけは「海外に行って腕をふるいたい」という気持ちからだったという。世界のアクセンチュア、しかもGTCという先進チームを志すからには、「なにか難しい動機がないといけない」と思うかもしれないが、そんな心配は要らないというわけだ。
「『金持ちになりたい』だっていいし(笑)、『この技術に関わりたい』だっていい。ただし、やりたいことを聞いた後、必ず質問しますよ。『どうしてそれがやりたいの』と。やっぱり大事なのは『なぜ』なんです」
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