金光隆志のコンサル転職Q&A

[第2回] コンサルって机上の空論ではないですか?

転職のご相談・お問い合わせ

経験豊富な
エージェントに転職相談(無料)してみませんか?

1分で完了無料登録・転職相談

【質問】 
コンサルって机上の空論ではないですか?

戦略コンサルの立てる戦略は机上の空論ではないか。これはもう昔からよくある質問でありコンサル批判をするときの定番ステートメントでもありますね(笑)


先ず、この質問の背景にはどんな前提や声が潜んでいるのか、から考えてみましょうか。

「コンサルなんて現場も全然しらず頭でっかちに考えてるだけだ。実態は違う」
「あいつらちょいちょいと俺たちヒアリングしてそれまとめただけで何千万円だってさ」
「長年色々試してもうアイデアは出尽くしてるよ。コンサルの言うことは想像つくよ」
「あんないい加減な数字もってきてよく結論だすよ。詐欺だぜあれは」
「コンサルの言うとおりやって社内滅茶苦茶になったよ。こりごりだ」
「口ばっかり達者なやつは信用できん・・・」 などなど。

まあありとあらゆる罵詈雑言がありますね。さて、この手の批判と実際の成果にはどれくらい相関があるのか。実は殆ど無いんだな、これが。もちろん評判通り酷かったプロジェクトなんてのもあるとは思うよ。でも現場の声とは裏腹に大変な効果をもたらしてるプロジェクトも山ほどある。逆にえらく現場から評判よかったのにぜーんぜん効果の無かったプロジェクトなんてのも存在します。

ではなぜこの手の批判をよく耳にするのか。これはとても不快、じゃなくて(笑)深い問題です。後で少し触れますね。さて、本題。この質問もやはりコンサルらしく分析的にパラフレーズして考えていってみましょう。

最初に戦略とは机上の論である、ということをはっきり認識しましょう。現場の最前線で日々刻々変化する状況に瞬時に最適判断を下す戦術レベルと、個別戦では勝敗のでこぼこがあれど最終的に勝ちを収めるために練りこんで大局的な判断を下す戦略レベル。これを混同してはいけません。練りこむためには机上で考えたりシミュレーションすることが不可欠になります。

では次に、そんな大局的な判断なんて意味があるのか。ありますよ、ものすごくあります。大局的っていうのと大雑把っていうのを勘違いしてはいけないです。よくいますよね、きちんと詰めて考えられないからなんとなーく雰囲気でそれこそ大雑把なこと言って誤魔化す人。そういうのは、戦略とは無縁ですから。

本当の戦略というのは、Q1でも少しお答えしたように、限られた情報の中でも可能な限り競争のメカニズムや経済性(収益化)の法則を分析的に抉り出す作業が不可欠です。もちろん定量的にモデル化出来て、それがきちんと現実のデータと相当程度に一致する(つまりモデルがかなりあてはまる)ところまで詰められるのがベスト。ですが、定量化出来ない時でも論理を駆使して蓋然性の高い定性的なモデル化というのは絶対必要です。

こうやって競争や収益メカニズムなりを詰めて考えた上で本質にもとる要素をばっさり切り落として、どうするべきかの決定的な判断をするから大局的だというわけです。そしてこのモデル化には机上での試行錯誤や深い思考が不可欠です。

余談ですが、戦略分析って物理学である現象を説明するためのモデル化思考とかなり近いんですよ実は。物理においても先ず現象をよく観察するでしょ?これは戦略立案における現場取材やデータ収集に相当します。んでもって物理でも戦略でも現象を出来るだけシンプルに説明するモデルの仮説を立てるわけです。

そしてそのモデルが本当に現象を説明できてるかを検証しますね。物理なら他の現象を予測して当てることでモデル妥当性を主張する。戦略の場合は過去のデータがよく当てはまることで代用することが多いです。新しい現象を待ってる暇なんてないからねビジネスでは(笑)

横道にまたそれてしまったけど、これで少しは戦略とは机上の論だ、って言ってる意味が伝えられたのではないでしょうか。

さて次に、机上の論だとして、それは空論なのか。
空論って何でしょう?私の定義では、論理的に構築できておらず殆ど検証もされていない意見ってのは全部空論です。事実とはちゃうよ。事実ってのは事実だから論理もへったくれもない。事実に基づかない論は空論ですが、事実に基づいていてもきちっと論理構築・検証を経ていない段階の意見は空論です。

だから空論のままではいけません。空論がいけないんじゃない。空論は必要です。それは多くの場合仮説と呼びます。そしてその仮説を最初は粗いものから徐々に精緻に論理化していきます。最終的にある程度検証出来て初めて論を展開出来るわけです。なわけですから、戦略コンサルが考えたものだろうが社内の人が考えたものだろうが上記のような途中段階の思考は全部空論です(笑)

それでは最後に、「戦略コンサルの考える」戦略は机上の空論か。
まあ空論でしかないケースもあるにはあるんだろうね(苦笑)戦略コンサルっていっても色々いるからね。でも一流のコンサルが考える場合に空論で終わってしまう確率は極めて低いです。

ぶっちゃけ言いますとね、企業にお邪魔して経営企画あたりで作っておられる中期戦略とかなんとか戦略ってのを拝見すると、まあ殆どの場合が空論です。仕方ありません、戦略立案って相当程度に職人技ですから。

勘違いしないで下さい、企業の中の議論がみんな空論だっていってるんじゃないですよ。生産現場や開発現場、最近は営業現場だってかなり観察・仮説・シュミレーション・検証の思考を駆使しておられます。すげー、これは俺には出来ないって思うこともしばしばです。でもこと戦略に関しては空論ばかりってことなんです。

じゃあなぜ戦略コンサルの場合は机上の空論とはなりにくいのか。鶏と卵だけど、戦略立案に長けた一流の先輩たちから直接指導を受け、それこそ何度も頭ぶつけながら体で覚えていくからだと思うんです。

私が一流かどうかはわからないけれど、私の場合はQ1でちょっと名前挙げさせてもらった古谷昇に育てられたといっても過言じゃない。もちろん他にたくさんの諸先輩や同僚、後輩達からも教えられた。それこそ戦略漬けの日々の中でね。いっつも頭の片隅にはイシュー抱えてるって感じです。

そして、そんな戦略ばっかり考える環境の中で一流の技に直接触れる経験を積んで少しづつ自分でも出来るようになっていくんです。そんな一流の先輩に巡り合えて自分もあんな技をみにつけたいって歯をくいしばって頑張れるかどうか。ってのが本物の戦略コンサルになれるかごまかしごまかし生きていく似非コンサル(失礼)になるかの分かれ道かもしれません。

蛇足ながら、分析できないコンサルは戦略コンサルにはなれません。絶対に。確信もっていえるよ、私。戦略コンサルを使いこなすコンサルにはなれるかもしれないけどね。でも、それだって中途半端です。分析を経ない、経験だけに基づく戦略ジャッジメントの不確かさは山ほど見てきたし自分も失敗経験あります。

ファーム内でエラくなっちゃうとだね、だんだん現場情報からは離れるしじっくり考える余裕もなくなる。だからどうしても部下の思考に頼る部分が増えるんだ。で下手をすると任せきりになってるプロジェクトとかもある。当然部下は発展途上なんだからミスもする。そういうとき放任のつけが回ってくる。

それでも自分で分析する力が備わってれば、かなり強引にプロジェクトを救えることだって結構あるんです。でもそうじゃないと軌道修正にも限度がある。戦略コンサルが似非コンサルになって机上の空論を吐いちゃう瞬間かもしれないね、それが。

さて、最後に触れるって言ってた冒頭の戦略コンサル批判。これはホントに深い話です。ある程度現場からの批判は避けられないんです。背景の共有が十分出来てない人にとってはなぜその議論がなされているのかすら理解出来ないこともしばしばです。第一気分悪いわな、自分が知らないところでえらそーに自分の部門とかを分析されてたりしたら(苦笑)

戦略と戦術の違いが分かってらっしゃらないことも多い。そもそも戦略って何かを勘違いしている人が大半なわけですし。でも、それをきちんと理解してもらおうとするのはコンサルの役目の一つです。だからあまりに批判の多いプロジェクトはいくら答えが正しい方向を指してたとしても、まあ失敗と呼ぶべきですね。あと、似非コンサルにひっかかっちゃった企業ってのもあるんだろうなあ。

でもね、ちゃんとした一流ファームならそういう失態は少ないし、普通の企業では決して出来ないようなエキサイティングでとてもいい仕事をたくさんやってますんで。じゃないと私だって長年続けてませんから、戦略コンサルみたいな難しい仕事(笑)

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

初めての方へ 私たちキャリアインキュベーションについて

転職のご相談・お問い合わせ 業界の専門分野で10年以上の
経験を持つエージェントに
転職相談(無料)
してみませんか?

あなたのキャリアに関する相談相手として、現在の状況に耳を傾け、これまでのご経験や今後のポテンシャル、
将来の展望を整理し、よりふさわしいキャリアをご提案します。

1分で完了 無料登録・転職相談

現在約6000人以上が登録中!
転職活動にすぐに役立つ
メールマガジン(無料)もございます。

メールマガジン登録(無料)