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BCG デジタルベンチャーズ

設立からほんの数ヵ月でいくつもの大型案件が決定し、動き出しているBCG デジタルベンチャーズだが革新的な集団ゆえに、ミッションとの向き合い方や実際の仕事の進め方、メンバーそれぞれの役割や喜びなどなど、わからないことも多い。
そこで起ち上げメンバーであり、主要な役割を各々担っている4人に具体的な仕事内容やビジョンについて語ってもらった。

まずは皆さんがBCG デジタルベンチャーズ(以下、デジタルベンチャーズ)に参画した理由について教えてください

【島田】私は戦略コンサルタントとして経験を積んできた後に、デジタル領域の魅力に出会い、ナップスターやレコチョクなどで新サービスの起ち上げに携わってきました。しかしやがて、スマホで完結する新サービスが高確率でイノベーションに直結していた時期は過ぎ去り、よりリアルビジネスに近い領域でのイノベーションに可能性を感じはじめました。

そんなタイミングで古巣のボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)がデジタルベンチャーズを東京でも立上げる予定であることを知り、「ここをプラットフォームすれば、今までとは違うチャレンジができる」と考え、1年前に参加し立上げ準備から参加してきました。

【山敷】私は学生時代にSNSを起ち上げて、スタートアップの経験もしたんですが、ベンチャーゆえのリソースの不足や自身の未熟さも痛感し、しっかりした組織と安定した資金のある場で修行し直そうと考え、ITサービス大手に就職をしました。ここでは大規模な新規事業の起ち上げを任せてもらい、非常に有意義な経験をしたのですが、もっと広い視点で世の中にインパクトを与えられたら、という希望を持つようになったんです。

そうして出会ったのがデジタルベンチャーズでした。ここならばBCGのグローバルなアセットを背景にしながら、リアル巨大産業の領域でより大きなインパクトを提供し得るし、ベンチャー同様の自由度で新しいことにチャレンジできる。そう思って参画を決めました。

【花城】私は出版社でDTPの企画をしたり、コンテンツのディレクターをしたり、カメラマンをやったりと、いろいろな仕事に携わってきたのですが、特に大きかったのが『BrainWars』や『BrainDots』というアプリのUIデザイナーをした時の経験でした。

これらのアプリがグローバルでもヒットして「世界を相手にすると、こんなにスケールの大きい面白さを味わえるんだ」と感じたんです。デジタルベンチャーズならば、これまで得てきた専門性も活用できますし、何よりグローバルな仕事に関わるチャンスだと感じ、参画することにしたんです。

【堀口】私は長い期間を外国で過ごしていたんですが、アメリカの大学で工業デザインを学び、卒業した後は日本企業で主にUIデザインを手がけるようになりました。仕事自体には満足していたものの、だんだん外資系企業が持つスピード感に魅力を感じるようになり、サムスンへ転職。そこでもUIを手がけていましたが、やがてデザイン戦略に携わるようになりました。

転機になったのはフリマアプリの子会社にフリーの契約デザイナーとして参画した時の経験です。デジタル領域で流れている圧倒的なスピード感に魅了されたんです。デザインというアプローチで欠かせないのはユーザー主体という姿勢ですけれども、それをもっと深めていきたいという望みも強くなっていた中、デジタルベンチャーズにストラテジックデザイナーという役割があることを知り、滅多に出会えないチャンスだと思って、参加することを決めました。

皆さんはデジタルベンチャーズの主要な役割である4つのポジションを担っていますが、それぞれどのような役目・機能を果たしていくんでしょうか?

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【島田】ベンチャーアーキテクトは言ってみればプロジェクトの取りまとめ役です。BCGと連携しつつプロジェクトのセールスも担い、パートナー企業の課題を踏まえた上で、スコープやプロセスを設計します。グローバルで保有するBCG Digital Venturesのデジタル ベンチャーズメソドロジーの内、何を選択し、どうチューニングしていくかも考えていく。パートナー企業とのインタラクションから、チームのマネージメントまで行うのがベンチャーアーキテクトの役割です。

【山敷】プロダクトマネージャーは従来のコンサルティングファームにはいなかった職種です。文字通りプロダクトを創出して開発していく局面のリーダーを担うわけで、実行段階でエンジニアやデザイナーなどをまとめていくことになります。

デジタルベンチャーズがコミットしているのはイノベーションの実現ですから、私たちが言う「プロダクト」はインターネット・サービスの時もあれば、形あるデバイスの時もあるでしょうし、場合によっては店舗のような空間を作って運営していくこともあると思います。非常に広範囲に渡る「プロダクト」を扱うこの組織で、もの作りをリードしていく存在、それがプロダクトマネージャーです。

【花城】私が担当するエクスペリエンスデザイナーは、イノベーション・フェイズにおいてデザイン・シンキングしていくところからジョインし、ユーザー・インタビューやワークショップを行いながら、アイデアを具現化していく部分も担いますし、それが事業化されていく過程で、ブランドのアイコンをはじめ、ユーザー接点となる局面のインターフェースやエクスペリエンス、つまりUIやUXのデザインも実行していく役割になります。

ただし、いわゆるUIデザイナー、UXデザイナーと異なるのは、もっと広い意味での「体験」をデザインする役目だということです。単に商品に接する時のエクスペリエンスや、サイトのページを開いた時のエクスペリエンスだけでなく、たとえば店舗であれば外観や、一歩足を中に踏み込んだ時の感覚や感情までデザインしていくような、そういう役割を担っています。

【堀口】私の職種はストラテジックデザイナーという名称なのですが、まだあまり多くのかたの耳に馴染んではいない役割なので、わかりづらいかもしれません。一言でいえば真のユーザー主体、「何を求め、何を欲しているのか」という本当の深層心理を導き出して、これを戦略的に商品、事業、サービスに落とし込むデザイナーということになります。

多くの事業やサービスはこれまで、ともするとビジネス・オリエンテッドもしくはデザイン・オリエンテッドになりがちな傾向がありました。けれども、これからイノベーションを成功させようとするならば、ユーザーが期待するニーズを表面的にとらえて終わるのではなく、深層心理の領域にまで踏み込んでミートしていく必要があります。ですから、ユーザーサイドに深く入り込んでリサーチし、共感したものを戦略的にデザインしていく能力を問われることになる職種です。

欧米ではこのストラテジックデザイナーという立場が日本よりも浸透しているのですが、担っている人の多くがプロダクトデザイナー出身者です。そもそもモノを創る現場で、ユーザー・リサーチのノウハウは深まっていった経緯があるんです。たとえば開発したプロダクトを手で触ったときの感触が、人にどんな心理をもたらすのか、というようなところまで考慮してデザインしていく姿勢があるわけです。

ユーザーに共感するための手法や感性を備えているプレイヤーが多くいるから、プロダクトデザイナーがストラテジックデザイナーを担うケースも増えているのだと思いますが、ともあれイノベーションをリアルな事業にしていき、それをエンドユーザーに満足してもらうところまでコミットしようというのであれば、不可欠な役割だと自負しています。

いわゆるコンサルティングファームやデザインファーム、あるいはエンジニア集団とも異なるのがデジタルベンチャーズかと思います。新しさゆえに「どんな人を求めているのか」が見えにくくなっているかもしれませんので、皆さんの考える人材像について教えていただけますか?

【山敷】大前提としてお伝えしておきたいのは、いわゆるコンサルティングファームとは一線を画す立場だということですね。BCGの名前はついているわけですけれども、これまでBCGがコミットしてきた戦略思考や仮説思考は今後もBCGのメンバーが担っていきます。

BCGのコンサルタントがクリティカルシンキングを展開する一方で、我々デジタルベンチャーズはデザイン・シンキングやスタートアップスピリットをベースにユーザー主体でモノを作っていくわけです。ですから私が担当するプロダクトマネージャーや、エクスペリエンスデザイナー、ストラテジックデザイナーは、それぞれ独特のバックグラウンドを持っています。

インターネットの世界に精通してきた人や、デザインの領域でデジタルと向き合ってきた人、私のように新規事業を組み立てて動かした経験やスタートアップ系のバックグラウンドの持ち主などなど、独特の専門性と多様性を持ったチームがデジタルベンチャーズなのだと理解していただければと思います。

【島田】私が担っているベンチャーアーキテクトは、役割上、コンサル的思考とデザイン思考とスタートアップ思考の3視点を理解する必要がありますので、私自身も含めコンサルのバックグラウンドを持った人間がいます。けれども根底の部分で異なるところがあるのは、山敷が指摘した通りです。

コンサルタントの喜びというのは、やはり経営上重要な意思決定に関与していくところにあるわけですが、デジタルベンチャーズのメンバーが喜びを感じるのは、世の中にプロダクトを出して、それを多くのエンドユーザーのかたに使っていただいて、インパクトを生みだし、世の中を変えた時です。ですから、それを実現するためのエクスパティーズやバックグラウンドは、当然問われてくることになります。

ただ、一番大切なのは「何を喜びとして仕事と向き合いたいか」です。今お話をしたようなデジタルベンチャーズの価値観に共感してくれる人こそが、ここで活躍できるのだと考えています。私たちが企業をクライアントと呼ばずにパートナーと呼んでいるのもこうした背景があるからです。

クライアントに喜ばれることを醍醐味とするのではなく、ユーザーに喜ばれること、社会にインパクトを出していくことに醍醐味を求め、企業の優秀なかたがたと一緒に切磋琢磨していく。そんな人間の集団だということです。

【堀口】ストラテジックデザイナーの立場から言わせていただくと、リサーチャーと混同されがちな点が気になっています。先ほどもお話したように、ユーザーと共感していくための具体的なアプローチはいくつもありますけれども、いわゆるリサーチャーに求められる資質、例えば「ユーザー・インタビューをするのが得意です」という面が重要なのではなく、むしろユーザーを観察して、イマジネーションを膨らませ、共感ポイントを見つけ出す立場。

ですから、人間観察が好きで、そこで得たことをベースに自分の意見を発信していくのが好きな人に参画してほしいと思います。ユーザーの身になって、その人の世界観や価値観に共感できるような想像力の持ち主ならば、きっと活躍できると私は信じています。

【花城】デザイナーという職種はとても広範に及ぶので、それについても誤解しないでほしいと思いますね。特に日本のデザインの世界には例えばアート・ディレクターだったり、クリエイティブ・ディレクターだったり、様々な呼び名が存在していて、それらが一種独特のヒエラルキーを構成していたりすることが多いのですが、私としてはそういう概念に染まっていない人、縛られていない人に来てほしいですね。

上下関係に縛られながら働くことに慣れているようなタイプだと、やはり変革を生み出すようなプロジェクトで力を発揮することは難しいですし、島田も指摘した通り、そもそもの喜びのポイントが違ってきてしまいます。私自身を例に挙げてしまっていいのか迷うところではあるんですが、私の場合、もともと雑用が好きで(笑)、デジタルベンチャーズの東京センターがこの恵比寿に決まった時にも、分別ゴミのゴミ箱に貼るステッカーのデザインにエネルギーを注いだりしました(笑)。

私たちもベンチャー企業の1つですから、何もかも手作りでスタートしているわけですが、ゴミ箱に貼るステッカー1つを取り上げても、デザインする時にはゴミを捨てる人間の気持ちになったり、その場を通りかかる人の心理も考えて作っていくことになります。妙な例を挙げてしまいましたけれども、やはりこういう発想や価値観がないと、新しいモノやサービスをデザインしていく喜びを実感できないと思うわけです。

【島田】まあ花城のゴミ箱の話が事例として適切かどうかはさておき(笑)、すべてが与えられた環境、与えられた組織でしか真価を発揮できない人ではなく、スタートアップ的に何でも自分たちで作り上げていくことに喜びを感じる人でなければ、というところは確実にあります。

それはデジタルベンチャーズとしてのメソドロジーの数々についても言えます。たしかに北米で2年前にスタートしたデジタルベンチャーズには、すでにいくつもの成功事例がありますけれども、じゃあそれを日本でもそのまま使えばイノベーションが起こせるのかといったら、そうはいきません。

もちろん先行事例は最大限に参考にして、活用もしていくけれども、根本的にすべてをゼロから考え、作りだし、動かしていくことが常に求められる立場です。それを面白いと思えるかどうかが問われてきます。

平井からも話があったと思いますが、我々の側が企業のオフィスに入っていくのではなく、逆にパートナー企業のかたにこの東京センターへ来ていただき、ともに行動していくのを基本スタイルとしています。

大企業のオフィスの中でイノベーションが起きていないからこそデジタルベンチャーズにお声がかかっているわけですから、当然といえば当然のことなんです。私たちは変革を起こすための人も出しますし、環境も提供します。そういう新しいスタイルで働くことにわくわくするような人が、成果を上げていく集団なのだと思っています。


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プロフィール

写真:島田 智行 氏

島田 智行 氏
プリンシパル・ベンチャーアーキテクト

東京大学法学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経てボストン コンサルティング グループ入社。2006年、ナップスタージャパンに転じ、日本初の音楽聴き放題サービスを起ち上げ、2008年にはレコチョクに入社。事業開発担当執行役として音楽・動画の配信サービスを起ち上げた。2012年からはメガベンチャーで新規事業起ち上げ部門の責任者に就任し、数々の新サービスを事業化。2016年より現職。

写真:山敷 守 氏

山敷 守 氏
リード・プロダクトマネージャー

東京大学在学中、学生向けSNS「LinNo」を起ち上げ、デジタルサービスの世界に飛び込む。卒業後は、革新性を強みとするIT系大企業に入社。ここでゼロベースからスマートフォン上のメッセージング事業を起ち上げ、プロジェクトの責任者として従事。2016年より現職。

写真:花城 泰夢 氏

花城 泰夢 氏
リード・エクスペリエンスデザイナー

明治大学在学中、『宇宙授業』(中川人司著・サンクチュアリ出版)等の出版物の企画に携わった後、クリエイティブ・エージェンシーにおいてコンテンツ・ディレクターとして大手企業のコンテンツ制作を担った。カメラマンとしても活動を展開する一方で、2012年フィリピンへ留学すると、現地でDMM英会話の事業起ち上げに携わった。2014年にはトランスリミットに入社し、大ヒットした脳トレアプリ『BrainWars』、『BrainDots』のUIデザインを手がけた。2016年より現職。

写真:堀口 綾 氏

堀口 綾 氏
リード・ストラテジックデザイナー

米国カーネギーメロン大学でインダストリアル・デザインを学んだ後、ニコンに入社。グラフィック・デザイナーとして従事した後サムスンへ。グラフィックUIデザイナーおよびデザイン戦略を担った後、フリー・デザイナーとしてフリマアプリの子会社にてアプリデザインに携わる。2016年より現職。

プロフィール

写真:平井 陽一朗 氏

平井 陽一朗 氏
パートナー 東京センター・ヘッド

1974年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事を経てボストン コンサルティング グループ入社。戦略案件に多数携わった後、ディズニー・ジャパンへ転職し、新規事業の起ち上げ等をリードした。2006年にオリコンへ入社、同社副社長兼COOを経て、オリコン・モバイル(現oriconME)の社長に就任。2010年にはザッパラスに転じ、代表取締役社長兼CEOを務めた後、再びボストン コンサルティング グループへ。パートナー&マネージング・ディレクターとして活躍するとともに、社内の若手人材育成プロジェクトを統括。また米国で胎動していたBCG デジタルベンチャーズの日本での展開を積極的に牽引し、2016年より現職。

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