どんな産業も避けては通れないのが物流の領域
ブラックボックスの中身を変革するのは容易ではない
私は新卒で入社した三井倉庫を皮切りに、約半世紀のキャリアのすべてを物流の世界で過ごしてきました。
我々ロジスティクスに携わる者は共通して、「どんな物であろうとエンドユーザーの手元に届いて初めて商品となり、ビジネスが完結するのだ」という共通の誇りを持って働いています。言い換えれば、ロジスティクスの善し悪しが、そのビジネスの評価に大きく影響する、という重い責任を背負っています。
最近はEコマース市場の沸騰などによって、物流界に世間の注目が集まっていますが、誤解を恐れず言わせてもらえば、現在、物流が多くの企業活動のボトルネックになっている理由の一つは物流業界にはもともと請負体質が根深く残り、荷主と物流業者との関係が、根拠を伴わない単純な価格低減ばかりに力が注がれた結果、各企業での根本的な物流業務改革による物流コスト削減が図られてこなかったということがあると思います。
そうした歪みが製造や流通界の多くの企業の経営の効率化に影響を及ぼしているわけです。こうした実情と向き合いながら、企業が経営課題を達成しようというのなら、理屈や理論だけでは無理。物流のリアルな仕組みを知る人間がこの課題の解決に関わっていく必要があります。
私は、この問題山積の領域で生きてきた当事者ですから「経営の仕事をしていた」という以上に、現場の問題解決という仕事が大好きなんです。70歳を超えて第一線からは退いたものの、自分が手にしてきた経験値や知恵を、自社だけでなく広いシーンで役立てていきたい。そう願っていたんです。旧知の深沢さんから「アドバイザーをやってください」と声をかけてもらった時、喜んで引き受けたのも、そういう気持ちがあったからでした。
クライアントの立場からアリックスを見ていたからこそ
「ここならば変えられる」と確信した
私が三井倉庫でCFOやCOOをしていた2000年代後半、物流界にもM&Aの波が来ていました。買収する側の当事者として、いくつものコンサルティング企業にお世話になったわけですが、その中にアリックスもあり、深沢さんとのご縁も生まれたわけです。私は言ってみれば大金をはたいてコンサルタントを雇っている側ですから、その仕事ぶりには厳しい目を向けていました。「中には結局はアイデアをレポートするだけか」などと落胆することも少なくなかったのですが、アリックスは違っていました。
突然オフィスにやってきて「机をお借りします」と言ったかと思うと、早くも手足を動かして現場の仕事に入り込んでいくのがアリックス。ロジスティクス業界は特殊性や独自性が強いため、物流の専門家ではない人たちがM&AのソーシングやPMIを担うのは容易ではないはずなのですが、実行局面にぐいぐい入っていきました。「きっとここのコンサルタントはどこよりも成長が速いだろう」と感じました。
そんな経験をしてきた私ですから、深沢さんに「あなたが持っているのは、どこを探しても見つからない貴重なもの。だから、どうか力を貸してほしい」と声をかけてもらった時にも二つ返事で引き受けたんです。シニア アドバイザーになってからは、文字通り現場のコンサルタントからの相談に応えたりもしていますが、継続中のプロジェクトにメンバーの一人として参画してもいます。
若いコンサルタントと一緒に、クライアントが課題を抱えている物流の最前線に赴いて、そこで私の経験に基づく考えを伝えたりするのですが、目を輝かせながら聞いて吸収してくれる。こんなに嬉しいことはありません。まだまだ自分がこの国の物流界の問題解決に貢献できる、という喜びだけでなく、自分が培ってきた経営者の視点、判断軸を、身をもって伝えられる喜びがあります。経営人材を志すアリックスの彼らなら、必ず日本を良くしてくれる。そう信じているので、これからもどんどん輪の中に入り込んでいこうと思っています。
アドバイザープロフィール
帰山 二郎 氏
シニア アドバイザー
1946年生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三井倉庫に入社。シンガポール現地法人代表などを歴任後、2002年に代表取締役常務取締役に就任。2008年からはCFO、副社長兼COOなどを務めた。2012年、大手家電物流企業のM&Aを担って三井倉庫ロジスティクスの設立を自ら牽引し、同社の会長兼CEOに就任した。2016年に三井倉庫ロジスティクスの相談役となったのを機に、アリックスパートナーズのシニア アドバイザーとしての活動を本格化。50年の長きに渡りロジスティクス領域に携わり続けたエキスパートとして、コンサルタントからの多様な相談に呼応するだけでなく、プロジェクトの現場にも積極的に参画し、培った知見を活かしている。
高家 正行 氏
シニア アドバイザー
1963年生まれ。慶應義塾大学経済部を卒業後、三井銀行(現 三井住友銀行)に入行。本部勤務、組合専従の書記長などを経た後、1998年にA.T.カーニーへ転じ、主に金融機関、総合商社、電機業界等の全社戦略策定、M&A、事業ポートフォリオ戦略等を担った。2004年ミスミ(現ミスミグループ本社)に経営企画室長として入社し、2008年10月リーマンショックのタイミングで代表取締役社長に就任。その後、2015年の退任まで世界不況からの脱却とその後の成長を経営トップとしてリードした。現在は、ホームセンターのリーディング企業であるカインズの取締役副社長に就き、プロ経営者の視点で同社の業態変革に携わりながら、アリックスパートナーズのシニア アドバイザーとしても活動。社内で催される勉強会などを通じ、経営者としての経験と知見を役立てている。
プロフィール
深沢 政彦 氏
マネージング ディレクター アジア共同代表 兼 日本共同代表
2012年にアリックスパートナーズに参画し日本共同代表就任。その後、アジア共同代表に就任。アジア、ヨーロッパ、北米のさまざまな企業に対して経営/組織戦略、事業再生、事業ポートフォリオのリストラクチャリング、買収・合併後の統合、など広範囲に亘る分野でプロジェクトに従事。一橋大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学スローンスクール卒(MBA)。訳書に『明日の世界を読む力』(東洋経済新報社 2005年刊)があります。
野田 努 氏
マネージング ディレクター 日本共同代表
2007年にアリックスパートナーズに参画後、TMT(テクノロジー、メディア、通信)を中心に、業績不振の国内大手企業のV字回復や、中国の生産拠点の再建、大手通信企業の海外買収、など数多くのプロジェクトを指揮。慶応義塾大学経済学部卒業。ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。著書に『プロフェッショナル・リーダー~難局を突破する9つのスキル』(ダイヤモンド社)、『企業再生プロフェッショナル』(共著 日本経済新聞出版社)。
この企業へのインタビュー一覧
- [コンサルティングファーム パートナーインタビュー]
- アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシーマネージング ディレクター 日本共同代表 深沢 政彦 氏/野田 努 氏
(2013.7)
コンサルティングファーム パートナーインタビューの最新記事
- マクサス・コーポレートアドバイザリー株式会社 | 代表取締役社長 森山 保 氏(2023.3)
- マーサージャパン株式会社 | 代表取締役社長 CEO 草鹿 泰士 氏(2022.6)
- シグマクシス・グループ | 株式会社シグマクシス・インベストメント 代表取締役社長 柴沼 俊一 氏(2022.1)
- キンセントリック ジャパン合同会社 | 日本代表、パートナー 松崎 肇 氏 / アソシエイトパートナー 蓜島 資幸 氏(2021.5)
- デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社(モニター デロイト) | デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/執行役員 モニター デロイト ジャパン リーダー 藤井 剛 氏 / デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/執行役員 モニター デロイト M&A/Reorganization責任者 神山 友佑 氏(2020.12)