ソーシャルゲーム会社からアクセンチュアへ。顧客の幅広さと、ビジネス視点を持ったデザインチームの姿勢に惹かれた
会田さんのご経歴をお聞かせください
【会田】日本でコンピュータサイエンスを学んだ後、以前からずっと美術系に興味があったこともあり、イギリスの美大に留学しました。グラフィックデザインを専攻し、卒業後、2年間の就労ビザが取れたので、デザイナーやアーティストのウェブサイトやデジタル媒体などをつくる、フリーランスのデザイナー生活を経て帰国しました。その後、前職のソーシャルゲーム会社に就職しました。
その会社に就職した理由は、ソーシャルゲームが大好きということではなくて、シンプルに、ウェブやアプリのサービスで勢いがある会社で経験を積むのは面白いなと思ったからです。実際に、ゲーム部門の担当ではなくて、ゲームとユーザーをつなぐプラットフォームのUIデザインを担当していました。
リニューアルのタイミングになれば、割と大きいデザインの改修は担当するのですが、基本は細々としたサービスの運用・改修が基本。2年近く担当していると、この一定のサイクルを回す形になってくるので、別の経験をしてみたいと思うようになって、縁があったアクセンチュアに転職しました。
なぜ、アクセンチュアだったのでしょうか
きっかけは自分の地元である福島県の会津若松にアクセンチュアが拠点を出していると聞いたこと。珍しい会社だなと思いました。それから僕は飽きっぽい性格でもあるので、ひとつのことを繰り返しやるのではなくて、クライアントワークを通じてお客様の業種の幅広さと、色んなことに挑戦できそうなところがいいなと思ったことです。当時は明確にこんなことをしてみたいというものはなかったのですが、金融から製造から、いろんなお客様を担当してみたいということと、情報をしっかり整理してつくっていくような思考は、もともと理系出身である自分にもあったので、活かせるかなと思いました。
美大を出ているということでよく期待されるのですが、「アーティスティックに」「自由に」という感じは実はあまり得意ではなく(笑)、コンサルティングがベースにある会社は自分にとって居心地が良さそうだなと感じたのです。実際に面接でオフィスを訪れた時の雰囲気や、面接をしていただいた皆さんに対しても、一緒に働いてみたいなというモチベーションがわきました。デザインチームでありながらも、ビジネス目線でロジカルさがある方たちと働くことは面白そうだと思いました。
これまで経験したことのない『自分で行き先から決める仕事』への戸惑いと、その先にあった喜び
実際に入社されて、想像と違ったなどギャップを感じられたことはありますか
入社当初は、自分のスキルが足りない部分があって、ついていけなかったですね。特に、2つ目のプロジェクトで苦労しました。要件定義からスタートするプロジェクトだったのですが、デザイナーとして「こうあるべきだ」「この方がいい」といった、プロジェクトメンバーへの意見の発信が弱かったと思います。意思決定や指示を待ってしまうところがあって、メンバーにも迷惑をかけてしまいました。
前職では、ある程度サービスの内容やアウトプットの方向性が決まった上で、それをどうデザイナーという立場から深めるかを求められていました。ただ、アクセンチュアはコンサルティング会社で、コンサルタントとデザイナーの両方の視点を併せ持ち、そもそも「どの方向に進むのか」から決めることが求められます。それに、プロジェクトを確実に進行していくためにも、他の人が何をやっているのかも把握しておく必要がある。その経験が全くなくて、戸惑いましたね。
プロジェクトに対して、自分の意見を発信し周囲の状況把握もできるようになる。そう簡単なことでもないと推測しますが、ターニングポイントはありましたか
今となればですが、当時は実はコンサルの人に対するコンプレックスがあったかもしれません。わからないことがあっても、「ここでわからないと言ったら、バカだと思われるかもしれない」とか、瑣末なことを思っていました。でも、自分がわからないっていうことは、他にもわからない人がいるかもしれない。「わかりません」って言ってしまえ!と。そんな自分をさらけ出すことができてから、楽になりました。
もちろん、はじめは自分にも殻があってすぐにそうはできなかったのですが、先ほどお話しした入社して2つ目のプロジェクトで、「わからない」と言わざるを得ない状況になったのです。言わなければ、次に自分が何のアクションをとればいいかわからない。そうするとデザインが止まってしまいますし、プロジェクト自体も進捗しません。「今言わなければ、もっと悪い事態を引き起こすぞ」と思ったことがきっかけでした。
もしかしたら今後入社される方も同じような気持ちを感じるかもしれませんが、この切り替えは早くできた方がいいに決まっています。自分に何ができて何ができないのかを、プロジェクトメンバーに知ってもらわないと、プロジェクト自体に影響が出てしまう。万が一苦手だったり、経験が足りなかったりするところがあるならば、そこにはサポートで誰かに入ってもらうという判断もできるかもしれませんから。
ちなみに、入社当初できなかったことについてお話し下さいましたが、その頃から自信を持って価値提供できたことは何ですか
UIデザインです。今でこそUXデザイナーと名乗っていますが、前職で経験してきたことはUIをしっかりつくることだったので、そこだけは絶対にやるぞと思っていました。できないことを目の当たりにする毎日でしたが、UIはつくれるぞという自信が、自分を支えていたようにも思います。
『自分の領域』なんてない。能動的に動きコミュニケーションすることでしか生み出せない価値がある
仕事に対してどういうスタンスがあると望ましいかおうかがいしましたが、人物面についてもお聞かせください。どんな方であればUX STUDIOで活躍できますか
コミュニケーションができる人でしょうか。話すのが上手い方がいいということではなくて、話ができる。つまり、自分のできること・できないこと、自分の考えをきちんと表明できる人という意味です。
仕事の仕方としては、コンサルタントやシステムのメンバーなど、デザインとは異なる役割の人たちの中に、プロジェクトベースでアサインされるイメージなので、そういった環境の中でも一人で能動的に動いていけるかも大事です。正直なところ、デザインのスキルはベースとしてもちろん必要ですが、一人で動けるかどうかが大事になってきます。
実際にアクセンチュアで働かれて4年半とのことですが、UX STUDIOだからできる仕事があるとしたら何でしょうか
コンサルティングのメンバーやシステムのメンバーをはじめ僕たちデザイナーもそうですが、多くの役割の人がかかわるプロジェクトでありながら、ある種自分の領域が決められていないので、自由に意見を言いやすいことでしょうか。
デザイナーであっても、ビジネス的なところにもシステム的なところにも口出ししてもいい。サービスやプロダクトが良くなるのであれば、様々な意見を言うことができる、オープンな環境は本当に素晴らしいと思っています。
ビジネスサイドとデザインサイド、双方に意見が言い合える環境は、もともとあったものですか
そうではなくて、変化してきたものだと思いますね。例えば今では、自分が以前にかかわっていたプロジェクトのコンサルティングのメンバーから、「デザインで困っているので助けてくれませんか」という相談が入ってきたりもします。それはやはり、デザインが大事だと思ってくれている証。
これは一例ですが、色々なプロジェクトにかかわる度に、「デザインにこだわりたい」「UXは大事だ」と、プロジェクトメンバーが思っていることが伝わってくるので、デザイナーとしてはとても仕事がしやすくてありがたいです。
アクセンチュアだから身についた経験値はありますか
しっかり考えてビジュアルに落として、デザインをロジカルに説明できるようになりました。デザイナーの中には、綺麗なものをつくりたいとか、人の目を引くものをつくりたいという人もいるかもしれません。ですが、自分自身は以前よりもそういう形ばかりにはこだわらなくなってきたような気がします。
UXデザイナーなので、「いかに心地よく、楽しんで使ってもらえるか」が一番大事。そういう形には見えない、ユーザーの感覚を大切にするようになりました。自分自身のデザイナーとしての次のフェーズに移っているという実感があります。
最後に改めて、UX STUDIOの魅力を聞かせてください
UX STUDIOにとどまらずアクセンチュアでの仕事は、自分の担当範囲が絶対的に決められているわけではありません。もちろん、期待されていることはありますが、プロジェクトにアサインされた段階で、「自分はこうやりたい」という意見が尊重されるし求められます。だからこそ、UXデザイナーという役割ではありながら、やってみたいと思うことがあれば何でも挑戦できること。それが一番の魅力だと思います。
プロフィール
会田 光浩 氏
UX STUDIO マネジャー UXデザイナー
大学卒業後、渡英。グラフィックデザインを学んだ後、フリーランスのデザイナーに。2年間イギリスで働いた後、帰国し、ソーシャルゲーム会社へ。その後、アクセンチュアに転職。
番所 浩平 氏
UX STUDIO統括シニア・マネージャー
前職ではエンターテインメント企業向けのコンサルティングに従事した後、2012年よりモバイルアプリのサービス戦略におけるエキスパートとしてアクセンチュアへ入社。2014年にUX STUDIOを立ち上げ、同チームを統括している。
デジタルコンサルファームインタビューの最新記事
- PwCコンサルティング合同会社 Technology Laboratory | 所長・上席執行役員 パートナー 三治 信一朗 氏 / 執行役員 パートナー 岩花 修平 氏(2024.3)
- BCG Digital Ventures | Lead Product Manager 伊藤 嘉英 氏 / Lead Product Manager 丸山 由莉 氏(2021.8)
- NTTコミュニケーションズ 「KOEL」 | デザイン部門「KOEL」クリエイティブ・アドバイザー 石川 俊祐 氏/デザイン部門「KOEL」UXデザイナー 金 智之 氏/デザイン部門「KOEL」 Head of Experience Design 田中 友美子 氏(2021.4)
- NTTデータ Tangity | Tangity ADP Service Designer 村岸 史隆 氏(2020.11)
- BCG Digital Ventures | Engineering Director 山家 匠 氏(2020.6)