メガトレンドとデジタルディスラプション。
二つの波を迎え、いかなる舵取りをするかが問われている。
「今、世界規模で大きな変革の波が2つ同時に起きています。1つは、すべてのマーケットで起きているディスラプション。クローバル化の進行や、ミクロあるいはマクロ経済動向によって引き起こされた経済システムへの衝撃。これが、企業経営に多大な影響を与え始めています。
もう1つは、デジタルをはじめとするディスラプティブなテクノロジーによる大きな変動です。ロボティックス・プロセス・オートメーション(RPA)や人工知能(AI)など、新たな技術革新の登場と浸透によって、企業は自身のサービスモデルの再検討や、経営管理体制における効果と効率性改善に向けた課題などに直面しています。
以上のメガトレンドとデジタルディスラプションという2つの波によって、企業経営陣は、どのような成長曲線を描くべきか、どのように経営の舵取りをしていくべきか、グローバルと日本のそれぞれで検討を迫られているのです」
新しい経営課題の到来をファレル氏はこう説明する。では、この課題の解決に向かい、EYACCはどのような価値やサービスを新たに提供していこうとしているのだろうか?
「デジタルディスラプションに直面しているクライアントが望む新しいソリューション。これを提供していくべく、着々とチャレンジを進行しています。RPAやAIなどの先進領域に関連して、世界規模で新たな取り組みをいくつも進めています。そして、それらのチャレンジで得られた成果をより効果的にソリューションとして機能させるためにも、近い将来、クライアントが提供しているサービスの一部を私たちがアウトソースしたり、長期的に管理するというニーズが高まるだろうと考えています。すなわち、私たち自身がクライアントの実務を部分的に管理するマネージドサービス。これにも注力していきます」
EYACC、さらにはEYグループが、自らのビジネスモデルをも変えていかなくてはならない、とファレル氏は言う。
「コンサルティング業界にも変化が求められているのです。コンサルティングファームが他の企業と協働する必要性は、今後ますます高まっていくでしょうし、EYとしては積極的にこの課題にもチャレンジしています。そうした局面で私たちが考えるアライアンスパートナーは、『共にエンド・トゥ・エンドのサービスを提供していくケイパビリティを有するグローバル企業』です。例えば、EYの強固な提携先の1つであるマイクロソフト社は、クライアント企業へマイクロソフトの新たなテクノロジーの導入をする際、私たちのプロジェクトチームの一部として、経営改革を一緒に推進しているんです」
多彩な連携力、独自のカルチャー、複合的なサービス提供。
3つの強みがEYにはある。
以上のように、具体性をもって課題を掲げ、その解決へ向けて動き出しているEYACCだが、そもそもEYグループが持っている強みの本質とは何なのだろうか? ファレル氏は3つの答えを提示してくれた。
「第1に、私たちは、グローバルレベルで最も優れた連携を持つファームだという自負を持っています。例えば、クライアントが日本で入手できないソリューションを必要とした場合、数分で海外にあるソリューションへアクセスし、担当者とコネクトすることが可能です。また各産業を担当するセクター組織や、ソリューションを提供する各ドメイン組織のすべては、互いにグローバルレベルで連携しています。そのうえ、私たちはEY Japanの監査、税務、アドバイザリー、トランザクションの4つの全ビジネスユニットともグローバルレベルで連携してもいます。以上のように、サービスやエリアの境界線を越えた連携力は、私たちに極めて大きな優位性をもたらし、クライアントへの価値あるソリューションの提供につながっています。
第2に、私たちには独自の企業文化があります。EYは、クライアント中心にオペレーションするというカルチャーを長い歴史の中で培ってきました。定型的なソリューションばかりを適用するのではなく、クライアントの経営環境と本質的な課題とを詳細に理解し、中長期的に運用可能なソリューション、つまり現実的に機能するソリューションを提供するということにフォーカスしているのです。
第3に、リスクマネジメントの分野と、業績改善を目的としたビジネスコンサルティング分野とを組み合わせたサービスを提供していること。これもまた大きな強みです。近年、クライアントが直面する経営課題は複雑化しています。クライアントに最高の成果をもたらすためには、課題の関連性を理解し、優れたテクノロジーやソリューション、そして先進的な考え方を組み合わせたアプローチが必要ですが、EYそしてEYACCにはこれが可能なんです」
多様なコンサルティング領域で最高レベルの人材と
産業セクターで実績と知見を積み重ねた人材との融合を目指していく
最後に、新たな成長段階を迎えたEYACCが求める人材像とはいかなるものなのか、ファレル氏に尋ねてみた。
「コンサルティング業界の様々な専門分野、例えばサイバーセキュリティ、テクノロジー、システム監査、ストラテジー、財務会計、サプライチェーンマネジメント、組織人事コンサルティングなど幅広い分野で、多くの経験を積んだ方を採用していく必要があります。第1のフェーズで獲得した、クライアントからの大きな期待に応えていくためにも、コンサルティング業界で最高の人材を確保したいと、強く願っています。
その一方で、もう1つのターゲットにも着目しています。それは、必ずしもプロフェッショナルサービス、またはコンサルティングのバックグランドが無くても、各セクターにおける最高水準の深い専門性を持つ人たちです。金融機関、製造業、自動車業界、製薬医療業界など、様々な産業セクターから優秀な人材に集まってほしい。コンサルティングの知見とセクターの専門知識が融合し、連携すれば、複雑な経営課題を解決する上で極めて有効な体制が整うと考えているんです」
こうしたリアルな人材像を掲げながらも、ファレル氏は同時に価値観や思想の面での共感もまた求めている。
「キャリア上のバックボーンや、保有している専門性や知見の如何にかかわらず、EYで活躍している人材には共通点があります。業務に対する姿勢に優れ、決断することを恐れず、『Building a better working world』というEYの理念に共感し、進んで貢献しようとする点です。私たちの理念は、クライアントの成功を通してより良い社会を目指すものであり、これからの時代、経済的利益を越え、社会に貢献していくことが重要と考えています。ですから、私としてはEYACCのメンバーが業務を通じてかけがえのない、エキサイティングな経験ができるように活躍の場を提供することはもちろん、日本という枠を超えてグローバルレベルの視野で考えられる人材になってもらいたいと考えています。つまり、EYACCが求めているのは、グローバルレベルでのキャリア展開を心から望んでくれる人材。この部分に共鳴し、ここまでにお話をしたEYACCの取り組みや、成長の新たな可能性に共感してくれるかたと、一人でも多く出会いたい。そう願っています」
プロフィール
ビル・ファレル 氏
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
代表取締役会長
アイルランド生まれ。米国および欧州での勤務後、オセアニア地域のアドバイザリーサービスラインのマネージング・パートナーを経て現職就任。グローバルレベルでの人事・組織変革の戦略や業務プロセス改善を専門とし、25年以上のキャリアを持つ。
コンサルティングファーム パートナーインタビューの最新記事
- アクセンチュア株式会社 | アクセンチュア インタラクティブ日本統括 マネジング・ディレクター 内永 太洋 氏(2019.1)
- マーサージャパン株式会社 | 代表取締役社長 鴨居 達哉 氏(2018.12)
- アクセンチュア株式会社 | 戦略コンサルティング本部 金融サービス マネジング・ディレクター 森 健太郎 氏 / 長谷部 智也 氏(2018.8)
- EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 | 代表取締役会長 ビル・ファレル 氏(2018.7)
- アリックスパートナーズ | マネージング ディレクター アジア共同代表 兼 日本共同代表 深沢 政彦 氏/マネージング ディレクター 日本共同代表 野田 努 氏/シニア アドバイザー 帰山 二郎 氏/シニア アドバイザー 高家 正行 氏(2017.12)