A.T. カーニーは「ストラテジーとオペレーションの双方」を真に追求する数少ないファーム。
それでも多様性の時代の中で変わっていかなければいけない
「提案だけでなく変革の実行面も」を標榜するプロフェッショナルファームは今や少なくないが、それでもなおストラテジー集団としての色合いを捨て切れていないところもある。一方、現場を重視し、オペレーション領域での変革実行と定着にこだわり続けてきたA.T. カーニーは、「ストラテジーとオペレーションの両方」を追求している数少ないファームなのだと岸田氏は言う。
「長年コンサルタントをしてきた人間としても危惧しているのが、個々のコンサルタント、あるいはコンサル集団の同質化傾向です。ロジカルシンキングや情報の非対称性などに基づいて提案を行えば済んだ時代は、とうに終わっています。経営のすべてをトランスフォームすることになれば、向き合う事象や事業や人々もまた多様を極めます。ストラテジーでもオペレーションでも成果を上げていこうと思えば、均質化したコンサルタントではいけない。
グローバライゼーションにしても、海外事業部などが各国・各地域に『出島』を築き、そこを通じて日本の本社が指示していけばよかった時代とはまったく異なる様相を呈しています。M&Aによって全然違う文化背景と融合することが必要になったり、日本流のやり方の押しつけではなく、ローカルのカルチャーや状況を尊重したアプローチも求められている。多様性を受容し、柔軟な姿勢で向き合える資質が必要です。
その点、オペレーションの重要性を一貫して認識し、常駐型のプロジェクトなどでもまれながら成長していくA.T. カーニーのコンサルタントには独自の強さが宿ります。A.T. カーニーは各国オフィスの独自性を認めながら、同時に『グローバルでOne Firm』という理念を浸透させてきたファームでもあります。同質化傾向とは無縁のコンサルタントが、好きな場所で多様性と向き合うことも可能なわけですから、皆の成長を楽しみにしています」
今や、あらゆるビジネスや組織が1本の糸でつながっているようなもの......と岸田氏は言い、「世界のどこかで誰かが何かをすれば、それが巡り巡って、遠く離れた誰かに作用をもたらす」のだと指摘。それを認識したクライアント企業が経営チームの多様化を目指しているのだから、個々のコンサルタントにも、プロジェクトチームにも多様性は必須となる。A.T. カーニーも強みに乗じて安閑としているのではなく、「変わっていかなければいけない」と岸田氏は言い、「個々のコンサルタントにも同様の姿勢が不可欠」だと語る。
Integrityを備えた理想家としてトラステッド・アドバイザー
を目指したい......そう念願するかたと共創をしていきたい
今後、A.T. カーニーはグローバルでの規模を2倍にする計画があるという。「サイズでのナンバー1を目指しはしない」と語った岸田氏だが、企業からA.T. カーニーに寄せられる期待もまた大きく、これに応えていくための規模拡大とのこと。
では、どんな人材像を求めているのかといえば、これまでに数々の言葉で岸田氏が示してくれている。トラステッド・アドバイザーとなることを心から望み、努力を厭わない人材、ということになる。しかし、岸田氏が新たな参画者に期待しているポイントは他にもある。
「『私は●●の専門家です』で立ち止まっているような人ではいけません。コンサルタントとしての基礎的な素養を高めていくだけでなく、技術にも、経済にも、政治にも、というように様々なものに興味を持ち、情報や知恵を吸収していこうとする人であってほしい。経営に興味を持ち、学んでいくだけでなく、経営者という『人』に魅力を感じ、より深く知るために行動を起こす人であってほしい。
そして『世界はこうあるべきなんだ』というような理想論を堂々と口にして、世の中のためになる良いことをしていきたいと考えるようなIntegrityの持ち主が集ってくれたなら、A.T. カーニーはThe Most Admired Firmになれる。この目標を共創してくれる人が一人でも増えてくれることを心から願っています」
プロフィール
岸田 雅裕 氏
A.T. カーニー株式会社
グローバル取締役/パートナー
東京大学経済学部経営学科卒業。ニューヨーク大学スターンスクールMBA。パルコ、日本総合研究所、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン、ローランド・ベルガー、ブーズ・アンド・カンパニーを経て、2014年より現職。80年代中盤はパルコのイベント・プロデューサー、80年代後半から90年代前半は新規事業企画部門で当時インターコンチネンタルホテルを擁していたセゾングループの海外都市再開発プロジェクトを担当。コンサルタントに転じてからは、マーケティング、特にブランドマネジメントについて、消費財メーカーや小売業にとどまらず、自動車メーカーや金融機関などに対する豊富なプロジェクト経験を有する。新商品開発の効果を高めるプロセス、組織についてのプロジェクト経験も多い。著書に『マーケティングマインドのみがき方』(東洋経済新報社、10年)『コンサルティングの極意』(東洋経済新報社、15年)がある。
この企業へのインタビュー一覧
- [注目ファームの現職コンサルタントインタビュー]
- A.T. カーニー株式会社 プリンシパル 森口 健太郎 氏(2015.4)
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