新卒で通販会社に入社し、マーチャンダイジング(MD)を経験しました。その後、WEB広告代理店を経て、2011年にアダストリアの前身である株式会社ポイントに入社しました。転職したのは、プロモーションだけではなくビジネス全体に影響を与える仕事をしたい、そのために事業者側に行きたいと考えていたところ、運良く声が掛かったのがきっかけで入社しました。当時ECはまだ立ち上げ間もなく、本格的に拡大しようというフェーズでした。それまでECに携わった経験はありませんでしたが、今後の発展可能性を感じ、チャレンジすることにしました。
2014年にローンチしたECサイト「.st」(ドットエスティ)の立ち上げをリードし、現在は 執行役員兼マーケティング本部長としてEC、広告宣伝、広報などの領域を統括しています。
アダストリアは今年10月に創業70周年を迎えるアパレル企業です。もともと茨城県水戸市で紳士服の小売店としてスタートし、今では売上高2,400億円を超える企業に成長しました。
他社との差別化は、 ①マルチブランド展開 ②商材もライフスタイル全般の幅広さ ③事業規模です。ライフスタイル展開を行うのは、お客様の日常は服だけではないためです。アダストリアと接点を持つことで、お客様の日常が豊かになることを目指しています。アダストリアはマルチブランド展開を取り30以上のブランドを通じて、異なる感性を持ち多様なライフスタイルを送るお客様1人ひとりのニーズに応えています。事業規模は、リアル店舗約1,300店舗超、「.st」会員数1,550万人超と、国内アパレルでも大規模です。ECの成長が著しいと言われていますが、ブランドの世界観を五感で感じられるリアル店舗はブランドビジネスにおいて重要です。これは、コロナ禍を経て再認識しました。リアルとオンラインの双方があるからこそのシナジーを発揮しています。
常に変革し、進化し続けられることです。これまで大きなビジネスモデルの転換点が4度ありました。1度目は1970年代、紳士服からメンズカジュアルへの転換です。もともとは水戸市で紳士服を扱う小売店でしたが、当時水戸で空白となっていたメンズカジュアルに転換したことで売上を大きく伸ばしました。2度目は1980年代のチェーンストア展開、3度目は1990年代のOEM/ODM生産への移行と「LOWRYS FARM」などストアブランドの展開です。そして、4度目の転換は2010年代の垂直統合型SPA体制への移行です。商品企画から生産機能までを内製化し、現在に至ります。時代の変化に合わせて、会社の仕組みごと変えるような大きな転換をドラスティックに行ってきました。
そして、現在推進しているのが「グッドコミュニティ共創カンパニー」への転換です。アパレルカンパニーに留まらず、他社や地域など社外のステークホルダーとの連携を深めることで新たな価値を創出し、グッドコミュニティを共創できる企業へと転換しようとしています。
一つは「.st」のオープン化です。「.st」はアダストリアのECサイトとして、自社ブランドのみを扱ってきましたが、2022年4月に他社ブランドの取り扱いを開始しました。家電や美容機器など、アダストリアでは扱っていない商品を提供する5社に参加いただいており、今後もさらに拡充予定です。私たちはお客様のライフスタイルを豊かにすることを目指しており、お客様もまた、アダストリアを通じてライフスタイルを買っています。「.st」によってライフスタイルのより広い領域をカバーできた方がお客様にとってもハッピーです。オープン化を始めて以来パートナー企業との深い対話も増えました。共に刺激し合っている感覚もあり、グッドコミュニティ実現に向けて大きく前進していると感じています。
一つは、リアル店舗とECとの総合力の高まりが、コロナ禍が落ち着いた後も大きく跳ねたと考えています。もう一つは、これまで積極的に行ってきたM&Aです。アパレル企業は勿論、ライフスタイル展開の一環として、ハワイアンレストランの「アロハテーブル」を手掛ける飲食企業のゼットンや子供服のオープンアンドナチュラルなどの異業種もグループ化してきました。今後もM&Aも含め更なるシナジーが発揮されることを期待しています。
これは、リアル店舗と店舗スタッフのおかげです。お客様とアダストリアの最大のタッチポイントは1,300を超えるリアル店舗です。リアル店舗ではブランドの世界観を五感で体感でき、「.st」に登録するモチベーションに繋がります。また、店舗スタッフがお客様と直接会話して「.st」への誘導することもできます。
「.st」を立ち上げた際に、ECとしての最適を追求するのではなく、ブランドの魅力を表現するリアル店舗とどのように融合すべきかを考えました。全社のインフラとしてどのような立ち位置であるべきか、ブランドとの関係性、リアル店舗との関係性はどうあるべきか、アダストリアのパワーを最大限発揮できるにはどうすべきかなど模索しました。そのプロセスの中で、店舗スタッフを始め多くの同僚たちとコミュニケーションを取りました。そこで私が感じたのは、彼らが自分のブランドが大好きであるということ。ブランドを成長させるための協力を惜しまず、様々なアドバイスや提案をしてくれました。彼らの提案の中には、普段本社で数字を見ていては気づけない、目から鱗なアイデアも数多くありました。そうした協力があってこそ「.st」は成長できたと思います。
これまではブランドの成長のため会員数増加に注力してきましたが、ひと段落したと思います。これからは、こうして培ってきたアセットを活かし、社内外のステークホルダーと連携しながら、新しいアダストリアを創造するフェーズです。アダストリアには顧客基盤、ブランド、チャネル、データなど、業界最大級のアセットがあります。これらのアセットを活用して新たな事業や仕組みを立ち上げる、次の種を蒔く時期がまさに今です。
これが、現在私達が全社で採用を強化している理由です。アダストリアは自由度が高いフィールドです。意思を持ち、社内を納得させることができる方であれば、やりたいことを実現できる会社です。この環境でこれからのアダストリアを共創してくれる仲間を採用したいと思います。
私はECを単に商品を売る "E-Commerce"で終わらせずに、アダストリアというフィールドを使って体験を提供する"Entertainment Community"に育てていきたいと考えています。お客様同士が繋がったり、スタッフとお客様が繋がったり。リアル店舗があるからこそできることもありますし、オンラインという1対nのタッチポイントだからこそできることもあります。まだここで具体的な話はできませんが、現在いくつものプロジェクトが動いているので、今後の発表をご期待ください。
まずは全方位的なコミュニケーションが取れる方です。何かを推進する際には、30以上ものブランド、そして様々な部署との連携が欠かせません。本社で数字だけ見ていても分からないことは多々あり、彼らとのコミュニケーションはとても大切です。私も部門を統括する立場になった今も、様々なブランドや部署のスタッフと会話することを大切にしていて、日々キャッチアップしています。全方位的なコミュニケーションを取れる方であれば、活躍できる可能性は高くなると思います。
そして、お客様のことを見ようとする方です。アダストリアは、スマートに仕事をするというより、お客様のことを考えながら地道に改善を重ねる店舗起点のカルチャーを持つ会社です。アセットを活用して、大切なお客様のことを想像し、成果に繋げることが求められます。
様々な部門で採用を行っていますが、特に海外展開やDXを強化しているので、グローバル人材やそしてDX人材の方も積極的に採用しています。
台湾、香港、タイなどアジアを中心に事業拡大しており、海外市場向けにリアル店舗を約80店舗、EC店舗を約20店舗出店しています。市場環境は国や地域で異なるため、基本的には現地のチームが主導しますが、グローバル本社として日本側で関与することも多々あるので、グローバルな視点を持った人材の方に是非ジョインしていただきたいです。
アダストリアはDXへの投資が非常に大きい会社です。「.st」の進化にはDXは欠かせませんし、店舗間を繋ぐDXや、働き方改革を推進するDXなど多岐に亘るプロジェクトがあります。事業を深く理解し、要件定義から、これからのDXを創っていけるDX人材を積極的に採用しています。
多種多様な業界のパートナーと協力しながら、新しい価値を創造するフェーズなので、私達自身も社内に色々な視点を取り入れたいと考えています。アパレルのバックグラウンドは必須ではなく、むしろ多様なバックグラウンドの方にきていただきたいです。
アダストリアは業界でも大規模の会社です。これまで培ってきたアセットがあるので、ゼロベースのベンチャーとは異なります。アダストリアのアセットとご自身がやりたいことがマッチすれば、大きなことを成し遂げられます。既存のアセットをいかに活用して自分が見たい景色を見に行くか、というマインドセットの方であれば非常に良い環境です。そして成果をあげれば登用機会も多い会社です。マーケティングやDXなど本社社員は7~8割が中途です。私自身も中途で入社して10年、EC未経験からのスタートでしたが、色々と任せて頂く事が多いです。
今後推進する「グッドコミュニティ共創」を実現するには、能動的な社員同士がコミュニケーションを取ることでシナジーを生むことが重要です。熱意を持って仕事をしてくださる方に是非来ていただきたいです。
]]>【南】私はブーズ&カンパニーで3年半、ボストン・コンサルティング・グループで6年ほど海外案件や、組織開発、事業開発の案件を掛けた後、当社を創業しました。それはビジネスを通じて、目の前の人の幸せにもっと貢献したいと思ったからです。
もともと学生時代は心理学を専攻し、社会に貢献したいという思いから国際開発を学んでいました。しかしコンサルティングファームで働くうち、いつしかその思いを忘れつつあったんです。
次第に、クライアントのトップマネジメントではなく、もっと現場で実際に事業開発を推進しているいち社員の「想い」に寄り添いたい、そんな思いが強くなっていきました。
最終的には、どんな事業をするのか決めないまま起業を決めました。ただただ、その瞬間自分がやりたいと思ったことを、形にしたかった。そこでやりたいことリストをつくって、友だちと飲みながら「ピッチ大会」のようなことをして、どんな事業をしようか想像を膨らませていきました。
その中で出てきたアイデアの1つを試そうと立ち上げたのが、Questだったのです。規模は小さくても、自分でコントロールできるビジネスを手掛けて何か面白いことができないかと考えました。
【南】いまは大きく3つの事業を手掛けています。
1つ目は、大手企業の新規事業開発や事業推進を支援するコンサルティング事業です。「Drive Business Forward」をビジョンに掲げ、"想い"を持ったコンサルタントが、クライアント企業の事業開発を徹底的に加速することに向き合ったサービス提供を行っています。当社は私や小梶をはじめ戦略コンサルティングファームで事業開発の案件を手掛けてきたメンバーが多いので、その経験やアセットを最大限活用して、事業を提供しています。この事業部のトップを務めるのが、小梶です。
2つ目は、圧倒的なスピードでサービスを提供するリサーチ事業です。「生活者の声をもっと身近に」をビジョンに掲げ、依頼から最短翌日にデータと集計表を納品可能なアンケート調査サービスや、分析・資料作成サポートサービスを提供しています。また、社内外のエンジニアと共に自社プロダクト開発にも力を入れています。
そして3つ目は、2023年2月にスタートした、インターン生を紹介・派遣する「bunk(バンク)」という事業です。もともと私も小梶も、コンサルティングファーム時代から社員の採用選考に関わってきました。そのノウハウを生かし、直近3年で100人のインターン生を採用・育成しています。その結果、ハイスキルなインターン生を育てるノウハウが蓄積され、いまやインターン生がコンサルティング事業のベースを支えるまでになりました。
当社のインターンシップを経験した学生は、各種コンサルティングファームで即戦力として活躍し、入社1年目でMVPを受賞する方もいるほどです。こうした学生を育成するノウハウをもとに、インターン生を紹介・派遣する事業を展開しています。
当社は特徴として、"個人の想いに光を当てる"というミッションのとおり、社員がやりたいことを積極的に応援するカルチャーを持っています。
やりたい事業を思いついたら、手を挙げて事業開発にチャレンジすることを応援しています。とにかく自分自身のやりたいことがメイン。現場社員でも、マネージャークラスでも、ディレクタークラスでも、これまで当社で全くやったことのない事業に取り組むことができるのです。
【小梶】南やQuest創業メンバーの加藤(直樹氏/Director)がそうなのですが、コンサルティングファームで経験を重ねてきた人たちが、その頃抱いていた「こんな事業をやってみたい」という思いを実現できる環境があるのは、非常に面白い特徴だと思っています。
私自身はコンサルティング事業を統括していますが、必ずしもコンサルタント一本でキャリアを重ねていかなくてもいい。コンサルタントとして多様な企業の事業開発案件に取り組んでいると、自分自身でも事業を手掛けてみたい、そんな想いに駆られることが出てき得ると思います。
とはいえいきなり起業したり、スタートアップへ転じたりするのはリスクがあると感じる人もいるかも知れません。当社の場合、3つの事業で得られた収益・アセットをベースに、一人ひとりのやりたいことに真剣に向き合っていきます。当社としても、より一層事業を増やしていきたいという想いもあるので、一人ひとりのやりたいことにどんどんチャレンジできる環境・カルチャー作りをしていきたいと思っています。
【小梶】僕はもともと事業会社で6年弱ほどBtoBの領域で事業企画や生産企画に従事し、その後もっと成長したいという想いで戦略コンサルティングファームに転じました。コンサルティングファームでは、通信・消費財・製造業などの領域で8年ほど大手企業の新規事業開発の案件に携わりました。
南とは、コンサルティングファーム時代から一緒に案件を手掛けることが多くて、プライベートでも、よく飲みに行っていたんです。当時から南は、圧倒的な課題解決能力と、ピュアに誰かのためになることをしようと願っている人でした。
ビジネススキルの高さとマインドセット、その絶妙なバランスに魅力を感じましたし、南や加藤とこれからも一緒に仕事をしたい、そう思い、ジョインすることに決めました。
【南】僕がマネージャーになった際の初めてのプロジェクトでリードコンサルタントだったのが小梶でした。コンサルティングファーム時代も一緒に案件を手掛けることが多く、飛び抜けて優秀で周囲からの信頼も厚い小梶を信用していましたし、もっと彼のやりたいことを叶えられる環境で一緒に働けないかと思っていたんです。
何度か将来のことを話したり、オフィスに招いたりするうち、転職を決めてくれました。
【小梶】「Drive Business Forward」というビジョンを掲げ、事業開発をより早く、確実に前に進めることに特化しているのが特徴です。その課題解決のプロセスを、徹底的に「型化」し、デリゲーションすることで効率化しています。
手掛けるのは、新規事業立案、コンセプト検証、各種事業戦略の立案などが中心です。たとえば新規事業立案の場合は、市場分析からアイディエーション、コンセプト立案、事業化支援までの一連のプロセスを、クライアントの現場社員とともに、その想いや熱量を共有しながら進めます。
戦略コンサルティングファームでの経験豊富なメンバーがそろっているため、高いスキルでコンテキストを読み取って調査を設計し、要件定義を行い、すばやくファクトを届けながらPoCもお手伝いします。リサーチ事業など、当社の他の事業を組み合わせ、必要なときに・必要なテーマで・最小限のリソースで柔軟にコンサルティングを行うことで、最適化が可能です。
どうしてもコンサルティングの案件を進めていると、市場動向や競合動向の調査等のデスクトップリサーチや市場規模推定など、定型的な作業に膨大な工数がかかることがあります。
既存のコンサルティング業務で生じている定型的な作業を、徹底的に「型化」することで、コンサルタントが付加価値の高い仕事に専念できています。優秀なインターン生が「型化」された業務を学び、自らの成長に繋げながら手伝ってくれていることも、お客様に高い水準のサービスを提供できている大きな要因の1つになっています。
お客様の事業開発の"想い"を形にすることの加速に向け、"想い"を乗せたコンサルタントが徹底的にプロセスの型化・インターン生との協働を行った結果、お客様からは非常に早い・質が高いというお声が多く、事業開発のパートナーとして信頼して頂いています。
いまは、組織を拡大していくフェーズです。アナリストからマネージャークラスに留まらず、ディレクターに至るまで、広くコンサルティング業務の経験者を採用し、事業を大きくしていきたいと考えています。
【南】メンバー自身のやりたいことを何よりも重視したキャリアステップを描けます。既に多様なキャリアパスを実現しているパターンがありますね。
例えば、小梶のように当面はコンサルティング事業を立ち上げ、組織として拡大することに専念するパターンです。小梶はコンサルティングが大好きなのですが、コンサルタントが自分の希望する案件を自由に選ぶことができる環境を整え、コンサルタントの"想い"に徹底的に向き合ったコンサルティングを実現しています。想いがあれば若手のうちから複数案件に携わることや新規の業界の開拓も含めてセールスも積極的に推奨しています。それに、自らセールスも行える。裁量が大きく、多角的な経験を積むことができます。
【小梶】メンバーの想いや、やりたいことが何よりも大切なので、コンサルティング事業部でも「やりたい」と手を挙げる人がいない案件や、クライアントと対等なパートナーシップが築けないと思った案件、あるいは事業インパクトに結びつかない案件についてはお断りするケースもあります。
会社側から強制的に案件にアサインすることはなく、コンサルタントに"想い"が乗ることで、結果的にお客様への価値が最大化できている感覚がありますし、コンサルタントのポジティブな成長を加速できている感覚も持てています。
【南】インターン派遣事業を立ち上げた私や、リサーチ事業を立ち上げた加藤などのように、もともとコンサルティング事業部にいて、その後やりたいと思った事業を立ち上げるケースもあります。
また、「CFOになりたい」という願いを叶えるべく、コンサルティング事業からコーポレート部門に移るメンバーもいますし、「組織カルチャーをつくる仕事をやってみたい」と、複数の事業やミッションを兼任して、やりたい仕事に関わるケースもあります。
【小梶】戦略コンサルティングファーム出身者が多いのは事実です。ですが、コンサルティングファーム出身者以外でも、スタートアップで働いた経験のある方や、自衛隊から入社した方もいらっしゃいます。
どのようなキャリアの方でも、共通しているのは4つのバリューに共感していること。
Happiness Driven(幸せにこだわる)
Expand the Circle(共感の輪を広げる)
Change (Y)our Future(想いのこもった変化を起こす)
Fail Fast, Fail Often(まずやってみる)
この4つのバリューに共鳴し、自分のやりたいことを大切にしたいという方が活躍していますね。
もちろん、ベースとなるコンサルティングスキルは重要ではありますが、バリューへの共感やポテンシャルの有無をより重視しています。「個人の想いに光をあてる」というミッションの通り、嘘偽りなくなく真正面から顧客と自らの幸せに向き合いたい、そのためなら全力を出せるという方が、活躍していますね。
【南】クライアントに貢献する前に、働いている自分自身が幸せでなければ、良いソリューションは提供できません。
自らがまず、幸せな働き方ができていれば、仕事にもポジティブに向き合えるし、楽しめるしがんばれる。「アサインされた案件に静かに従います」という感覚のコンサルタントではなく、自分軸で動いてほしいですね。自分のやりたいことや、コミットしたいことが明確な人が合っていると思います。
そして、顧客には徹底的に向き合う。利己的な気持ちよりもギブの方が大きい、利他的な人が向いているのではないでしょうか。
【南】もともと、リサーチ業務の工数最適化からはじめたこともあって、Questionから取りました。Questionも、Questも、ラテン語の「探究する」という言葉を語源としています。このことばを選んだのは、単純な「質問」や「Q&A」を集めた設問票ではなく、本質的な「問い」を立てたリサーチを行いたかったからです。
それから、様々なQuestをクリアし新しい冒険に出ようという意味も込め、「Quest」という社名に決めました。
今後も、新しい事業をどんどん立ち上げ、本質的な「問い」を立てながら一緒に冒険していける方と働きたいですね。
アメリカの大学で経営情報システムを専攻した後、2002年に新卒でパナソニックに入社し、情報システム部門に配属されました。当時は基幹システムをグローバルに一気通貫でERPに切り替えていくブームの時代で、私の最初の仕事も中国全土44社へのオラクルERP導入推進でした。このプロジェクトで上海と香港に2年ほど駐在しましたが、当時はまだ新入社員、かつ、女性の海外駐在が珍しい時代で、会社と一緒に新しい時代を切り開いていっているような感覚もありました(笑)。
その後も、会社として今までやったことのない領域にチャレンジするプロジェクトを数多く担当させていただき、当時まだ黎明期であったSaaSシステムの導入でドバイに行ったり、大連への開発オフショア化を進めたり、パナソニック全社として新興国市場に進出しようとなった2009年には「何をしてもいいからITを駆使して新市場で売上を上げることをやってきて」と漠然としたミッションを与えられて1人旧ユーゴスラビアのバルカン地域に赴任したこともありました。
その後2012年ビッグデータという言葉が出始めた頃、社内にデータ分析の専門家を作ろうという動きの中で、当時はその領域で最先端であった北米に赴任させていただき、昼はシリコンバレーのベンチャーソリューションなど自分たちで見つけてきた分析ツールを社内でどう活用できるかを検証し、夜はビッグデータ分析に特化した大学院でさらなる専門性を身につける、という生活を送りました。
パナソニックには13年在籍し、その間に新しい事に挑戦する機会を多くいただきました。過去の蓄積もなく、正解も分からないプロジェクトに取り組み続けることで、新しい事を始める時の勘所や、周囲を巻き込みながら形にしていくスキルを身につけました。このスキルは今でも役に立っています。
2015年にファーストリテイリングに転職し、CRMとデータ分析の立ち上げを行ったあと、より経営に近い仕事をしたいと考え、ジュエラーのTASAKIと資生堂の2社で経営戦略部門を経験しました。資生堂ではそれまでの経歴からDXプロジェクトを任されましたが、そのプロジェクトを通じて今やほとんどの戦略アクションがデジタルと切り離せないことに気づきました。また、経営戦略部では提言に留まり、私自身は実装まで手掛けたいと考えていたので、再びデジタルの世界へと戻ることにしました。
そして2022年1月にカイバラボに入社しました。カイバラボに入社を決めたのは、自社のDX化に留まらず、"小売の未来"を創るというミッションがとても面白いと思ったためです。カイバラボの組織は社長の下に、データ分析を担うデータアナリティクス部、B2B向け新規事業の立ち上げを担うデータ事業推進部、社内DX化に向けたインキュベーション活動を担うデータコラボレーション部の3部門があり、私はデータ事業推進部とデータコラボレーション部で部長を務めています。
カイバラボは"小売の未来"を創ることをミッションとしています。「未来の小売はどうあるべきか?」「その未来を実現するために何をするべきか?」の高い視座に立ち、小売業界の未来に本質的に必要なデジタルソリューションを開発します。開発に際してはPPIHグループが保有するデータを活用し、PPIHグループの買い場を実証実験の場としますが、開発するソリューションはPPIHグループに留まらずに小売業界にとって本質的に必要なものを追求したいと考えています。
新たなソリューションのアイデアを発想する上で、カイバラボでは「X」(クロス)をキーワードとしています。「掛け算」を意味していて、様々な専門性を持つ人財(※)の視点を掛け合わせて新たな価値を創出することを目指しています。その実現に向けて、社内では採用を強化して様々な専門領域の視点を取り込もうとしていますし、社外では国内外問わず様々な専門家と積極的にコラボレーションしています。
現在は大学の研究組織やIT企業とのコラボレーションが進行していますし、今後も小売とは一見関係ない業界とのコラボレーションも含めて積極的に推進していきたいと考えています。また現在、PPIHグループが持つ小売のデータやチャネルを活用した新たな事業の立ち上げも推進しています。これにより自分たちで収益を得る手段を確保しながら、またそれを新たなことにチャレンジをしていく投資に回す、というサイクルをつくることができます。
このように、PPIHグループから一歩ひいて、小売というものを広い視座でみて、未来の小売はどうあるべきか?という視点でやるべきことを定め、実証実験から進める。一方できちんと小売業という中核事業にも貢献し、また自分たちも事業できちんとマネタイズしていくポリシーも持っている。そのようなところが、他社の小売のDX化の取り組みや小売のデジタル子会社と違うと思います。
※PPIHグループでは人は財産という考え方から「人財」という言葉を利用しています。
大きく2つあります。
1つは、PPIHグループが売上高1.8兆円(※2022年6月期)の大企業であり、スケールした時のインパクトが非常に大きいことです。この売上規模の企業を舞台に、全社にスケールできる事業をゼロから創ることができる組織はなかなかないと思います。
もう1つは、PPIHグループの大きな特徴である「個店主義」です。企業原理である「顧客最優先主義」のもと、各店舗に裁量権を委譲しています。例えば商品の仕入もその土地のニーズを知る各店舗に任せているため店舗ごとで商品構成が全く異なりますし、一店舗でしか扱われていない商品もあります。
一般的にスケールメリットを享受しやすい小売業界では、大手企業ほど本部主導型の運営になりがちで、店舗は本社が仕入れた商品の陳列で平準化され、さらにそこにデジタルで横串を通そうすることでより一層、店舗の平準化が進んでしまいます。
これに対して我々は「個店主義 x デジタル」を目指しています。現場力を維持しつつ、そこに対してデジタルの力で後押しするモデルを創ることができれば、小売業界に対して大きな提言となります。
PPIHグループは現場の力で成長してきた会社なので、もともとのDXのレベルは他社と比較して高くありません。しかし、それはカイバラボにはとってはプラスです。新たなデジタル施策の導入を検討した時に、過去に導入したシステムに縛られる・そのシステムが優れていない場合"負の遺産"となるケースが多々ありますが、PPIHグループにはそうした"負の遺産"がないので、本質的に必要な事をゼロベースで柔軟に考えることができます。
革新的な小売企業と言えば、世界的にはウォルマートやアマゾンなどが想起されますが、「個店主義 x デジタル」で成功することができれば、PPIHグループもそこに並ぶ存在になることができると思っています。
「デジタル」に限った話ではありませんが、客観的かつ冷静な視点で「PPIHグループにとって取り入れた方が良い」と判断したことに対しては、積極的に挑戦したいと考える社員が多いので、新しい事への抵抗感は少ないと感じます。「いいじゃん、やろうよ!」となれば、皆協力的で一気に進めてくれます。
また、ケースバイケースですが失敗した場合の撤退判断が早いことも、前向きな挑戦が可能な要因だと思っています。
失敗という傷口を最小限に抑え、次の挑戦に生かしていく社風もPPIHグループの魅力ですね。
3〜5店舗を管轄するエリアマネージャーとコミュニケーションをとることが多いのですがPPIHグループの役員は現場出身者が多く、現場を大切にしていますし、現場をよく理解しているので、役員のサポートも借りつつ現場の声を聞いています。
個店主義を維持しつつデジタルによって未来を創るためには、現場と二人三脚でカルチャーや仕組みを作る必要があります。「導入してもらうために頭を下げる必要があるアイデア」「一部の店舗だけが納得するようなアイデア」は望ましくありません。
現場の声を聞き、個店主義を大事にしながらも、デジタルで横串を通すべき領域を探っていく。そしてその意図を現場に適切に伝えて、すべての店舗が納得して導入することを目指しています。PPIHグループのチャレンジに貪欲なカルチャーをうまく活かし、我々のテクノロジーで創出できる新たな価値を浸透させて、導入するためにカルチャーや仕組みを変えていく、真の"トランスフォーメーション"を担っています。
そうですね。カイバラボは大企業のグループ会社でありながらも、ベンチャーのように自由で風通しが良く、コミュニケーションがフラット&オープンです。中途採用のメンバーも多く、またコンサルティング会社や広告代理店の出身者など、幅広いバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。若手社員が多いこともありますが、それぞれの専門性を活かして、チームで仕事を進めていくスタイルなので、個人の裁量が大きく、皆助け合いの精神があります。
カイバラボでは新たなソリューションのアイデアを発想するだけではなく、それを形にするところまでをミッションとしています。そのため、専門性を持っているだけでなく、アイデア発案や提言に留まらず実際に手を動かしながら実装へと形にしていけるスキルを持った方が望ましいです。マインドセットとしては、ポジティブシンキング、オープンマインドの方が良いですね。新しい事にチャレンジする際、すぐにはうまくいかないことも多いです。そんな時に、どうすれば成功に近づけるのか、失敗から学びを得て何を改善すればよいのかを前向きに考えながら、周囲の人を上手く巻き込みながら物事を前に進めていただきたいです。
小売業界の経験は必ずしも必須ではありませんが、商売そのものも含めてスピードが速い業界です。スピード感を持って仕事ができる方が良いですね。
私が入社してから半年間、マネタイズできる新たな事業づくりを模索し続け、ようやくカイバラボにとって1つ目の事業を生み出せる目途が立ちました。今後も組織を拡大して体制を整え、多くの事業やソリューションを生み出していきたいと思います。具体的な目標数値は定めていませんが、例えば実証実験段階に進んだアイデアが100件あっても、そこから本格的に実現に至るのはわずか2〜3件だと思っているので、当面は実証実験段階に進めるアイデアの数を増やしていきたいと思います。
社会人になってもう20年以上経ちますが、この規模の会社で「自由に0から新しいことを生み出すことができる」環境は本当に貴重だな、と思います。私自身もそういう意味では「事業を創る」ということをリードするのは初めてで、お金をいただける価値を創り出す難しさを感じます。ただ、同時にとてもチャレンジングであり、やりがいを感じています。
社内外で様々な専門性を「X」(クロス)することで新たな事業を創出し、それが店舗の賑わいを生み出し、マネタイズとして収益を生み、そして"小売の未来"を創っていく。そんなカイバラボのあり方はとてもユニークだと思います。PPIHグループは店舗からしてエンターテインメント性に溢れていますし、「ここで面白くなければどこなら面白いの?」と言えるだけの面白さがあります。
これまで新しい事を創ってきた方、新しい事を創る上での勘所がある方、形にするために多くの人を巻き込むのが得意な方、いつまでも新しい事にチャレンジしていきたい方にとっては本当に良い環境です。是非一緒に"小売の未来"を創るゲームチェンジャーになりましょう。
]]>【加藤】当社を創業したのは、日本のデジタル化が非常に遅れていると感じたからです。
いま、たしかに国を挙げてDXに取り組み、中期経営計画に「DX」を掲げている企業も多いです。にもかかわらず、産業全体のデジタル化はそれほど進んでいません。そこに大きな危機感を覚えています。
もちろん国内でデジタル化を推進するプレイヤーとして、SI(システムインテグレーター)やコンサルティングファーム、AI系スタートアップなど様々な企業が存在します。しかしそれぞれのプレイヤーが、それぞれの得意領域に特化しすぎて全体感が欠如していると感じていました。
ならば事業開発、エンジニア、データサイエンティストが三位一体となって日本の産業自体のあるべき姿をグランドデザインしていけば、日本のデジタル化は劇的に進むと思ったのです。
経済性と公益性を両立させ、未来の産業をデザインする。それが「日本をアップグレードする」というビジョンの真意であり、私たちの存在意義です。
もちろん、当社では戦略コンサルティングやシステムインテグレーターとしての「機能」も提供していますが、機能提供に終始するのではなく、事業開発、エンジニア、データサイエンティストがそれぞれの強みを最大限発揮して複雑な課題を解決できる 、そこが大きな強みだと感じています。
そのために、東京大学の複数の研究室と連携し、業界のリーディングカンパニーや、要素技術を有するベンチャーとチームアップし、社会へ貢献しながら企業に利益で貢献しています。ここで重要なのは、企業利益のみを追求しないことです。いかに公益性の視点と企業利益を両立させるか、その一歩目を踏み出す手助けをすることを大切にしています。
【加藤】例えば佐川急便さんと取り組んでいる「不在配送ゼロ化AIプロジェクト」があります。現在、日本全国で不在配達は20%、年間2,000億円(※主要3社)にも上ると言われています。
不在配送を減らすには、配送オペレーションや配送ルート、在宅時間データの分析・予測など多様な項目を検討しなければなりません。また、配送ドライバーの高齢化をはじめとする労働人口の減少問題や、インセンティブ設計についても考える必要があるでしょう。
既存企業の生産性を少し変えれば、産業全体の経済性と公益性は実現できるはずです。こうした課題を、ビジネスとデータサイエンスと、エンジニアリング、すべての力を用いて解決する。すると経済性と公益性を両立でき、産業の革新が行われ、日本そのもののアップグレードが実現すると思うのです。
もちろん不在配送率を10%、5%まで減らし、物流の「ラストワンマイル」問題が本当に解決されるまでには長い時間がかかります。私たちも5~10年スパンで取り組んでいるところです。
【加藤】電力データを活用し、高齢者のフレイル(加齢により心身虚弱状態になること)リスクを低減する取り組みも行っています。これは三重県東員町、千葉県市原市、長野県松本市などの地方自治体や電力会社、大学機関と連携して取り組んでいる産官学連携プロジェクトです。
従来、フレイルリスクを把握するためには、民生委員が各家庭を訪問しなければなりませんでした。しかし電力データ分析や民生委員の訪問ルート、オペレーションなどを総合的に加味してアルゴリズムを構築し、要介護になる前に食事指導や運動改善ができればフレイルリスクは減らせます。
そうすることで、人々の暮らしや命を守れますし、社会保障費も抑制できます。こうした生活者の本質的なインサイトを解決する、非常に社会性の高い取り組みを行っています。
【加藤】日本の産業自体をアップグレードしたいという当社のミッションに共感する方、経済性と公益性を両立させたいというパブリックマインドの高い方にご入社いただきたいですね。
それに加えて「Disrupt」「Scale up x Out」「Collaborate」「Upgrade JDSC」という4つのVALUEに共感する方が望ましいと思っています。
組織としては、何もないところから組織と事業を立ち上げる「0➝1」フェーズを経て、「10➝100」へスケールしていくフェーズに突入したと感じています。これからは一人の力だけで突破するのではなく、多くの人のパワーや知見といったリソースを活用して組織を動かしていく力が必要になります。
バックグラウンドはデータサイエンティストでも、プロジェクトリーダーとして新しいキャリアを描きたい方、これまでエンジニアだったけれども事業開発の経験を積みたい方など、自身の専門領域から越境してキャリアを広げたい方にきてほしいと考えています。
これまで経験のない領域でも越境して活躍できるよう、多様なサポートも用意しています。エンジニアリングやビジネスドメイン、プロジェクトマネジメントに関する勉強会を積極的に開いたり、パーソナリティ理解の研修やメンター制度などファンクションを超えてメンバーを理解しようという取り組みがあったりします。
成長意欲が高く、未踏の領域に果敢に飛び込んでいけるチャレンジングなマインドをお持ちの方、自律的にビジネスを展開していける方を求めています。もちろん、経験のない領域にチャレンジする際は、社内でサポートしてもらったり、ノウハウや知見をシェアしてもらったりすることで、成果を最大化していただけたらと思っています。
【加藤】事業会社で企画をしていた方や、大学院を卒業してすぐ入社したデータサイエンティスト、事業会社やSIerでエンジニアリング経験のある方などもいます。起業して自ら会社を経営した後、より大きな社会課題に向き合いたいとジョインしてくれた方もいます。
またエンジニアリングからMLOpsに転じてゼロから学び直した方もいますね。文系出身ですが、戦略コンサルティングファームでコンサルタントの経験を経て当社へ入社した後にGoogleのGoogle Cloud Professional Engineerの資格を取得した社員もいます。
ちなみにエンジニアリング面では、技術アセットはかなり共有しあっています。ソースコードはGithubでシェアされているのはもちろんのこと、JDSC Dayと呼ばれる全社勉強会や、外部との勉強会も実施していますし、OSSコミュニティで登壇しているメンバーもいます。最近では、文系エンジニアがkaggleのコンテストに出場したりもしています。社内全体ではkaggleメダリストが9名いて、国際論文の共著が5本、特許件数は3件に上ります。
エンジニア、事業開発、データサイエンティストが概ね均等に在籍しているのが当社の特長で、年齢層も20~40代がほぼ均一に在籍しています。
【加藤】当社では5~20人と少人数のユニットに分かれてプロジェクトに取り組んでいて、基本的にクライアントとの契約体系や料金体系、採算性もふくめてユニットリーダーに委ねる独立採算制を取っています。多くの次世代リーダーを育てるべく、採用や育成、スキルアップもユニットリーダーに任せています。
担当クライアントや業界は固定されていません。また、一つのクライアントに対して他のユニットを巻き込み、複数ユニットでアプローチすることもあります。
一般的なコンサルティングやSIと異なるのは、人月換算や時間換算でフィーを決めていないという点です。 予算の関係で、道半ばでプロジェクトから撤退するような事態だけは避けたい。そこでフィーモデルを成果報酬型にするのか、トランザクション型にするのかも、すべてユニットリーダーに委ねています。
事業開発もエンジニアも、データサイエンティストも基本的に1つのユニットが少人数で構成されるので、自分のスキルが、そのチームで提供できるスキルに直結します。格段に職務専門性が上がりますし、責任範囲も大きくなる。結果責任ですので、ユニットリーダーは自分のチームの成果について必然的に責任を持つことになります。
【加藤】民間の立場で、企業特有のアセットを生かしながら公益性の高いプロジェクトを自ら推進できるところが当社の面白いところです。
たとえばビッグテックのような大規模な企業ではどうしてもなかなか自律的に動くのが難しく、大きなプロジェクトの歯車の一つになってしまいがちです。そういう方にとっては、個々人の裁量権が高い当社では、問題解決に必要なあらゆるレバーを自らの手で動かせるコントロール感が大きな魅力ではないでしょうか。
一方、事業会社やSIerでは、なかなかパブリックマインドを持って産業課題を解決するといった視座を持ちにくいですし、それを有言実行で成し遂げていくのは難しいかもしれません。
大学や研究機関などアカデミックな領域から当社に入社する場合は、それまでの研究成果をベースに社会を変えていける点が面白みかもしれないですね。
【加藤】当社でキャリアを重ねることで、1つの領域に限らず複数領域でのスキルセットを身に着けることができると思います。
お話させていただいた通り、事業開発、エンジニア、データサイエンティストが三位一体となって各々が近い距離感でプロジェクトを進めますので、そういった環境下で各人が自身の領域を超えた知見を手に入れることができます。
実際に当社では、先ほど述べたように戦略コンサルティングファーム出身のメンバーがGoogle Cloud Professional Engineerの資格を取得したり、データサイエンティストのメンバーがクライアントの課題ヒアリングや新規事業を提案したりするなど「越境」の事例が数多く存在しています。
このように、チームとしてだけでなく、個人としても三位一体のキャリアを実現し、複合的なスキル形成をしていただくことができると思います。
若手のメンバーにとっては、コンサルティングファームにいってしまうと、最初の2~3年はどうしてもアナリスト業務がメインになると思います。JDSCでは若手であってもプロジェクトリードや提案活動など積極的に業務をお任せしていくので、数多くの経験を積みながらかなり早いスピードでスキルを伸ばしていただけると思います。同世代の方々よりも成長曲線を指数関数的に伸ばせることはメリットだと思います。
他にも、産業全体のグランドデザインを描く力や、プロジェクトを自分自身で動かすリーダーシップが磨かれると思います。プロジェクトマネジメントのスキルも上がるのではないでしょうか。
当社はまだまだ成長途中の企業です。
大きな会社だと実績を出していても、上のポジションが埋まっていてなかなかマネジメント経験を積めないということもあるかと推測しますが、当社であれば年齢や入社年次に関係なく、活躍しているメンバーにはどんどんそういった経験を積んでほしいと考えていますし、実際に取締役や執行役員には30代前半~半ばのメンバーもいます。
これから入社される方には、是非そういったポジションを目指していただきたいですし、実際にポジションに就いてマネジメントスキルを身に着けるチャンスもあると思います。
【加藤】UPGRADE JAPANに共感し、日本の様々な社会課題を一緒に解決したいと思ってくれる方に参画していただきたいです。
とりわけ、成長意欲が高い方や、一つの領域にとどまらずご自身の職務領域を広げていきたいというご志向をお持ちの方にとっては、非常に良い学びの場になると思っています。
各領域において非常に優秀なメンバーが集まっていますので、この素晴らしい環境で個人としても三位一体人材を目指しながら、UPGRADE JAPANを一緒に達成したいという方に参画していただけると嬉しいです。
2000年に研究職として新卒入社し、約7年間処方開発に携わった後、マーケティング部門に異動して約11年商品開発、サプライチェーン管理、プロモーションなど幅広い業務に従事し、美容室向け営業も経験しました。産休・育休、早稲田大学MBAへの企業派遣を経て、今年1月に現職のコーポレート本部長に就任しました。
コーポレート本部は経営戦略、財務経理、総務人事を管轄しており、その中で経営戦略部長も兼務しています。経営戦略部長として中期経営計画策定、予算策定、経営会議の運営、アライアンス推進に携わる他、現在弊社は上場を目指しておりその準備にも携わっています。上場準備は全社プロジェクトとして部門横断でチームが組成されているので、様々な部門の社員と協働する機会が多く、日々様々なことを学んでいます。
大学は理学部で、自分が開発した製品が世に出る楽しさを体感したいと考え、外見だけでなく内面にも力を与える美容関連の研究職に関心を持ちました。広い視野で幅広い業務に携われそうな中小企業を中心として就職活動をしていたのですが、当時は就職氷河期で買い手市場。学生に対して高圧的に接する企業が多い中で、弊社は対応が丁寧で、人を大切にする会社だという印象を受けました。また、当時はヘアトリートメント製品が中心でしたが、今後の成長のために新しい領域に拡大していこうという気概もあり面白そうな会社だなと思い、入社しました。
売上の8割が日本国内の美容室向け製品で、残り2割が国内の一般消費者向け製品と海外事業などとなっています。海外は韓国、タイ、台湾、香港に輸出している他、中国で越境ECを展開しています。もともと自社製造製品が中心でしたが、一昨年に工場を売却し、企画開発に特化したファブレス企業に転換しました。自社の製造能力に縛られず、本当にお客様が求める企画を追求し、そのために必要な技術を持つ国内外の企業とのアライアンスを積極的に行っています。
弊社の特長に、美容師さん達と一緒に製品を共同開発する「共創」という開発方法があります。共同開発自体は他社でもよく行っていますが、予めメーカー側が用意した雛形となる製品があり、それを微調整していく方法がほとんどです。一方、弊社の共創では、雛形は用意せずに最初のコンセプトからデザイン、香り、製品ラインナップ、プロモーションまですべてを美容師さん達と議論しながら作り上げます。そうすることで、美容師さんが本当に欲しい製品を作れますし、発売後も熱意を持ってお客様に薦めていただけます。
この共創のアプローチで初めて開発したのが2009年に発売して大ヒットした「ロレッタ」で、それ以降の弊社の商品開発はすべて共創アプローチを採用しています。現在は共創のパートナーは美容師さん達だけでしたが、今後ニーズに合わせて美容師さん以外の新たな共創パートナーも模索していこうとしています。
チャレンジ精神を大切にする会社です。時代に合わせて変革できる柔軟性があり、その中で各社員が自律的に動ける社風があります。2001年に就任した現社長は時代に合わせて変革していくことを重視しており、先程お話した共創のアプローチも、そんな社長の下で生まれました。
私自身もMBAの授業の中で、業界トップの企業ほど組織の大きさや過去の成功に縛られることで変革が起こりにくいというケースを学んだことで変革していくことの大切さを実感しました。
社名の変更は2度目です。長く1975年の創業時の社名である「モルトベーネ」でしたが、2015年にクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの下行ったリブランディングの一環として社名を「ビューティーエクスペリエンス」に変更しました。これは弊社が大切にしているミッションである『人生に、新しい美の体験を。』をそのまま社名にしたものです。
ミッションを社名にしたことで、私たちが何を目指している会社なのかを顧客に広く認知いただけました。ある程度浸透したので、次のフェーズとして、昨年、顧客の間で略称として普及していた「b-ex(ビーエックス)」を社名にしました。略称を社名にしたことで覚えやすく、ロゴの視認性も高まり、コミュニケーションのスピードも加速しました。
今後の事業の柱として、「クリーンビューティー」に注力しています。クリーンビューティーとは、人や環境に配慮して開発されたエシカル、サステナブルな美容製品です。昨今ではサステナビリティの概念が浸透し、環境意識が高まっています。しかし、ケミカルな薬剤を扱うことが多い美容室では、美容師さん1人ひとりが高い意識を持っていても、アクションを起こしにくいという事情があります。
そうした状況への解決策として、弊社では世界で初めてゼロカーボンシャンプーを発売した台湾メーカーのO'right(オーライト)社と資本業務提携し、日本国内で同社の製品を展開すると共に、今年の3月に「グリーンプロジェクト」を立ち上げました。グリーンプロジェクトは、CO2削減のために美容室が取り組むべき24の項目を制定し、賛同する美容室と共にアクションを起こしていくという取り組みです。また、その他に弊社の既存ブランドも、容器をバイオマスプラスチックに切り替えたり、アップサイクル素材を取り入れるするなどクリーンビューティーブランドへと順次移行しています。
また環境以外にも、ジェンダーフリーなどSDGsの視点を製品に取り入れてリニューアルしています。こうしたクリーンビューティーへの取り組みは業界屈指で、他社との差別化要素にもなっています。「クリーンビューティーと言えばb-ex」と連想していただけるような、アジアNo.1のクリーンビューティーメーカーを目指しています。
7割が中途入社で、温厚・真面目な性格の社員が多く、休日も社員同士で出かけたりするなど、とても雰囲気が良いです。働き方改革にも積極的に取り組んでいて、リモートワーク環境が整っており、フレックス制度もあるため、個人の裁量でコントロールしやすいです。働きやすさに関する社内アンケートでは94%の社員から「満足している」という回答を得ました。
女性社員は過去10年以上全員が産休・育休後に復帰していますし、最近は男性社員の育休取得を推奨しており50%以上が取得しています。また、私自身も利用しましたがMBAへの企業派遣制度もあります。
弊社はまだまだ小さな会社ですが、業界トップになろうという気概を持ち、常に挑戦を続けています。そして社員と会社が共に成長できる場所にしたいので、変革を恐れずに新たなことにチャレンジする意欲のある方、会社とともに成長したいという向上心がある方にお越しいただきたいです。また、他者と協力しながら最適解を導き出せるコミュニケ―ション能力の高い方を求めています。ヘアケアへの関心が高い方であれば、楽しみながら仕事ができると思います。
私が管掌するコーポレート部門でも採用をしており、経営戦略部では中計策定やアライアンス、IRを担える方を、人事部では制度設計や労務管理、研修制度、従業員エンゲージメント向上施策を立案できる方を探しています。
]]>【鳥光】前職のアクセンチュアではエンジニアとビジネスコンサルの両者を経験し、その中でデータマネタイズやデータ活用戦略策定、データ分析基盤構築など、一貫してデータに関わってきたので、今後もデータをキャリアの軸にしたいと考えていました。データを扱えること、コンサルティングの経験を生かせること、さらにベンチャーの自由な環境の中で会社の成長に貢献できる、ということに魅力を感じ、初のプロパー社員としてインキュデータに参画しました。現在は、主にお客さまのDX戦略やデータ活用のプランニング、要件定義などワンストップで案件を展開しています。
【河井】私はビジネスデザイナーとして、お客さまを本質的な課題設定からサポートし、アウトプットに囚われないビジネス改革を共創するパートナーとしてコンサルティング支援を行っています。前職はコンサルティングファームやクリエイティブファームでデータアナリストやサービスデザインといったキャリアを積んできました。これまでのキャリアを通じて、クリエイティブやデータなどさまざまな要素を複合的に組み合わせながらビジネスデザインすることの重要性を学び、この考え方をもっと日本企業にも浸透させたいと考え、日本企業を支援できるファームを探してインキュデータに入社しました。
【鳥光】「CDPを導入したい」「データ統合して事業間連携したい」などのご相談を受けることが多いのですが、そもそもなぜデータ統合するのかという目的が不明確、もしくは目的が目的に成り切れていないケースが多いです。データを活用するにあたり「ビジネスをどう変革するのか」「顧客にどのような体験価値を与えるのか」など、私たち本質的に何を成し遂げるのかを作り上げるところからお手伝いしています。また、こういった目的整理もビジネス、テクノロジー、ユーザという三つの視点から同時に戦略を立てていく必要があり、どれかが片手落ちになってはならないと考えています。そのため、ビジネスコンサルティング部には三つの職種が混ざっており、左脳的にビジネス課題を解決するビジネスコンサル、右脳的に顧客視点からビジョンを作り上げるビジネスデザイナー、戦略・ビジネス要件からテクノロジーに落とし込むITコンサルタントが在籍しています。
【河井】まさに、現在私が担当しているプロジェクトも当初CDPの導入についてご相談をいただいたのですが、データに関する議論の前に、
そもそものビジネスモデルや顧客体験をより深く検討すべきだという結論に至り、まずは新規事業の顧客体験設計を支援しています。
【鳥光】インキュデータの収益効率だけで見れば、積極的にCDP導入を進めた方が効率的ですが、お客さま側の体制が整わないままでは、上手く活用できずに解約ということにつながりかねません。そうなると、お客さまにとっても私たちにとっても良い結果となりません。
【河井】コンサルティングファームの支援の多くは戦略の策定までで、意思決定や実行面はお客さまに委ねてしまいますが、私たちは実行面まで支援を行っています。最終的には、プロジェクトを通じてお客さまの企業文化や組織を変えること、そしてお客さまが自走できる状態になることを目指しています。実行支援の際、コンサルタントに求められるのは、経営層と事業部を繋ぐ「ハブ」となることです。エンジニアはデータ文脈で話しますし、経営層は経営文脈で話します。同じ課題に対しても立場によって文脈が変わりますので、プロジェクトを円滑に進めるためにも、私たちが間に入って橋渡しすることが必要です。そうした役割を担っていることは、これまでもお客さまに高く評価いただいています。
【河井】先ほどお話したビジネス・サービスデザインのプロジェクトです。当初は新たに立ち上げるサービスを誰に、どのタッチポイントで、どのようにコミュニケーションするべきかという、マーケティング文脈でのご相談でしたが、そもそも新規サービスが"何のために存在するのか?"について深堀りし、既存のアセットや顧客に伝えたい体験価値などをワークショップを通じて整理し、サービスコンセプトやサービス名、ロゴ、顧客体験に至るまで一貫して策定に関わりました。このプロジェクトではまだデータには触れていませんが、将来的にはデータを活用して何かできないか長期的な視点から検討していきます。新しい顧客体験を作り上げたことで、既存サービスのユーザ属性とは異なる新しい顧客データが取れるようになりました。この顧客データはほかのビジネスにも活用できますし、ほかの事業のデータと組み合わせることで化学反応も期待できます。
【鳥光】証券会社のデータマーケティングプロジェクトです。証券会社のこれまでの考え方として市場が変動すれば取引数が増えて収益が上がるため、これまであまりOne To One マーケティングが重要視されてきませんでした。しかし、老後2,000万円問題をはじめ、投資ビギナーが増えてきていることに私たちは着目し、証券会社の豊富な商品や金融の知識をうまく裁けずに、結局口座を開設したまま何をしたら良いか分からずに放置するケースが多くなっているのではという仮説を立てました。実際にお客さまのデータを使ってその仮説を裏付けることができ、私たちはそれぞれの投資スタイルや知識量・ステージに合わせた情報を提供して「ユーザの背中を押す」こと、それによりユーザの投資の成功体験・金融知識を醸成させることで手数料から金融収益の高い商品へシフトさせていくことをCDPの目的と定めました。このように、企業本位にならず顧客視点でのデータ活用を考えつつ、ビジネス効果も狙った目的設定することが本質を追求する姿勢であり、非常に大切なことです。その結果、口座開設後の取引件数を大幅に増加させることに成功しています。
また、このプロジェクトはお客さま側の若手と弊社のメンバーをワンチームとした育成チームを構成して進めています。私たちはコンサルが残り続けることを良しとせず、最終的にお客さまが自走できることを目指しているため、このような体制を作っています。若手社員の方を巻き込むことで、企業の慣習に囚われずに柔軟な発想を生み出すことも狙っています。若手社員の活躍を通じてお客さま社内でチームの存在は徐々に知られるようになりましたし、マーケティングの重要性に対する認識も徐々に変わっていきました。
【鳥光】かなり自由な社風で、親会社からの強い干渉もありません。一方で、親会社の豊富なアセットやケイパビリティは手の届くところにあります。ソフトバンクやグループのYahoo! JAPANが持つビッグデータ活用に関するナレッジは業界屈指のものですし、トレジャーデータとはプロダクトについて密接に連携しているのでプロダクト改善のフィードバックもしやすいです。まだまだ各社のアセットやケイパビリティには活用の余地があるので、現在そのための仕組みも検討しています。
【河井】一般的なコンサルティングファームではパートナーの人脈で案件をソーシングしますが、弊社では日本全国に顧客基盤を持つソフトバンクがソーシングをしています。首都圏の大企業から地方の優良企業まで、さまざまな業種・業界・地域の企業からご相談をいただいています。
【鳥光】もう一つ挙げるとしたら、自社の成長にも貢献できる事業会社としての側面を持つことです。昨年、私が手を挙げて立ち上げたインキュデータの成長戦略を考えるプロジェクトが、その後中計推進室となり、河井と二人で兼務しています。インキュデータの成長のために足りないパーツをどのように補うか、三社合弁の強みをどのように生かすか、どのようにブランディングを刷新するかなど成長に必要なさまざまな議論をしています。
【河井】インキュデータ自体をコンサルティングしているイメージです。大手ファームでは現場のコンサルタントが自社をどうしたいかと意見を出すことは難しいですが、インキュデータは良い意味で規模が大きくはないので積極的に意見を出すことができます。その一方、資本力はあるので、前向きな視点で自社を今後どのようにしていきたいかを考えることができるのでとてもやりがいがあります。
【河井】特に若手にとってのメリットですが、一人一人の業務の幅が広く、若手でも新規提案に入るなどハイレベルな業務に挑戦できます。大手のファームでは、新規提案やプロジェクトの組成に関われるのは、シニアマネージャやパートナークラスで、若手が挑戦できることは少ないと思います。将来のキャリアを考える上でも、若い頃からハイレベルで視座を高める業務を経験できることは大きなメリットだと考えています。
【鳥光】頭一つ抜きんでたコンサルスキルが身につけられると考えています。例えば、YouTuberという職業が誕生したように、あらゆる専門性は誰もが安価かつ容易に手に入る世の中で、ロジカルシンキングやパワーポイントのスキル、業界専門性などコンサルティングスキルといわれてきたものが非常に汎化されて価値が低下してきていると感じています。そこから頭一つ抜きんでた真のコンサルティングスキルを磨くことができるのは、新規提案の場面だと考えています。若手のうちから提案機会に携わってもらうことで課題がどこにあるのか分からない状態でお客さまと話を詰めて「ビジネスを生み出す」力を身に付け、提案の場で経営者を目の前にして彼らが何を考えているのかを肌で感じられるため視座高く物事が考えられるようになります。
インキュデータでは担当業界も固定されていないので一人のコンサルタントがさまざまな業界の企業を担当します。あくまで業界のスペシャリストはお客さまであり、私たちはそのほかの領域でシナジーを発揮すべきであると考えています。新しい業界をキャッチアップするのは大変ですが、年々業界間はボーダレスになりつつありますし、他業界の状況を知りたいというお客さまのニーズも高まっています。その環境下では幅広い業界で深い知見を持っているということはコンサルタントとしての大きな強みになります。
【河井】必ずしもコンサルティングの経験が必要という訳ではなく、発想が柔軟でバイタリティのある方です。そのような方であれば会社を取り巻く環境が変わっても順応できると思います。
【鳥光】先ほども言った通り、コンサルティングスキルも、因数分解するとそのほとんどが基礎的なビジネススキルであり、それさえあれば最近は未経験者でも採用しています。コンサルタントとして生きるために必要なのは一般論や正論ではなく、本質的な課題を掘り下げて考えることができ、お客さまの心を動かすメッセージが届けられるスキルです。最初からそのスキルが必要ということはありませんが、そのマインドを持つ方に来て欲しいと思っています。
【鳥光】若手のうちからハイレベルな業務を通じて高度なビジネススキルを得ることができるのは、キャリア上大きなメリットになります。またインキュデータにも親会社にも、豊富なアセットがあります。その環境を徹底的に利用し倒すぞ、という気概のある方は弊社に合うと思いますので、ぜひチャレンジしてください。
【河井】業種やテーマに区切りがないので、何でもできますし、逆に言えば何でもやらなければなりません。それをポジティブに捉え、自身の成長に高い意欲を持つ方には最適な会社です。さまざまな業種やテーマの仕事ができるのは、コンサルタントという職業ならではです。ぜひ自分の強みを伸ばし、尖らせるための自分磨きの場として活用していただきたいと思っています。
「撮影場所:WeWork GinzaSix」
]]>【太田】大学院ではバイオを専攻し、酵母菌のたんぱく質について研究をしていました。未知の分野に取り組みたいと思ってバイオを専攻しましたが、基礎研究なので直接的に製品開発を行う分野ではなく、卒業後の進路は大学に残って研究論文を書くか、食品メーカーの研究所に就職するかでした。私はもっと社会と直接関われる仕事がしたかったので、別の道を模索することにしました。
当時から、漠然と起業を意識していました。親が弁理士事務所を経営していたり、東京大学アントレプレナー道場1期生としてビジネスコンテストとして参加したり、また当時(2000年代中頃)はベンチャー企業が注目された時代でそれ以前と比べて起業への精神的なハードルが下がった時代でもあったこともあると思います。ただ、実際にビジネスをした経験はなかったので、卒業してすぐに起業するのではなく、一度企業に勤めることにしました。
2006年、新卒でJPモルガン証券の投資銀行部門に入社し、主に大企業のM&Aアドバイザリー業務に従事しました。キャリアのスタートに投資銀行を選んだのは、経営者と近い仕事であること、経営者に必須であるファイナンスの知見を高度に身に着けることができるので最も経験値を積めると考えたためです。M&Aは総合格闘技のように幅広い論点を扱えますし、クライアント経営者の大きな意思決定に寄り添う仕事なので、やりがいを持って働いていました。しかし、投資銀行の仕事はディールが成立すればそこで終わりで、その後の事業に関われません。私は事業に関わりたいと思い、ファンドへの転職を志向するようになりました。
そして、2011年に設立間もない産業革新機構(現・産業革新投資機構)に入社しました。いつか知的財産関連で起業したいと考えていたので、日本初の知財ファンドの設立を掲げていた産業革新機構を選びました。知的財産に関心を持っていたのは、両親が特許事務所を経営していたこともありましたし、既にアメリカで知財ファンドが注目されていたこともありました。彼らは「特許ゴロ」と揶揄されることもありましたが、まだ社会実装できていない素晴らしいアイデア(特許)を購入し、その特許を活用して新しいビジネスを創出するイノベーターの役割も担っていました。産業革新機構には5年間在籍しました。前半はプライベート・エクイティ投資に従事しました。後半は知財ファンドの立ち上げに携わり、また、母体の経済産業省の方針で会社としてベンチャー支援を強化していたので私もベンチャー投資部門に移りベンチャー投資を行っていました。そこで様々な投資先候補の経営者とお会いしていたのですが、リスクを背負っている起業家を相手にしているのに対して、私自身はサラリーマンでノーリスク。その在り方に葛藤があり、いよいよ私自身が起業をするタイミングなのかもしれないと思いました。
そして、一緒に起業してくれるパートナーを探し始めました。名もないスタートアップがビジネスで勝つには、新しい領域で発展余地の大きいITが良いと思っていたのと、私自身は経営に専念したかったので、エンジニアのパートナーを探しました。色々な人に声を掛ける中で、昔からの知り合いだったCTOの白倉と再会し、半年程話し合った後に一緒に起業することにしました。
【太田】実は最初は、知財関連でビジネスをしていました。無効資料調査という、取得済の特許の無効化を訴える訴訟で使用される、訴えの根拠となる文献を収集する調査があります。その無効資料調査の依頼をプラットフォーム上に投げると、調査員が根拠になりそうな文献を世界中から探してきてくれるというサービスをリリースしました。しかし、実際に運用してみると、お客様からは営業マンの私が調査結果を深く理解していることを求められましたし、調査員に対してはお客様に意図をしっかりとヒアリングした上で伝えないと適切な調査結果が上がってきません。プラットフォーム上では完結せず、オフラインでのコミュニケーションの負担が非常に大きかったのです。これでは実質弁理士事務所と変わらず、こうした形で起業したかったのではないと思い、半年程でサービスを終了しました。
次に何の事業をするかは、白倉と徹底的に議論しました。私たちの中で軸は2つあって、1つは自分達が得意なB2Bビジネスであること。もう1つは、技術的に難易度が高いこと。その点でAIは自分達にぴったりでした。AIを用いた複数のビジネスモデルを検討した中で、最もお客様の役に立てそうなイメージが湧いたのが今のAIチャットボットでした。グローバルでは米国や中国が先行していましたが、日本ではまだ市場が立ち上がろうとしていたタイミングで、私たちは比較的早い参入でした。構想から約半年で、β版としてサービスをリリースしました。
お客様に長く使っていただくSaaSサービスの開発に終わりはなく、今も日々アップデートを重ねています。KUZENは最初のβ版から、アップデートを重ねて随分と進化しました。
ずっと起業をイメージしてキャリアを積んできた太田氏が満を持して起業しても、簡単にうまくいくものではなく、やはりピボットを経験していた。ただ半年でサービス終了という決断をしたこと、そのタイミングがチャットボット市場の立ち上がるタイミングであったことが、現在の同社を生んでいる。
【中里】私は2021年7月に入社し、COOとして、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどのビジネスチーム全体を管掌しています。
キャリアの変遷としては、まず大学卒業後にローランド・ベルガーに入社しました。最初にコンサルティングファームを選んだのは、経営や戦略、組織に関心があり、若い時からスピード感を持ってプロジェクトに関われるためです。大学では開発経済学を専攻していて、在学中にアフリカのNGO団体で1年間インターンをした際に、その団体の経営や組織運営がうまくいっておらず、活動にインパクトを出すためのマネジメントの重要性を実感したことも経営に関心を持つきっかけの一つでした。
ローランド・ベルガーに6年勤務した後、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールにMBA留学をしました。ローランド・ベルガーでは幅広い業界の興味深いプロジェクトに数多くたずさわることができましたが、中計策定やマーケティング、海外進出の案件が多く、一方で資金調達含めたコーポレートファイナンスや人事組織設計といった分野には触れる機会があまりありませんでした。そのため、一度経営を体系的に学びたいと考えてMBAに行くことにしました。また、コンサルティングの延長線上にあるキャリア以外の、新しい可能性を模索してみたいとも考えていました。
ウォートンには様々なバックグラウンドの優秀な同級生がいて、彼らと話す中で刺激を大いに受けましたが、特に関心を持ったのがテック業界でした。西海岸のテック企業出身者の話を聞きながら、テックビジネスが社会に与えるインパクトの大きさ、彼らのキャリアの中での存在感の大きさを実感し、純粋に興味が湧きました。
MBA取得後はGoogleに入社し、APAC地域の広告営業の戦略策定やオペレーションに関わりました。東京オフィス、シンガポールオフィスで延べ4年間を過ごし、「ここではもうやり切った」という感覚があったこと、また、Googleがまだ小さく、まさにスタートアップだったころの話を同僚から聞くなかで、自分自身もスタートアップで挑戦してみたいと思うようになりました。
その後、データ活用ソリューションを提供するスタートアップのフライウィールに入社、ビジネスマネジャーとして営業戦略やオペレーション構築を中心に、様々なことに取り組ませてもらいました。
そして2021年7月にコンシェルジュに入社し、現在に至ります。
【中里】太田や白倉と話して、相性の良さや絶対的に信頼できる二人だと感じたのがまずは大きかったです。また、エンジニアサイドとビジネスサイドの関係性が非常によく、両者が対等な立場で会社全体を良くしていくために協働することが自然とできていて、まさに理想的なテックスタートアップだと感じました。
加えて、私がローランド・ベルガーやGoogleで学んだ、戦略・マーケティングやビジネスサイドの組織づくりの知見が、ちょうどコンシェルジュにとってのミッシングピースだったので、貢献できそうだと思ったことや、KUZENというプロダクトも今後色々な形で発展させられそうだと思ったこともありました。
コンサルティングファームとGoogleを経験した中里氏が将来性を感じたというコンシェルジュ。エンジニアサイドとビジネスサイドの関係性というのは、特に顧客の声を反映させながらプロダクトを進化させていくSaaSではプロダクトの将来性にも大きく関わってくる重大な問題である。
【太田】弊社の社名の「コンシェルジュ」の由来でもあるのですが、ユーザーひとりひとりに対してコンシェルジュ的なサービスをチャット上で提供したいというのが、KUZEN開発の出発点です。チャットボット業界のプロダクトの多くが、問い合わせの自動化を目的としているので、KUZENは開発の出発点からユニークだと思います。
ちなみにKUZENの名前の由来は、"空前絶後"です。最初はサービス名も「コンシェルジュ」にしようとしていましたが、あまりにも一般名称だったので、人の頭に残りやすいカタカナ4文字で、且つ「他とは違うぞ」というニュアンスを含めてこの名前になりました。コーポレートロゴ「ConciergeU」の「U」というのは「あなたへ」という意味で、"パーソナライズ"のニュアンスを追加しています。
【中里】個人的には「KUZENをチャットボットと呼んでいいのか」とすら思っています。一般的なチャットボットの活用方法と言えば、ユーザーからの質問に対して回答を返す、問い合わせ対応の自動化ですが、KUZENの活用領域はそこに留まりません。KUZENが実際にしていることは、乱暴にまとめてしまうと、「既存のインターフェースをチャットインターフェースに置き換えること」だと思っています。例えば、様々なSaaSプロダクトが生み出されるなかで、社内の一般的な業務は次々とデジタル化されています。経費申請や休暇申請といった業務を紙やメールで行っている企業はもはや少数派だと思います。ただ、このような汎用的なツールでデジタル化できる業務は実はごく一部で、そうではない独自の業務フローが各社にたくさんあります。そういった業務はデジタル化できずに取り残されてしまっていますが、かといってそのためにフルスクラッチで専用インターフェースを開発するとコストが見合いません。そんなときに、チャットインターフェースという誰もが使いやすいインターフェースほど適したものはありません。例えば、あるクライアントでは、工場の特殊な機械が故障した時の修理依頼をKUZENのチャットインターフェースから行っています。チャットの誘導に従って必要事項を記入すると、自動で外部システムと連携され、その後の承認プロセスなどが走ります。このように、DXソリューションとしてチャットボットを提案している会社は殆どありません。KUZENの外部拡張性や柔軟性がそれを可能にしています。
【太田】チャットボット市場に関する様々なレポートが出ていますが、いずれのレポートでも市場成長性は高いとみています。実際に、私たちも期待値の高さを肌で感じています。弊社は「チャットボット」「対話型ロボット」などという言葉を聞いた時に、第一想起できる会社になることを目指しており、そのために現在は営業やマーケティングに注力しています。
【中里】先程述べたように、チャットインターフェースで代替できる潜在的なビジネス領域はまだまだあります。これは一般的な市場レポートでは捉えられていないので、実際の市場の成長性はレポートで報告されている以上のものになるとみています。例えば、最近顕在化して高い成長性を見せているのがチャットインターフェースのオンラインショッピングでの活用です。従来のeコマースのインターフェースは、買いたいものをウェブサイトで見つけ、それをバスケットに追加し、ページ遷移して、決済する、というものです。それに対して、チャットでやり取りをしておすすめされた商品をそのまま購入できる、という取り組みが出てきていて、少しずつ存在感を増しています。こうした既存のインターフェースをチャットインターフェースが置き換える、もしくは補完する動きが広がることで、高機能で柔軟にシナリオ対応できるKUZENには大きなチャンスになります。
弊社の成長戦略はお客様と共にこのような新しい領域を探していくことで、伝統的なチャットボット市場で競合とパイを奪い合う、という方向性ではありません。ただ、いくつか見えている潜在的な領域のなかで、圧倒的に強いドメインを作る必要性は感じていて、そのために新たなプロダクトづくりに取り組んでいます。
競合とパイを奪い合う競争をするのではなく、プロダクトの新しい活用場面を開拓して新しい市場を作っていく戦い方というのが印象的であった。エンジニアサイドだけではなく、新しい活用場面を探すビジネスサイドの重要性も非常に高い会社である。
【中里】これまでお伝えしてきたようなKUZENの価値の分かりづらさですね。プロダクトやその価値の理解促進は営業面はもちろん、採用面でも非常に重要なので、マーケティングやコミュニケーションを全面刷新中です。
【太田】SaaSは継続的に使っていただくプロダクトなので、お客様とのコミュニケーションを担うビジネスサイドの社員が多く必要なのですが、全く足りていません。事業目標を達成するためには、ざっくりと今後2~3年で社員数を2~3倍に拡大する必要があります。また、現在組織が拡大する中で、チームが細分化されるにつれて段々と密なコミュニケーションが難しくなるといういわゆる『組織の壁』に直面しています。そのため、共通価値であるMISSION/ VALUEを刷新したり、その浸透に取り組んだり、新たな評価制度を検討するなど、強い組織にするための施策に時間を割いています。
【太田】MISSION/VALUEは以前からありましたが、私が誰にも相談せずに何となく作ったものでしたので、当然の様に浸透しませんでした(苦笑)。しかし、会社の方向性を示すもので、日々の活動の中での優先順位を判断するために欠かせないため、拡大中の今改めて整理することにしました。
新しいMISSIONは『テクノロジーで、対話の可能性を広げる仕組みを創る』です。スマートフォンの普及で、チャットやコミュニケーションツールを使うことは一般的になりました。多くのコミュニケーションがチャットに置き換わり集約されれば、ユーザーにとっての利便性は向上します。KUZENによって新たに対話を置き換えられる領域を広げていきたいという思いを込めました。
【中里】VALUEは、「Outside the Box」「Goal Oriented」「Team ConciergeU」です。Outside the Boxは、既存の枠組みに捉われずに新しい価値観を生み出して市場を創造していくこと。Goal Orientedはアウトプットにこだわり1人ひとりが自ら考える目的志向を持つこと。最後のTeam ConciergeUというのは、チームを超えて協力してより良いサービスを目指していくチームワークを表しています。今後新しく入社される方には、このVALUEに共感してくださる方に来ていただきたいですね。
【中里】若い社員が多く、とにかく活気があります。バックグラウンドも、私のようなプロフェッショナルファーム出身者もいますが、イベント会社だったり、デパートの販売員だったメンバーもいます。今はリモート中心で、週2日の出社ですが、みんながオフィスに集まると本当に活気があります。
【中里】SaaSのビジネスチームは、お客様とエンジニアサイド、つまり社外と社内を繋ぐコミュニケーションハブとしての役割を持っています。お客様に対しては、KUZENの良さやプロダクトの可能性をお伝えしながら、一緒に活用方法を考えていくことが求められます。社内のエンジニアに対しては、お客様が本当に求めているものをきちんと理解した上で伝えることで、よりよいプロダクトのアップデートに貢献することが求められます。これまでのご経験やスキルに関わらず、まずはこのようなミッションに意義とモチベーションを感じられる方とご一緒したいと思っています。
【太田】私たちのプロダクトは導入しただけで成果が出るものではありません。お客様に上手に活用いただき、社内で定着させることで初めて成果が上がります。そのため、オンボーディング支援は非常に重要です。
【中里】あとは、3つのVALUEである「Outside the Box」「Goal Oriented」「Team ConciergeU」に共感していただける方です。特に自分の業務範囲外でも必要だと思ったことに躊躇なく取り組めるマインドセットを持っている方に来ていただきたいと思っています。関心を持った方には是非応募いただきたいです。
VISION/MISSIONを刷新して、マーケティングも刷新して、これから更なる躍進を遂げようというコンシェルジュ。取材以前は、他社とどのように差別化していくかが今後の成長を決めるのだろうと思っていたが、プロダクトの高機能や柔軟性を武器に、新しい活用方法を探していくという成長戦略は非常に納得感があった。そうした成長戦略において、顧客と対話し、新しい活用方法を探すビジネスサイドは大きな貢献ができ、やりがいも大きい。
なお、お二人は非常に優秀なキャリアではあるが、謙虚で穏やか、非常に話しやすい方々だ。働きやすい風土を作られている事も頷けた。
これからさらに飛躍的な成長を遂げるであろう同社で、ともに新たな市場を作る経験を積んでみてはいかがだろうか。
【永崎】私は新卒で三井物産に入社しました。11年間在籍し、その間に人事部採用担当、鉄鋼貿易、鉄鉱石資源開発に従事しました。
鉄鋼貿易部門は、しばしば商社不要論で語られるトレーディングという伝統的な商社ビジネスの部門ですが、日々売買の最前線に立ち交渉する中で、自分なりの付加価値のつけ方を学び、ビジネスの機微を肌感覚で分かるようになりました。その後、異動した鉄鉱石資源開発部門は、逆に商社が注力している事業投資で、巨大な収益を上げている部門でした。事業規模が非常に大きいため、意思決定は役員クラスが行います。その意思決定の現場を見ながら「私も自身で意思決定をして、社会にインパクトを与えたい」と思うようになりました。同時に、私個人としての「言い訳のない人生を送りたい」という想いも大きくなっていたので、退職を決意しました。
具体的にプランがあって退職した訳ではなかったので、退職後は何年にも亘って、もがくことになります。まず飛び込んだのがあるインドにおける教育プロジェクトで、手段としてはチャリティ(慈善事業)の世界でした。「多くの人が純粋に自分の夢やチャレンジを追いかけることができる社会にしたい」という想いがあり、その実現のための手段としてチャリティを選択しましたが、次第に立ち行かなくなってしまい、1年程で撤退することになります。この時に、価値ある活動をサステナブルにするために潤滑油としてのお金の重要性を痛感します。その頃には生活資金も底を尽きてしまったので、生きていくためにナガサキ・アンド・カンパニーを設立し、最初はコンサルティングや健康器具の販売代理など何でもやっていましたが、自分の思いの強い分野でという想いが強くなり、教育事業に参入しました。
社会で活躍できるのはたとえばコミュニケーションに長けた人であるなど、必ずしも学業成績で反映される訳ではなくスコア化できない領域だという問題意識から出発し、解決策として小中学生向けの起業家精神をテーマにした事業を立ち上げる中で、教育に力をいれているAOKIホールディングスの青木拡憲会長と出会いました。青木会長の教育財団が主催する、横浜市の中学生を対象にした起業家育成プロジェクトに対して、自分の理想を詰めこんだ企画書を提案したところ、とても気に入っていただけて、プロジェクトを一任していただきました。ここでようやく、ナガサキ・アンド・カンパニーは会社として安定した収益を得ることができるようになりました。
それから少し経った2016年末、青木会長から、「君が考えている日本社会の課題は間違っていないが、君が主張しても誰も聞いてくれない。君は"教育者"よりも"ビジネスマン"に向いている。日本を代表する経営者になって発言力を高めなさい。」という言葉をいただき、起業家としての成功を目指して一念発起します。そんな時に、ベンチャーキャピタリストの赤浦徹さん(インキュベイトファンド代表パートナー)と知り合い、「宇宙ビジネスをやってみないか」言っていただいたことがきっかけで、宇宙産業に関わることになりました。
【永崎】当時は今みたいに宇宙ビジネスが注目されていた訳ではなかったですし、最初は驚きました。しかし、考えてみると「日本を代表する経営者になるためにはこれくらいぶっ飛ばないとだめだな」と。三井物産退職以来、3年近くももがいていたので、マグマも溜まっていて爆発させたかったですし、ここまでぶっ飛んだテーマでないと当時の自分は納得しなかったんじゃないかと思います。
とは言え、スターウォーズすら見たことがないぐらい宇宙には縁が無かったので、宇宙産業に将来性があるか、ビジネスとして成立しえるか、どのようなビジネスモデルで参入すべきかなど半年かけてしっかり検証しました。コネクションを辿って日米の有識者のもとを尋ね歩き、色々な立場の方の話を聞く中で分かったことは、そもそも事業として開発されていないということ。アカデミック研究の延長のベンチャー企業は多くあるものの、利益を上げている事例は多くなく、かつそれをサポートできる組織もない。収益を確保できなければ、その産業はサステナブルではありません。これはチャンスだと思いました。私が三井物産やナガサキ・アンド・カンパニーでやってきた事業開発が求められていて、その経験やノウハウを活かすことができます。宇宙産業の将来展望については様々な意見がありましたが、人類は最後には"遠く"を目指すので将来的に成長すると直感的に思えたので、腹は決まりました。
赤浦さんに出資していただき、宇宙(Space)+ビジネスデベロップメント(BD)で、Space BDを設立しました。実は、当初社名を「宇宙商事株式会社」にしようとしていましたが、周りから全力で反対されました。今思えば、本当に止めてもらえてよかったです。(笑)
【永崎】よく、面接などで「やりたいことは何か?」と聞かれますが、私はこの質問は残酷だと思っています。やりたいことを明確に見つけられた方は本当に幸せで、多くの方は漠然と「何かを成し遂げたい」という想いはあっても、その想いをどこに向けたら良いのかが分からずに困っているんじゃないかと思います。ただ、具体的に何をしたいかを見つけられなくても、「どういう生き方をしたいか」は見つけられると思います。そこだけはしっかりと考えて、色々な人に会っていけば、時間はかかるかもしれませんがおのずと何か見えてくるのではないかと思います。
【金澤】私のキャリアを語る上で、少し昔の話をさせてください。もともと、私は世界で活躍できるプロテニスプレイヤーを目指していました。中学3年の時に団体で全国優勝、オーストラリアで開催された国際大会に出場しましたが、ここで世界のレベルの高さに衝撃を受け、日本国内での優勝がいかに井の中の蛙だったかを実感しました。また、1年後に再会した海外のライバル達が自分が追いつけない程に成長したのを見て、プロテニスプレイヤーの夢を断念しました。コーチやトレーナーなど育成の側で世界を目指すことも考えましたが、経営者の祖父の背中を見ていたことなどもあり、全く異なるビジネスで世界を目指すようになりました。
その後、大学3年生の時にアメリカの大学に留学し、マンハッタンにある邦銀でインターンシップを経験しました。当時はリーマンショックの翌年で、多くの店舗が閉店し街に失業者があふれる一方で、その原因になった金融マン達は闊歩しているという異様な光景を目にしました。当時の私はアメリカに強い憧れを抱いていましたが、その時にアメリカが全てにおいて優れているわけではないと感じ、日本の魅力を世界に発信できるビジネスを創りたいと思うようになりました。そして、帰国後にOB訪問で当時三井物産で働いていた永崎と出会います。自分が求めていた日本の良さを世界に発信できるビジネスでしたし、何より他の誰よりも真剣に話を聞いてくれる永崎に憧れて三井物産への入社を決めました。
入社後は、金属資源本部でリサイクルビジネスを担当し、自治体と組んで廃棄された携帯電話を回収してその部品からレアメタルを集めたり、インドで家電リサイクルプラントを立ち上げるプロジェクトの実地調査をしたりなど、プロジェクトマネジメントとして面白い経験を積むことができました。しかし入社3年目の時に、このままここにいて、高い志を維持しながら日本が世界に誇れる産業を創れるのかと疑問に思うようになり、かつてテニスプレイヤーの道を断念してまで世界を目指した当時の自分に嘘がつけずに退職を決意しました。
その後、自分に自信をつけるために、かつてテニスの世界大会でも思い入れがあったオーストラリアにMBA留学しました。帰国後は、ここで勝負できるという自信がある分野はまだありませんでしたが、私費留学で尽きてしまった金銭面を立て直す必要があり、白状すると知的好奇心や自身のプライドを満たしつつ経済を立て直すための道としてコンサルティングファームへの転職の道を選び、PwCに入社しました。PwCでは、M&Aアドバイザリー業務に従事し、カーブアウトなど難易度の高い案件に参画し、緊張感がありつつも充実した日々を過ごしました。非常に良い経験を積むことができて、経済面や精神面も立て直せたものの、やはり何かの事業で勝負したいという想いがあったので、退職を決意しました。退職後は、しばらくの間複数のベンチャーを手伝いながら過ごしていました。
色々な壁にぶつかり、人間関係に悩み、「これ」という道を決めきれずにいた期間でしたが、その間も、永崎とは定期的に会っていて、いつもお酒を飲みながら「お前はそんなんじゃないだろう」とハッパをかけてもらっていました。気付けば20代も終盤に差し掛かったある時、永崎から、宇宙ビジネスを始めるという話を聞きました。あまりに突拍子もなかったので驚いた一方、尊敬する永崎と一緒に宇宙という新しい領域にチャレンジしてみたいと直感的に思いました。当時ビジネスサイドでは採用をしていませんでしたが、永崎に無理を言って入社させてもらいました。
お二人とも、失敗経験を含めて非常にざっくばらんにお話ししてくださる人間味のあふれる方だ。宇宙事業はもともとやりたいと思っていたわけではなく、他人から与えられたテーマだったのだが、お二人の持っていた「どうありたいか」に合致した、という経緯なのが印象的である。
【金澤】弊社は「宇宙の総合商社」として、宇宙における事業開発を行っています。JAXAから受託した事業権を活用する案件について、関係各所との予算調整や安全審査の手続きなど煩雑なプロセスを引き受けることで、潤滑油としての働きを担います。
ビジネスの起点となったのは、2018年にJAXAの民間事業である『国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」からの衛星放出事業』の事業権を獲得したことです。平たく言えば、衛星を宇宙ステーション(ISS)に持っていき宇宙空間に放出する権利で、この事業権を得たのは弊社と三井物産の2社のみです。それまでは、「宇宙商社」をただ標榜しているだけの会社でしたが、この事業権を獲得したことで、宇宙産業における存在感を高め、様々な企業・団体からの依頼を受けてビジネスを拡大することができました。その後も、2019年3月に「きぼう」にある実験設備の利用事業者に選定されるなど、今日までにJAXAが「きぼう」利用関連で民間パートナーを選定している4つの事業全てで事業権を得ている唯一の企業になりました。
それら4事業を抑えているからこそ得られた情報やネットワークを起点に、直近1年程で宇宙産業の中で多角化を推進しています。一つは、国際宇宙ステーションでのライフサイエンス実験の支援。宇宙の微小重力環境下では、高品質なタンパク質の結晶生成が可能で、高品質な結晶を用いることでタンパク質の立体構造をより詳細に解明できます。病気の原因となる、ヒトの体の中にあるタンパク質とそのタンパク質に作用する新薬候補が、どのように作用しているのかといった創薬において有効な実験ができます。その他にも、JAXAと共に様々なフィジビリティスタディを実施していたり、衛星から送られてくる地球観測データを活用した地上でのビジネスを開発したり、国内の宇宙ベンチャーからの依頼を受けて優良な衛星部品を海外から調達していたりと、「宇宙の総合商社」として多様なニーズに応じて柔軟に対応しています。
最近ではナガサキ・アンド・カンパニーの系譜を引き継いだ教育事業もどんどん立ち上がっていて、クラーク記念国際高等学校で「宇宙教育プロジェクト」という衛星開発を通じて未来のリーダー人材育成を目指す取り組みを始めました。衛星メーカーや、航空宇宙工学の権威である東京大学の中須賀教授、宇宙飛行士の山崎直子さんにも協力いただき、「宇宙」をフックに、課題解決やプロジェクトマネジメントを学んでいただける面白い教育プログラムになっています。
同社のビジネスの強みとして、同社が資産を持つわけではなく仲介役という立場なので、原則一件一件のプロジェクトで粗利が出せる、という事が挙げられる。これはキャッシュを回す上で重要なポイントだ。
【永崎】私たちのクライアントは企業、学校法人、新興国政府など様々ですが、多くの場合は宇宙のプロフェッショナルではありません。彼らのざっくりとしたオーダーを分解し、どのような形で具現化できるかを調整し、合意形成を得て、プロジェクトの全体設計をします。その実現のために、まず衛星を製造するパートナー企業と連携して、クライアントの要望を叶える衛星を納期までに収めていただけるように調整します。そして打ち上げに関わる機関、日本ではJAXA、海外の場合には事業権を保有する現地企業とも調整を進めます。特に衛星が宇宙ステーションで事故を起こすと大惨事となるため、衛星の安全審査はかなり厳格で、その安全審査を通過するために社内のエンジニアと連携しながら手続きを進めていきます。今ざっくりお話しただけでも、非常に多くの関係者が登場します。彼らの期待値を調整し、予算などのセンシティブな交渉も行いながら、プロジェクトを実現させていきます。弊社で求められるのは、非常に高度なプロジェクトマネジメントなのです。
【金澤】実は海外からの受注は多く、受注件数は国内外で100件を超え、全体の2割が海外案件です。私もコロナ禍以前は、年の1/3以上は海外を飛び回っていました。ミャンマー初の超小型衛星開発の打ち上げ案件、スペイン企業の小型衛星向け光学機器の宇宙空間での撮像実験案件など、本当に様々な案件があります。
宇宙に国境はなく、宇宙を利用したいのは海外も同じである。海外も含めて宇宙を利用したい企業・団体のプラットフォームになれるのが同社の強みである。
【金澤】衛星放出サービスのみを行っている企業や、ヘルスケアの実験支援だけを行っている企業など一部の領域では競合がいます。ただし、宇宙に関するあらゆる事業開発を横断的にやっている企業は他にはないので、そういう意味では競合はいません。
【金澤】衛星の需要は確実に高まっています。かつての衛星は何トンという規模だったので国や政府機関でしか扱えませんでした。しかし、技術革新により百キロ単位、更には数キロ単位にまで小型化したことで、大学や小資本のベンチャー企業でも作れるようになりましたし、個々のニーズに合わせてカスタマイズしやすくなりました。そうであれば活用してみたいという企業・団体は多く、農業、漁業、資源開発など多くの産業で活路が見いだされつつあります。例えば農業を見ても、広大な敷地に放牧された牛にチップを取り付けておき、衛星から見た牛の動向で餌の散布分布を決めたりと、様々な使い方が検討されています。また、アメリカや日本では、これまで政府主導で進めてきた宇宙開発を民間主導に変えていこうとする国策的な動きも活発です。
【永崎】鉄鋼貿易で売買の現場を経験できたのは大きかったと思います。当時(2000年代)は中国の台頭によって資源価格が高騰し、相対的に利益が小さなトレーディング部隊を子会社に切り出し本社は事業投資に集中するという転換期でした。私の部署でも、いつ切り出されてもおかしくないという緊張感はありましたが、私個人としては売買の意義は大きいと思っていました。というのも、会社は「売上」を立てなければいけません。たとえ大型投資をしても、最終的に誰かが売ってくれなければ成功することはできません。モノを売る現場に立ち、交渉し、その機微を肌感覚で分かるようになったのは今のビジネスでも大いに役立っています。
【金澤】三井物産でプロジェクトマネジメントの経験や、PwCでM&Aのディールを成功に導くための難しい交渉を日々緊張感のある環境の中で行っていたので、様々なコンフリクトを乗り越えるためのビジネスコミュニケーションスキルを身に着けました。これは難しい交渉が求められる現在のビジネスで生かせています。また、Space BDに入るまでの社会人生活を総括して話すと、上手くいかなかったことも含めて本当に色々な経験をしたので、何があってもへこたれない精神力が身につきましたし、複数社を経験して会社によって全く価値観が異なることを認識したので、今置かれた環境下で求められる動きを見極めてすぐに動きを切り替えられるという柔軟性も身につけられたと思います。
【永崎】もし経験がなかったとしても、商売の現場の泥臭さに興味があり、ポテンシャルとして面白い人であればもちろん採用します。弊社で求められるプロジェクトマネジメントは非常に高度なので、入社してしばらくは大変かもしれませんが、ポテンシャルを重視しています。
【金澤】一人ひとりにお任せする範囲が大きいので、自走できる方であれば非常に良い経験ができます。また、弊社は多角化を進めている「第二創業期」であり、今後の礎ともなる新事業の創出に関われる可能性もあります。宇宙は、今後非常にアップサイドのある産業です。『人間が地球環境を破壊せずに拡張していける産業は、宇宙かバーチャルしかない』と言う言葉があり、バーチャルはすでにアメリカに大きく水をあけられていますが、宇宙はまだまだこれからの産業なので、日本が世界に冠たる基幹産業になる可能性を秘めています。そんな新しい産業の発展に貢献できることは大きな魅力だと思います。
同社の社員数はまだ35名程度である。その人数でこれだけの多様な事業を手掛けているという事は、一人ひとりに任される範囲や裁量が非常に大きいということだ。また、宇宙産業は日本では希少な成長産業であり、チャンスがまだまだ眠っている。
なお、同社に入社する上で、創業のお二人がそうであったように、はじめから宇宙に興味がある事が必須ではない。「日本の発展に貢献したい」「世界における日本のプレゼンスを上げたい」「大きなフィールドでチャレンジしたい」といった漠然とした考えからのスタートでも歓迎だ。
是非同社で、他社では経験できない事業開発の経験を積んでみてはいかがだろうか。
【河西】私の家庭は祖父や両親が大学教授でして、幼いころから真理を探究する研究者に憧れ、東京大学では農学系の研究科で遺伝子組み換えの研究をしていました。畑違いの投資銀行に入ったのは、特定分野を深掘りし続ける研究者よりも、研究成果を世に送り出し、社会的インパクトを残すほうに自分の適性があると感じたからです。あるときネットで情報収集していると、戦略コンサルティングや投資銀行などのプロフェッショナルファームの紹介記事に目が止まり興味を覚えたことが、この道に進むきっかけになりました。
【河西】組織に所属しながらも、個人としての能力が強く問われるという意味で、プロフェッショナルファームの専門職と研究者の立場がよく似ていると感じたからです。それまで、研究者領域以外に、頭脳と腕っぷしの強さで勝負できる世界があるとは知らなかったので、非常に興味が湧きましたね。いくつかの選択肢を検討するなかで、最終的には縁があったゴールドマンサックスに入ることになるわけですが、実際、働いてみると、自分の考えは間違っていないと感じました。課題を発見し、仮説検証を繰り返しながら物事に対して理詰めで迫っていくプロセスは、研究者のそれとよく似ていました。
【河西】ある投資案件でご一緒したベインキャピタルの人たちの仕事振りを見て、自分が本当にやりたかったのはこういう仕事だったのかも知れないと感じたことが、転職を考えはじめた動機です。企業価値を評価するにあたって「なぜこの企業に投資すべきか」、「なぜこのビジネスが成長すると考えられるのか」など、本質的な議論を重ねる姿に感銘を受けたんです。企業買収やM&Aのアドバイザー役を務める投資銀行と、自ら資金を投じ、かつ経営の一角を担い企業価値を高めるPEファンドでは、当然、投資や企業に対する観点やアプローチは異なります。自らリスクを取り投資先の経営に参画してみたいと思いはじめたタイミングで、幸運にも先方から声を掛けていただき、設立間もないベインキャピタル日本法人の7号社員として迎え入れていただきました。
【河西】実際に経験してみて感じたのは、市場の規模や成長性、売上や原価、利益の推移、選ぶべきビジネスモデルや獲得しうるマーケットシェアなど、事業計画のディテールに踏み込み、ビジネスや経営と向き合うほうが、自分の性分に合っているという感覚でしたね。リーマンショックの直後には投資先に常駐しながら、約1年、経営者や現場の人たちと一緒に苦楽をともにした時期があるのですが、投資アドバイザーの立場では得られなかった経営のリアルを感じましたし、苦労が実を結ぶ手応えもありました。ハンズオンで投資先を支援する意義に目覚めた原点は、ベインキャピタル時代にあります。
【河西】MBA留学で、これまでの自分を見つめ直す時間を持てたことで、この先も投資の世界で身を立てていく覚悟が固まりました。なかでも、単に優良企業に資金を投じるだけでなく、経営者を支える伴走者という立場が好きであることもハッキリと自覚できたのは大きかったと思います。いつか「日本のウォーレン・バフェットになりたい」という大きな目標ができたのもこのときのこと。そのためにはいずれ自分の思いがこもったファンドを立ち上げるんだといという気持ちを温めながら日本に戻り、ユニゾン・キャピタルに入りました。
【河西】はい。同じPEファンドでも、戦略系コンサルタント出身者が多いベインキャピタルと、投資銀行出身者が立ち上げたユニゾン・キャピタルとでは、バリューアップのアプローチは大きく異なります。いうなれば、即効性のある外科的アプローチと体質改善を促すような漢方的なアプローチのような違いです。そうした違いを体感しながら投資への理解を深めるうちに、ファンドを立ち上げようという気持ちがますます高まっていきました。2015年に満を持して立ち上げたのがこのAngel Bridgeです。
【河西】PEの仕事も好きですしもちろん価値はあるのですが、どうしてもある程度できあがった会社をバリューアップしていくような案件が多くなります。しかし今後の日本においては、産業そのものをゼロから作っていけるようなメガベンチャーを産み出していくことが必要だと思ったからです。
ベンチャーキャピタリストとしての経験は無かったですが、企業の可能性を目利きし投資を行い、各企業に合わせたバリューアップを行うというプロセスは何度も経験しています。周囲からはよくPEとVCは異なると言われましたが、そこまで変わらないだろうと信じて立ち上げました。実際にやってみて、もちろん違いはありますが、自分の考えは間違っていなかったと感じています。
PEとVCはソーシングの方法も異なれば、リスクの取り方もバリューアップの手法も異なる。すぐに結果を出せているのは、河西氏のネットワーク、技術に対する知識、またこれまでのキャリアで身に着けた課題発見や解決能力など、多くの経験やスキル、また何より信念に沿ってやりぬくマインドがあるからだと思われる。
なお、河西氏に「苦労は無かったか」と尋ねたところ、当然全て順調というわけではないが、最後にうまくいくための通過点と捉えており、苦労とは捉えていないとの事であった。
【八尾】理由はふたつあります。ひとつは、自分自身の成長を考えたときに、やはり優秀な人たちと働ける環境に身を置くべきだと考えたこと、そしてもうひとつは、いち早く能力を身に付け成長したかったというのが大きな理由です。歴史ある大企業であってもうかうかしていたら淘汰されてしまう時代ですが、日本の伝統的な事業会社の場合、責任あるポジションで本格的な決裁権を持たせてもらえるのはおそらく20年後。それでは遅すぎると考え、実力がものをいう外資系企業を志望しました。なかでもマッキンゼーを選んだのは、飛び抜けて魅力的な方が多かったからです。優れた能力があり人間的にも尊敬できる人たちに囲まれて働けたら幸せだろうと思い入社を決めました。
【八尾】企業規模で言うと、数兆円クラスの大企業の事業戦略策定や、コーポレートファイナンスの支援プロジェクトに参加させていただきました。業種、業態はもちろん、向き合うテーマはさまざまです。ハードワークが当たり前の世界でしたが、若手を育てようというカルチャーにも支えられ、非常に得難い経験をさせてもらったというのが正直な感想です。在籍期間は3年でしたが、多種多様なプロジェクトを経験できましたし、2つのチームのマネジメントも経験できました。非常に有意義かつ、濃密な時間を過ごせたと感じています。
【八尾】経験のない分野なので、自分が思い描くような成長曲線が描けるのか、活躍できるかどうかはわかりません。でも、経験がないからこそ取り組む価値があるわけですし、そうした漠然とした不安を補って余りある魅力を感じたからこそ転職に踏み切ることができました。
【八尾】魅力を感じたのは、創業者である河西と林の能力の高さや人間的な魅力、あとは、自分たちの目利き力を駆使して、新たな市場を創造しうる将来性のあるスタートアップが投資対象であること、そして、ハンズオン支援によって、スタートアップからメガベンチャーを生み出していこうという企業理念に強く惹かれました。そもそもマッキンゼーを退職する前から、スタートアップへの転職や起業も選択肢として検討したこともあったくらいだったので、知名度のなさは気になりませんでした。むしろこれから存在感を増していく過程を味わえると思うとワクワクしたというのが本音です。前職では味わえなかった、ゼロからイチを生み出す醍醐味を経験できると思い、Angel Bridgeに入りました。
【八尾】仕事の割合で申し上げると、投資先を探すソーシングと経営相談や課題解決に向けた実行支援を含む投資先のバリューアップが約8割。残りの2割は自社サイトの運用やパンフレットの制作、イベント企画など、自社のマーケティング活動に時間と労力を費やしています。いま担当している投資先は6社ほどあるのでやるべきことは尽きません。ただ、自分の裁量で仕事量をコントロールできるので、仕事に忙殺されている感覚はないですね。とても充実した日々を過ごしています。
【八尾】むしろ役に立たないことのほうが少ないと思えるくらいです。投資判断はブレインワークそのもの。プロフェッショナルファームで働く人たちが、息をするようにMECEに物事を考えたり、対象を構造化して解決策をあぶり出したりするじゃないですか。その手法はそのままソーシングにもバリューアップにも活かせます。投資にゴーサインを出すにあたってどんな情報やデータが必要か、また、経営者に何をどのように尋ねれば本質的な答えを引き出せるか、論理的かつ科学的に考え、行動することが求められるのは、戦略系コンサルタントもベンチャーキャピタリストも変わりないというのが私の実感です。
ソーシング手法も色々とあるが、新規開拓営業のようにイベントや会食に多く参加し起業家との接点を増やしているキャピタリストもいる。Angel Bridgeの方々は、コンサルタント的なアプローチで、市場や事業内容などを分析し、数を追わず可能性の高い起業家と会っている。転職先としてVCに興味はあるがソーシングに不安がある、という方には参考になる情報ではないだろうか。
【河西】レイターステージを対象とするPEファンドの手法を、自らの目利きで発掘した前途有望なスタートアップのハンズオン支援に適用し、しっかりと伴走していく企業姿勢は、Angel Bridgeの強みと言えます。もちろん効率を第一に考えれば、ハンズオフで広く薄く投資を行い、そのなかから浮上してくる企業を待つというやり方もあるでしょう。しかし、それではニッチトップは生まれても、世界に冠たるメガベンチャーを生まれる確率は低いのではないでしょうか。ですから、Angel Bridgeは多少効率を犠牲にしても手間暇をかけ、スタートアップの育成に力を注ぎます。資金の最適なアロケーションとキメの細かいハンズオン支援によってメガベンチャーを生み出すという大きな志そのものが、Angel Bridgeの強みなのだと思います。
【河西】創業直後に投資し、長らく経営支援を行ってきた、iPS細胞による心臓の再生医療を手掛ける慶應大学発の再生医療ベンチャー「Heartseed(ハートシード)」が、先日、世界的な製薬会社であるノボノルディスクファーマと650億円に上るライセンスアウト契約を結び、業界内で大きな話題を呼びました。また見積もりプラットフォームの「ミツモア」、不動産テックの「BluAge(ブルーエイジ)」は、ここ数年急速に売上を伸ばしていますし、上場を間近に控えたスタートアップもすでに複数社あります。こうした有望な投資先から、いずれ日本を代表するメガベンチャーが生まれるでしょう。
Heartseedのディールはベンチャー業界を驚かせた。なお、それまでのボードメンバーの採用や資金調達含め、河西氏はかなり経営に関わっている。
【八尾】7月に1社リリースしています。AIテスト自動化プラットフォーム「Magic Pod」を運営するTRIDENTという企業です。また、それ以外も話を進めています。もちろん、河西と林の支えがあってこそ実現した投資案件ですが、入社2年目にして責任の伴う大きな仕事を任せてもらえるのは、少数精鋭かつ、創業の意思が貫かれているAngel Bridgeの強みと言えるでしょう。
【八尾】こと私に関して申し上げると、業務理解を深め、投資先のみなさんとの間に信頼関係を築くため、組織改革支援やプライシングの相談など、いちメンバーとしてかなりに深く入り込んでいるのが実情です。ベンチャーキャピタリストとして成長するには、必要不可欠な取り組みだと思いますし、実際、投資先のみなさんもそれを望んでおられると感じたので、率先して取り組んでいます。
【河西】八尾も実感している通り、数字だけ見て投資を実行するだけでは、いいベンチャーキャピタリストにはなれません。八尾には大所高所に立って投資判断、経営判断ができるようになってほしいので、いまはどんどん現場に出るようにと伝えています。八尾自身もわれわれの期待、投資先の要望に応えようと努力してくれていますから、安心して任せることができます。
【河西】Apple、Amazon、Google、Facebookなどがいい例ですが、海外にはベンチャーキャピタルの支援を最大限に活かして、大企業に成長したメガベンチャーが経済を牽引しています。しかし日本ではこの数十年間、そこまで大きな影響力を発揮している新興企業はほとんど例がありません。これでは国力は衰退するばかりです。私たちがやりたいのは、社会を牽引するようなメガベンチャーを、1社だけとは言わず何社も再現性高く生み出すこと。そのためには八尾のように、優れた素養を持つ若手の力が欠かせません。
【河西】地頭が良く、コミュニケーション能力に長けた方。プロフェッショナルファームで鍛えられた方がベストですね。とくにMBBに代表される、戦略系コンサルティングファーム経験者は、すでに経営やビジネスを考えるために必須の基礎力や共有言語をお持ちです。スタートアップの成長支援に関心がある方であれば、即戦力として活躍できると思います。
なお河西氏はコンサルファームでの経験はないものの、ベインキャピタルがコンサル出身者の多いファンドで、そこで鍛えられたと話している。八尾氏の河西氏への第一印象は、「マッキンゼーのパートナーみたいな人」であった。コンサル出身が活躍しやすい環境であるのはそういった背景もある。
【八尾】河西の言う通り、戦略系コンサルティングファームで培った知見が生きることは確かだと思います。とはいえ投資案件は常に並行して動いています。関わる人の数や経営者のタイプ、事業の幅広さはコンサルタント時代とは比べものにならないほど多様性に満ちており、投資先とは5年から10年もの長きにわたってお付き合いが続きます。短期集中で経営改善にあたるコンサルタントとは異なる面も多々あるので、好奇心と素直さを持った方と一緒に働けたら嬉しいですね。
【河西】われわれの目標は、優れたベンチャーキャピタリストを育て、日本発のメガベンチャーを生み出す。これに尽きます。まだまだ道半ばなのですが、近い将来、必ずこの大きな山の頂を極めるつもりです。そのためには優秀な人材が欠かせません。ベンチャーキャピタルとして、Angel Bridgeはまだまだ無名な存在ですが、投資先のポートフォリオや取り組み内容を見ていただければ、われわれの目指している頂が、決して絵に描いた餅ではないことを感じていただけるはずです。Angel Bridgeにはこれからの日本になくてはならない価値ある仕事があります。多くの方からのご応募をお待ちしています。
Angel Bridgeはシード、アーリーステージへの投資を強みとするが、新規投資は年間平均3~5社程度と一般的なシードVCと比較してもかなり少ない。「選んだ企業に厚く張り、深くハンズオン支援する」のが同社のスタイルだ。目利きを失敗するとファンドのパフォーマンスが下がってしまうリスクの高いスタイルではあるが、高い目利き力で、2015年設立ながら既にIPO1社/M&A2社/上場準備中5社と実績を積み上げて来ている。またそれ以外の多くの投資先も順調に成長を果たしている。
同社のこのような投資手法は、市場や企業分析、戦略立案や実行を得意とするコンサルファーム出身者と非常に相性が良い。数あるVCの中でも、活躍しやすく、また短期間で経営に入り込む経験を多く積める魅力的な環境である。
VCやベンチャーに興味のある方は、是非同社を転職先の候補として検討してはいかがだろうか。
【藤原】昔から何か武器になるスキルを身に着けて、将来的に経営に近いところでキャリアを築いていきたいと思っていました。そこで学生時代に会計士の勉強をし、資格を取り、監査法人からキャリアをスタートしました。
監査法人で4年ほど経験を積み、その後、テーブルの向こう側で数字をチェックする側ではなく、企業の数字を作り上げていく側で仕事をしたいと思い、投資銀行業界への転職を考えました。まずGCAに入り、M&Aアドバイザリーの仕事をした後にメリルリンチに転職しました。外資系を選んだのは、クロスボーダーの案件も経験してグローバルな目線と経験を積みたかったからです。まずはカバレッジ、次にM&Aアドバイザリーの部門に所属し、トータル8年間在籍していました。
投資銀行業務は非常にやりがいがあり知的好奇心も刺激される面白い仕事でしたが、アドバイザーの立場なので、勿論全力でやっているもののどこか自分事として感じられない部分がありました。その思いから、投資家・株主としてより経営に近い側でと考え、PEファンドに転職しました。PEファンドでまる2年、投資先企業のバリューアップやソーシング活動も行いました。この投資家や株主としての経験や見方を身に付けることで、投資銀行で経験したことからさらに幅を広げることができたのですが、それでもやはり、中に入り込んでいる感覚は完全には感じられず、事業に飛び込んでみたい気持ちが強かったので、事業会社、その中でもスタートアップにチャレンジしてみようと考えました。
PEファンドという株主としてマジョリティーを取って経営を行う立場でも、当事者としての感覚を完全に持つことは難しい。事業会社に所属して初めて得られる感覚である。
【藤原】自分では、初めから具体的に思い描いていたわけではないです。大きな方向性としては経営に近いところでキャリアを積んでいく。次の3年、5年後を考えたときに、一番良い経験や面白いことができるところへ、と考えてキャリアを選んでいました。そうすれば、確実に自分の可能性を広げてくれると思っていたので。10年後、20年後のキャリアは考えてこなかったです。この会社に来て初めて10年単位のことも考えるようになりました。WOVNの成長を中長期で実現していきたいと思っています。
結果的に様々なことを経験して良かったと思っています。一生を振り返ったときに、あれもやってみたかったな、という感情は持ちたくないですから。
ファイナンスや会計の知識、投資家としての知識や目線などは自分のベースとなっており、今の仕事にも活きています。一番大きいのは、それぞれのステークホルダーの目線を多少なりとも理解したことかなと思います。それぞれの立場に立って話したり、相手の立場を考慮したうえで交渉したり、といったことがよくあります。
とは言っても、知識やスキルを完全に使いこなしているかというと、まだまだ模索中です。今が一番苦労しているようにも感じています。投資銀行でもファンドでも、見ている世界は基本的には成熟した市場で、スタートアップに比べると大企業中心でした。今は、スタートアップの中にいますし、Webサイトのプロダクトを扱うのも初めてのことです。市場が出来上がったものではなくて、我々がパイオニアとして作っている。他に無いプロダクトの意味合いを理解してもらい、市場に浸透させていく、あるいは、市場を作っていく。そういう意味での大変さ・チャレンジがあります。
明確なキャリアプランは無くても、「キャリアの停滞を避け、チャレンジしていく」。これは良いキャリアを築いている方に共通している考え方だ。
【藤原】WOVNは事業の成長可能性が非常に大きそうだなと思いました。市場のポテンシャルが高く、その中で独自の強固なポジションを築けている。出来上がった市場ではなく新しい市場を作っていくやりがいと面白さも感じました。あとは、人の雰囲気ですかね。フィット感がすごく大事だと思っていて、入社前、WOVN以外にもいろいろな会社の方にもお会いしましたが、その中で一緒にやっていけるイメージが湧いたというのが大きいです。特にベンチャーでは、山あり谷ありで苦しい時も多いですが、マネジメント層や一緒に働くメンバーと価値観が違ったりすると耐えられないこともあるかもしれないと思ったので、フィット感を一番重視しましたね。
人間関係でのミスマッチの話は多く、人の雰囲気が合うということは非常に重要である。
また、良いベンチャーに選んでもらえるだけの経験を積んでいるという事も忘れてはいけない点である。
【藤原】気にならなかったと言えば嘘になります(笑)。とは言っても、生活できない範囲ではありません。転職したときに多少生活水準を下げる必要はありましたが、慣れの問題です。当社でも十分に暮らしていける水準です。
キャリア的な意味でも、長期的なリターンで考えるとこっちの方がいいと思って、報酬面は割り切りました。そうでないなら、プロフェッショナル・ファームでずっとやっていたほうが良いですよね。
目先のP/Lにこだわるのではなく、今後のキャリア全体のB/Sを豊かにしていく。これも重要な考え方だ。
【藤原】もともと人のフィット感は良いと思っていたんですが、思った以上に働きやすいです。全体として、メンバーが謙虚で、良い雰囲気があります。特にエンジニア中心に外国人メンバーが多いのですが、色々なバックグラウンドの人を相互にリスクペクトする、ということをすごく大事にしている。多国籍ですが、良い意味で日本らしいというか、雰囲気が柔らかいです。
一緒に働く人の多様性というのは、ベンチャーに入った理由の一つでもあります。自分のコンフォート・ゾーンを離れて、チャレンジしていく。実際、いろいろなバックグラウンドのメンバーがいるので、自分が当たり前と思っているような前提が全然当たり前では無かったり、逆もまた然りです。それぞれの立場に立って、どう説明すれば分かりやすく、同じような目線を持って議論ができるかを考えています。
同質性の高い、優秀な人が集まるプロファームからスタートアップに行くと、これまで接したことが無いようなタイプの人がいたりする。その中でそれぞれの立場に立ってものごとを考える、というのは活躍する上で非常に大事な点だ。
【藤原】ずっと経営に関わっていきたいとは強く思いつつ、自分で起業するアイデアは特になかったので、自分の知識や経験を活かして2番手3番手としてサポートしながら一緒に会社を大きくしていくところで最大限貢献できると考えていました。そういう意味ではCFOが合っているとは思います。
CFOの役割の一つは、会社の魅力や成長性を投資家と資本市場に発信をして、きちんと評価してもらえるようにすること。そのために説明の仕方やロジックを深く考えていく。他にも勿論色々ありますが、それが対外的なところでは一番重要だと考えています。CFOは、対外的にも対内的にも、いろいろな場面で調整役になることが多いです。様々なステークホルダーが社内でも社外でもいます。それぞれの目線に立って、立場を理解しながら、説明したり、意見を合わせていったり、ということをしています。いろいろな人の目線が分かることが、今の仕事に生きていると思います。
【藤原】どちらでも良いのかなと思います。自分にとっては、PEで事業側をよく見て自分事として投資の判断をしていたのが良い経験になって確実に活きています。ただ、投資銀行からCFOになる人は基本的に優秀な方が多く吸収できる素地も持っているので、PEの経験が無くてもそういったことはキャッチアップして活躍できると思います。
CFOが扱う数字は、現在の財務面の話だけでなく将来の話が多いですが、例えば計画を作っていく時、ブレークダウンした一個一個の要素を合理的な前提や想定に基づいて作っていくことが大事です。予算分析では、実績がずれてきた場合にどこがずれてきたから数字がずれてきているのかを追えるようにしておく。そうすれば、後で補正をきかせることができるし、どこに対して手を打っていけばいいかも見えてくる。また、ボトムアップで数字を作りつつ、トップダウンでもその数字がおかしくないかを見ることも大事です。といってもWOVNもまだまだ日々模索中ですが。
投資銀行でも財務モデルを同じようにブレークダウンして作ります。ただ、クライアント企業の事業部の方にインプットの妥当性を確認してもらい、最終的な判断は企業側になります。PEや投資家の立場だと、そこを自社の責任で判断しなければいけない部分があり、経営の立場に近いと思います。
PEの経験がプラスになる事は間違いない。ただ、その経験があってもなくても、投資家の目線を理解した上で妥当性のある事業計画を作る事ができ、実績とのズレが出た時にスピーディーな対応ができることが重要だ。
【藤原】WOVNでちょうど今、大型の資金調達をしており、海外の優良投資家から評価いただき、出資をしていただくことになりました。この一連の調達プロセスの中で、これまでの知識や経験が活かせる部分は大きかったです。
PEのバイアウト投資では、成長性も勿論大事ですが、キャッシュフローが安定していて、大崩れしないで成長していけるかどうかを重視します。スタートアップの投資では、どれだけ将来の成長を実現していけるかが重要で、そのためなら赤字を踏み込んでも投資していく。CFOとしては、投資するからこれだけ伸びると合理性を持って説明して、納得してもらえるかどうかが大事かなと思います。
WOVNでは、市場ポテンシャルの大きさと成長性を伝えるため、国内マーケットや企業の多言語化の予算などを試算しました。そのうえで独自のポジショニングを築いていることを伝える。特に大企業のウェブサイトの多言語化では、国内マーケットで競合プレーヤーがおらず、独占的なパイオニアになれる。この強みをご説明しています。
また、スタートアップの資金調達は、M&Aの交渉とは異なり、どちらかというと会社は相対的に交渉力が弱い立場に置かれることが多いと思います。勿論会社のステージや資金繰り状況等次第ですが、そのようなアンバランスは望ましくないので、調達タイミングも慎重に検討し、多くの投資家とお会いしてディスカッションを重ねて、しっかりと評価いただけるようには留意しました。結果として、事業・市場の可能性をご理解いただき、中長期で成長をご支援いただけるグローバルの優良投資家から良い資金調達が出来ました。この調達した資金を基にしっかり事業を伸ばしていく、これからが本番だと考えています。
【藤原】WOVNのサービスは、単なる翻訳ソフト提供ではなく、Webサイト全体の多言語化システムの開発を行っているところに強みがあります。代表の林鷹治がよく話す例ですが、レストランで店主がアルバイトの人に「メニューの英語版作って」と指示することを想像してください。単に日本語の部分を英語に置き換えようとしても出来ない。パソコンで翻訳して、プリントアウトして、文字の配列が崩れたら直して、ラミネート加工をして、ようやく完成です。これら全部のプロセスが重要です。Webサイト開発もそれと一緒です。単純に文字を置き換えるだけなら Google翻訳で出来ます。それだと、ページが崩れたり、例えば特定の国の人がアクセスできなかったり、適切な翻訳がなされなかったりと、問題が残る。WOVNなら、そういった問題を解消するところまで作り込みができる。細かい問題が大規模のサイトになればなるほど結構致命的です。そこのソリューションをSaaS型で提供する。
大企業のWebサイトではこれまで、システムインテグレーターに依頼するか自社開発でやっていて、開発期間もかかりコストも大きい。出来上がりも満足できないかもしれない。WOVNなら、低イニシャル・コスト+固定額で、管理も簡単で、サービス面でのサポートもある。
おかげさまで順調に伸びていますが、まだまだプロダクトの改良・強化は必要です。また、今はWebサイトとアプリ中心ですが、インターネット上の情報は、メール、チャット、動画までいろいろなフォーマットがあります。将来的には、どんどん機能・範囲を広げていき、幅広いWeb上の情報を多言語化していくことを考えています。
実はWOVNのサービスは細かな技術が積み重ねられてできており、そのおかげでユーザーはコストも手間も少なく、大企業も利用するほど質の高いWebサイトを作る事ができる。同じようなサービスを提供できる競合はまだ出てきていない。
【藤原】我々は元々中小企業をメインターゲットにしていたのですが、2017年末に大企業向けにシフトして、そこから急成長しています。それがちょうど軌道に乗ってきたのが2019年度(2020年2月期)だったんですが、その直後にコロナがありました。それがハードシングスと言えばそうかもしれません。幸いダメージは直撃では無いのですが、お客様の企業内での意思決定プロセスがスローになったり、進んでいた商談が一旦リセットされたりして、大変ではありました、ただ、どこも多かれ少なかれ一緒かなと思います。
逆に、グローバルに展開している大企業では、コロナの中で積極的な動きもあります。日本の本社からのメッセージをグローバル拠点に伝えたいということで、イントラネットの多言語化をお手伝いすることが増えました。日本国内に在留外国人が多いので、インターネット・バンキングなど消費者向けWebサービスの多言語化も活発です。その他にもメーカーでは、製品マニュアルや従業員マニュアルのウェブ化・多言語化も増えています。
また近年どんどん重要性が増してきているESGの観点でも、企業の多言語環境を整備することでダイバーシティ、インクルージョンの促進を支援することができるという点で、多言語化サービスのニーズは高まっています。
様々な用途があることでコロナによる影響を最小限に抑えられている。このあたりもWOVNの強みの一つだ。
【藤原】自分がスタートアップに入って一番感じるのは、日々考えていることが違うということです。今頭を悩ませていることを半年前にはまったく考えていなかった。1、2カ月の間でも全然違うことで頭を悩ませて、意思決定をしている。その繰り返しをずっとしてきて、経験の幅が広がっているなと感じます。まだ1年ですが、とても濃い1年です。この色んな場面に直面して打席に立ち続ける経験というのは、何物にも代えがたい。
WOVNは、IPO前の段階の、これから大きく成長させていくフェーズの会社です。このタイミングでジョインして、IPO前後のところをキーメンバーとして一緒に中心になって作っていく経験というのは、なかなかできることではないと思います。将来的にはその人のキャリアが広がるはずです。
どういう人に入ってほしいかというと、もちろんスキルと経験はあるに越したことはないわけですが、やるべきこと、解決すべきことがいっぱいある中で、プロアクティブに、かつ、オーナーシップを持って、仕事をやっていこうというマインドセットのある人です。自分の部署では、上司・部下ではなく、皆が議論相手やパートナーとしてやっていけるような環境作りを心掛けています。お互いに学んでいけたら良いですね。
WOVNは、日本が遅れているグローバル化を推進する価値のある事業を行っている。
プロダクトの優位性があり、また、今後アフターコロナに向けて日本社会が大きな変革を迎えるであろう中、一層成長していく可能性が高い。
同社は様々なポジションを募集している。コンサルティングファームや投資銀行、会計士等のプロファーム出身者も歓迎である。ぜひ同社でスタートアップの成長を実感してみてはいかがだろうか。
【福島】BCGは8年勤務して、主に「デジタル×トランスフォーメーション」の分野、いまの「DX」が専門領域でした。大手企業のDXを支援することはインパクトがあり、社会的な意義も感じました。一方で、日本の産業全体を見渡したとき、大手企業とスタートアップがもっと切磋琢磨して、産業が進化していくべきという課題感がありました。シリコンバレーでは、GAFAMがスタートアップの組織文化を維持したまま、スケールアップして大手企業に挑んだことで、大手企業も危機感を持ち自らの変革に迫られて、産業全体の進化が加速したと思います。
日本でも、スタートアップがもっとスケールアップして、大手企業を脅かす存在になることが、産業が活性化する起爆剤になると感じており、ラクスルに入社してスケールアップに挑戦することにしました。
スタートアップが産業全体を進化させる。今でこそ少しずつその兆しが見えているが、5年前からそのイメージを持っていたのは非常に先見の明がある。
【福島】周りは「何でそんなリスクを取るの?」「もったいない!」と反対ばかりでした(笑)。自分の感覚と周囲の反応は正反対でしたね。
スタートアップへの転職は、私にとっては、"ノーリスク" な選択でした。当時35歳でスタートアップに挑戦できる最後のタイミング。いま転職しないと、一生、挑戦する機会を失うことに強いリスクを感じていました。仮に、スタートアップへ挑戦して失敗しても、事業経験は、コンサルにも活きるはず。このキャリア選択が「ワン・ウェイ」(片道)か「ツー・ウェイ」(往復可能)か、で言えば、スタートアップへの挑戦は「ツー・ウェイ」であり、私にはリスクがない選択でした。自分のキャリアを考えれば、折り返し地点が40歳の長い道のりです。前半に大胆な挑戦するほうが、後半のリスクを減らせる感覚が強かったです。
一般的にリスクと思われているスタートアップへの転職を、"リスクのない選択"と捉えている。自身のキャリアを長期的にかつ俯瞰して見ることがそれを可能にしていた。
ただ転職後活躍しない事にはその転職が失敗だったという事になりかねない。福島氏はどういったポイントを重視し活躍につなげたのだろうか。
【福島】役職・タイトルに拘らずに、結果を積み上げて、信頼を築くことしかないですね。私の入社時の期待値は「一流戦略コンサル出身者」だったと思いますが、それを期待通りやろうとすると、失敗します(笑)。スタートアップではどんなタイトルがあっても、結果をだせないと誰も付いてきません。コンサルしか経験のない私が、経営や事業をいきなりできるわけがありません。実直に「短期間で結果を出し、信頼を築き、それから事業経営へ」というステップを踏む道しかないです。
実際に、入社後はSCM部長を兼務して、インパクトを一番出せる利益創出に全力を注ぎました。この「短期間での結果を出す」(クイックウィン)は、コンサルタント時代に磨いたことが役に立ちました。大事な領域だが、誰もカバーしてない「日陰」をみつけて、集中して改善して信頼を得るプロセスをラクスルでも実践しました。
結果が出るまでは、「あいつは何をしているんだろう?」と疑われるので、覚悟を決めて、なるべく短期間で結果を出すことが肝要です。
「あいつは何をしているんだろう」と思われることも厭わない。タイトルに拘らず一番インパクトを出せるところで勝負する、事業にとって何が本質的に大事かを瞬時に捉えられる、優秀なコンサルタントだからこそできる技だ。BCG時代のコンサル経験はしっかり活きている。
昨今はスタートアップのエコシステムが広がってきており、転職を希望する人も増えている。福島氏は、スタートアップへの転職をどのように見ているのだろうか。
【福島】転職のとき、「キャリアチェンジ」と「キャリアアップ」を分けたほうが良いと思います。スタートアップへの転職は大半の人にとって「チェンジ」です。それを意識していれば、前職と同じパフォーマンスは出せない、新しい成長の場で学ぼうという姿勢からスタートします。それを「アップ」だと勘違いすると、アンラーニングが進まず、過去の成功体験で失敗の繰り返しで、負のサイクルに入るケースがあります。大手企業やコンサルのキャリアの延長線上にスタートアップはありません。「キャリアチェンジ」の姿勢で挑戦したほうがいいと思います。
「CxOになりたい」もよく聞く話ですよね(笑)。タイトルが欲しくて転職するのは、スタートアップで失敗する人の典型例だと思います。例えば、社員数30名以下のアーリーステージだとCxOのタイトルは付きやすい。一方で、アーリーステージであれば、ファウンダーが原則すべての意思決定をする。CxOタイトルがあっても、最終責任者として意思決定をする機会が少ないこともよくあります。
転職時に、CxOへの成長機会を得られるかを確認することは大事ですが、タイトルは後からついてくるぐらいの心持ちが望ましいですね。
【福島】自分の「市場価値」を考えるとき、年収で測れる「フロー価値」を"P/L(損益計算書)"、キャリア経験を測る「ストック価値」を"B/S(貸借対照表)"の2つに分けています。
転職の際に、キャリアチェンジで「ストック価値」を高めたいのか、キャリアアップで「フロー価値」を高めたいのか、で年収への考えもまったく違ってきます。
私の転職では、キャリア経験を積むこと(B/Sの充実)を重視しました。「スタートアップで事業責任を背負い、スケールアップさせる」という事業経営者としての経験を積めることでB/Sを厚くすることは、とても魅力的でした。目先の年収で測ると、半分になったのでP/Lは激減しましたが(汗)。
結果的には、6年が経ち年収も上がりました(P/Lの充実)。"キャリアのファイナンス思考"ではないですが、いいキャリア経験を積み上げて、自分のB/Sを充実させ、市場価値が上がり、その結果として、P/Lも充実していく循環が私のキャリアの理想形です。
キャリアにもファイナンス思考を持ち、目先の報酬を追わない。これは全てのビジネスパーソンにとって非常に重要な考え方ではないだろうか。
【福島】スタートアップと大手企業の違いは成長スピードなので、ハイグロースしているステージの会社がお勧めです。事業規模の大小に関わらず、ハイグロースをしている会社では、成長機会やオーナーシップ不在がいたるところあります。逆に言えば、自分が獲りにいけば、責任を持てる、手を動かせる、ということ。責任を背負うことがなによりも、キャリア経験になりますし、その過程で多くの学びがあります。そして、「ハードシングス」もあります。
あとは、ハードシングスで逃げないことです。ハードシングスはキャリア経験を圧倒的な濃さで積めるボーナスタイムです。結果がどうであれ、ハードシングスから逃げずに、向き合える人がキャリアのB/Sを厚くしていける人だと思います。
順風満帆なスタートアップは存在せず、ハードシングスは必ず起こる。「逃げない」というのは、基本的な心構えかもしれないが、転職後キャリアを積み上げられる人の絶対条件ではないだろうか。
では、転職先としてラクスルという選択肢は、どのような人にフィットするのだろうか。
【福島】その答えはシンプルです。オーナーシップに尽きます。その事業領域を背負える方を探しています。ラクスルはハイグロースを持続しながら、事業領域も拡張しているので、大小さまざまな成長機会に溢れています。オーナーシップがあれば、成長機会や知見はラクスルとしてはいくらでも提供できる環境だと思います。
現在、産業単位に事業本部が3つあり、各事業本部のビジネスユニット(BU)ごとに事業部長がいます。更に、BU内に商品カテゴリーがあり、それぞれオーナーシップを持つBizDevが活躍しています。
ラクスルで事業経営を目指す方には、キャリア経験に応じて、オーナーシップを持てる球があり、新卒1年目から担当領域へのオーナーシップを求めています。
現在ラクスルは印刷、物流、広告と3つの異なる業界で事業を展開している。どのような観点で事業を選択したのかという質問に対しても「オーナーシップを持ってやりたいと言う人がいるかどうか」と、ここでもオーナーシップを重視しているという回答であった。
【福島】ラクスルは、B2Bプラットフォーム事業のポートフォリオカンパニーを目指しています。ポートフォリオは数億の事業から200億規模まで幅広いので、各人が経験を積みたいフェーズや事業領域を、社内でキャリアを選択することができます。
現在は、事業経営者/BizDevが15人規模ですが、3年後は、45名(事業経営者15、BizDev 30)・3倍ぐらいの事業開発集団を目指しており、まだこれから急成長していきます。
ラクスルの楽しさは、自分自身の経験を積めることはもちろんですが、先人の経験者から学ぶ経験、後任に教える経験があり、先人・後任の経験も自分のものにして、経験の蓄積を加速できていることですね。
【福島】ラクスルのBizDevの実例を見ていると、20代後半~30代が最も多いです。スタートアップに転職して結果を出すのに、年齢は関係ないですが、プライド・シガラミがあり"持っているもの"を評価されたい年齢になると、挑戦が難しくなるからでしょうね。
ラクスルは、オーナーシップを持てる人にとっては、短期間で多くの実践経験とフィードバックを得られる、理想的な環境である。
同社は現在進行形で印刷、物流、広告という伝統的な業界の産業構造を21世紀型にアップデートしている。今後その事業を次々に増やすという壮大な計画を立てており、まさにスタートアップが産業全体に変革をもたらすというインパクトを産み出そうとしている。同社に参画する社会的意義も大きい。
同社で事業家としてのキャリアを磨いてみてはいかがだろうか。
今さら言うまでもなく、メットライフは米国最大の生命保険会社であり、世界の保険産業をリードするグローバルカンパニー。その中で日本法人の活動はどのような位置づけにあるのだろうか?
「売上だけを見ても、メットライフのグローバルネットワーク内で群を抜いており、本国アメリカに次ぐナンバー2のポジションにいるのが私たち日本のメットライフ生命です。しかも日本は生命保険、医療保険、年金保険などフルラインで事業を展開していますし、チャネルについても直販、代理店、オンラインなどがしっかり機能してもいます。そうした実績とカバレッジ、これまでの歴史等々がグループ内で高く評価されていることからも、いわゆる"外資系企業の日本拠点"とは一線を画す主体性ある経営を実現しています」
そう語るのはメットライフ生命でポートフォリオマネジメントおよびビジネスアーキテクチャーを担当する執行役員・松山雅樹氏。加えて松山氏は、エリック・クラフェインCEOによる新体制になってからのさらなる進化も強調する。
「『ローカル(日本法人)が独自判断し、コミットする姿勢で自らのビジネスをドライブし、それをグローバルが支えていく』という関係性は以前からあったのですが、現体制になってからこの傾向が明確に強まりました。私たちとしてみれば自由でやりやすい環境がさらに進展し、オーナーシップと誇りをもって自分たちの仕事に没頭できるようになっているんです」
しかし、世界屈指の高い実績を上げてきた日本は、超高齢・人口減少社会へと突入。それゆえに、「あらゆる業種の企業が国内市場に依存できない状況を迎え、とりわけ保険業では死活問題になっている......」といった認識も広がっている。メットライフ生命はこの実情をどう捉えているのだろう?
「少子化が進み人口減少が始まっていることは事実として受け止めています。しかし、それがイコール"成長を阻害する問題点"なのかというと、私たちはそう捉えてはいません。1つには当社の市場シェアが決してドミナントではないということ。つまり、他よりも優れた事業やサービスを当社が実施すれば、お客様は選んでくださる。今後成長していける可能性は決してシュリンクしていないのです。さらにもう1つ、日本は確かに超高齢化社会ですが、同時に長寿の国でもあります。いわゆる"人生100年"時代に相応しい、他国にも例を見ないようなサービスを展開することができたなら、メットライフが成長を勝ち取るばかりでなく、高齢化に向かう他の先進国にも保険の新たな可能性を示していき、多方面の社会に貢献していく余地も十分あるのだと考えているんです」
まさに"課題先進国ニッポン"にはトライアルの機会があり、そこでのチャレンジがグローバルにも影響力を持ち得る。そのことを、チャンスとして捉えているというわけだ。
「人生100年時代に、病にならないために人はどうすべきか。そのとき保険はどういう支え方ができるか。あるいは病になった時の備えとして、今までになかったような価値をどう形にしていくか。私たちは、そういう発想で次々に新たなチャレンジを実行しているんです」
そこで同社では、積極的に新規サービス立ち上げや、業務効率改善などを目標にしたプロジェクトが組まれるようになったというが、その段階で問われ始めたのが、「各プロジェクトをより確実にゴールに持っていくためのアプローチ」だと松山氏。そしてそれが「プロジェクトを最適にマネジメントしていく部隊」の誕生と活躍とを生み出したというわけだ。
松山氏によれば、メットライフに誕生した「PM」というタイトルの役割は複合的だ。いわゆる社内コンサル的な機能として、新たな可能性の追求を提案し、プロジェクトの方向性自体を決定づける場面において重要な存在となる一方で、基本的には実際のプロジェクトを統括していくプロマネとして活動を行い、なおかつ部門横断型プロジェクトにおいてはステークホルダーマネジメントの担い手も務めているというのである。
「年間70〜80ものプロジェクトが毎年進行している。そんな保険会社なんて他にはなかなかないでしょうね。それくらい、既存部門による単体の活動以外の挑戦に意欲的だということです。しかし、冒頭でお話をしたように、日本におけるメットライフはフルラインでフルチャネル。つまり多様なフィールドやチャネルで様々な営みが常に動いているだけに、"従来とは違うこと"あるいは"今まであったものを改善・進化させていくこと"に挑もうとすれば、非常に複雑な構造のもとで臨機応変なオペレートをしていかなければいけません。ましてや複数の既存部門にまたがるテーマを、多くの部署が連携してゴールを目指していくような横断型プロジェクトとなれば、なおのこと難易度は上がっていきます。そこで、ニュートラルな立ち位置からプロジェクトにコミットしていく存在として、PMという存在が必要かつ重要だということになっているんです」
例えば営業などのフロント部門だけでなく、マーケティングなどを担うミドルオフィス、あるいは経営管理などを担うバックオフィスなども同時関わっていくプロジェクトともなれば、同じ企業内であってもそれぞれの言い分が発生する。時にはグローバルなメットライフの拠点も絡むし、外部パートナーも絡んでくる。こうした多様性の高いステークホルダーの集合体をまとめ上げ、同一の価値観を徹底させながら意思決定を進行し、ゴールに向かう姿勢をブレることなく維持・向上させていく難しい役回りがPMというわけだ。
しかし松山氏は微笑みながら話す。「だから面白いし、やりがいがあるんですよ」と。
「数年前までのPMは、客観的にプロジェクトの進捗をレポートしていくような仕事が主でした。けれども、そうした管理者的な側面だけ担っていても、プロジェクトの活動は活性化していかないと判断したことから、『もっとプロジェクトの内部に突っ込んでいき、経過報告よりも結果に貢献するドライバーになるのがPMのミッション』という方向に転換をし始めたわけです。現在では30名のPMがフル稼働で活動するようになったものの、まだまだプロジェクトの数は多いですから、チーム自体の拡充にも取り組み始めているんです」
松山氏によれば、PMがアサインするプロジェクトは、その内容も期間もケースバイケースだというが、概ね6ヵ月から1年半の期間。そして主なカウンターパートは、そのプロジェクトの事業オーナーとなるような社内部署のミドルマネジメント層であり、なおかつ意思決定のサポートにおいてはシニアマネジメントとの接点も多く、社内でビジビリティを上げる良い機会になっているのだという。
「原則としてPMはプロジェクトのプランニング段階から関わっていき、社内の関連部署のキーパーソンとともにビジネスとしてのスコープを定めていきます。テクノロジーが必要となるケースであれば、当然技術チームも巻き込んでいきますし、他にもそのプロジェクトの成功に不可欠なリソースが社内にあれば、それぞれに働きかけていきながら、プロジェクトチーム自体の体制作りにも着手。予算取りへと動いていきますし、チーム内のガバナンスも固めていくことになります」
以上がプロジェクトの上流段階で求められる使命。さらにPMは松山氏が指摘した通り、実行フェーズにおいても現場に深く入り込んで、「仮に皆にとって未体験のチャレンジを行う内容だったとしても、そのプロジェクトチームの活動上のリズムを率先して創出」。同時に「マネジメント上で想定されるリスクの数々を見通し、課題解決が必要となる前段階で障害を消し込んでいく」という、PMO的な動きも実践していくのだという。
「高い視座を保ちながらチーム全体をコントロールしつつ、その一方で現場で起きていることをしっかりと体感しながらリスクの素を丹念につぶしていく。その両方をPMがこなしていって初めて、プロジェクトのゴールが見えてくるんです。ですから最上流のプラン策定にだけ関わる戦略系コンサルタントとも違うし、実行段階の泥臭いPMOを担っていくコンサルタントとも異なる立場。非常に醍醐味がある反面、頭もパワーも求められるポジションといえます。それを面白いじゃないか、と捉えてくれる人であれば、ぜひとも参画してほしいと思っています」
現状のPMチームのメンバーは、社内からの異動組に加え、コンサルタント出身者や事業会社でプロマネ経験を積んできた者などによって構成されているとのこと。保険業というビジネス上の知見の有無については、特にこだわっていないという。
「業務知識や専門的スキルといったものは、プロジェクトに参画する各部門のキーパーソンが精通しているわけですから、むしろ経営的な目線でプロジェクトの行方を大局的に見続ける姿勢であったり、マネジメント上の問題に迅速に対応していける資質であったり、そういう部分をより重視しています。実際、チャレンジングなプロジェクトに入り込んで、社内のメンバーと濃密な時間を過ごしていく中で、それまで不足していたケイパビリティを埋めていったり、多くの部門との関係性を深めていくことにより、1人のビジネスパーソンとしての成長と、社内でのキャリア形成実現へ向けた信頼の蓄積を実現していける。ですから、過去に得てきたバックボーンも大切ですが、どれだけ成長意欲を持っているかが大事だと私は考えています」
すでにプロジェクトにおける活躍で高い評価を得たPMが、既存ラインの部門からリーダーとして指名され、異動していくケースも珍しくないとのこと。松山氏は「PMとして研鑽を積んでキャリアを切り開いていってもいいし、その途上で現場の業務に魅力を感じたならば異動した先で新たな成長を目指してもいい」と語る。
「ここへきてラインのメンバーやマネージャーたちもプロジェクトワークのスタイルに慣れ、そこでのパフォーマンスの意味を理解してくれるようになりました。それゆえに社内におけるPMへの期待も信頼も高まっていますし、会社全体が新しいことにチャレンジする気運になっていることが嬉しいです」
既存のライン上の組織が硬直化してしまい、部門横断型のクロスファンクショナルなプロジェクトが立ち上がっても、なかなか変革を実現する集団へと変貌できない大企業が多い中、メットライフ生命のPMを核に据えた動きは確実に変化を呼び込んでいるようだ。ただしそれゆえに、前のめりなテーマを持つプロジェクトは今後も増え続ける。課題はPMチームの拡充だ。松山氏が示した同社ならではのPMの醍醐味や価値観、そしてそこで得られる成長およびキャリア形成の広がりに魅力を感じ、共感できる人材であれば、まさに今こそがチャンスだと言えるだろう。
]]>今やトリドールのグループ内では「店舗再生請負人」としてレジェンド的な存在にさえなっている恩田氏だが、学生時代は起業を本気で志していたという。就職活動も起業が前提。「いずれ人を束ねて組織を率いていくのだから、修行をしなければいけない」との思いで外食産業を選択。ワタミに入社をした。
「外食産業の店長という仕事が非常に厳しいものだというイメージはありましたが、そこで店のスタッフとのチームワークを経験し、日々明快に数字になって表れる結果と向き合えば、必ず起業する時に役に立つ。そういう動機でこの業界を選びました。ワタミに入社をしたのは、このグループが店舗におけるサービスの質にこだわることで業績を伸ばしていたこと、入社早々から店長を任される可能性が高いと思ったことからでした」(恩田氏)
その後、恩田氏は起業をするのではなくトリドールへと転職を果たすのだが、その理由は、ストレートに飲食の仕事の面白さを知ったからなのだという。より深くこのビジネスを知るため、「今度は味にこだわって勝負しているところで働きたい」との思いから、炭火焼鳥「とりどーる」を運営するトリドールに入社した。
「以前からここの焼鳥が美味いと感じていたので、単純に入社を決めたんです。看板ブランドがうどんの『丸亀製麺』だということは、後から知りました」(恩田氏)
入社後、「丸亀製麺」とラーメンチェーンの「丸醤屋」の双方を担当する立場になった恩田氏。
「2010年ごろにはもう『丸亀製麺』の人気はブレークしていました。上り調子の人気店で経験を積みながら、当時丸亀製麺と比較し課題が多かった丸醤屋で力試しをし、成果を上げ、自分の成長につなげていこうと考えたんです」(恩田氏)
結果、2つのブランドでともに目立った成績を上げた恩田氏は、10数店舗を束ねるマネージャーとなったが、すぐにその腕前を買われて本部へと引き抜かれた。与えられたミッションは、各ブランドの店舗運営における業務改善の体系化とITツール導入の担当者だった。
「非常に良い経験をさせてもらいました。飲食店の仕事の面白さというのは、どんなに小さな店舗であっても、改善できるポイントというのが山ほどあって、そこに適切な対処をしていくと、ちゃんと数字になって表れてくるところなんです。こうしたノウハウを数多くのお店が適用できるようにする仕事であったり、店舗経営に最適なITツールを選定していったりする仕事は、その後の私の成長にもつながっていきました。ただ、直接担当している店舗を改革していくのとは違います。大きな組織が新しいものにチャレンジすると、どうしてもスピードが遅くなるのだという課題にも突き当たっていたんです」(恩田氏)
そんな思いから、現場への復帰を志願。単なる復帰ではなく、「特に業績悪化に悩んでいるお店を私にやらせてください」と直訴した。次々と赤字店舗の黒字転換などに成功していくうちに、恩田氏の存在はグループ全体に知れ渡っていく。そしてある時、創業者であり、グループ代表の粟田貴也氏から声をかけられた。「丸亀製麺」の全店舗を統括して数字をさらに引き上げる改革を施してほしい、という特命だった。
結果、面白いように数字がグングン伸びる。評価制度の改善や丼物等の新規メニュー開拓といった新しいチャレンジにも成功していった。やがて「丸亀製麺」以外のブランドの確立という使命を担い、こちらでも成果を示した恩田氏は、2017年に国内の店舗運営全体を司るトリドールジャパンの社長に就任することとなった。
まさに現場での実績に基づいた「たたき上げ」によるキャリア形成。その真骨頂が恩田氏だといえる。一方の鳶本氏はというと、まったく異なる道を歩んできた。
学生時代から一貫してマーケティング領域に傾倒していたという鳶本氏が、その成長の場として選択したのは自動車業界だった。大手自動車会社に入社し、商品企画の担当者として実績を積むと、その後、複数の車種にまたがるクロスカー商品に携わっていったという。
「マーケティングの仕事を、スケールの大きな舞台でやらせてもらえることに満足をしていましたし、成長も実感できていたんですが、段々と私の関心の対象が経営そのものへとシフトしていったんです。マーケティングまわりだけでなく、会社経営に関わる様々なことをもっと学びたい、という気持ちが高まり、まずはMBAを取得しようと考えました」(鳶本氏)
京都大学大学院のビジネススクールで学ぶうち、自身のキャリアビジョンも明確になっていったという鳶本氏。
「父が自ら経営者となって失敗した経験の持ち主だったこともあり、私としては自分が経営者になるんだ、という思いよりも、その傍らにいて参謀として貢献していく立場に就きたい、という思いがどんどん募っていきました」(鳶本氏)
経営参謀を志すならば、コンサルティングの世界で実力を磨くべき。そう考えた鳶本氏は大手外資系ITコンサルティングファームに入社。IT系案件でのコンサルティングを担うようになった。その後、大手外資系コンサルティングファームに入社し、そこで今度は組織変革をテーマとする案件を中心に手がけていき、自らのコンサルティングスキルの向上を進めていった。
「こうなれば、多くのコンサルタントがそうであるように、事業会社の懐に飛び込んで、自らが戦略の実行までコミットする立場になりたい、という気持ちが膨らんでいきます。私も複数の大企業の経営企画部門で、戦略策定から実行に至るまでを担う立場に就き、その後はベンチャーの経営支援を担ったりもしていったんです」(鳶本氏)
経営参謀のプロとして実績も評価も得た鳶本氏。自身の力を活かす場は、いくらでも選べる状況だったはずだが、あえてトリドールという外食産業を選び、今に至っている理由はどこにあるのか?
「理由の第1は、食べることが大好きだからです(笑)。人間の根源的欲求に関わるビジネス。もうそれだけで大きな魅力なんです。また、私は事業会社時代やコンサルタント時代も含め、数々の場で経営上の意思決定に携わり、その醍醐味に魅了されてきましたが、この意思決定というものを毎日求められる産業というと限られています。食のビジネスは、まさにその1つ。これも大きな転職理由ですね。そして、なによりの理由は、トリドールという会社がとんでもない戦略を本気で実現しようとしていた点です」(鳶本氏)
鳶本氏のトリドール入りは2018年だが、2015年に粟田貴也氏が公言したトリドールグループの中長期戦略には、当時から目を奪われていたのだという。「2025年度に国内外の店舗数を2014年度比で6.3倍の6000店に拡大。さらに海外展開の拡大やM&A加速などによって、25年度の連結売上高を2014年度比5.7倍の5000億円に引き上げ、上場外食企業で世界トップ10入りを目指す」というのが、2015年7月に発表された内容だった。
「まあ、正直に言わせてもらいますが『いったい何を考えているんだ?』という感想でした(笑)。そして、同時に『こんな面白い会社、他には絶対にない』とワクワクしたんですよ」(鳶本氏)
店舗数にせよ売上にせよ、10年間で6倍前後に成長することを明快に示した大胆さと、「食のグローバル化」という難しいテーマに挑んでいく姿勢に共感したことから、鳶本氏はトリドールへの入社を望み、2018年にそれが成就。ホールディングスの経営企画本部において、これまで主に戦略実行上の課題抽出等に携わってきたが、2019年4月の組織改編に伴い、同社グループの組織開発を統括し、国内の人材採用および育成において恩田氏とのタッグを形成することになったのである。
以上のように、まったく違う道のりを歩んできた2人だが、そのコンビネーションはどうなっているのだろうか?
【鳶本】私は入社してすぐに恩田の存在を知り、相談に行きました。外食産業に本格的に携わるのが初めてだから、というだけでなく、どんなビジネスであろうと、現場を知る人が何より重要だと思いますから。そして、自分と同じ考え方、つまり「今の組織を大きく変革しなければいけない」と強く思っているのだと知り、嬉しくなりました。さらに嬉しかったのは、恩田が新しいことをしようとするアイデアに対して、基本的にノーとは言わない主義だとわかったことです。
【恩田】私はその主義を貫くことでお店を変えてきましたからね。もちろん会社として、グループとしての大きな戦略がベースになければいけませんが、1つひとつの現場では次々に改革の打ち手を施していかなければいけません。スピードが命ですから、新しい事をしようという者がいれば、よほどのことがない限りゴーサインを出します。「そのかわり責任は取れよ」と言い足しますが(笑)。
【鳶本】わかります。どんなに賢い人間がたくさんのアイデアを考えたとしても、それを実行しなければ何も生まれませんよね。大きなグループだからこそ、現場で小さくても良いからアイデアの実行を繰り返していかないと、組織も人材も成長しません。
【恩田】そうなんです。10試しても、うまくいくのはせいぜい1。けれども、その1を1000の店舗が導入することで、成果は桁違いになっていく。
【鳶本】だから、「与えられた手法をそのままやるだけ」の人材ではなく、「どんどん改善点を見つけて積極的に失敗を恐れることなく実行していく」人材を増やしていかなければいけませんね。私と恩田が2019年からの新体制でコミットするのは、こうした素養を引き出し、採用に活かし、大胆な変革を本当に達成できるような組織に変えていくことなんです。
早くも絶妙なコンビネーションでトリドールの新しいテーマについて説明する両氏。では、具体的にどのような動きを執っていくのか。
【恩田】「丸亀製麺」を含むトリドールのオリジナルブランドでは2019年3月にとうとう1000店舗を達成しました。引き続き好調な業態において、1500店舗を目指していくだけならば、既存のやり方を継続していくだけでも可能かと思います。しかし、それだけに依存していてはこの会社自体の成長がストップしてしまいますし、グループ全体で6000店舗などという目標は決して達成できません。複数の業態を持ち、それらが各々チャレンジを繰り返していく必要があります。
Aという業態で有効だった打ち手をBという業態でも導入して、というようにシナジー効果も生まれてくるようにしなければいけません。何を、いつ、どう組み合わせて、変革につなげるか。そこに関心を持ち、コミットできて、実行していける人材、つまり変革リーダーを生み出していく施策が最優先だと考えています。だからこそ、サービス提供部門も私の責任下にしてもらいました。
【鳶本】私自身がホールディングス側の人間なのですが、ともすればこうした立場の人間が机の上で計算した数値目標を、無責任に現場へ投げて終わり、となりがちです。でも、もちろんそんなことでは絶対に会社は変わりません。6000店舗で売上5000億という途方もない目標を達成するには、現場も含め、このグループで働く者1人ひとりが誇りを感じ、幸せを実感できる場にしてもいかなければいけません。
「食」を提供する外食産業は同時に「場」も提供するビジネスです。お客様は、例えば記念すべき日の食事をどこで摂ったのか、を生涯の記憶として残されるわけですから、そういう「良き思い出」にも携われる仕事なのだという意識を、我々はもっと強く誇らしく胸に据えなければいけません。そして、こうした質の部分を高めることが、結果として目標に近づいていく何よりの方策。そういう見地からも、リーダー人材の採用・登用・育成が基礎になるんです。
グローバル市場における日本食の好調さもあって、外食産業ではコンサル人材の登用や、人材採用への注力などが1つの潮流ともなっているが、2人はその点をどう捉えているのだろう?
【鳶本】私自身がそのキャリアモデルみたいなものかもしれませんが、どうなんでしょう? コンサル出身者が、外食産業で必ず真価を発揮できるかどうかと問われたら、私は「その人次第です」としか答えられませんね。
【恩田】鳶本のように、コンサルティングを知っているだけでなく、モノ作りに直接携わった経験もあり、小人数のベンチャーも経験している人ならば、現場の大切さを知っているので、高い価値を出してくれると思います。ただ、誰もが鳶本と同じではありませんよね。どうしてもオフィスに閉じこもりがちになる。でも、それなら私のような人間が引っ張り出せばいいんですよ、現場に(笑)。
「現場の苦労も知らずに数字ばかりで経営を考えるな」ということなのかと恩田氏に問うと、そうした根性論とは別物だという返答。
【恩田】例えば店舗のコスト削減。アルバイト同様の立場で店に出れば、どんな皿をどのくらいの数使っているのかが体感できます。効率を良くしようとすれば、食洗機で一気に洗えるサイズの食器を揃えれば良いわけですが、何でもかんでも同じ食器というわけにもいきません。お客様の満足感を上げつつ、同時に洗い物の効率を上げていく場合、何をどう変えて、どのくらい用意すればいいのか。それを正しく察知するためには、現場で働いてみるのが一番なんです。そういうことを経験から学べる人であれば、必ず活躍できます。
【鳶本】アンケートの結果をデータでもらって、「それを最新のITツールで分析しました」では見えてこない本質的な改革ポイントというのが、現場には転がっているんです。その重要性を理解し、行動できて、それを面白がれる人材であれば、コンサル出身であろうと、事業会社の経営企画出身であろうと、現場からのたたき上げであろうと、確実に成長しますし、活躍しますよね。
ちなみに私自身が大切にしているのは「自分がどれだけ知らないのか」を認識して、ちゃんと口に出して言うこと。トリドールの可能性を実感できたのは、そういう話を恩田のような人間がきちんと聞いてくれたからです。第2、第3の恩田を生み、育てていくためにも、現場を体感する研修は充実させています。せっかく現場に行けるのですから、そこで「何がわからないのか」を口に出し、現場のリーダーを信頼しながら学習していける人材を増やしていきたいですね。
専門性や他業界での経験値を持つ人材を外部から採用し、現場を体感させることで実効性のある変革人材にしていく。同時に現場の人間にも、そうした異文化人材との接点から成長意欲を伸ばしていく。これによって、バックボーンとは関係なく「自立し、自ら成長のチャンスを模索する人材」の集合体にしていき、そうして「途方もない数値目標」を達成するというわけだ。しかし両氏は口を揃えて強調する。数字の達成というよりも、この会社を変え、この産業を変えていくのが自身のミッションだと。
【恩田】仕事なのですから、赤字の業態や店舗があれば、それを黒字にするべく努力するのは当たり前。では、そうして店舗を黒字化して、店の数も増やせば、それでオーケーなのかというとやっぱりそうじゃない。この辺の価値観が私と鳶本は共通しています。
【鳶本】どうしても飲食に関わる産業には、昔からネガティブな印象を持つ人が少なくありません。他業界とは比べものにならないほど多忙で激務だとか、先進的な経営理論やテクノロジーよりも根性の世界だとか、誤った認識が根深く残っています。現実はそうではありませんし、これからトリドールが新体制で挑もうとしているビジネスのあり方から言っても、全然違うのだと多くの人に発信したいんです。
私と恩田が目指すのは、志の高い人が自らを高めるための絶好の場として、この産業を選択してくれるようにしていくこと。お客様の記憶に残る価値を提供する、素晴らしい産業なのだと理解してもらい、自分の子どもにもやらせたい仕事だと思ってもらえたら最高に嬉しいですね。
【恩田】だからこそ人材の採用や育成に我々は注力していきますし、既存の外食産業が用いてこなかったような経営手法やテクノロジーの導入も行うべく、準備が着々と進んでいるんです。そういう視点でも興味を持ってもらえたら良いなあと思っています。
最後に、両氏が求めている人材像と、そうした人たちに向けてのメッセージを語ってもらった。
【鳶本】とにかくトリドールはこれから、他のどの企業もやっていないようなチャレンジも含めて、失敗を恐れずどんどん実行していきます。地に足の付いた恩田のような存在もいる中で、現場の目線に立つことを面白がりながら成長を目指したいと思うのであれば、外食事業の経験の有無は問いません。新しい「食」のビジネスを創造するチームの一員として、ぜひ参画してほしいですね。
【恩田】かつての私のように、いずれ起業したい、と考えている人も大歓迎です。ここには本当に数多くの人間が参加してビジネスを営んでいますし、リアルな店舗という舞台を任されるチャンスにも恵まれています。経営を学び取るのにうってつけのこの会社で、多くを吸収した後、起業をしてくれたのならば、広い意味でトリドールの仲間が増えていくことになるわけです。
それに、私自身が起業する野望を収めた理由でもあるのですが、これほど世界を舞台にスケールの大きなチャレンジができる場はそうそうありません。言ってみれば、毎日起業しているような感覚と教訓が手に入るのですから、成長を強く望んでいるかたには理想的な環境です。どうか期待を自由に膨らませながら、我々に会いに来てください。
]]>過去最大の赤字計上からわずか2年で過去最高の黒字を達成。サラ・カサノバCEOが実現したV字回復は鮮やかだった。この日本マクドナルドの復活劇の立役者の一人でもある白井康平氏は言う、「今この会社は本当に面白い状況にある」と。
「私自身は日本マクドナルドが下降線をたどる直前の2011年の秋に入社しています。サラ(カサノバ氏)が2013年にCEOに就任してからも数字の低迷は止まりませんでしたが、2015年に底を打つと、それから改革が成果を示し始め、一気に復活をしたわけです。投資銀行業務やPE、さらにはAmazonで、様々な企業の経営を見つめてきた私としても、これほど大きな会社がこれほど短期間で息を吹き返すような経験は初めてでした。
これまで一貫して『パワー・オブ・ワン』のスローガンのもと、変革に挑戦してきたわけですが、2019年からは『挑戦』ではなく『未来へ』という言葉で、この会社はさらなる高みを目指そうとしています。危機からリカバリーへ。そしてリカバリーからブレークスルーへ。全国約2900の店舗、クルーを含めれば約15万人ものメンバーがいる大組織が一丸となって未来を目指そうとしているんです。実に醍醐味のある状況と空気が広がっているんですよ」
日本にハンバーガー文化を根づかせた藤田田社長の時代(1971〜2002年)、価格や店舗の改革、話題性に富んだ事業戦略でブランドの向上を実現した原田泳幸社長の時代(2004〜2013年)、それぞれが特徴的な経営で日本マクドナルドのプレゼンスを高めてきたわけだが、カサノバ体制(2013年〜)が浸透した今の日本マクドナルドには、「パワー・オブ・ワン」のスローガン通り、一体感のある前向きな空気が充満しているのだと白井氏。
では、ブレークスルーの未来を目指す現在の日本マクドナルドで、白井氏はどのような役割を担っているのだろうか?
「財務本部は大きく2つの役割に分かれます。1つはコーポレート寄りの会計業務であり、もう1つがビジネスに寄り添いながら、現場の事業や業務、FCも含めた地域ごとの活性化にコミットする役割です。私は主に後者の役割に携わり、ビジネスコントローラーやリージョナルコントローラーと呼ばれる20名弱のメンバーとともに、NRSO (National Restaurant Support Office)と現場の経営改善を担っています。
20名で全国にある直営店やFCをカバーし、新規店舗開発やマーケティング、店舗オペレーション、ITなどにも関わりながら、成果の最大化を目指すわけですから、1人ひとりの経営者的な目線と行動が求められます」
白井氏によれば、業績悪化に加え、東日本大震災という外部要因も加わった危機的状況が、むしろ財務チームのプレゼンスを上げ、各メンバーの意識を高めていったのだという。そして、新たな成長フェーズへのブレークスルーを目指す今、20名体制の規模感を超える大きな役割に向かう今、新たな人材の獲得とその成長に期待する気運が高まっているというわけだ。
ここまで実情がわかれば、現在の日本マクドナルド、特に白井氏が率いる部隊に求められる要素は見えてくる。
「アントレプレナーシップですね。起業家精神のようなものを備えている人であれば、外食産業に携わったり、FC展開に携わったり、といった経験がなくても、必ず活躍できますし、マクドナルドでしか味わえない醍醐味にも、共鳴してモチベーションを上げてくれるはずです」
事実、現在いるメンバーのバックグラウンドは様々。白井氏自身、外食産業への参画は初めてだったし、投資銀行やコンサルティングファーム出身者もいる中で、新卒で日本マクドナルドに入社したプロパー組もいる。もちろん、業界固有の知見をキャッチアップしていく必要はあるものの、問われるのは現場との協調による事業確立と成長に情熱を持てるマインドセットというわけだ。気になるのは白井氏が指摘した「マクドナルドでしか味わえない醍醐味」という言葉。その中身を尋ねてみた。
「マクドナルドは、今さら言うまでもなく一大グローバル企業です。それでいて日本マクドナルドには独自の展開も許されている。グローバルとローカル、双方のビジネスのダイナミズムを経験でき、バランスを取りながら事を前に進めていける独自性があります。そして、大企業でありながら、ベンチャー並みにアントレプレナーシップを発揮していける土壌が今できあがろうとしています。
業種を問わず、ここまで日々のオペレーションを、スピード感をもって進めている企業も他にないでしょうし、同時に長期的展望をもって業務の改革や店舗の成長に関与していくこともできます。こんな企業、あまり例がないと思います。」
白井氏が示した通り、グローバルとローカル、大企業のスケールとベンチャー的なチャレンジ、スピード感と長期展望、というように、幾つもの相反するものを同時に経験できる環境は、めったにないだろう。
「例えばコンサルティングファームから事業会社に転じて、しっかりと手触り感のあるミッションにチャレンジしたい、というようなかたにはうってつけだと思います。ベンチャーではリスクが大きすぎるような大胆な挑戦も、ここでなら可能ですし、現実に次々と新たなチャレンジをしています。財務のメンバーとしてビジネスに関わる以上は、多様な部門のマネジメントクラスと向き合うことにもなりますから、自己の成長スピードも他とは比べものになりません」
そう語る白井氏自身が、「気がつけば、いつの間にか入社から8年が経過していたんです」とのこと。「毎年転職をしているかのように変化に富んでいるし、成長カーブが一向に緩やかにならないままの8年でした」と言う。最後に、白井氏が採用面接で何に着目しているのかを質問すると、さらに興味深い答えが返ってきた。
「私が想像さえしていないような何かを示してくれる人とお会いしたいと、いつも期待をしているんです。抽象的かもしれませんが、キャリアについての考え方でも、人生観でもかまいません。何か大きなことを目指している人や、良い意味でユニークな発想を持っている人が参画してくれたなら、我々のチームにとっても良い刺激になると思うのです。
サラの改革が進んだことで、今この会社は以前よりもさらに、前向きな人材にサポーティブなカルチャーが浸透しています。ぜひ、常識にとらわれず、想像を超えるような何かをもって、会いに来て欲しいと思っています」
]]>内田 博之 氏
執行責任者 社長 Adient GK 兼 副社長 アジアOEMカスタマー
慶応義塾大学理工学部機械工学科を卒業後、日本最大手のベアリングメーカー、日本精工(NSK)に入社。主に自動車や空調機器に用いられるベアリングの開発製造に携わる中、英国駐在を経験。グローバルビジネスの醍醐味に触れたことがきっかけとなり、以来、デーナ、ベバスト、ブレンボ、Zana Corporationなど、いずれも自動車部品・関連製品領域で高い専門性を誇るグローバルカンパニーでリーダー、マネージャー、ジェネラルマネージャーを歴任。2015年、ジョンソンコントロールズ オートモーティブジャパンへ招聘され、日本における社長とアジアOEMカスタマー副社長に就任。アディエントとなってからも引き続き、日本とアジアを率いる役割を担っている。
デビッド ハワード 氏
エグゼクティブダイレクター シーティングジャパン エグゼクティブダイレクターAsia PMO
米国ケンタッキー大学にて機械工学を専攻し卒業。米国エリス大学のビジネススクールでMBAを取得した。ジョンソンコントロールズへの入社は1998年。以来、オートモーティブ分野において様々な役割を担い、近年は製品開発および生産分野を統括。アジアにおける製品開発プロセスをリードするとともに、日本およびアジアのプログラム・マネージャーをはじめとする従業員のトレーニングも先導。現在では日本におけるオートモーティブ事業すべてを統括するカントリーマネージャー、そして、アジアにおけるプログラム・マネージメント分野のエグゼクティブダイレクターという2つの大きな使命を担っている。
EnChien Chen 氏
シニアマネージャー ジャパンパーチェシング
台湾の大学を卒業後、IT企業でプログラマー、プログラムマネージャーとして従事。その後、デルタ電子でサプライチェーン、コモディティチェーンのミッションを経験。2007年、米国ミシガン大学ビジネススクールでMBAを取得するとサマー・インターンシップで出会ったジョンソンコントロールズに入社。トヨタ、日産など日本の自動車メーカーが用いる発泡剤のバイイングに携わった後、上海にて同素材のケミカル分野のマネージャーに。2014年、メタル製品およびメカニズムに関わるシニアマネージャーに就任すると、翌2015年からアジア・パシフィックエリアを統率する立場となり、現在に至っている。