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Deloitte Digital

「企業経営のデジタル化に対応し、戦略策定からクリエイティブ制作に至るまで一貫して支援していくコンサルティングサービス」……Deloitteが世界の先駆けとなってサービス化を宣言し、そのブランド名として定着したのがDeloitte Digitalである。
2013年には、米国・英国・オーストラリアに続いて日本でもサービス提供がスタート。劇的なスピードで進行する「経営とビジネスのデジタル化」において、遅れを取っていると言われる日本だが、これを世界水準にまで引き上げ、さらには世界をリードするところまで進化させるべく、動きを本格化させようとしている。
すでに当初の予想を超える反響を得て、先鋭的な企業からの依頼が続出する中、Deloitte Digitalのジャパンチームは、早くも組織と人員の強化に乗り出したという。
そこで、同チームの牽引役である2人のキーパーソンに話を聞いた。「経営のデジタル化」の実態とは果たして何なのか?

世の中のデジタル化についていけなくなっている企業経営。
これをまったく新しいアプローチでトランスフォームするのがDeloitte Digital

「世の中がどんどんデジタル化し、人々がその利便性等のメリットを謳歌しているにもかかわらず、企業経営はそのスピードについていけていない......そんな危機意識がDeloitte Digitalスタートのきっかけでした。経営手法でも技術の導入でも常に世界を先んじていた米国でさえ、こうした危機意識が広がっていたわけです」

日本におけるDeloitte Digitalの戦略コンサルティングのリーダー、岩渕氏はそう語る。北米のDeloitte Digitalには、デジタル領域で高い実績を築いたコンサルタントや、シリコンバレー等で先進技術を駆使するITプレーヤー、さらにはマーケティング領域で先端的チャレンジを形にしていたクリエイターらが集結。

前例のない組み合わせによる多才な異能集団が、「経営のデジタル化」というテーマに基づく新しいコンサルティングサービスをスタートさせたわけだ。その後、Deloitte Digitalは英国、オーストラリアでもサービス提供を実施。日本は世界で4番目の実施国となった。

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「世界で4番目というなら、早いほうじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、日本のビジネス界におけるデジタル化の実情は、驚くほど遅れています。原因は数々ありますが、その一つに大手エージェンシーへの依存という日本独特の事情がありました」

そう語る関氏は、日本のDeloitte Digitalチームにおいて、特にクリエイティブ領域を統括する立場だが、かつては長年「大手エージェンシー」で活躍してきた人物だ。それだけに厳しい表情で話を続ける。

「私が言うのもなんですが、日本では昔から『広告のことは広告代理店に任せておけばいい』というような発想が根付いてきました。世界的に見ても、実に特異な状況です」

事は広告制作に限らず、広くマーケティング領域全般の戦略・戦術策定も、大手エージェンシーにイニシアチブを預ける体質。それが、日本中の企業に浸透してきた。とはいえ、関氏は「日本の遅れ」をもたらした責任がエージェンシーにある、と説いているわけではない。

今大急ぎで進めているのは、トップ経営層の意識改革と
デジタル化の時代に相応しい組織や体制を模索し、構築すること

「世界のトップ企業がランク付けられるフォーチュン500に2014年時点でリストアップされた会社の内、実に34%がCMO、すなわちチーフ・マーケティング・オフィサーを擁していました。では日本の主要企業の中でCMO的な役職を備え、しかるべき人物が活動している例はどれだけあると思いますか? たったの0.1%です」

もちろん役職の有無そのものに問題があるわけではないが、グローバル企業のCMOたちが今、何に最大のエネルギーを注いでいるかといえば、マーケティング戦略の実行局面に先端IT技術を積極投入し、デジタル化を推進することで差別化を達成して、経営をドライブしようとしている。そうした機能にコミットする人物やチームの不在こそが、日本の遅れを引き起こしている要因なのだと関氏。そして、この話題を岩渕氏が以下のように引き継ぐ。

「要は意識の問題です。それも経営を司るトップ層の意識レベルの問題。だからこそ重大であり、大急ぎで解決しなければいけないわけです。ただし、この状況については私たちコンサルタントの側も自戒の念で受け止めなければいけません。

米国でさえ『経営のデジタル化が遅れている』ことを問題視し、『自分たちがまず変わらなければ』と考えた結果、Deloitte Digitalの動きが始まったわけです。日本での『遅れ』は北米のそれよりもさらに大きい。ならば、世界のどこよりも日本のDeloitte Digitalチームは奮闘しなければいけない。そう考えているのです」

かつて外資系IT企業などでマネジメントを務めた経験を持ち、技術面に明るいばかりでなく、コンサルタントとなってからも経営のデジタル化の重要性を自動車メーカーほか、日本を代表する数々の大企業に説いてきたのが岩渕氏。「日本企業の経営を根底から変えなければいけない」という情熱を誰よりも強く持ってきたからこそ、Deloitte Digitalの牽引役を引き受けたのである。

「米国や欧州の先進企業にはCMOだけでなく、CDO、つまりチーフ・デジタル・オフィサーという役職を置いているところもあります。そして、このCMOやCDOらが経営のデジタル化を進めていく過程で、CIOにも再び脚光が当てられてもいる。マーケティング、デジタル、IT技術。それらを経営目線で見つめることのできるキーパーソンが機能すれば、『経営のデジタル化』は、しっかりとエグゼキュートされていく。ところが、日本は......」(岩渕氏)

「そのはるか前の段階。意識も組織も体制もこれから整えていかなければいけない」(関氏)

「日本の経営者だって問題の重大さや緊急性には気づいているのですよね。けれども、何処から手をつければいいのか、皆目わからなかったりする」(岩渕氏)

「だからこそ、私たちが必死の思いで支えていかなければいけない」(関氏)

「そういうこと。実を言えば、とてもやりがいを感じて熱く取り組んでいる(笑)」(岩渕氏)

チームを組んでからほんの1〜2年しか経過していないとは思えないほどのコンビネーションで、異なる畑からやってきた両者は言葉を繋いでいく。驚いていると、関氏もまた微笑みながらこう語った。

「本当に面白いんです。世界的に見たって、まだセオリーが確立できていない未開の地を、今僕らは切り拓いている。そう考えるたびに奮い立ちますよ。私たちのもとに集まってきた若いメンバーも実に多彩なバックボーンの持ち主ですが、どういうわけか独特のまとまりが生まれている。ここにあるこの空気をもっともっと多くの人に伝えて、仲間を増やしていくことも、私たちのミッションですし、興味を持ってもらえると嬉しいですね」

エンジニア出身者はいても、彼らはアプリケーションやシステムの開発・構築だけを実行する立場ではない。経営に変革を起こすビジョン策定にも関わり、アイデアを出していく。クリエイター出身者がいても、彼らもまたデザインや映像制作の専門家としてだけ振る舞うのではない。

経営ビジョンをより効果的に伝えていくにはどうすればいいのか、といった課題と向き合っていく。岩渕氏は言う。「それぞれの分野を極めた人にしか見つけられないインサイトというのがある。従来型のコンサルタントでは到底たどり着けないような世界観がある」と。そして、そんな前代未聞のチーム構成だからこそ、関氏が語った「面白さ」が自然発生しているようだ。

そもそも「経営のデジタル化」とは何なのか?
Deloitte Digitalが果たすべき役割とは何か?

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ここで「基本中の基本」を聞くことにした。「経営のデジタル化」という呼び声に含まれている「デジタル」とは具体的に何なのか、である。1990年代から連綿と続けられてきた「経営におけるIT活用」とは明らかに違うだろうとは思えるが、ではそもそも「デジタル化」とは何を指すのだろうか?

「非常に難しい問いですね。実は私たちも普段の活動の中で多くの方に言われます。『どこからどこまでの領域をとらえ、そこで何をしているのかがわかりにくい』と。答えは、アンコンベンショナル・ブレークスルー、つまり"型にはまらない経営の変革"。そう表現するしかありません」

そう話す岩渕氏は、Deloitte Digitalの根源的な姿勢について語り出した。

「冒頭でもお話をした通り、今の世の中ではエンドユーザーや消費者と呼ばれてきた一般の人たちの日常がどんどんデジタル化しています。個々人が自ら価値ある情報を持ち、それをIT技術やデジタル・プラットフォームの利用によって、世界中に発信したり、やりたいことを実現したりしています。私たちが何よりも先に手がけなければいけないのは、その実態をつぶさに拾い上げていくこと。消費者という存在を、過去の事例や実績だけで大雑把に捉えるのはやめて、しっかりと事実を踏まえて理解する。そして次に、企業はこの消費者に向けて、自分たちの存在や価値をきちんと伝えていくことも不可欠です」

岩渕氏が示した姿勢は、昨今よく耳にするIMC(Integrated Marketing Communication/統合マーケティングコミュニケーション)の基礎的概念と重なる。そして「消費者を正確に理解し、消費者にきちんと伝える」ためには、インターネット技術やデジタル技術の活用が大きくものをいう。マーケティングを踏まえた視点も必須となる。これらの要素を徹底的に整理整頓し、柔軟な発想と手法でブレークスルーに繋げていくアプローチが「経営のデジタル化」における最初の一歩ということになる。

今度は関氏が以上の点について補足説明をしてくれた。

「いわゆる広告代理店の従来の主要ミッションは『消費者にモノをたくさん買ってもらう』ことを目的にしたコミュニケーションの確立でした。私たちがやろうとしているのは、消費者と企業との間にできてしまった溝をつきとめ、それを埋めていくためのコミュニケーション。発想の起点がまったく逆なのです。そして、この違いによって次に生まれてくるのが、企業とのリレーションシップにおける違い。従来型の広告代理店が短期的関係をベースにしていたのに対し、Deloitte Digitalと企業の関係は長期的になり、永続性さえ持つようになります」

こうした本質的相違があるからこそ、「Deloitte Digitalと広告代理店とは競合しない。むしろ時には手を結んで協力し合う関係になっていく」と関氏は言う。岩渕氏からは、コンサルティングファームらしい「違い」の指摘もあった。

「例えば、マーケティングにおけるビジョンを練り上げ、そこにデジタル技術を投じていく戦略を策定していたとします。時にはそこで『では、どこどこの国のこの企業とのM&Aを考えてみては』という方向に話題が広がったりする。コンサルティングのプロフェッショナルとしての役割も同時進行しているからこそ、このようにお客様との話がデジタルとは直接関わりのない方向になったりもします。そういう話し相手が今まで企業経営陣にはいなかったということ。ですから既存のエージェンシーとは役目も関わり方も違っていて当然なんです」

関氏もまた以下のように話す。

「広告代理店の出口はメディアであり、コンテンツです。私たちの出口は違います。経営そのものの変革であり、その背景に流れる思想・発想の構築でもあるんです」

Deloitte Digitalが目指す「デジタル化」の実像が見えてきた。では、企業からの反響はどうなのかというと「予想をはるかに超える大きさだった」と岩渕氏。事実、総勢約60人からなるDeloitte Digital ジャパンチームのメンバーは皆、多くの案件を抱えて奔走しているという。

「変えなければいけない、変わらなければいけない、という危機感は多くの企業の経営陣の間にしっかり存在していたということになりますね。忙しいのは事実ですが、確かな手応えを感じながら全員が充実した気分で壮大な変革へのチャレンジを進めています」

手応えは十分。多くの日本企業がデジタル化へと動き出した。
ただしタイムリミットも迫っている。

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経営層の意識改革というスタートラインから動き出さねばならなかった日本だが、Deloitte Digitalの活況ぶりを見る限り、可能性は見えてきているように思える。だが、岩渕氏も関氏も油断はしていない。「世界水準と比べた場合の日本の遅れ」も「消費者と企業の間にできてしまった溝」も決して小さくはない。だから大急ぎで解消しなければならない、と繰り返す。では、いったいいつまでがタイムリミットなのか尋ねてみると「せいぜいあと2〜3年が勝負の分かれ目になる」と2人は口を揃える。

「若返りの傾向を見せている面もありますが、日本のビジネス界をリードする東証一部上場企業の経営者の平均年齢は50代後半です。遅かれ早かれ世代交代の波がやってくる。その時までに、デジタルやIT、マーケティングへの理解度が高い次世代のキーパーソンが存分に実力を振るえるような経営環境を用意しなければいけません」

岩渕氏の観測によれば、世代交代の下地作りまでに残されている時間的猶予は「2〜3年」というわけだ。関氏はグローバル市場との共存共栄という要素も口にする。つまり、今後海外市場での成否が死活問題となる日本企業にとって、将来の経営の根幹を決めていく「デジタル化」での遅れは、致命傷にもなりかねないとのこと。デジタル化は、グローバル化というもう一つの重大経営イシューの成功の鍵をも握っている。岩渕氏は最後にこう語った。

「どんなアングルから考えても、今こそが日本企業の勝負の時。だから私たちもチームの規模とクオリティとを大急ぎで拡充しようと考えています。メディアでは悲観的報道もありますが、私たちは確信しています。先を見て変革に着手できる日本企業は必ず遅れを取り返し、次の時代に相応しい経営変革を成し遂げます。この大きな節目でともに力を発揮してくれるような新しい参画者を皆で熱望しているのです」


エグゼクティブ ブランド ストラテジスト 岡崎 恒 氏 インタビューへ続く

インタビュー1

写真:岩渕 匡敦 氏

岩渕 匡敦 氏
パートナー

1996年ソフトバンクに入社。M&Aによりグループ参入した米国企業の日本参入事業企画に従事した後、複数のシリコンバレー系IT企業でマネジメントを担う。2008年、Deloitteに入社後は、主に自動車およびハイテク産業と向き合い、新規事業確立やブランド戦略、グローバル顧客戦略、デジタルマーケティング戦略など多様なテーマのコンサルティングに従事。欧米および中国、東南アジア、南米地域を含むグローバルなプロジェクトに注力している。2013年、新たなサービスブランドとしてDeloitte Digitalがスタートすると、これに参画。同サービスの戦略コンサルティングプラクティスリーダーとして多様な活動を行っている。INSEAD International Executive Programme修了。

写真:関 良樹 氏

関 良樹 氏
エグゼクティブクリエイティブディレクター

国内大手広告エージェンシー、ITベンチャーを経てDeloitte Digitalに参画。 現在は、マーケティング領域からブランド戦略、コミュニケーション戦略、クリエイティブ戦略において幅広い知識・経験から業務推進を行う。 世界3大広告賞の一つ「Cannes Lions International Festival of Creativity」では、日本人審査員として 2009 、2013に選抜。著書に「R3コミュニケーション」、「次世代広告コミュニケーション」がある。他メディアへの寄稿、セミナー講演多数。

インタビュー2

写真:岡崎 恒 氏

岡崎 恒 氏
エグゼクティブ ブランド ストラテジスト

 

インタビュー3

写真:早野 誠也 氏

早野 誠也 氏
クリエィティブ ディレクター、UXエキスパート

 

写真:小森 博仁 氏

小森 博仁 氏
マネジャー

 

インタビュー4

写真:ダニエル・ケヴェド 氏

ダニエル・ケヴェド 氏
 

 

写真:川田 貴和 氏

川田 貴和 氏
 

 

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