ポラリス・キャピタル・グループ

まずは飯沼さんご自身がPEファンドに転身した経緯と理由を教えてください。

【飯沼】興銀にいた多くの仲間も同様でしょうが、私も、産業金融の担い手として日本の企業を支援・育成する仕事に憧れて入行した一人でした。興銀とみずほ証券ではコーポレートファイナンス業務やＭ＆Ａを含む投資銀行業務に従事してきましたが、その中で痛感したことは、バブル崩壊後の不良債権問題により金融機関のリスクテイク能力が急速に低下する一方、90年代後半には企業再生や業界再編の動きが急速に高まった結果、リスクキャピタルを供給する新たな金融機能が重要な課題になってきたということです。そうした環境の中で、リスクキャピタルを提供し、企業を支援・育成するPEファンドの役割が日本でも必要になってくると感じていたのです。

PEファンドの仕事に興味を持つ中、正直言って外部のPEファンドへ転職することも考えなくはなかったです。けれども、興銀時代からの先輩である木村がみずほ証券の中でプライベートエクイティ投資の仕事をしていて、それをポラリスというPEファンドに発展させようという構想を知ったときに、是非自分も参画したいと思いました。PEファンドは少数先鋭で長期間一緒に仕事をしていくわけですから、根幹にある志や理念に共感でき信頼できる人と仕事をしていくことが一番重要と考え、木村が設立するポラリスへの参加を決めたんです。

過去のキャリアが、現在 どのように活かされているか教えてください。

【飯沼】興銀とみずほ証券で得たコーポレートファイナンスやＭ＆Ａの経験・スキルは、案件発掘、エクセキューション、モニタリング、投資回収の全局面で役立っていると思っています。

特に、Ｍ＆Ａの仕事については、（1）多様な業種・規模の企業再編に関わること、（2）金融・財務面のみならず、経営・生産・営業・人事労務・環境等、さまざまな分野の課題をクライアントや交渉相手と協議・解決していく必要があること、（3）経営層に対してアドバイスを行い、経営の意思決定にアドバイザーとして関わることが特徴なので、他の金融業務よりも一歩会社の経営に踏み込んだ仕事です。

その意味で金融と経営の両スキルが求められるPEの仕事には活かせる要素があると思います。加えて、スキルというよりPE投資に取り組む姿勢の問題なのですが、興銀・みずほ証券の中で身に付けた産業・企業を育てるという志や、財務だけでなく業界・事業・経営を総合的に見る目というのも、ポラリスで活かせていると思います。

非常に順調に成長を遂げているポラリスですが、設立当初には苦労もあったのでしょうか？

【飯沼】最初のハードルは、設立当初、実績がない中で投資実績をつくることだったと思います。第一号ファンドができる時には当然パイプラインとして複数の案件を抱えていましたし、その後もいろんな企業にアプローチをしましたが、やはり実績・経験がものを言う世界なので、最初の案件を成約するまでは「生みの苦しみ」がありました。

2年目に入ってからは順調に投資実績を積み上げ始めましたが、業務量が増える中で優秀な人材を確保していくことが第二のハードルだったと思います。やはりPEでは私のような金融をバックグラウンドに持つ者だけでなく、多様なバックグラウンドの持ち主をメンバーに加えることが重要だと思います。その意味では企業のターンアラウンド経験を持つ高橋の存在はポラリスにとって大きかったわけですが、組織としてはさらに人材を厚くする必要がありました。ポラリス設立当初は転職市場における認知度も低かったでしょうから、正直言って優秀な人材を確保することは難しかったです。でも投資実績が積み上がるにつれてポラリスにアプローチしてくる人材のクオリティは急速に上がってきました。07年に戦略系コンサルティングファームから参画してくれた小川をはじめ、今では相当クオリティの高い人材がポラリスに集まってきています。

「パートナー」という立場は、どのようなファンクションなのでしょうか？

【飯沼】一番重要な役割はファンドの意思決定機関である投資委員会のメンバーである点。もう１つの役割はポラリス自体の経営について木村を補佐していくという点です。もちろん、ファンドマネージャーの一人として個別案件も担当しますが、同時に会社全体、ファンドポートフォリオ全体のパフォーマンスに責任とコミットメントを持つ、それがパートナーの立場です。

「一気通貫」が一つの特徴となっているようですが、そうなるとメンバーには相当広範囲に及ぶ知識やノウハウが問われるように思うのですが？

【飯沼】もちろん、金融面にも経営面にも高い経験値や能力を持っているに越したことはありませんが、最初からPEの仕事に必要な全ての経験・能力を持っていることは不可能です。でもPEの仕事はチームプレーなので、他のチームメンバーが補完してくれます。ポラリスでは皆が経験・能力面での柱を持っているので、さまざまなバックグラウンドのメンバーがチームを組むことでポラリスとして高いクオリティの仕事ができる訳です。また、ポラリスは設立してから順調に投資実績を積み上げているので、すごい勢いで経験値を蓄積しています。ですからポラリスに入ることで未経験の分野でも相当なラーニングカーブが期待できる環境にあります。

経験・能力以外に重要なことは高い志だと思います。長期的に日本にコミットしたPEとして、日本経済・社会に貢献するという社会的意義を重視した高い志や視座を持っていること。そして 顧客の悩みに真摯に対応する姿勢、困難な課題にも真正面から取り組み 解決していく姿勢を持っていること。この二つを共に満たしている人がポラリスに集まっています。ポラリスの企業カルチャーと言えますし、大きな魅力の一つだと自負もしています。

ファンドマネージャーの仕事は本当にタフです。特に当社のように一気通貫で行うと、困難な局面は次々に現れます。その時、そうした困難に正面からがっぷりよつで組んでいける人。あきらめず、逃げない人かどうか。それが何よりも重要だと思います。

嬉しいことに、ポラリスは日本のPEファンドとしては毎年最も多い案件に関われる状況が続いていますので、一連の業務を順次経験していくことで、ノウハウや専門性を早期に育てていくことが可能だと思うのです。でも、ノウハウ・専門性と同様に大切なのはやはり志であり、これを共有できることが重要だと思っています。ポラリスは本気で「真のハンズオン型PE」そして「日本で一番のPE』としての成功を目指しています。その志や概念に共感してくれる人に、ぜひ参画してほしいと思っています。

「真のハンズオン型PE」として、そして 「日本で一番のPE」を目指して、今後どう成長させようと考えていますか？

【飯沼】「投資先企業を良くする」という意識で仕事をすることは、バリューアップにコミットするPEファンドとして重要だと思いますが、それは投資先企業の為だけでなく、投資家の為であるという、PEファンド本来の役割を常に意識することが重要です。他の業界から来ると、どちらか一方に目が行きがちになるかもしれませんが、この２つの期待に同時に応えていけることこそがファンドマネージャーの責任でありやりがいであると思います。この２つは矛盾しない目的でありPEファンドにとっては当たり前のことですが、これらを同時に追求していくことが結果として「真のハンズオン型PE」につながると考えています。

　ポラリスは「日本で一番のPE」になることを目指しています。「一番」というのは必ずしも規模を意味しません。定量面で大事なのはやはり投資家にとってのファンドのパフォーマンスです。定性面ではバリューアップスキル、人材のクオリティだと思います。私にとって「日本で一番のPE」とは、「投資家にとって一番投資したいPE」、「企業経営者にとって一番相談したいPE」、そして「優秀な人材が一番働いてみたいと思うPE」だと思っています。

今、ポラリスは第二号ファンドを設立したところです。これから第二号ファンドの良質な投資を積み上げるフェイズですし、第一号ファンドの回収フェイズにも入っていきます。これらの活動が成功することによって、数年後の第三号ファンド設立に繋がり、ポラリスの更なる発展に繋がっていくわけで、今はまさに第二の創業期ともいえる段階ですから、ともにチャレンジして、一緒にポラリスを育て、「日本で一番のPE」にしていこう、という考えを持ってくれる人に参画してもらえたら嬉しいですね。

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