INSEAD(インシアード)では1年間に学期が5つあります。1学期間はそれぞれ7-8週間、学期末に3-4日間の試験が待っています。学期のあいだの休みは短く、3日程度です(年末年始のみ2週間強)。8月25日―29日のオリエンテーションの後、9月1日から1学期がはじまりました。
8月(最終週) オリエンテーション |
9月 10月 1学期 |
11月 12月 2学期 |
11月 12月 2学期 |
1月 2月 3学期 |
3月 4月 4学期 |
5月 6月 5学期 |
7月1日 卒業式 |
セクションA1・グループ10
2003年9月にシンガポールキャンパスへ入学した学生は約100名です。この100名は、一クラス50名弱のセクション(A1、A2)に分けられ、さらに通 常5名単位のグループに配分されます。私は、セクションA1・グループ10で、A1 セクションの中では唯一4名のチームに配分されました。チームメンバーは以下の通 りです。
フレドリック・ホフマン(ベルギー人/マッキンゼー・コンサルティング、26歳)
ルッドビッヒ・オッフェハウス(オランダ人/マッキンゼー・コンサルティング、28歳)
アンドレ・テグレ(イタリア人/メリル・リンチ、27歳)
フレドリック
ルッドビッヒ
アンドレ
フレッドリックはUndergraduateで工学を専攻しており、頭の回転も非常に速く計量 的問題の解決能力に優れています。またチームの中では授業の準備を最もきちんとこなすタイプです。奥さんは産婦人科医で運良くシンガポールでインターン職(無給らしいですが)が見つかったのでシンガポールに一緒に来ています。
ルッドビッヒはundergraduateでは生物学を、修士ではOperational Researchを専攻しています。遊び好きで平日の夜も遊びに街に出かけるタイプですが、授業の準備もそこそここなし、非常に効率的な時間利用をしているようです。
アンドレは主にドイツで育ったイタリア人で、サッカー好き、車好きと絵に描いたようなイタリア人です。メリルリンチでも営業畑で、計量 的な分野は弱くマーケティングなどファジーな分野に熱意を持っているようです。
INSEADの学生生活でグループは大きな役割を果たします。クラスの席割りはグループ毎に指定され、一緒に座らなければなりません。多くの科目での課題レポートはグループ毎に提出となっているほか、必須科目のうち2つ(組織論1、2)は、最終試験もグループによるレポート(3.5時間という時間制約の中で)という形式です。INSEADでの学生生活の快適度(苦痛度?)の50%はグループメンバーとの関係で説明されると言って良いでしょう。
チームの特徴、出来事については今後もぜひ触れたいと思いますが、私のチームは、課題レポートなどの討論の際に最も大声で、また延々と議論するチームという評価が他のクラスメートから与えられています。ある課題レポートで、私のチームは10時間以上費やしたのですが、他のチームは大体2-4時間くらいで終えたと聞いた時は個人的にもショックを受けました。。。。
2.授業内容
科目:1学期目の授業はすべて必須科目で選択の余地はほぼありません。科目は、
金融市場(Financial Market and Valuation)
ミクロ経済学(Price and Markets)
財務会計(Financial Accounting)
応用統計(Uncertainty, Data & Judgement)
組織論(Leading people and Groups)
です。どの科目も、2-3コマ/週の教授による授業の他、週1回程度の助手による補習があります。例として第4週目のスケジュールを掲げます。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
---|---|---|---|---|---|
8:30 | ミクロ経済 | 組織論 | ミクロ経済 | ||
10:15 | 応用統計 | 組織論 | 金融市場 | 金融市場 | ミクロ経済 |
12:00 | 組織論 | 応用統計 | |||
14:00 | 財務会計 | 財務会計 | 組織論 | ||
15:45 | 応用統計 | 組織論 | |||
17:30 | |||||
19:15 |
ミクロ補修 | 金融補修 | 統計補修 |
授業の形式は、「金融市場」・「ミクロ経済学」は講義形式、「財務会計」・「組織論」はケーススタディ形式、「応用統計」はケーススタディと講義様式の混合でした。「ケーススタディ」という授業様式は日本ではまだ稀だと思いますが、学生の興味関心を掻き立てるという点で非常に効果 的です。
「ケーススタディ」では、実際に起こった事柄について企業が実名で登場し、当事者の観点から経緯が語られ、どのような分析・判断が適当(だった)のか、というような形で問題が課されます。授業の前日にケースを読み、解答を考えて授業に臨む訳ですが、教科書の該当する章や配布される参考文献を読む必要もあり、事前準備に3時間ほど費やすのも稀ではありません。
授業では、教授が司会の役割を果たし、学生による議論を通じケースが分析され、解決方法が議論されます。「財務会計」など比較的硬めな科目でも「ケーススタディ」形式が用いられます(本稿の最後のコラム「ケーススタディ」で簡略化したケーススタディの例を挙げました)。
- コラム1:INSEADの食生活
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シンガポールキャンパスの食堂(及びBar)はSodex Hoという会社にアウトソースされており、比較的効率的に運営されています。メニューはアジアンメニューが基調です(写 真参照)。学生の中では、パスタ、ピザ、ハンバーガー、サンドイッチなどの欧米スタイルメニューを求める声も強く、学生自治体の中での課題となっています!
成績:INSEADでは成績は相対評価形式を採用しており、平均点から大きく離れるとその科目の取り直し、またINSEADからの落第というリスクにつながります。落第は比較的まれですが、科目の取り直しは2-10%程度の割合であるようです。
成績の配点は、科目にもよりますが、
試験:70%
授業参加:15%
レポート:15%
といったように配分されます。但し、米国のMBAに比較すると授業参加点は重視されていないようです。1学期の成績結果 を友人同士で比較すると授業参加点にはあまり差は見られませんでした。学生も最初の頃は授業参加点を意識し過度に(!)発言する傾向がありましたが、次第にこういった傾向は収まった印象があります。
次稿ではINSEADの学生生活に加え、シンガポールの生活についても若干触れたいと思います。それではまた!
- コラム2:ケーススタディとは?
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簡略例:「マエバシカメラ」
あなたはマエバシカメラの財務部長です。マエバシカメラではプリンターを販売する際に、メーカーによる製品保証(1年間)に加え、マエバシカメラによる3年間の製品保証保険をオプションとして販売しています。プリンターの価格が3万円、マエバシカメラの3年間製品保証が6000円とすると、これまでは販売時点で売上げ3万6000円を計上するという会計手法をとっています。ところが、1週間ほど前に業界の集まりで会ったスルガ電気の財務部長によると、スルガ電気でも同様に売上げ計上していたが、来期からプリンター販売額(3万円)のみを販売時点での売上額として取り扱い、3年間製品保証保険については1年間経過するたびに2000円ずつ(6000円/3年)売上げとして計上するという手法に変えるとの事でした。理由を聞くと、会計監査上、若干問題があるとして指摘されたとスルガ電気の財務部長は答えました。
問:マエバシカメラの財務部長として、売上げ計上方法を変更すべきか?変更するとすればどのような会計手法に変更すべきか?
実際のケースには、より詳細なデータ(プリンター、製品保証の利益率、製品保証に関連するコスト)や、問とは関係のないような事実関係(プリンター販売のマーケットシェアなど)が含まれ、ケースを色づけます。 授業では、教授が学生をあててケースの要約を求める事から始まり、ケースの問に対する学生の解答、またその理由を尋ね、意見を異にする学生がそれに対して反駁するといった形で進行します。授業の結果 として学生は、財務会計上の「売上げ」計上の要件、様々な計上手法を学ぶ訳です。