新卒でリクルートに入社されたとのことですが、どのような気持ちから同社への入社を決めたのでしょうか？
【河本】新卒の時はやりたいことが色々あってひとつに絞れず、正直なところ、はじめから「どうしてもリクルートに入りたい」というほどの強い気持ちは持っていませんでした。
ある意味軽い気持ちで面接に行ったのですが、志望動機を一切聞かず「人生史」を聞き、「あなたの根本の価値観は実はこうなのでは？」と問いかける面接スタイルにとても面食らったんです。
私がどのように指摘されたかは恥ずかしいので伏せさせていただきますが、その指摘の鋭さにとても感銘を受けたことと、「やりたいことがひとつに絞れないなら、無理に絞るよりそれが見つかった時に実現できるだけの実力を身に付けておくことが大切では？」という面接官の言葉に励まされ、ファーストキャリアとしてリクルートを選択しました。
人事部で新卒採用のお仕事をされていたそうですが、具体的にどのような役割を担っていたんでしょう？
【河本】広く知れ渡っていることかと思いますが、リクルートの強みは圧倒的な営業力にあります。もちろん斬新な事業やサービスを生み出す力も強みですが、何よりそのサービスの価値を多くの人に伝え、こちらに振り向かせる力がリクルートには備わっていました。
そういった会社に入ったにもかかわらず人事部にいた、と聞けば、もしかしたら「残念だね」と思う人もいるでしょうが、そんなことはありませんでした。新卒採用担当となった私のミッションは、「とても優秀で将来性はあるが、リクルートに関心を持っていない学生」を見つけ、彼らをリクルートに「振り向かせる」ことにありました。
つまり、人事担当でありながら、担っていた仕事はリクルート流の営業。ここで得た「人の気持ちをしっかり見つめ、寄り添う姿勢」や「自らの主張を伝えて振り向いてもらうコミュニケーションスキル」などは、ヘイ コンサルティング グループ（以下、Hay）へ来てからも大いに役立っていると思います。
こうしてお話を聞くと前職でも大いに満足できる仕事をされていたようですが、なぜHayへの転職を決意したのでしょうか？
【河本】たしかに充実していました。しかし、人事での仕事が面白くなればなるほど、「もっと広く深く組織や人材のあり方について学び、企業の変革や人の成長に貢献できる存在になりたい」という望みが膨らんでいきました。
人事という領域でより普遍的な力を伸ばしたい－新卒時とは打って変わって明確な軸を持って転職活動を進める中で、Hayの存在を発見するのに時間はかかりませんでした。
ここでなら、単に「人の心を動かす」だけでなく、組織や経営の変革に直結するようなコンサルティングを経験できる。超一流の経営者をはじめ様々な人たちと向き合い、なおかつグローバルな経験も手に入れていける。そうしたいくつもの魅力を感じていく過程で、面接で滝波と出会い、その考え方や人柄に強く惹かれたこともあって転職を決意しました。
プリンシパルの柴田さんはインタビューで、「若い人材にもどんどんチャンスを与え、任せていくのがHay」だとおっしゃっていました。河本さんの場合はどうだったんでしょう？
【河本】柴田が言った通り、私の場合も入社早々に大きなプロジェクトに参画しました。日本の大手エネルギー企業の案件で、海外オイルメジャーの組織や人事の知見について調査分析を進め、その成果を伝えていく、という役割を任されたんです。とカッコよく言ってみたものの、この役割をしっかり全う出来たとは言い難く、大いに反省することになりました（苦笑）。
しかし今振り返ってみれば、このプロジェクトを通じて、「どんなリクエストに対しても貪欲に結果を求め、そのために前向きに行動を起こしていく」というモチベーションが醸成されたように思います。そして、このモチベーションはもちろん今でも持ち続けています。
河本さんのように事業会社の人事部門経験者はむしろ少数派で、多くのメンバーは前職などでコンサルティングファームを経験した方だと聞いています。これについて、河本さんはどう捉えていますか？
【河本】たしかに、複雑多様な要素を論理的に整理して問題点を的確に抽出し、きちんと伝えていく、平たく言うと「読み・書き・そろばん」の力は、人事部門経験者よりもコンサルティングファーム出身者に一日の長があると思います。
私の場合、リクルートでもある程度は鍛えられましたが、やはり不足している部分が多々あった。だからこそ最初のプロジェクトで挫折も経験したのですが、ベースとなる思考力と成長を願う情熱さえ持っていれば、Hayでの仕事の中でどんどんレベルアップしていくことが出来ます。
ですから、前職が何だったのか、という部分を過剰に意識して気に病むよりも、成長したいと本気で思うかどうかの方が重要ではないでしょうか。また、Hayは結果を問われる厳しい環境であると同時に、長い時間軸でメンバーを育てる価値観も浸透していますので、この点も前職とのギャップを埋める重要なファクターであると言えます。
一方、人事部門経験者の強みとなりうるのは、人事担当者や施策を展開していく先の社員の気持ちが分かる、いわば「想像する」力ではないでしょうか。
一般的なコンサルティングファームの社員は、評価軸が「考えることが出来るか、出来ないか」一本の、ある意味単能工的でピープル・マネジメントがあまり必要でない分かりやすい風土の下で働いていると思いますが、事業会社は必ずしもそうではない。様々な能力・価値観を持つ人で構成されていて、人事制度＝会社からのメッセージに敏感に反応して行動が変わるため、人事担当者の気苦労も絶えません。
そのような環境の中で、お客様がHayに求めている経営戦略を実現するための組織変革や制度改革、人材育成に対して結果で応えていくためには、自分たちが出す解決策でどう人が動いてくれるか、マネジメントがある意味楽になるか、を常に想像していくことが不可欠です。組織や人といった生身の生き物を動かす上で大切なスタンスは、人事部門経験者だからこそ持っているものだと言えるでしょう。
長い時間軸のもとで成長できるのがHayの特徴の1つだ、というお話は河本さんだけでなく、柴田さんも口にされていました。
【河本】私自身は戦略系ファームにいた経験を持っているわけではないので、あくまでも周囲の方からよく聞く話に基づくことではありますが、経営戦略策定をメインとするコンサルタントの場合、インパクトのある解を短期間で導き出す、きわめてロジカルで瞬発力勝負の様相が強くなるように思います。
一方、先ほども言いましたように、Hayが最終的に担うのは、組織や人という「生き物」を動かし、成果を出していくことです。長期にわたるプロジェクトも数多くあり、瞬発力に加えて持久力、ロジックを超えた人間に対する深い理解が試される場面も多くなる。そのような力を持つコンサルタントへと成長していくには、やはり一定の時間がかかるはず。
それを熟知しているからこそ、Hayはメンバーの成長において急ぎ過ぎることがないのだと思っています。もちろん、厳しさが常に存在することは忘れてはいけませんけれど。
では、これから参画してHayで活躍したいと考える人にとって、何がまず重要なのか、河本さん流の答えを教えていただけますか？
【河本】コンサルタントにとって論理的思考力が何より大切であることは周知の事実かと思いますので、ここでは「若手」の視点から私の考えを申し上げます。
重要なのは、ずばり「チャーム」です。自分より10歳も20歳も年上のお客様に対して、若造が一般解的な正論を振りかざしても、普通良い気分はされません。
ですから事前にしっかり準備をして、「ここまで調べてきて、ここまでは言えますが、実はこの部分で御社にフィットするか迷っています」と正直に申し上げた上で、お客様の本当のお悩みをお聞きする必要がある。そこで「こいつになら話をしてもいいだろう」と思っていただける「チャーム」が、コンサルタントには不可欠だと思います。
社内でも同様です。Hayには圧倒的な知見を持つ専門家が多数います。彼らに「こいつには成長してもらいたい」と思ってもらって、知見を貪欲に吸収していく。「こいつに任せてみよう」と思ってもらえて、より大きなチャンスを勝ち取っていく。自分の「チャーム」をフル活用し、いかに多様な経験を積むことができるか、これが自分自身の成長の鍵を握っている－私は常にそう考えています。
プロフィール
柴田 彰 氏
プリンシパル Reward（人事制度）プラクティスリーダー
慶應義塾大学文学部卒業後、プライスウォーターハウスクーパース入社。コンサルタントとして多様な問題解決に携わった後、戦略コミュニケーション・コンサルテイングで世界をリードするフライシュマン・ヒラードに入社。両ファームでの経験を通し「人と組織」の重要性を痛感したことから、2005年にヘイ コンサルティング グループへの参画を決意した。現在は“人材マネジメントのグローバル化”、“事業構造改革の実現に向けた人事基盤の再構築”を主要テーマとしてコンサルティング活動を行う。人事制度関連プラクティスのリーダーを務めている。
河本 裕也 氏
コンサルタント
東京大学教育学部卒業後、株式会社リクルートに入社。人事部にて新卒採用業務に従事した後、より「人」の成長・変革に貢献できる力を獲得すべく、ヘイ コンサルティング グループへ転職。入社後は、経営戦略実現のための組織設計やグローバル人事制度の構築、リーダーシップ開発などのテーマで、多数のプロジェクトに携わっている。
この企業へのインタビュー一覧
- [コンサルティングファーム パートナーインタビュー]
- 株式会社ヘイ コンサルティング グループ ディレクター 滝波 純一 氏
（2017.7） - ［注目ファームの現職コンサルタントインタビュー］
- コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社 プリンシパル 酒井 博史 氏
（2017.7）
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- アリックスパートナーズ | Partner & Managing Director 服部 浄児 氏 / Director 小川 竜平 氏 / Senior Vice President 今井 充 氏（2024.4）
- フロンティア･マネジメント株式会社 | マネージング・ディレクター 経営執行支援部門 副部門長 兼 クロスボーダー経営執行支援部長 舟橋 宏和 氏 / シニア・ディレクター 経営執行支援部門 大西 恭平 氏 / ディレクター 経営執行支援部門 勝田 菜菜子 氏（2023.11）
- A.T. カーニー株式会社 | シニア パートナー 阿部 暢仁・マッスィミリアーノ 氏 / マネージャー 佐藤 真人 氏（2022.6）
- A.T. カーニー株式会社 | シニアパートナー 針ヶ谷 武文氏 / マネージャー 梅本 周平氏 / マネージャー 柳田 諒 氏（2022.2）
- 株式会社リヴァンプ | 取締役 執行役員CFO 大山 拓也 氏 / 業務コンサルティングチーム シニア・マネージャー 徳田 浩明 氏 / 経営支援チーム マネージャー 阿部 浩平 氏（2022.2）
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