金光隆志のコンサル転職Q&A

[第1回] 戦略コンサルティングの戦略って何ですか?

転職のご相談・お問い合わせ

経験豊富な
エージェントに転職相談(無料)してみませんか?

1分で完了無料登録・転職相談

【質問】 
戦略コンサルティングの戦略って何ですか?

皆さん初めまして。私は金光隆志と申します。戦略コンサル長年やってきました。何年やってたのか言ってしまうと歳がばれるので内緒にしときます(笑)が、相当長年です。


さて、このコラムでは皆さんからの色々なご質問に、私なりの見解でお答えしていきます。私なりの見解っていうのがポイントです。つまり正解を語る訳じゃないです。というかそれ無理ですきっと。皆さんからの質問って正解が一つのものではないだろうからね。私の見解も参考にしつつ色々調べたりもして皆さんなりに考えていってもらえたら最高です。どうぞ宜しくお願いします。

で、いきなり超難問ですねえ。戦略って何?ですか?この質問にある程度まともに言葉にして答えられるコンサルってどれ位 いっらしゃるのでしょうね。あやしいあやしい。面白い質問を一つ。私の大先輩でいまはドリームインキュベータで活躍しておられる古谷昇さんのパクリですけど(苦笑)余談ですが古谷 昇はすごいよ。私より腕前上だから(笑)

「生産コストを20%削減せよ」って命題が社長から与えられたとしましょう。これって戦略課題?それともオペレーション課題? 皆さんよーく考えてくださいね。そして自分なりの答えとその理由を明確な言葉にしてください。どうです?難しいでしょ?簡単ですか?さて答えはというと。後にしますね。はは。だってここで書いたらみんな考えないでしょ。とりあえず答え考えてからここから先に読み進めて下さい。

先ず、戦略とは何かについての私の定義いきます。
「同じ市場に対して同種の製品・サービスを提供し顧客を奪い合う企業間において、自社に構造的な競争優位 をもたらす資源配分や事業展開シナリオなどの一連の企業政策」とでもなりましょうか。何だか人を煙に巻いてるみたいであんまり気に入りませんが勘弁下さい。これでも結構考えてるんです(笑)かなりとんがった定義になってます。

今日び、何にでも戦略ってつけますよね。市場戦略、製品戦略、財務戦略、人事戦略、組織戦略、などなど。でもって中身を拝見すると殆どの場合が私の定義からすると全然戦略じゃないんです。どういうことか。ずばり、構造的な競争優位 を自覚的に考えてそれと直接であれ間接であれ論理的に結びついた作戦になってないってことです。

すっごく乱暴に言ってしまえば、「それやったって敵に勝てるかどうか良くわからないよ、そもそも仮想敵すら誰だかあんまり想定してないんじゃないの」という感じ。雰囲気伝わりますか?考えてる中身がいいかわるいかじゃないです。私が言っているのは戦略とは呼ばないってこと。

ではここらで私の定義をパラフレーズして解説していきましょうね。
「同じ市場にたいして同種の製品・サービスを提供し顧客を奪い合う企業間」てところ。これすごく大事です。ちょっとトートロジーちっくだけど「構造的競争優位 に至れる市場を選択せよ」って宣言でもあります。

市場をきちんと定義してみると、その市場の中でちゃんと収益を上げられてる会社(製品・サービス)ってのはせいぜい3つか4つなんです、殆どの場合が。嘘つけよ自動車会社なんて7つも8つも、いや世界中で見たらもっとたくさんあるのに儲かってるのが3社か4社なんてことないじゃないか、とかって反論が聞こえてきそうですね。いいポイントです、それ。ググっと本質に近づいてます。

経験則上ではあるけど、同一市場で7社も8社も儲かってるって可能性は極めて低い。ってことは、「競争のメカニズムが異なる複数の市場セグメントが存在する」可能性が十分あるんです。あるいは逆に市場セグメントの定義や認識が曖昧なために知らないうちに赤字を垂れ流している製品群が多数存在する、なんてことも実はしばしばなんです。

いやいっきなり皆さんに凄いこと教えちゃったなあ(笑)これねホントなんですよ。競争のメカニズム(経済性なんて言い方もします)の違いに基づいて市場セグメントをきちんと認識しないと必ずといっていいほど無意識の赤字製品・サービスを抱えることになります。

私が長年コンサルやってきた中でこれに関してちゃんとできてるなと思えた会社は実は一社もない。ってまた凄いことをあっさりいってしまった(笑)逆にそれぐらい難しいことなんですよ、市場をきちんと定義するってことは。

我々プロだってデータの限界などで完全には定義出来ないことが多い。大体は6~7割くらいの精度でやってるんです。いい加減だと思います?とんでもない。その精度ですら大変な知性と労力が要求されます。して幸いなことにその精度でも十分戦略立案には足りることの方が多いんです。

よく財務や経理の人たちから、そんな粗い数字でモノ言うな、みたいなこと言われるけど、戦略的には意味の無い細かい数字で判断するより戦略分析に基づく7割の精度での判断の方が競争優位 を決する上でははるかに有用なんです。

話がちょっと横道にそれましたかね。ともかく、戦略を立てる上では競争メカニズム(経済性)の解明とそれに基づく市場セグメントの定義がほんとは不可欠なんだ、ってことをよーく覚えておいて下さい。

さて、いつのまにか競争メカニズムだの市場セグメントだのって新しい言葉を使って話してますが、これらの意味をより明確にするためにも次のパラフレーズいきましょうか。

自社に「構造的な競争優位」ってところ。
構造的って言葉はちょっと難しいというか煙に巻いてますね、実際。私の中では長年の経験からこの言葉に明確なイメージがあるんですが人には中々伝わらないね。でも他にいい言葉が見つからない。皆さんにも少しづつ慣れていって貰えるとありがたいです。

構造的って言葉は、瑣末な工夫やすぐ真似されるような差別化とは違ってどうやって儲かるのかの大枠の仕組みや法則・メカニズム、ってニュアンスで捉えて貰えると結構近いかな。少々空気の抵抗があっても質量 が相応のものなら地球の中心に向かって落ちていくでしょ。物理において本質にもとる要素を除いてみると万物が重力則に支配されてることが分かる。そんな感じです。その感じに人間社会のことだから少し工学的な仕組み・仕掛けのニュアンスがひっついた感じ。

なんて言ってもわっかんないよねえ。ごめんなさいね。構造的って言葉をここまで説明しようとする姿勢だけでも汲み取って頂けると嬉しいです。「構造的」って言葉は「持続的」に置き換えてもある程度定義可能なんですが、あえてコンサルが好んで使う、より本格的な用語で定義してみました。大抵の人はもっと説明誤魔化すと思うよ。というか自分でよく解らんで使ってる人も結構いるんじゃないかな。でもね、そういうのはあんまり関心しません。

余談だけどコンサルが使う用語には意味不明なものが多いです(笑)それは本当には意味不明じゃないけど他の言葉で定義するのがすごく難しい。物理で「重力場って何?」って聞いて答えられる人ってどれくらいいるのかな。それに多少似てます。新しい発見や概念・コンセプトに名前無理やり付けてることが多いからなんです。

で、重力場と同じく、使っているうちにみんななんとなく分かってはきます。とはいえ、その時点その時点で自分なりに理解しよう・定義してみようって姿勢は大事だと思うんだな、私は。長い目でみて自力の差につながっていくと思います。って脱線しすぎだね。初回ということで許してください。

さて構造的な競争優位、ですがここで一気に誤魔化して(苦笑)構造的な競争優位 の源泉となりえるものはおよそ以下の4つにほぼ集約されるって話します。
その4つとは、
(1) 累積経験量の差によるコスト優位
(2) 事業スケール差によるコスト優位
(3) 小さな工夫の積み重ね等で一遍には模倣困難な事業システムによる複雑性優位
(4) 顧客からみた購買スイッチの経済的・心理的負荷の高さによるロイヤルティ優位
となります。

(1)(2)は法則に近く(3)(4)は仕組みに近いですね。ちなみに技術パテントや規制等による法的優位 ってのもありますが構造的というよりは人為的なのでここでは省いてます。この4つもよーく頭に染み込ませておいてください。全部ちゃんと説明しだすととてつもなく長くなるので、それはまたの機会に譲らせて頂くとして(肝心なとこ割愛してすみません)、ちょっとやそっとじゃ揺らがない競争優位 ってのはほぼこの4つのどれかに則っています。もちろん第五の可能性はありますが。それ見つけたら大発見ですきっと。

なお、(1)が(2)を生み、(2)から(3)へと至りついには(4)までモノにするって例はたくさん存在します。優位 性の源泉は相互に強く結びついて競争における優勝劣敗は加速度的にはっきりしていく傾向にあります。

さて、やっと最後のパラフレーズです。
ここまでくればあとは簡単。 競争優位を「もたらす資源配分や事業展開シナリオなどの一連の企業政策」経済性の異なる市場セグメントを認識して、そこでの優位 性の原理を解明した上で、自分の会社がその優位性をいち早くモノに出来るようにどうやって資源配分のメリハリをつけるか、従業員をトレーニングするか、製品展開を行っていくか、などの創意工夫をこらすこと、それが戦略立案なのです。戦略がうまくはまれば市場において他社よりも高収益が得られるというわけです。

随分とはしょって説明しました。どうかご容赦下さい。戦略をちゃんと説明しようと思うと数冊の本にだってなりますから。今回のところはイントロだという具合に理解頂けると幸いです。あー口惜しいなあ。もっとたくさん説明したいのに。(笑)いやホントに。

さてさて、このQ&Aの締めくくりは最初にお出しした質問の答えです。
答えは「戦略課題でもオペレーション課題でもどっちでもあり得る」ですね。ふざけるなって?いやいや大真面 目に。もしも生産コスト20%削減が競争優位の実現の為ってことなら戦略課題です。一方、競争優位 とかは関係なく例えば内部運動的にもっとコストを下げて収益体質を強化しようってことだったり、単に一時的にコスト高になってるのをあるべき水準まで引き下げようってことならオペレーション課題です。

ちょっとインチキくさい答えだけどまあ頭の体操ってことで大目に見てください。でもちゃんと自分で考えて下さった方にとってはこの答えかなり衝撃的だったんじゃないですか。その衝撃忘れないで下さい。とても大きな財産ですから。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

初めての方へ 私たちキャリアインキュベーションについて

転職のご相談・お問い合わせ 業界の専門分野で10年以上の
経験を持つエージェントに
転職相談(無料)
してみませんか?

あなたのキャリアに関する相談相手として、現在の状況に耳を傾け、これまでのご経験や今後のポテンシャル、
将来の展望を整理し、よりふさわしいキャリアをご提案します。

1分で完了 無料登録・転職相談

現在約6000人以上が登録中!
転職活動にすぐに役立つ
メールマガジン(無料)もございます。

メールマガジン登録(無料)