セミナー・相談会

戦略コンサルタントのキャリアを考えるセミナー

第2回「コンサルタントが事業会社で成功するには」

第2回「コンサルタントが事業会社で成功するには」

【荒井】弊社社長の荒井と申します。本日はよろしくお願いします。弊社は2000年に創業しプロフェッショナルとCXO人材のサポートをしているエージェントです。また「職業としてのプロ経営者」という書籍を出版しています。コンサルティング会社の卒業生のキャリアサポートの一例としては、事業会社やベンチャーキャピタルのスタートアップなどへの転職をサポートしています。来年2月には「スタートアップとベンチャーキャピタル」というタイトルで、様々なベンチャーキャピタルやスタートアップ企業の方を迎えてセミナーを行う予定です。ぜひご参加ください。

パネリストプロフィール(50音順)

足立 光 氏
日本マクドナルド株式会社 上級執行役員 マーケティング本部長
米国系消費材メーカーを経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(当時、現在はPWCグループのストラテジー&)、ローランド・ベルガーでコンサルティング経験。その後、ドイツ系消費材メーカーのヘンケルグループ(日本、後に北東&東南アジアの化粧品事業の責任者)、その後、アパレルのワールド(国際事業および本社構造改革の責任者)にてターンアラウンドに従事した後、業績が長期低迷中であった日本マクドナルドに昨年10月より参画。

五十嵐 啓朗 氏
バイエル薬品株式会社 執行役員 眼科領域事業部長 兼 ウィメンズヘルス&エスタブリッシュドプロダクツ事業部長
ボストン・コンサルティング・グループに10年間在籍、成長戦略を中心に多様な業界のコンサルティングを経験後、バイエル薬品に2012年入社。 眼科領域のマーケティング部長、事業部長代理を得て2014年より執行役員眼科領域事業部長就任。2015年の腫瘍・血液領域事業部長の兼任を経て、2016年よりウィメンズヘルス&エスタブリッシュドプロダクツ事業部長を兼任。バイエル薬品のデジタル・トランスフォーメーションのリーダーも兼任。

竹中 重人 氏
Netflix株式会社 ファイナンス・ディレクター
半導体エンジニアを経て、ベイン・アンド・カンパニーにて戦略コンサルティング経験。PEファンドのインテグラルの1号投資案件(産業用機械メーカー)の執行役員として事業再生を経験後、ソニーの研究開発企画部門の部長としてグループの人事制度改革、新規事業創出プロセス設計などの全社レベル案件を担当。ソニー在籍時には技術の事業化のための3つの会社の設立に携わり、さらにソニーの技術を不動産ビジネスに応用するためソニー不動産株式会社を自ら創業し、執行役員に就任。Netflixの日本参入に際して2015年1月より現職。

真岡 朋光 氏
ルネサスエレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 第二ソリューション事業本部 副事業本部長 A&P・ソリューション事業部長
A.T. カーニーを経てドイツの半導体メーカーインフィニオンテクノロジーズに入社。日本の戦略責任者、後に日本法人での産業用半導体事業本部長。その後、レノボ・ジャパンにてストラテジーディレクターとしてNECとの合弁事業の統合プログラムを統括後、法人事業オペレーションディレクター。2013年よりルネサスエレクトロニクス入社、経営企画統括部長に就任。同社の全社的変革に従事し、執行役員に就任。2016年4月より現職。

自分で決断し、実行したいと思って事業会社に転職

【荒井】最初に皆さんに、簡単に自己紹介をしていただきたいと思います。足立さんからお願いします。

【足立】私は、今は日本マクドナルドでマーケティングの仕事をしています。簡単にこれまでの履歴をお話しすると、最初はP&Gという米国系消費材メーカーに入社してマーケティングをずっとやり、その後、今はなきブーズ・アレン・アンド・ハミルトンとローランド・ベルガーで、6年ほどコンサルティングの仕事をしました。その後ヘンケルというドイツのメーカーに入って日本の事業責任者になり、最後の3年間はアジアの責任者を務めました。その後、アパレルメーカーのワールドで事業再生の仕事をして、昨年、やはり再生案件ということで日本マクドナルドに入りました。これまでのキャリアの前半はマーケティング、後半はコンサルティングというか、事業再建の仕事をメインに手掛けてきました。

【五十嵐】私は、コンサルティング会社ならいろいろな企業の案件を業界を問わず経験できると思い、新卒でボストン・コンサルティング・グループに入りました。10年間でさまざまな業界の仕事をしましたが、最後の5年間は成長事業絡みの仕事をしていました。日本企業の悩みは成長戦略が中心なので、仕事は主に日本の企業の海外戦略などのサポートでした。在職時に途中2年間、スタンフォード大学に留学してMBAを取りましたが、留学時にインド人と結婚して人生の方向が変わってきました。妻を日本に呼び寄せたところ、「あなたがこんなに仕事が忙しいなら離婚する」と言われてしまったのです。そこで、事業会社への転職を決意し、バイエル薬品に入りました。現在は同社でいくつかの事業部長を兼任すると同時に、デジタル・トランスフォーメーションのリーダーも務めています。

【竹中】私は半導体メーカーを経てビジネススクールに入り、その後ベイン・アンド・カンパニーに入社しました。そこに3年いた後、ファンドの投資先の会社で再生案件に近い仕事をしました。その後ソニーに入り、いろいろ楽しい仕事をさせてもらい、最後はソニー不動産という会社を作りました。そして、ヘッドハンティングをされて、2015年にNetflixに入りました。

【真岡】私は新卒でA.T. カーニーに入りましたが、結婚してまもなく、ドイツの半導体メーカーの日本法人に転職しました。当時のグローバルCOOが、日本企業と提携すると話していて、私はその戦略の責任者になりました。その後、知人の紹介でレノボ・ジャパンに移りました。そして、やはり紹介で2013年にルネサスエレクトロニクスに入り、経営企画の仕事に携わりました。今年の4月からは同社の事業部に移って働いています。

【荒井】ありがとうございました。足立さんは、なぜコンサルティング会社を辞めて事業会社に転職されたのでしょうか。

【足立】コンサルティングの仕事はとてもおもしろかったのですが、やはり自分で決断して動かしたいという思いがありました。コンサルティングは、提案はしても結果的にその提案を実行するかどうかはクライアントが決めることです。それでは面白くないと思ったのです。

【荒井】わかりました。竹中さんはいかがでしたか。

【竹中】私は2006年にベイン・アンド・カンパニーに入社したのですが、もともとコンサルティング会社に長くいるつもりはありませんでした。その後は、やったことがない仕事をしようと、ベンチャーキャピタルなども考えましたが、足立さんと同じで、やはり自分で商売をしたいという思いが募って、事業会社に移りました。

本質を見抜く力はコンサルティング会社で築かれた

【荒井】わかりました。次にこれは皆さんにお聞きしますが、コンサルティング会社にいた頃に経験してよかったこと、あるいは今役立っていることは何でしょうか。

【真岡】コンサルティングの仕事を通じて、情報を聞き、それが何のレイヤーの話をしているのかを理解する力がついたと思います。皆が何の話をしているのかを考える癖がついたことは、今の仕事にも役立っています。また、精神論的なことをいうと、コンサルティング会社は本当に優秀な人が多く、そういう人たちと働く事で、自分の仕事のレベルも上がっていくと感じていました。今は一緒に仕事をしていなくても、「今頃あの人はこんな仕事をしているのだろうな」と考えるだけで身が引き締まります。

【荒井】今の仕事の環境にそこまでレベルの高い人がいないことには、不満を感じないのでしょうか。

【真岡】そこは確かに時に不満になるところです。だから、コンサルティング会社にいるような優秀な人と話す場を意識して作る努力をしたいと思っています。ついつい易きに流れがちなので、気をつけるようにしています。

【荒井】五十嵐さんはどうですか。

【五十嵐】ビジネスでは、本質を見抜く力と相手の立場になって考える力の両方が必要だと思うのですが、本質を見抜く力はコンサルティング会社にいた頃に築かれたと思っています。それから真岡さんと同様、コンサルティング会社で働く人のスタンダードの高さはすごいと思いました。ただ、それを事業会社に求めすぎると、周りの人たちとの感覚にズレが出てくるので、注意を要します。あとは、マクロにものを見られる視点ですね。事業会社の人たちは、ボトムアップからピースピースでものを見がちなのです。ダイナミックな発想ができる力は、コンサルティング会社で身についたと思います。

【荒井】竹中さんはどうでしょうか。

【竹中】コンサルティング会社の仕事は、なにがしかの問いが設定されて、一定の期間で答えを出すことです。それ自体は、事業会社でもするべきことなのですが、それが意識的に継続してできるのは、コンサルティング会社の恵まれたところだと思います。コンサルティング時代に、何も材料がない状態から仮説を出せと言われた経験は、ベーシックなところで今一番、応用が利いていると感じます。

【荒井】今皆さんが話した、コンサルティング会社で身につけたことは、現在所属する事業会社でもバリューを出していて、まわりから「おっ」と思われるようなものでしょうか。

【竹中】そうですね。本来、誰もがビジネス上の問いに答えることを求められているのですが、事業会社ではそれに対して前向きに答えを出そうという人は少ないです。そこで自分の価値を発揮できます。

【荒井】足立さんはいかがでしょうか。

【足立】3つあります。1つはやはり仕事のクオリティの高さです。仕事のスピードの速さやレベルの高さは、コンサルティング業界以外ではあまり見かけないと言っていいと思います。そのスタンダードは、今も役に立っています。2つ目は人で、優秀な人がたくさんいることです。仕事は期間限定のものですが、友人は一生のものです。コンサルタントだけでなくクライアントも優秀な人が多く、今もそのネットワークは役に立っています。3つ目は気合いです。自分はマーケットと営業の仕事しか経験がないままコンサルティング業界に入ったのですが、全く知識のない仕事にアサインされたことがありました。それでも、1週間でなんとか形にしました。無理なことを言ってくるパートナーもいるのですが、やればなんとかなるんです。修羅場を経験すると、たいていのことは楽にできるようになります。それが、一番コンサルティングの仕事で学んだことだと思っています。

若い頃はできることを増やすつもりで仕事をしていくのがいい

【荒井】ありがとうございます。ではここで、セミナー参加者の皆様から質問を受け付けたいと思いますので、質問がある方は挙手をお願いします。

【参加者】コンサルティング業界出身であることが、事業会社に入ったときに足かせになることは何かあるでしょうか。

【五十嵐】注意しないといけないのは、人を見下してしまう傾向です。コンサルタントは頭がいい人が多いので、コンサルティング会社から事業会社に移ってくると、知らず知らずのうちに、人を自分より上とか下とか判断してしまうことがあります。事業会社でそういうそぶりを見せると、いろいろなところでつまずきます。自分より下に見える人でも、別の角度で見ると自分には出来ないことが出来るということもよくあります。ロジカルにものを考えられるからと言って、それで人間の上下が決まるものではありません。いろいろなスキルがある人たちがいるので、そういう人たちを尊重し、その人生をサポートしながらチームとして価値を出すという感覚を持てるといいでしょう。また、コンサルタントはコンテンツでものを考えるくせがあるのですが、事業会社では人を巻き込んでいくので、人でビジネスが成り立っています。コンサルティング会社にいた人は、その感覚が薄くなるリスクがあります。それを意識した上でコンサルタントとしてのスキルを磨いておかないと、どこかでつまずく可能性が高いと思います。

【真岡】それと関連する話をすると、私がコンサルティング会社から最初の転職をしたとき、自分の席の近くにいたエンジニアの方は、コミュニケーションがうまくできず、ロジックもおかしく、英語も話せない人でした。しかし、技術的なことはよくわかっていたので、下手な英語と拙いロジックで本社に提案を伝え、1人で数十億円を売り上げていました。コンサルティング会社にいたら絶対通用しないような人でも事業会社で価値を出せる人は、いくらでもいるということです。

【足立】コンサルティング会社から事業会社に移ってうまくいかない人は、たくさんいます。その場合、何が問題なのかというといくつかあって、1つは金銭感覚です。コンサルティング会社でいい給料をもらっていた人は高級なものにお金を使いがちですが、事業会社でそれを見せつけると、嫌われます。2つ目は、コンサルタントの仕事はアイデアを考えること以上にそれを実際に動かすことが大切ですが、正しいことをいうだけでは、事業会社では人が動かないこともよくあります。では、どうすれば人が動くかというと、感情に訴えることです。ロジックでは人は9割しか動かないのですが、感情に訴えると110%以上動いてくれます。

【参加者】コンサルタントだった頃から将来のキャリアを考えて、転職されたのでしょうか。それとも、自然な流れで転職していったのでしょうか。

【竹中】私は、自分が今後何をしていくかを長い目では考えていません。というのは、これから10年で世の中がどうなるのかは全く予想できないからです。今からいろいろ将来のことを考えても、不毛だと思ってしまうのです。ただ、できることをもっとできるようになるか、できないことをできるようになるか、どちらかといえば、私は若い頃はできないことをやってみた方がいいと思っています。できることをもっとできるようにと思うと、どんどんニッチの世界に入っていく気がします。だから、できることを増やすという感じで仕事をしてきました。その結果として、今の私は、税務のことも人事のこともわかるし、サーバーの設定もできるんです。事業戦略もできるし、マーケティングのこともわかります。私はNetflixの日本で2人目の社員なのですが、おかげで、社内で独自のポジションを得られたので、結果としてよかったと思っています。

【真岡】ヘッドハンターの方に「10年後は何をしていたいですか」と聞かれることがあるのですが、私は何も考えていないので答えられません。これまでずっと、感覚的に面白そうだなと思った仕事に転職してきました。ただそれ以上に、今目の前にあるものをどうやって楽しむか、どうすればもっと面白くできるか、面白くなってきたら他の人とどう共有できるか、ということをよく考えるようにしています。キャリアもその延長線上にあるのかなと、勝手に思っています。

【五十嵐】若い頃は、将来の段取りを細かく考えていたのですが、だんだん変わってきました。ポイントは、自分の幸せのポートフォリオは何かということだと思います。家庭や友人関係、趣味もある中で、何をすることで自分がハッピーに過ごせるかを考えるということです。私の場合は、いろいろな人と議論して、そこに自分しか出せない価値を提供できると思える部分を探しながら日々過ごしていれば幸せです。社会貢献とかこういう経営者になりたいとか、エモーショナルなことにも影響されます。そういういくつかあるポイントに合う仕事に巡り会えたらキャッチすればいいというくらい、シンプルに考えています。

【足立】私は、最初はマーケティングと営業の仕事をしてきましたが、その後は、人が行きたがらない会社で仕事をするようになりました。ヘンケルもワールドも今のマクドナルドも、経営で問題を抱えていた会社ばかりです。でも、そういう会社に行くと、比較的自分の好きなように仕事をさせてくれるものです。

置かれた体制で自分がどう価値を出していくかを考える

【参加者】社内で自分の思うようにいかない時や、上司が意見を聞いてくれない時などは、皆さんはどうされてきたのでしょうか。なんとか折り合いをつけるのか、戦ったのか、または別の手を考えたのかなど、ご経験を教えてください。

【真岡】いろいろなケースがありますが、その案件だけで判断するのではなく、長い目で見てどうかと考えることが大事かと思います。目の前の案件だけ見ると理不尽で不合理だと思っても、組織として考えたときに、今は従っておくか、ということもあります。

【五十嵐】私は慎重派なので、情報を探って、なるべくそういう環境に身を置かないように努力をします。抜け道を見つけて、リスクのあるところに行かないように気をつけます。ただ、止むを得ずそういう環境に入ってしまうこともあります。その場合は、これは何かを学べる機会だと考え、動かない人たちをどう動かすかなどスキルの幅を広げるチャンスととらえるように、マインドセットを変えていました。あとはその環境にどっぷり身を置かず、社内にアライアンスを作っておくことがリスクマネジメントになると思います。

【竹中】事業会社では、誰が聞いてもこの人はおかしいことを言っているという人が社内で大手を振っていることが、往往にしてあります。しかし、そういう人でも、自分ではそれなりに合理的なことを言っていると思っているのです。それはわかっておく必要があると思います。

【足立】私は、上司から言われたことでも自分が正しくないと思ったことは絶対にしないほうがいいと思います。正しくないこととは、例えば就業規則に違反することです。そういうことをしたとしても、楽しくないはずです。しかも、失敗したら責任を取るのは自分です。だから、戦ったほうがいいと思います。しかし、政治的な要因などでやらないといけない場合もあるでしょう。

【五十嵐】私も戦うべきときは戦うべきと思いますが、10個戦いがあったときに10個戦っても仕方ありません。どこで戦い、どこで引くかというバランス感覚は重要だと思います。従うにしても、予算や人をつけてもらうなど、何らかの要求をするなど工夫して、自分のやりたい方向に持っていく努力も必要です。

【参加者】コンサルティング会社から事業会社に移る時に、上手くやっていくためのステップとしてどのようなものがありますか?

【真岡】私は、それに対しては答えがありません。今私がいる会社はファンドが入っているのですが、そういう会社だと、しばしばマネジメントチェンジが起きます。私も、今まで築いてきた信用がガラっと崩れるような経験をしています。だから、どうすればうまくいくかというより、今置かれた体制で自分がどう価値を出していくかを常に考えながら仕事をしています。

【足立】転職したら何をするかを、早めに決めることをおすすめします。仮説でもいいので、入社1ヶ月で決めるくらいのスピード感が必要です。ただ、そうは言っても誰もサポートはしてくれません。だから、仕事以外のところで接点を持って、社内に仲間をたくさん作ることをおすすめします。

【五十嵐】私も入社後2、3ヶ月が勝負だと思います。周りの人とできるだけ1対1で会って、社内で誰が力を持っているかなどの、情報を探ります。入社間もない時期のほうが、紹介を兼ねていろいろな人と会いやすいです。それと、なるべく早い時期にクイックヒットを打って、上司や社内のキーパーソンに印象を持たせると、あとで差が出ると思います。

【竹中】仲間を作るという意味で、私は喫煙所を使います。ある意味、社交のためにタバコを吸っているところがあります。人と仲良くなるのは、パフォームするための前提条件のようなものだと思います。私は、入社後なるべく早めに何かするべきとはあまり考えていないのですが、自分の強みを生かし、バリューを出すことは意識しています。ただ、それができるスピードは、会社によっていろいろです。

【参加者】コンサルタントが事業会社にいくタミングとして、適切な時期はあるでしょうか。マネジャーを経験してからがいいとか、このスキルを身につけてから、ということがもしあれば教えてください。

【竹中】ケースバイケースだと思います。私の考えとしては、コンサルティング会社でハイパフォーマンスの人であれば1日も早く転職すべきです。どういうキャリアを進みたいかでも変わると思いますが、ハイパフォーマンスでいつかは事業会社に行きたいという気持ちがある人なら、コンサルティングの仕事に染まる前に移っていいと思います。逆に、そこまでハイパフォーマンスではないという人は、もっとコンサルティング会社で頑張るべきだと考えます。まだ学べることがあるのに出てしまうのは、もったいないと思うからです。

【五十嵐】私も人それぞれだと思います。私は留学直前にプロジェクトリーダーになり、留学から戻ってからプロジェクトリーダーとして働いたのですが、最初は苦労しました。その苦しみとそこからブレークスルーする経験をし、さらに自分を育ててくれた人に感謝する気持ちも持ってから、事業会社に行くことになりました。これは、私にとってはよかったと思います。その前に転職していたら、事業会社に行ってもラインマネジメントの方に行くのには時間がかかったと思います。プロジェクトマネージャーの経験をしたから自分を高く売れたと考えています。

【真岡】私はコンサルティング会社にいた頃に、1年ほど中国のオフィスで働きました。東京オフィスにいた頃はコンサルタントとしてそこそこのパフォーマンスを出していたのですが、上海オフィスには私よりずっとできるコンサルタントがいて、圧倒されました。その頃から、自分は何が得意で何が不得意なのか、自分の強みはどこなのかを真剣に考え始めました。その時に、このままコンサルティング会社にいていいのかも考え、そこから転職のタイミングを考え始めました。だから、いつ転職するべきか明確な答えはないと思いますが、自分のキャリアの目的がはっきりしたら、その時がそうなのではないでしょうか。逆に、それがはっきりしていないのなら、まだ転職するタイミングではなく、もっとコンサルティング会社でいろいろな経験をしたほうがいいのかもしれません。

【足立】仕事が順調に回り出したら自分の成長曲線は緩やかになっていくので、そろそろ転職のタイミングだと考えていいでしょう。逆に、まだまだ自分は成長していると感じるなら、そのまま今の会社にいていいと思います。ただ、将来事業会社に行きたいと思っているのなら、何の仕事でもいいので、早く移ったほうがいいと思います。10年も15年もコンサルティング会社にいた人が事業会社で活躍する例はそんなにありません。

【荒井】ありがとうございました。それでは時間になりましたので、ディスカッションはここまでにしたいと思います。本日はありがとうございました。

※当日のパネルディスカッションの内容を一部編集してまとめています。

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