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戦略コンサルタントのキャリアを考えるセミナー

《2部》戦略コンサル卒業生を囲んでパネルディスカッション
&懇親会

《2部》戦略コンサル卒業生を囲んでパネルディスカッション&懇親会

パネリスト プロフィール(50音順)

■稲積 憲 氏
NHN テコラス株式会社 代表取締役社長
リコー、ソニー、ローランド・ベルガーを経てアリックスパートナーズに入社。支援先のライブドアにて経営企画担当の執行役員として経営再建に尽力後、NHN Japan(現LINE)執行役員経営企画室長、NHN PlayArt(現NHN comico)代表取締役社長を経て現職。

■松島 陽介 氏
ノーリツ鋼機株式会社 取締役副社長COO/NK リレーションズ株式会社 代表取締役
A.T.カーニーおよびマッキンゼー・アンド・カンパニーにて、戦略コンサルティング経験。
MKSパートナーズおよび丸の内キャピタルにて、M&Aおよび投資先のサポート経験後、現職。

■山本 直英 氏
MSD株式会社 オンコロジービジネスユニット東日本営業部部長
新卒ボストンコンサルティンググループ入社でプリンシパル経験後、ノバルティスファーマ株式会社のマルチチャネルマーケティンググループグループマネジャー、コマーシャルエクセレンス部部長を経て、現職。

パネリストの紹介

【荒井】それではこれからパネルディスカッションに入りたいと思います。まず山本さんから順番に自己紹介お願いいたします。

【山本】私は大学院の工学部を出てBCGに入り、アソシエイト、コンサルタント、プロジェクトリーダー、プリンシパルと、足かけ12年間コンサルタントを経験しました。その後、製薬業界に移り、ノバルティスファーマを経て、2015年12月から、MSDのオンコロジービジネスユニットという、がん領域を担う営業責任者として、組織作りから新薬のローンチ準備を進めています。本日はよろしくお願いいたします。

【松島】私は大学を卒業して最初に勤めた第一生命で6年間働いた後、コンサルタントに転身しました。ATカーニーに4年、マッキンゼーに2年間務めたので、都合6年間コンサルタントをやったことになります。その後は、投資の世界に身を移し、当時はプライベートエクイティファンドの中で御三家と言われる会社の1つに入りました。ただ2年後にリーマンショックがあり畳むことになったため、丸の内キャピタルというファンドに移り、6年間投資事業に携わりました。4年半程前からは、事業会社で投資を武器に立て直す仕事に取り組んでいます。

【稲積】私は「人の行く裏に道あり花の山」という言葉が好きで、実際のキャリアも、大抵周囲から「何でそこに行くの?」と言われるような選択をしてきました。具体的には、事業会社を2社経験した後、29歳になる月にローランドベルガーに入って3年半。それから5年ほどアリックスパートナーズに勤め、その後、今のNHNグループに入りました。 NHNグループでは、経営企画の立場で3社統合や、LINEのアライアンス営業などに従事し、3年ほど前に実施した会社分割後は、スマートフォンゲームの立ち上げやスマートフォンコミックの『comico』の立ち上げに携わりました。そして現在は、NHNテコラスというB2B向けのインフラやセキュリティ、広告を提供する500人規模の会社を経営しています。

事業会社で成功する人、失敗する人の違い

【荒井】ありがとうございます。早速ですが、もし皆さんの中で、お三方に聞いてみたいことがあれば手を挙げてみてください。

【参加者・Aさん】皆さんにお伺いしたいのですが、事業会社に行かれる元コンサルタントで、成功する人と失敗する人の違いって何だと思われますか?

【稲積】第一部の小杉先生のお話の中で、ロジックだけで経営はできないという部分にとても共感しました。ひとりでやるのではなく、多くの人を動かしてビジネスを動かそうと思ったら、やはりロジックだけでは不十分です。その人たちにこれから行く道を指し示したり、モチベーションを高めたりするためには、酒の席で愚痴を聞いたりなだめたりするようなコミュニケーションが必要になってきます。そういう意味では、事業会社で成功するためには、実行フェーズをいかにうまくやれるかどうかにかかっていると思います。

【荒井】松島さんはいかがですか?

【松島】スキルという点においては、得意不得意があるでしょうが、だいたいにおいてコンサルタントは、高い水準にあると感じています。採用する側としては、ほかの業界から来ていただくよりコンサルティング業界から来ていただいた方が、スキルという面では非常に頼もしいし、安心できます。ただやはり「川の向こう側にわたる」には、スキルよりむしろ、自分が背負うというオーナーシップや、とにかく結果を出すんだという覚悟が、成功する人と失敗する人をわけるような気がします。

【荒井】ありがとうございました。ほかに質問がある方はありますか?

【参加者・Bさん】山本さんに伺いします。私の会社には、私を含め元コンサルタントのメンバーがいるのですが、基本的には営業に向いていないと思っています。なぜなら、コンサルティングはプロセスをしっかり踏み、アウトプットを出すことで評価される仕事ですが、営業は結果が出なければダメだからです。それにも関わらず、どうして営業の世界に飛び込まれたのですか? また、コンサルタント時代のクセが邪魔になるようなことはないのでしょうか?

【山本】まずコンサルタントはプロセスで、営業は結果というところに関しては、その通りだと思います。しかし、数字が上がらなかった時に、問題点の把握と達成に向けた課題の整理、プロセスをブラックボックス化せず、上司やメンバーに伝えることはむしろ得意です。僕の直属のメンバーは今12人いますが「頑張ります」「やらせます」といった精神論ではなく、共通のビジョンやプロセスとロジック、メンバーのモチベーションなどを加味して対処すべきだと思っているので、コンサルティング経験はむしろ役立っていると思います。
二つ目の質問については、人に興味や関心が持てるかどうかでわかれるでしょうね。数字とロジックだけに興味がある人だったら、僕のような中間管理職でも結構しんどいでしょう。自分ではいまでも、ロジックや数字で決めるべき割合と、メンバーの気持ちや個別事情を汲むべき割合で悩むことがありますが、そういう時は上司に相談したり、コンサル時代のクセが邪魔したりしていないか、自分で振り返るようにはしています。

コンサルティング経験がもっとも生きる場面とは?

【荒井】ありがとうございました。逆にコンサルタント経験がもっとも生かされたエピソードがあればお聞かせください。稲積さんはいかがですか?

【稲積】気合と根性、そして、すごくよく働けるところでしょうか(笑)。ただそれだけでは参考にならないと思いますので、もうひとつ挙げますと、以前の会社で立ち上げたコミックアプリの『comico』は、素人作家の作品を提供するスマートフォン専用サービスで、現在、若い方を中心に1,300万ダウンロードされ使っていただいています。とはいえ、最初の2カ月は中々芽が出ず、かなり苦労しました。そうした状況下でまずやったのは、詳細なミーティングです。いま足りていないものは何か、どう対処すべきか、結果はどうだったかをミーティングで詰め、PDCAサイクルを回したところ状況が改善していきました。その頃ちょうど競合の参入もあったのですが、コンサルタントとして培ってきた仮説検証能力を使うことで、自分たちが信じる道を守ることができたと思っています。

【荒井】ありがとうございます。松島さんはいかがですか?

【松島】私にとってコンサルタントのスキルは、自分の身に染み付いた考え方なので、どの瞬間がコンサルタントっぽいのか、自分では判断できないのですが、たとえば、悪い状況や数字を見たら腕がなるというのは、いかにもコンサルタント経験者らしい点かも知れないですね。いいものを導入したり、正しいことをやりましょうと言ったりするのは誰でもできますが、課題発見したり解決したりするには、非連続な価値の変化があるので、中々難しい。そういった意味で、課題発見と解決する欲求がひときわ強いというのは、コンサルティング業界の中で、ぐつぐつと煮込まれた成果なのかなという感じはします。

【荒井】山本さんはいかがですか?

【山本】松島さんの話にも通じますが、コンサルタント経験の何が役に立ったかというと、未曽有の問題に直面しても、あまり動揺しないということはあるかも知れません。コンサル出身者の性として「お、来たな」となる(笑)。問題の構造はどうなっているのか、シナリオプランを練るにあたって最悪のケースは何かとか、いろいろフレームが出てくるので、たとえ状況が不透明でも上司や経営陣に、こういう風に検討してみてはどうかと、提案することができる。大きな問題が起こった時、問題の整理の仕方についてのセオリーがあるのでスピード感を持って提示できるというのは、役に立った部分だと思います。後は、稲積さんが仰っていた気合と根性ですね。しつこく粘ることやコミットメントの強さは、コンサルタント時代に培ったものだと思います。

元コンサルタントが考える、職業選択の基準

【荒井】ありがとうございます。皆さんはこれまでのキャリアの中で、何度か転職されていますが、職業選ぶ上で、独自の基準や考え方をお持ちだったりするのでしょうか? もしあれば聞かせてください。

【稲積】あまりお金に縁のない働き方をしてきましたので、自分ではどちらかというと挑戦することを軸に仕事を選んできたと思っています。特にキャリアの前半に関しては、自分のスキルや経験を積むという意味での挑戦をするために選択をしてきました。最近はどちらかというとキャリアという考え方よりも、事業やサービス単位で物事を考えていて、せっかくやるのであれば社会にインパクトを与えたり、時代を前に進めたりできるものを作り出してきた、ですから自分のキャリアも、それが実現できそうな場所を選ぶようにしています。

【荒井】松島さんは職業を選択する際、何を優先順位の上位に挙げられますか?

【松島】過去の転職を振り返ってみると、コンサルタントになったのもたまたまある会合で声をかけていただいたことがきっかけでしたし、あまり強い意志を持って職業を選んだことはありませんでした。次は投資に行きたいという希望があるだけで、特に細かい条件はあまり考えなかったという感じですね。ただ、働く環境は重視していました。政治的なことで能力の歩留まりを下げられるのはイヤですから、ある程度の年代なってからは、自分の意思が通せる環境かどうかには、すごくこだわるようになりました。
とはいえ、仲間と何か面白いことをやろうぜっていう感覚でずっと仕事をしていたという気持ちが強いので、1万人の会社の社長やりたいかとか、自分がオーナーとして強い権限を持ちたいということはないんです。ノーリツ鋼機は上場企業ですが、NKリレーションズはフロントに5人ぐらいしかいない会社で、その5人ですべてのM&Aをやっていますから、理想にかなり近い環境です。

現在所属する事業会社を選んだ理由

【荒井】 ありがとうございました。ここでもう一度質問をお受けしたいと思います。

【参加者・Cさん】皆さんはコンサルティングファーム出身で、現在事業会社にいらっしゃいます。今いらっしゃるその業界はコンサルティングファーム時代の所属と関係があったのでしょうか? あるとしたら今の会社を選んだ理由はどこにあるのでしょうか?

【稲積】私、実はIT音痴で、今こういう仕事をしていること自体、かつては想像すらできませんでした。そんな私が8年ほど前にライブドアの再生に関わりはじめて、再生完了した時点で売却した先がNHNだったことが今のキャリアにつながっています。コンサルタントとしての仕事は再生が完了した時点で終わり、アリックスに戻ったのですが、もともと36歳で事業会社のマネジメントチームに入ることを目標にしていたこともあって、そのタイミングでNHNに入ることにしたんです。決めたのは、日本では非常にマイナーな存在だったものの、NHNは韓国最大手のインターネット会社でしたし、ケーパビリティを凄く感じたのと、マネジメントメンバーも存じ上げていたので、そのメンバーとなら一緒にやっていけると感じたことです。先ほど小杉先生のお話もありましたが、どちらかというと私も偶然をたぐり寄せて今の会社に入りました。

【荒井】松島さんはいかがでしょうか?

【松島】私が今いる会社は持株会社で投資事業を行っています。先日数えたら4年間で24社に投資しており、そのうち17名の戦略コンサルタント出身者が経営陣を務めています。その方たちを見る限り、キャリアの連続性はまったくありません。考えてみればものすごく大きな企業の個別課題に3カ月取り組んだ経験が、会社経営の強みにはなりませんから、そこはあまり気にすることはないのではと個人的には思います。興味があって面白そうだと思えるなら飛び込んでみるべきでしょうね。

【荒井】わかりました。では山本さんお願いします。

【山本】私はBCGに12年いましたが、製薬業界経験はゼロでした。BCGに在籍していた時は、通信やクレジットカード、小売、リテール金融に関わることが多かったので、仕事の引き合いはどうしても経営企画が中心です。それなら、自分が行きたくて、欲しいと言ってくれる会社があるなら、業界は関係ないと思うようになっていきました。コンサルタントの習性としてキャッチアップには自信があったので、経験がない製薬業界に進みました。

自分の意思でゼロから起業する意思はあるか?

【荒井】では次の方、質問をどうぞ。

【参加者・Dさん】私は自分で興した会社を営んでいます。皆さんは過去に起業を考えたことはおありでしょうか?また将来、起業する可能性があるとお考えでしょうか?ぜひお聞かせください。

【稲積】どちらかというと再生をテーマにローランドベルガーに入って、その後アリックスに移った当時は、起業を考えたことはありませんでした。ただインターネットと関わるうちに、いつの間にかゼロから事業を立ち上げる機会が増えたので、将来的には起業という選択肢もあるかなと思っています。とはいえ、実際は、まずやりたいことが最初にあって、それを実現していくために起業を選ぶのか、それともどこかの資本の中でやるのかという感じになるのだと思います。先ほどご紹介した『comico』を例に挙げると、同じことをスタートアップベンチャーがやっていたら、思うように立ち上がらなかったと思うことがあります。個人的には、組織の中にゲームで培った経験とアレンジする力、資本力があったからこそビジネスが立ち上げられたと思っているからです。要は起業というのは、いくつかある選択肢の一つということだと思います。

【荒井】松島さんはいかがですか?

【松島】自分の人生を振り返ってみると、大企業サラリーマンを6年やって、コンサルを6年、プライベートエクイティファンドの投資家を6年、事業会社のマネジメントを後1年半やると6年になりますから、それで起業したらコンプリートだなと思っているので、そういう希望がなくはないです。ただ、今の状況では会社の資金を使って、投資をしたり新たな事業を起こしたりできる状況なので、自分で起業するというモチベーションが沸きづらい環境にあるのは確かです。もちろん自分でやれば、100%エクイティが持てるので、跳ねた時にすごく大きいというのはわかりますが、今のところはそこがモチベーションにはならないかなと思っています。ですから、コンプリートはしないのかも知れませんね。

【荒井】山本さんは起業願望はありますか?

【山本】ないですね。なぜかというと自分には向いていないと思うからです。起業したくてたまらない人との競争になるわけですし、向いていないと思っている人がもし仮に起業したところで成功するわけがありません。ただもし今、自分が職を失って自分で起業したとしたら、何をやっていくら稼げるかということはよく考えます。それが会社からもらう給料とどのくらい差があるのか、僕と同じ位の経験を積んでいて起業してる人と比べてどうなのか、ひとつの指針として考えたりはしますが、現実的には考えていません。

将来の展望、キャリアの目標の定め方

【荒井】ありがとうございます。では次の方どうぞ。

【参加者・Eさん】先ほど稲積さんは、36歳の時に事業会社のマネジメントチームに入りたかったと仰っていました。それに関連して皆さんにお伺いします。将来的な展望について例えば何年後までに、こういうことをしていたいとか、常に具体的に考えておいででしょうか?

【山本】大層なものではありませんが、45歳までにはこれぐらい稼げるようになっていたいという目標はあります。最初に転職した37歳の時に決めた目標です。この先どのようにマイルストーンを打てば、キャリアについての意思決定がしやすくなるかを考えて決めました。今は製薬業界の中で経験を積み重ねているところなので、その中でこの目標が達成できるかを常に考えて行動しています。

【松島】私は45歳で引退するということを20歳の時に決めたので、そのために必要な報酬を得るにはどうすべきか考え、自分のキャリアをファンドに振りました。ですからファンドの世界で投資家になったのは、20歳の時にそう決めたからなんです。 2つの人生は生きられませんから、人生における目標を持っていたほうが意思決定はしやすいのではないかと思います。もちろんそれが、最適解かどうかはわからないですが。

【荒井】ところで稲積さんは、なぜ36歳で事業会社のマネジメントになろうという目標を立てられたのですか?

【稲積】実は父親と祖父が、同じ病気になりました。それで自分の人生が60年だったとしたらどうすべきか考えたことがあったんです。仮に60歳で亡くなるとしたら10年間は好きなことやりたい。だから50歳までは経営者として頑張ろう、そうすると――と、逆算していったら 36歳という数字が出てきました。もちろんその通りにするかどうかは別ですが、限られた時間で自分を動かしていくというのは、若い時からイメージしておいてもいいんじゃないかと思っています。

【荒井】ありがとうございます。

もし転職前に戻るとしたらどのような選択をするか?

【参加者・Fさん】もし皆さんがコンサルティングファームをお辞めになった時に戻るとします。今ならどんなキャリアを選択されますか?

【荒井】では、松島さんからよろしいでしょうか?

【松島】はい。有り体に言えば、これまでの人生を後悔してはいないので、同じで構わないのですが、それじゃあまりにも芸がないですよね(笑)。今だったらどうするでしょうね・・・。私が転職した時代はプライベートエクイティファンドが、ポストコンサルティングの花形でした。ですからコンサルティング経験の延長として、スキルを学びに行くという観点から考えると、今でも当時の選択は悪くないと思っています。ただ、基本的にインダストリー選びは世代が重要で、後の人が第1世代の人たちと同じようなポジションに立てるとは思わない方がいい。われわれは第3世代でしたから、事業会社という枠組みで新しい投資の形を模索することにしたわけですが、インターネットやモバイルも同様で、今後10年経っても、きっと主要な顔ぶれは変わらないでしょう。ですからもし今、皆さんが新しいことに挑戦するのであれば、そのインダストリーは自分たちの世代のものだと思えるところに賭けてみたらいいと思います。今だとAIはもう遅いかも知れません。もう少し新しい分野がいいでしょうね。

【荒井】山本さんはいかがですか?

【山本】改めて考えてみると、もう少し企業の選択に時間をかけてもよかったかなという思いがないわけではありませんが、悪い選択はしていなかったと思います。私もどちらかというと自己正当性が強いタイプなので後悔していないというのが答えですね。

【荒井】稲積さんはどうお考えになりますか?

【稲積】私は優秀なコンサルタントではありませんでしたから、もし業界を出なかったら皆さんと競わなきゃならなくなる。それでは自分が不利になるので、やっぱり事業会社に行くことになると思います(笑)。今、B2Bの会社にいてすごく実感しているのは、ローランドベルガーやアリックスの同僚や先輩方がいろいろな業界に行かれていて、アライアンス先を紹介いただいたり、お客さんになっていただいたり、そういうことで力をお借りしています。皆さんとのリレーションを深めたり、人脈を広げるために、もう数年、コンサルタントをやるというのはありだったかも知れません。

コンサルタントを辞めるべき時期について

【荒井】ありがとうございます。皆さん最終的にはコンサルティングの世界から卒業されているわけですが、卒業するベストなタイミングというのはあるのでしょうか? あるとしたらどこで見極めれば良いとお考えでしょう? 松島さんからお願いします。

【松島】コンサルタントのスキルが如実に表れるのは、会議を仕切る能力ではないでしょうか。プロジェクトにおいて、与えられた役割を自分の力でちゃんと回し、クライアントをミーティングの中で課題発見と会議をファシリテートすることできれば、もうコンサルタントとして必要なことの大半は満たしていると思っていいという気がします。ですから費用対効果だけで考えればその段階で出るのかベスト。もちろん人によって違うとおもいますが、役割的なところでいうとマネジャーのちょっと手前が一番いいと個人的には思っています。

【荒井】12年在籍された山本さんはどう思われますか?

【山本】同年代で活躍している人を見ると、僕よりも3~4年早く新しい挑戦をはじめている人が多いので、一般的には僕は長すぎるほうでしょうね。ですが、コンサルティングファームのシニアマネジャーとして難しいプロジェクトを両手で2本回し続けたことや、最後の2~3年は、経営者と対峙した濃密な経験が自信になっているので、長くやっていたことの意味はあるかなと思っています。

【稲積】事業会社に行こうと思っている人にとって、コンサルティングファームの価値といのは2つあると思っています。ひとつが先ほども触れた人脈が得られる点と、もうひとつは松島さんがおっしゃった、基礎力を高められるという点です。そういう意味で言えば、外に出る動機と目的があるなら、3年を目安に転職してもいいと思います。

来場者へのアドバイス

【荒井】ありがとうございます。それではそろそろお時間です。最後に皆さんへアドバイスお願いします。山本さんからどうぞ。

【山本】よく言われる話ですが、今やられている仕事が情熱を傾けるだけの価値があると思えるのであれば、転職など考えずにそこできちんと成果を出すことに邁進してください。でももし転職活動したことがないのであれば、1度やってみると意外な気づきが得られるかも知れません。自分は人材マーケットでどのように評価されるのかは、実際に活動してみないとわからないものです。自分で調べたり、誰かに話を聞いたりしてみると意外な発見があるかも知れませんから、挑戦してみることをお勧めします。

【松島】そうですね―。早く辞めるに越したことはないですよ!(笑)。今は、かつてインターネットが出てきた時よりも大きな変化が、あちこちで起こっているような状況です。「Software eating the world」言われるくらい、社会のデジタル化は、世界に大きなインパクトをもたらします。ものすごく大きいチャンスです。そんな状況で、コンサルタントという職業に固執することのメリットはあまりないのではないでしょうか。私が知る限り、元コンサルタントで路頭に迷っている人は1人もいません。世界は本当に広いし、いろいろな可能性があります。ですから万が一チャレンジに失敗しても、私が責任を取ってどこか紹介しますから、安心してやりたいことをやってください(笑)。宝の持ち腐れになってはもったいないですよ!

【荒井】力強いお言葉、ありがとうございます。では稲積さんお願いします。

【稲積】もし事業会社に次のキャリアを求めているのであれば、興味のあることや分野を見つけたら挑戦すべきでしょう。転職先を見つける際、一緒に働きたいと思える人がいるかどうかというのは本当に大事なことだと思います。それがないと、やがてどこかに歪みが生じてしまいます。ですから、やりたいことを見つけ、それを一緒にやりたいと思える人と巡り会えた時が、踏み切るタイミングなのかも知れません。事業会社は、コンサルタントで培ったスキルだけでは戦っていけないフィールドです。なるべく早い段階で挑戦して、経験値を高めることをお勧めしたいと思います。

【荒井】本日は長時間にわたりお付き合いくださりありがとございました。

※当日のパネルディスカッションの内容を一部編集してまとめています。

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