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画像:留目 真伸 氏

プロ経営者インタビュー

留目 真伸 氏

2005年にIBMと、20011年にはNECとのPC事業統合を実現させながら、パソコン業界における国際的リーディングカンパニーの座を維持し続けているレノボ。
この日本法人であるレノボ・ジャパンの社長に、2015年4月、留目真伸氏が就任した。NECとの事業統合における立役者でもあった留目氏は、同時にNECパーソナルコンピュータのトップにも就任。両社のさらなる成長を牽引しようとしている。
総合商社や戦略コンサルティングを経てPC業界に入った留目氏は、今後の展開にどのようなビジョンを持っているのか?経営者として、いかなる着想やこだわりを持っているのか?
いつもの20の質問を通じて語ってもらった。

留目 真伸 氏
レノボ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
http://www.lenovo.com/jp/ja/

1971年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、総合商社のトーメンに入社。6年間の在籍中、発電プラントのプロジェクト開発等に携わった後、戦略コンサルティングのモニターグループへ転職。多様な業界の経営変革プロジェクトを担った。2002年、デルへ転じるとマーケティングを中心とした数々の事業部で活躍。その後ファーストリテイリングを経て、2006年よりレノボ・ジャパンに入社。常務執行役員として戦略、オペレーション、製品事業、営業の統括責任者を歴任した。2011年からはNECとのPC事業統合の責任者に任命され成果を上げ、レノボの世界シェア2位(当時。現在は1位)獲得に貢献。2012年には米国ヘッドクォーターの戦略部門にエグゼクティブ・ディレクターとして着任し、全世界の事業統合を担当した。その後、レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータ両社のコンシューマー事業を統括し、2015年4月、レノボ・ジャパン代表取締役社長および、NECパーソナルコンピュータ代表取締役執行役員社長に就任、9月からはレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ代表取締役社長も兼任し、現在に至っている。一方、「グローバル社会と調和した元気な日本を作っていく」ことを志し、そのための仕組み作りを目指して、2011年に「GAISHIKEI LEADERS」を発起。これまで本コンテンツに登場した多くの経営者も賛同・参画して、独自の活動を展開している。

※現在は退任されています

[1]自己紹介をお願いします

就職活動を始めた頃の私には、さして具体的なキャリアプランなどありませんでした。ただなんとなく「大きな仕事がしたいなあ」と思っていた程度。けれども、この「大きな仕事」という言葉が、その後も私を動かしていくことになります。ともあれ、大学時代の私は「大きな仕事とは海外で大きなプラントを建設するようなビッグ・プロジェクトを遂行することだ」とイメージしていました。

そうして入社したのが総合商社のトーメンです。トーメンを選んだのは逆ドラフト制度のようなものがあり、新入社員が自ら配属されたい部門を逆指名できる仕組みがあったからです。迷わず「大きな仕事」とイメージしていた発電プラント事業を逆指名し、海外駐在の職務も含め、さまざまな経験を積むことができました。

私はこの会社で社会人としてスタートできたことを、今でもありがたく思っています。歴史のある日本企業での経験が、その後のキャリアで活きてきたのです。外資系企業で働くようになってから実感したのは、「多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されるグローバル・チームで活躍するためには、むしろ日本人のアイデンティティを活かして独自の価値を出していくことが重要である」ということです。

中でも日本市場や日本社会、日本企業に対する理解や、それらを動かしていく力、というのは、日本人のアイデンティティが最も活用できる部分であり、「日本人の社員は毎日どのように過ごしていて、どのようなモチベーションを持って仕事をしているのか、組織としてどのように意思決定が行われ、業務が遂行されていくのか」といった根源的なところをトーメン時代に培うことができました。

発電プラントの仕事はタフです。ただし、忙しさには波がありますし、「海外で仕事」といっても、その国の田舎で長期間をすごすこともあります。「さして忙しくないけれども娯楽もない(笑)、しょうがないから本でも読むか」という日々に、私は集中的に本を読みあさりました。そうしてビジネスに関する書物、経営について書かれた本などを読んでいくうち、気持ちが大きく揺さぶられていきました。

「自分が今まで考えていた『大きな仕事』の定義は偏っていたんじゃないか?」と思うようになったわけです。「大きな仕事」というのは、プロジェクトのスケールのことではなくて、「会社の重要な戦略的意思決定に携わる仕事」なのだろうと、自分の中で再定義がされました。「大きな仕事」を追求するのであれば、この新しい定義に基づく行動を起こさなければいけない。そうして戦略コンサルタントになる道を選んだわけです。

中途入社したモニターグループは、米国を拠点にしつつグローバルで実績を上げ続けている戦略ブティック・ファームでした。業種にかかわりなく、次々と多様なインダストリーの競争環境を分析し、経営戦略の策定に携わっていくことになり、大いに勉強になりました。ただし、徐々に「自分が目指すところ」とのズレを感じ始めたのも事実です。

たしかに戦略コンサルタントは名だたる企業の意思決定に関与することはできる。しかし、その役割はあくまでもサポートをすることで、意思決定の主体にはならない。私はやはり「意思決定に関わるだけではなく、その主体になりたい」と考え、「それならば事業会社に行くべきだ」と決心したのです。

転職したのはデルでした。2000年代初頭のデルは、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していました。その原動力の1つがデル・モデルと呼ばれていたダイレクト・ビジネスの手法。そんな会社でマーケティング分野を統括する立場に就けたことで、私は大いに成長できましたし、満足もしていました。とりわけ当時の社長である浜田宏さんや、多くのゼネラルマネージャー(GM)に可愛がってもらい、マーケティング担当の枠を超えて、彼らの右腕となって経営を考えていくようなこともやらせてもらいました。

マーケティング等の一機能を担うだけでなく、事業全体にオーナーシップを持てる仕事をしていきたいと強く思い始めたのもこの頃です。その後デルが組織を大きく変えていく局面を迎え、浜田さんも組織を去るような動きになってきた時、私も違うステージを追い求めることにしました。

そうして、当時M&Aを積極的に行っていたファーストリテイリングへの入社を決め、買収先企業の経営を任される立場に就いたのですが、早々にデル時代の上司や同僚にレノボ・ジャパンに引っ張られ、戦略やオペレーション、マーケティング等、スタッフ系の業務全般を統括する立場で、再びPC業界にチャレンジをすることになりました。

2006年当時のレノボは重要な転換期にありました。2004年の暮れにIBMのPC事業部門の吸収合併を発表したことで、「レノボ」の名前は世界中に知られるようになりましたが、裏を返せば「それまで世界市場ではほとんど知られていなかった企業」だということ。

IBMやThinkPadのブランド価値は非常に高いけれども、レノボとして実績を上げ、新たにブランドを作っていかなければならない。また、IBMがPC事業を手放したのも、この事業において効率面で競合他社に大きく遅れをとってしまっていたから。これを大至急ターンアラウンドし、新たな成長軌道に乗せていかなければいけません。

レノボに来てからの数年間、私が担ったのは事業の効率化と抜本的な建て直し。苦しいリストラも行いましたし、悪戦苦闘の日々が続きました。今振り返ってみてもひどい状況でしたが、それでも、「アジアと欧米をかけ合わせた新しいグローバル企業をつくる」というレノボのビジョンや、1992年のThinkPad誕生時からその設計を担ってきた日本の大和事業所の「ものづくり」を再度輝かせていくという使命に魅かれながら、ハードな時期を耐えてきました。

皆の死にもの狂いの奮闘もあり、3年が経過する頃にはようやく効率面で競合に追いついてきて、成長の機会が見えてきました。そして一層成長を加速させていくため、私自身の役割も事業部門の統括に変わり、戦略の立案から日々の営業活動までをリードすることになりました。

ここでようやく、ゼネラル・マネージャー(GM)として、ビジネスのオーナーシップを持つことになったわけです。それまでスタッフ部門を統括してオペレーションを自ら作り上げてきましたし、多くのGMの方々の右腕の役目を果たしてきていたので、実行可能な戦略を作り上げ、それをドライブしていくことには自信もついていました。

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GMとして順調にビジネスを成長させてきた矢先の2011年、レノボとNECがPC事業を統合するというビックなニュースが入ってきました。日本企業、買収後の事業統合、オペレーション整備、そして事業部門の運営を経験し、また、ThinkPadを通じた日本の「ものづくり」の復権にも人一倍モチベーションを掻き立てられてきた私にとって、まさに運命的な出会いであると感じ、統合プロジェクトのリーダーを買って出ました。

正直に申し上げれば、非常に難しいチャレンジでした。新しいグローバル企業として急激に成長してきたレノボならではのカルチャーもありますし、組織は「機能×地域」というマトリクス型で構築され、動いています。一方、NECはまさに「日本的経営」を代表するような大企業です。

しかもPC業界の黎明期から業界をリードして実績を上げてきた企業で、研究開発、設計、製造、生産、販売というフルファンクションを備え、日本人のニーズにあったユニークな製品で日本市場のトップシェアを維持し続けています。もちろんそこがNECのPC部門の強みであり、これを活かしながら、レノボの強みと融合し、さらに強力なものにしていかなければなりません。カルチャーの違い、組織構成の違い、プロセスの違い、言語の違いを超えて、融合していくことが求められました。

まずはレノボ・ジャパンとNECの日本のチームが中心となって、シナジーの領域を洗い出し、統合のゴール・イメージを固め、各機能毎にレノボの機能別組織のリーダー達とディスカッションしながら統合のレベルとスケジュールを、決めていきました。関係する機能別組織の全てでサブプロジェクトが組まれるので、全体会議等では150名近くのメンバーが世界中から電話でコールインしてくる中、ファシリテーションを行いました。

私はこの時、実感したんです。日本人や日本のチームがグローバルに活躍するには、グローバルな考え方と日本のユニークな強みの双方を、可能な限りフェアで客観的な視点をもって理解しなければならないことを。冒頭で申し上げたトーメンでの経験が、この局面で活きてきたわけです。

私はこの頃に社外で「GAISHIKEI LEADERS」という「和魂洋才」を磨いて日本を元気にしていこうというコミュニティ・プロジェクトを立ち上げたのですが、「日本が持つユニークな強みをグローバルの文脈の中で活かして、日本を元気にしていこう」という志を自らの仕事の局面でも貫いていきました。

そもそも、大変なのは承知のうえで、自分から「やりたい」と言って着手したプロジェクトです。自分ならばできる、自分にしかできない、という強い意志も持って挑みました。

成果は数字となって明確に表れました。統合直後から日本での両ブランドのシェアは拡大し、利益率も向上しました。その甲斐もあってレノボはついにパソコン業界で世界シェア2位となりました。また、レノボ・ジャパンは単なる外資の販社ではなく開発・製造機能を自ら備えた強い組織へと成長したのです。私自身も事業統合の腕を評価してもらい、米国本社の戦略チームで全世界の統合プロジェクトを担当することになりました。

考えてみれば、私がずっと目指してきた「大きな仕事」のイメージがそこにありました。グローバル規模のプロジェクトを、多国籍のチームと取り組み、経営の根幹、意思決定の主体を担っていける環境を手に入れたのです。マイナーリーグを経て、ようやくメジャーリーグへの挑戦が始まったと覚悟を新たにしました。

しかし、PC市場をめぐる環境の変化は著しく、2013年頃になるとレノボ・ジャパンやNECパーソナルコンピュータの業績も一時足踏み状態となりました。両社の経営トップとなっていた日本での元の上司のロードリック・ラピンから「コンシューマ領域での、NEC、レノボの両ブランドのビジネスを見てほしい」と言われ、日本に戻ってくることにしました。

この時もまた決して容易なチャレンジではありませんでした。世の中では「コンシューマーPCの市場は頭打ちで、儲からないビジネス」とさえ言われ、各メーカーも法人市場に注力している状況です。しかし、研究開発から商品企画、調達・製造、物流、マーケティング、営業、サービス等、一気通貫したビジネスの流れを改めて俯瞰してみると、課題解決の糸口をあちこちで見つけることができました。

「このレバーをこう引いたら、きっとうまくいく」というような発見をすることができ、すぐに実行していきました。結果、両社の販売シェアは26〜27%から40%にまで伸びたのです。レノボ・ジャパンでもNECパーソナルコンピュータでも、メンバーは皆、自信を深めています。

「日本のコンシューマーPC市場は限界だ」なんてことは決してない。全体を俯瞰し直して本質に立ち返り、やるべきことをやれば、必ず成果につながる、と。2015年に私はラピンから経営トップの座を引き継ぎましたが、私たちの姿勢は今も変わっていません。

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