経営者として1つのゴールに到達し、次のキャリアに向けた充電をしていた。
そんな中「アリックスならば話は別」と考えて参画
私は、社会人になって暫くして「プロ経営者」になりたいという強い意思を持ち始めました。そこで「もっと第一線に出て経営に携わる修行がしたい」と考え、メガバンクからA.T.カーニーに転職しました。5年間修行を詰んだ後入社したミスミで、自分が目標としていた「経営者」となりました。約5年間の経営トップ時代をこの短い誌面で語るのは難しいですが、経営者として1つのゴールへ到達したと感じています。
退任して、次の挑戦に向けて充電していたタイミングで深沢から声をかけられました。A.T.カーニー時代からの仲なので、ざっくばらんな会話をしました。実はもう少し充電していたかったのですが、「決して忙しくさせないから」と頼まれ、シニア アドバイザーになることを承諾したんです。
ただし「昔の仲間からの頼みだから引き受けた」のではありません。深沢が既存型のいわゆる戦略ファームにいて、「うちに来ないか」と言ってきたのなら、お断りをしていました。アリックスパートナーズだから引き受けたんです。
2人のトップのことは昔から知っていましたが、そういうことは抜きにしてアリックスがいわゆるコンサルやPEとは一線を画していることに強い関心を持っていました。ファンドならば、資本を投じて企業を再生させます。コンサルならば、経営のフレームワークを用いて戦略を構築し、企業を変革に導いていきます。どちらも、時にクライアントの現場に人を送り込み支援していく、という機能を持っていますが、あくまで支援する立場。アリックスは一定局面において、まさに"経営をする"当事者となり組織のトップやラインに入り込み変革を実行します。コンサルも経営者も両方経験した私にとって、魅力を感じさせてくれるのはアリックスのこの立ち位置です。私自身が5年間企業のトップに就いていた経験が、アリックスならば役に立てると思えたんです。
その後、私はアリックスとは関係なく、ホームセンターのリーディングカンパニーであるカインズという会社の副社長に就任しました。小売業は私にとって未知の領域ですが、「プロ経営者」として培ってきたものを活かし、創業家の二代目社長とともに企業変革に取り組んでいます。
大本営で参謀を務めるのか、それとも実戦に足を踏み入れたいのか?
経営にはその両者が必要だが、アリックスならば可能ではないか
転職をしてからだいぶ経ちますが、今でもA.T.カーニーの若手コンサルタントたちと話をする機会があると、もっぱら「コンサル出身者がどうすれば経営者として成功するか」について聞かれます。私の返事は決まっていて、「秘策なんてない」です。コンサルタントを経験してから事業会社にキャリアを転じるケースは昔から多いわけですが、成功する人も、なかなかうまくいかずにもがく人もいる。必ず成功する秘策などあるはずないんです。ただ、こうも答えます。「もし将来、経営者になろうと思うのなら、アクションは早めに起こすほうがいい」と。
経営を戦場に例えると、大本営に陣取り経営のフレームワークを駆使し、戦略参謀役を務めることに喜びを感じる者は、コンサルタントの道を究めていけば良い。けれども、実際の戦場では論理的な作戦通りにことは進みません。戦いに"勝つ"ためには、優れた戦略を組み立てることと、その戦略を実際に戦場で実践すること、この2つが両輪です。経営も一緒です。戦場は生身の人間たちがそれぞれの判断で弾を撃ち、時に魑魅魍魎とした世界もあって、背後から弾が飛んできたりもします。経営者になりたいのならば、大本営で戦略を立てるのと合わせて、こんなグチャグチャな戦場に足を踏み入れ部隊を動かし、自らも弾を撃つことが必要です。従って「動くなら早いほうがいい」と答えているのです。
私が認識するアリックスのコンサルやファンドとの違いは、まさにこの「一歩踏み出して戦場に分け入っていく」ことを行っているかどうかではないかと思います。5年間戦場にいた私が何かを伝えることができるとすればアリックスしかない。そう考えてアドバイザーになりました。
現在はカインズの副社長に就いていますから、アリックスでは勉強会などを通じて、コンサルタントの皆とやりとりをしています。もしも私に時間と機会があったなら、「とびきり緊急性が高く難しい案件をやらせてください」と言うでしょうね。政治と同様、経営にも「平時」と「有時」があって、それぞれにやるべきことは異なるのですが、アリックスが向き合う案件の多くは有時です。そういう局面でこそ役に立てるだろうし、自らを磨くこともできる。ここには、私と同じような発想の人がそろっていますから、今後もアドバイザーとして持っているものを伝えていこうと思っています。
アドバイザープロフィール
高家 正行 氏
シニア アドバイザー
1963年生まれ。慶應義塾大学経済部を卒業後、三井銀行(現 三井住友銀行)に入行。本部勤務、組合専従の書記長などを経た後、1998年にA.T.カーニーへ転じ、主に金融機関、総合商社、電機業界等の全社戦略策定、M&A、事業ポートフォリオ戦略等を担った。2004年ミスミ(現ミスミグループ本社)に経営企画室長として入社し、2008年10月リーマンショックのタイミングで代表取締役社長に就任。その後、2015年の退任まで世界不況からの脱却とその後の成長を経営トップとしてリードした。現在は、ホームセンターのリーディング企業であるカインズの取締役副社長に就き、プロ経営者の視点で同社の業態変革に携わりながら、アリックスパートナーズのシニア アドバイザーとしても活動。社内で催される勉強会などを通じ、経営者としての経験と知見を役立てている。
帰山 二郎 氏
シニア アドバイザー
1946年生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三井倉庫に入社。シンガポール現地法人代表などを歴任後、2002年に代表取締役常務取締役に就任。2008年からはCFO、副社長兼COOなどを務めた。2012年、大手家電物流企業のM&Aを担って三井倉庫ロジスティクスの設立を自ら牽引し、同社の会長兼CEOに就任した。2016年に三井倉庫ロジスティクスの相談役となったのを機に、アリックスパートナーズのシニア アドバイザーとしての活動を本格化。50年の長きに渡りロジスティクス領域に携わり続けたエキスパートとして、コンサルタントからの多様な相談に呼応するだけでなく、プロジェクトの現場にも積極的に参画し、培った知見を活かしている。
プロフィール
深沢 政彦 氏
マネージング ディレクター アジア共同代表 兼 日本共同代表
2012年にアリックスパートナーズに参画し日本共同代表就任。その後、アジア共同代表に就任。アジア、ヨーロッパ、北米のさまざまな企業に対して経営/組織戦略、事業再生、事業ポートフォリオのリストラクチャリング、買収・合併後の統合、など広範囲に亘る分野でプロジェクトに従事。一橋大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学スローンスクール卒(MBA)。訳書に『明日の世界を読む力』(東洋経済新報社 2005年刊)があります。
野田 努 氏
マネージング ディレクター 日本共同代表
2007年にアリックスパートナーズに参画後、TMT(テクノロジー、メディア、通信)を中心に、業績不振の国内大手企業のV字回復や、中国の生産拠点の再建、大手通信企業の海外買収、など数多くのプロジェクトを指揮。慶応義塾大学経済学部卒業。ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。著書に『プロフェッショナル・リーダー~難局を突破する9つのスキル』(ダイヤモンド社)、『企業再生プロフェッショナル』(共著 日本経済新聞出版社)。
この企業へのインタビュー一覧
- [コンサルティングファーム パートナーインタビュー]
- アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシーマネージング ディレクター 日本共同代表 深沢 政彦 氏/野田 努 氏
(2013.7)
コンサルティングファーム パートナーインタビューの最新記事
- マクサス・コーポレートアドバイザリー株式会社 | 代表取締役社長 森山 保 氏(2023.3)
- マーサージャパン株式会社 | 代表取締役社長 CEO 草鹿 泰士 氏(2022.6)
- シグマクシス・グループ | 株式会社シグマクシス・インベストメント 代表取締役社長 柴沼 俊一 氏(2022.1)
- キンセントリック ジャパン合同会社 | 日本代表、パートナー 松崎 肇 氏 / アソシエイトパートナー 蓜島 資幸 氏(2021.5)
- デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社(モニター デロイト) | デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/執行役員 モニター デロイト ジャパン リーダー 藤井 剛 氏 / デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/執行役員 モニター デロイト M&A/Reorganization責任者 神山 友佑 氏(2020.12)