デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パートナー
ポストM&A ユニット リーダー
松江 英夫 氏
パートナー
ポストM&A ユニット リーダー
松江 英夫 氏
松江さんは当初、システム案件やBPR案件の担当が主体だったと聞きます。
いつごろ、どのようにして経営統合やM&Aに関わる専門性を磨いていったのでしょう?
【松江】当初からお客様の経営の中枢に関わるプロジェクトに携わりたい、という気持ちはありましたが、当時は弊社の得意分野、自身の経験領域の問題もあり経営統合やM&A案件の数は少なかったのですが、それでも幾つかの案件機会を通して、専門雑誌や外部講演などで自分なりの考えを発信していったところ、2000年代に入って、時代の要請が高まってきた、というところでしょうか、次第にその内容が社内外の注目を集めるようになっていき、担当案件が増えてきたという、つまり積極的に内外にアピールすることでつかみ取っていった、というのが事実です。
DTCは、M&Aのすべてのプロセスにコミットし、価値を提供できる点が強みだと聞きました。
それを実証するかのように、この領域に特化したチームが存在するわけですよね?
ポストM&AとプレM&Aの2ユニットに分かれている理由や、
両者の関わりについて教えてください。
【松江】あくまでもお客様への価値提供を明確にするための組織体制だと考えてください。ポストM&Aユニットが対象にしているのは、M&Aや組織再編を"きっかけ"にした経営変革(Transformation)です。PMIというと単にプロセスと統合するという狭い範囲をイメージしがちですがそれは違います。合併後に如何に競争力がある新会社を作るか、買収後に対象会社を如何にバリューアップさせるか、M&Aを単に"成立"に終わらせず「成功」に導くための幅広い組織変革を対象にすることが当ユニットのミッションです。
当然、プレ・ポストそれぞれの局面で求められる専門性やエグゼキューション能力は微妙に異なりますから、それぞれがその力に特化して成長を目指してはいますが、案件の状況次第で柔軟に動いています。プレ段階でもディール後を見据えたポストの知見が必要となれば柔軟に加わっていきますし、逆の場合も同様です。もちろん、そこにインダストリーに特化したユニットも関わって、それぞれが有機的につながりながら互いの役割を果たしていくのです。
ポストM&Aユニットの特徴としては、経営・組織変革を対象にするが故に、生々しい経営の問題、人間同士の問題や、文化と文化の融合をめぐる問題などとも向き合う場面が多くなります。私としては、かつて戦略領域のみならず、BPRや人事面の課題とも向き合った泥臭い現場体験が現在の経営統合のPMIプロジェクトで生きていると思います。
PMIでは、たとえば統合した経営者同士の駆け引きですとか、
非常に重々しい組織の実状と向き合うことになりますよね?
【松江】そうです。経営者に近いところでの仕事をするのが私たちということ。そこは形ばかりの理屈は通用しないし、教科書通りの対応しかできないコンサルタントでは相手にしてもらえない厳しい世界です。しかし、私は「だからこそ、リアルな経営の素顔と向き合えるチャンス」なのだと考えます。経験に基づく的確な判断力や、フェアな姿勢、高度な交渉力などなどが必須になりますけれども、それによって劇的に成長していくこともできます。企業経営者だけが持つリアルな視座、目先だけでなくさらに先を展望しようとする姿勢、組織を動かす手法など、経営の多くを学べるのが私たちです。
では、いまM&Aをめぐる領域で、特に注目されている課題や、
トレンドなどがあれば教えてください。
【松江】やはり今はなんといっても「クロスボーダーM&Aをいかにして成功につなげるか」いわば日本企業のM&Aを通したグローバル化への変革(Transformation)が大きな経営課題になっています。海外M&Aによって国の異なる企業同士が手を組むことは国内以上に困難が伴います。国が違えば、ルールも慣習も文化も違います。ビジネスの基盤である人の労働に対する価値観や、キャッシュに対する価値観だって、まったく違っていたりします。そういった違いのすべて理解し、見通せる人材など、企業内部になかなかいませんし、そう簡単には育成もできません。ですから多くの大企業であっても、苦慮しているのです。
そのクロスボーダーM&AにおけるDTCの優位性とは何になりますか?
【松江】海外M&Aの傾向は二系統あります。1つは日本企業が欧米系の成熟企業を買うようなケース。これらはひとたび動き出せば、非常に大きなプロジェクトになります。もう1つはアジアをはじめ新興市場でのM&Aです。件数でいえば、非常に増えていますが、金額的には欧米系企業のM&Aよりもずっと小さい。それぞれの場合に優先課題は異なりますが、どちらの場合でもコンサル、Financial Advisory、TAXも含めた多機能領域をカバーし、かつデロイト各国と連携しながら、一連の工程の最後の実行局面までコミットできること、そしてその上で同類の経験の厚みを持っていることがDTCの1つの大きな強みになっています。
特に誇らしく感じているのは、DTCに依頼をしてくださるクライアントの多くが、過去にクロスボーダーM&Aを経験されている企業だということ。実際に経験した結果、難しさを実感したうえで私たちに相談をしてくれているのです。「これからなにをすべきなのか」「過去の失敗のなにがいけなかったのか」という部分を客観的に評価し、成功に導くための助言を我々に期待して下さる企業が増えていること。これは大いに自信につながります。
急速にオファーが拡大するなか、陣容の拡大を目指していると聞きました。
やはり少人数でフルインダストリーに対応するとなると、
相当ハイレベルな能力や資質が必要なのでしょうか?
【松江】DTCではサービスにフォーカスした私たちのようなチームと、インダストリーにフォーカスしたユニットとがマトリクスに機能する体制を貫いています。それぞれの業界が持つ専門的課題についてはインダストリーのメンバーが主体となって解決に動きます。むしろ、DTCのようにプレM&A、ポストM&Aの専門チームを備えているファームそのものが少ないわけです。M&Aの各局面に特化して経験と専門性を極めていることがクライアント企業からの評価にもつながっています。ですから、全業界の知見がないと当チームで活躍できないと考える必要はなく、変革に携われる素養があればこのチームで経験を重ねて独自の力を磨いて欲しい、そう考えています。
では松江さんのチームの一員となるために必要な資質とは何ですか?
ここで活躍できる人、成長できる人とは、どのような人材なのでしょう?
【松江】私自身は「経営の中枢に携わりたい、その変革に貢献したい」の一心でDTCに従事してきた人間ですが、同じようにクライアント企業が厳しい時代を勝ち抜くための変革に寄与したい、という強い意欲と志を持っていること。これが第一の条件ですね。さきほども話したようにM&Aのディール実行そのものをフォローしつつM&A後の経営の拡大や建て直し、いわば「成功」に向かって戦略を実行するための生々しい問題と向き合うのが我々です。お客様にしてみれば、M&Aによるイノベーションやシナジーを生み出す試みをここからスタートすることになります。
ですから、こちら側も新たな価値を生みだそうというアントレプレナーシップを持ってクライアントと向き合うことを望んでいる人たちに参加して欲しい。局面ごとに柔軟に判断をして、課題を解決する力は不可欠ですし、人と人、組織と組織をつなぐ役割を果たすには理屈だけでなく、感性を大いに働かせる必要もある。バランス感覚を持った交渉力、コミュニケーションスキルなどなども必要。以上の諸々を初めからすべて備えている人など、なかなかいないでしょうけれども、今までの実務経験で養ったものの中で適用できるものをこちらでも見出したい。ですから、「まずは変革の志を」そして「アントレプレナーシップを」と思うのです。
今の松江さんのチームには、どんなバックボーンのかたがいるのでしょう?
【松江】さまざまなバックボーンの持ち主が揃っていますが、傾向的なことをいうと、「一度は戦略系ファームなどでコンサルティングを経験して、その後、事業会社などでワンクッションをおいてからDTCに来た」という人間が多いですね。ワンクッションというのはたとえば事業会社での経験をした後、DTCへ、というようなパターンです。戦略脳だけでなく、感性も、泥臭い面も、という我々のチームだからこその傾向かもしれません。ただ、別段そうしたバックボーンにこだわって採用をしてきたわけではありませんけれど。
意欲の部分以外で、たとえばどんな人材が活躍するのだとお考えですか?
【松江】そうですね。まずは戦略的思考ができること、そのうえで海外系の実務経験を持った人材などは興味深いですね。それはコンサル出身者だけでなく、事業会社でも属性は問いません。たとえば事業会社でも海外での駐在経験を持っていて、右も左も分からない現地で、自分の頭で立て直し策を考えながら現地人とつながりながら成果を出してきた人なんて向いていると思います。あるいは、M&Aやアライアンス案件を任されて、その交渉の生々しい局面を最後まで乗り切った経験者というのもいいですね。現在いるメンバーにもそういう人間がいます。1人でブラジルに飛んで、半年間現地人にまみれて更にタフな経験を積んだ者もいます。大変だったとは思いますが(笑)、ある意味、そういうグローバルな機会を成長チャンスだと捉えてくれる人がここでは活躍するんです。
とにかく全員に共通しているのは、「新しいものを生み出していこう」という情熱。メンバーは皆案件で多忙をきわめていますが、毎週自発的に6weeks Innovationという会議を定期的に実施しています。簡単にいうと、それぞれマネジャークラスが順番にリーダーを務め、6週間で従来にはない新たなコンセプトやコンテンツを具体的提案として生み出すことに挑戦しています。そしてその成果を、対外セミナー等を開いてクライアント企業向けに発信するという活動です。当チームのメンバー全員が互いのノウハウを共有し、更に結束して新しい価値を生み出してゆこうとする、いわば"集団知"が我々チームの最大の強みです。そういう活動に意欲ある方も是非歓迎しています。
では最後に、今後の展望について教えてください。
【松江】とにかくここへ来て私たちに対する期待が高まっています。M&Aの真価を問われる局面であるポストM&Aの段階で、成立から「成功」に導くための他に真似のできない新たな価値の提供を行うために日々我々も挑戦し続けています。クライアント満足を得るには、戦略思考、グローバル経験、問題解決・交渉力、人間的魅力やタフさ、など我々自身の成長余地は多岐にわたって常に存在しますが、基本的に前向きで高い意欲と志、今までの経験で養った上記の幾つかの素養を持っている方であれば、DTCで経験を重ねる中でそれを更に自由に伸ばしていくことが可能です。M&Aに関わるノウハウや知見は、他のファームやファンドなどでも蓄積が進んできましたが、単にディールで終わらない価値を追求する本質的に他とは違う集団がここにあるのだということを理解して、大いなる好奇心をもって扉を開いてほしいと願っています。
パートナー プロセスユニット エナジー&リソーシズユニット リーダー 石黒泰時氏インタビューへ続く
プロフィール
松江 英夫 氏
パートナー
ポストM&A ユニット リーダー
DTC入社後、大規模システム構築やBPR、戦略・マーケ、組織人事領域など幅広い領域のPJを経験し、経営統合やM&Aに関わる知見を雑誌等で執筆、独自見解の発信を開始。2000年前後の業界再編、企業再生ムーブメントや’00年代後半からのM&Aニーズも重なってその名を高めていくなか、企業グループ再編やM&A含みの経営改革案件などを次々に担当。現在はPMIをコアとするチームのリーダーを務める。主な著書に『ポストM&A 成功戦略』『経営統合戦略マネジメント』等がある。
石黒 泰時 氏
パートナー
プロセスユニット エナジー&リソーシズユニット リーダー
篠原 学 氏
パートナー
Pre M&A ユニットリーダー
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