「失われた20年」にピリオドを打ち、日本は新しい時代を迎えている。
だからこそ、トーマツもまた攻めの姿勢を強化し始めている
「リスクをとり、自ら組織の先頭に立って、新しいことに挑んでいく......そんな果敢な経営者が少なかったことで、日本は『失われた20年』の苦渋を味わうことになったのだと、私は捉えています」
穏やかな表情とは裏腹に、ズバリと言い切った永田氏。しかし、瞬時に「これからは違います」と言い添える。
「リスクをとりながら企業価値を上げていく。そういう攻めのガバナンスをしていかなければいけません。そして、私たちアドバイザリーのプロフェッショナルはそんな経営者と一緒になって、この目標を達成していく。そうすることで、これまでの20年とはまったく異なる時代が幕を開けるのだと信じているんです」
2012年、トーマツは各種アドバイザリーサービスを展開してきた複数のユニットをアドバイザリー事業本部の名の下に集結させ、永田事業本部長の指揮下で再編成した。
それまでにも内部統制、リスクマネジメント、ガバナンス関連やIT領域を支援する多数のユニットがアドバイザリーを展開して、高い成果を上げてはきたが、大規模な組織ゆえ各ユニットの連携がとりづらい場面も散見されたという。より有効かつ緊密に連携し合いながら、いち早くクライアントに我々の価値を提供していくのが狙いだ。
そして同事業本部は、2020年をメドに現在の1200名体制から2000名規模へと拡大する計画を進めているとのこと。「新しい日本」の「新しい時代」を本気でバックアップしようとしているのだ。
「大規模な組織拡張計画ですから、驚かれるかたもいるでしょうけれども、米国や英国といったガバナンス先進国のデロイト事務所では、すでにこれ以上の規模でアドバイザリー業務を展開しています。
リスク&ガバナンスの水準を見ても、日本企業のそれはまだまだ世界から遅れています。デロイト内でも米英はもちろん、カナダやフランスの水準にも日本は至っていません。多くの日系企業がグローバル市場で勝負に打って出ようとするこの時期に、このままでいいはずがないんです」
当然、トーマツのアドバイザリーサービスに対する評価の高さが背景にはある。多くの企業から事業戦略の策定・実行やリスク、ガバナンスの変革などについての依頼が届き、手がまわらない実情もあっての組織拡大でもある。
だが、こうして永田氏の話を聞いていけば、今回の強化計画の根本に「今度こそ日本を世界で戦えるように支援したい」との強い想いが込められていることがわかる。
「東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードという新しいガイドラインを提言し、世界標準へと日本企業を導こうとしていますが、ROE等の具体的な成果が出るにはもう少し時間がかかるかもしれません。しかし、それでもいい。とにかく日本が前に向かって動き出しているのは事実です。
リスクをとって自ら先頭に立とうとする経営者も増えてきました。若い世代の経営者の間では、ITを駆使する習慣も根付いていますし、リスクに対する感度の高い経営者も次々現れています。もはや『失われた20年』とは時代の風は違います。そしてこの気運を成功へと導くためにも、トーマツもまた本気で取り組もうとしている。事業本部設立も、規模の拡大も、すべてそうした熱意の表れだと理解してほしいのです」