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画像:ベインキャピタル

ベインキャピタル・ジャパン・エグゼクティブ・プログラム特別インタビュー

ベインキャピタル

ベインキャピタルは、2023年4月26日、新たな経営人材育成プログラムとして『ベインキャピタル・ジャパン・エグゼクティブ・プログラム』(以下、BCEP)の本格展開を発表した。
BCEPは日本オフィス独自のプログラムで、将来的に投資先にCxOとして転籍する前提で同社ポートフォリオグループにて人材を採用し、ベインキャピタル流のバリューアップを徹底的に身につけた上で、投資先に派遣するものだ。
BCEP1号社員として2020年に入社したのが、マッキンゼーや事業会社のバックグランドを持つ徳渕夏樹氏だ。
今年1月にベインキャピタルでの就業期間を終えて、投資先に転籍したばかりだ。
1号社員としてプログラムの設計・運用に意見をする機会も多かったという徳渕氏。
BCEPでの経験やその魅力についてお話を伺った。

徳渕様のバックグラウンドを教えてください。

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私は2020年1月にBCEPの1号社員として、ベインキャピタルに入社し、ベインキャピタルで経験を積んだ後、今年1月に投資先の株式会社プロテリアル(旧・日立金属)にCTrO(Chief Transformation Officer)として入社し、経営改革の全体を統括しています。

ベインキャピタル以前は、新卒入社した米系システム会社で日系自動車メーカーの工場での常駐エンジニアを経て、マッキンゼーで製造業を中心としたコンサルタントとしてマネージャーまで務めました。その後、ドイツ系半導体メーカーのインフィニオンの日本法人で車載半導体事業部の責任者、他社外資系ファンドの投資先である米系エンジン部品メーカーの米国本社での事業責任者、リーダーシップアドバイザリーを行うラッセル・レイノルズでエグゼクティブサーチやリーダーシップ開発等に従事してきました。マッキンゼーの前には、フランスでMBAを取得しています。

最初からBCEPを前提としてベインキャピタルに参画されたのですか。

はい、BCEP前提での入社です。2019年にマッキンゼーのアラムナイイベントに参加した時に、ベインキャピタルに勤めていた先輩に声を掛けてもらったのがきっかけでした。当時はBCEP立ち上げ前で、「日本での事業・投資拡大に伴って、投資先の経営改革をリードする経営人材からなる組織を立ち上げるので一緒にやらないか」というお誘いでした。ベインキャピタルのシニアメンバーとの面談を重ねる中で、「これは絶対に面白い」と確信しましたし、今後経営する上で株主目線の重要性が高まると考えていたので、そうした経験を積める点にも魅力を感じて、お受けすることにしました。いざ入社して私が1号社員だったことを知りました。

日本でPE投資が拡大する一方で、バリューアップを担える経営者が圧倒的に足りない―その問題を解決するために生まれたのがBCEP

具体的にBCEPの全体像・流れ、徳渕様が現在の投資先に転籍するまでどのように過ごされたかを教えてください。

BCEPの趣旨は、投資先に派遣する経営人材のプラットフォームで、日本オフィス発でスタートしたプログラムです。日本オフィスがBCEPを立ち上げた背景には、日本における経営人材の不足があります。ファンドとしては案件がどんどん増えている日本での投資を拡大したいものの、投資後のバリューアップを担える経営人材がマーケットで圧倒的に足りないのが現状です。その打開策として生まれたのが経営人材育成を内製化するBCEPです。

プログラムの流れとして、まず入社してベインキャピタル流のバリューアップ方法を座学で学びます。並行して、複数の投資先の経営会議にオブザーバーとして参加し、ベインキャピタルのチームワークや投資先経営陣との関わり方を学びます。その後、実践経験を積むフェーズに移り、投資先案件にポートフォリオグループの一メンバーとしてアサインされます。私はニチイ学館にアサインされ、保育事業と家事代行事業の支援と並行して子会社の英会話スクール「GABA」の代表取締役会長兼CEOを務めました。

こうして実践経験を経て、CxOとして投資先に派遣されます。ここで投資先に転籍となるため、現在はベインキャピタルに籍はありません。私は経営改革の全体を統括するCTrOポジションでしたが、投資先によってポジションはケースバイケースで、CEOに就任する場合もあります。

今後、毎年2~3名を投資先に派遣する計画と聞いています。

プロテリアルにはどのフェーズで入ったのですか。

全体の流れから説明しますと、まずディール成立前に、ベインキャピタルのディールチームとポートフォリオグループが共同でDay1以降にいつどのような施策を行うかの設計図、ブループリントを作成します。このブループリントはディールが成立する目途が立った時点でポートフォリオグループに引き渡されます。そして、ポートフォリオグループが経営改革の知見を活かしてブループリントをブラッシュアップします。Day1を迎えてあらゆる情報にアクセスが可能になると、その情報を反映してさらにブラッシュアップをかけ、精度を高めていきます。

この流れの中で、BCEPのメンバーはポートフォリオグループと同じタイミングでチームに入ります。従って、ブループリントの全体像や、これまでどのような変遷を経て今の状態に至ったのかの背景を理解した状態ですぐに投資先で動くことができます。プループリントの作成に関わることで、実行局面でのオーナーシップも高まりますし、視座も上がります。

派遣先はどのように決定しますか。徳渕様がプロテリアルに決まった背景を教えてください。

ベインキャピタルのシニアメンバーがディールの状況や本人の希望を鑑みて決定します。私はもともと製造業のバックグラウンドと、大手企業でトランスフォーメーションを手掛けたいという希望があり、それらに合致するプロテリアルのディールが成立したタイミングもあって、プロテリアルに決まりました。

ここで少しだけ個人的なことをお話しますと、私は父親が本田技研に勤めていた都合で、小学校まで10年間フランスとベルギーで過ごしました。1970年代ですので日本人はもちろんのこと、アジア人は学校全体で兄と私の2人だけでした。馬鹿にされたくない思いで勉強を頑張っていましたが、当時、一つ心の支えになっていたのが世界での日本企業の活躍でした。SONYがウォークマンを発売して世界を席巻し、日本車も世界で存在感を高めていた時期でした。世界で存在感を発揮している日本企業は、子供として単純に誇らしかったですし、少し差別的な扱いを受けた時に反論するための一つの武器でもありました。そうした原体験があったので、仕事でも、日本の製造業が世界で活躍するためのサポートがしたいという想いはずっとあります。プロテリアルはまさにそうした想いを実現できる仕事だと思ってますし、私にとっても今後のキャリアで重要なマイルストーンになると思っています。

プロテリアルに籍を置かれていますが、Exit後はどうなるのでしょうか。

ベインキャピタルとして、何かしらの制約を設けて個人の選択肢を狭めるようなことはしていないので、選択肢は色々とあります。BCEPは投資先に派遣する経営人材のプラットフォームです。もし、どこかの投資先を成功に導き、ディールの状況やモチベーションが互いにマッチすれば、再びベインキャピタルから別の投資先に派遣されることもあり得ます。一方で、個人としてプロ経営者として勝負をする道もあります。その中には当然プロテリアルで続投する道もありえると考えています。ただ、現段階ではまだ何も決めていない状況です。

ベインキャピタルはこれまでほとんどの投資先を成功に導いてきた― そのノウハウや、質の高いポートフォリオを自らが成長するために活用できる

ファンド投資先企業の経営者になるには、プロ経営者に進む道もありますし、ポートフォリオグループのメンバーとして取締役に就く道もあります。それらとの差別化はどこにあるのでしょうか。

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まず、プロ経営者との違いは、ベインキャピタルに入社することです。ベインキャピタルに在籍している間はポートフォリオグループのメンバーとして業務に当たるので、株主目線と事業会社目線の両方での経営改革のやり方を徹底的に身につけることができます。

私はこれまでコンサルティング会社と事業会社を経験していますが、ベインキャピタルで経営改革に携わることで圧倒的に経営の視点が高くなった実感があります。マッキンゼーから事業会社に移った時は事業責任者として結果に責任を負うことの重みを痛感したものですが、どちらかというと四半期や通期のPLや予算を中心とした業績数値を強く意識していました。もちろんそれも大事ですが、今振り返ると、そこにフォーカスしすぎていたように思います。

一方、ベインキャピタルでは、株主として経営責任を負います。事業や組織の本質的な強みは何か、強みを活かすにはどうすれば良いのか、持続的に成長できる事業構成はどうあるべきか、まさに長期的な視点から成長企業を見極める「インベスター・マインド」を持って投資先と向き合います。目線が上がることで、戦略と施策のスコープが明らかに広がります。

ポートフォリオグループとの違いはその立ち位置です。ポートフォリオグループのメンバーは複数の案件を兼務するので、各投資先については俯瞰して見ます。一方でBCEPでは転籍して1社にコミットします。現場に入り込み実行に深く関わりつつ、投資先の経営陣との対話も数多く重ねるので、関与する深さが違います。

実際に経験してBCEPの魅力は何だと感じていますか。

まずは、ベインキャピタルの投資先ポートフォリオの質の良さが大きな魅力です。ベインキャピタルでは、一つのランドマークディールやラージディールによってファンド全体のリターンを得るような運用はしておらず、ほぼ全ての投資先で期待リターンを得てきた実績があります。その実績が認知されていることで、良い案件に声がかかり、投資案件の質がさらに良くなるという好循環が起こっています。つまり、BCEPでの転籍先も、成功できる蓋然性がある程度高い企業であるということです。もちろん、一筋縄ではいかないタフな仕事ではありますが、「この会社を成功に導けなければ自分の能力不足だ」と納得ができます。

事業会社では、しばしば有望な人材には「タフ・アサインメント」が与えられます。容易に達成できないハイレベルな仕事を与え、その中で頭角を現した人材を後継者に据えるというものですが、BCEPはそれと似ていると思います。日本トップクラスのベインキャピタルの投資先ポートフォリオを、自身が経営者として成長するための"健全な"タフ・アサイメントのプラットフォームとして活用することができるのは非常に大きな魅力です。

他ファンドの投資先企業で働かれた経験もお持ちですが、ベインキャピタルの投資先ならではの特徴はありますか?

ベインキャピタルは、投資先の実態を理解する解像度が圧倒的に高いです。先程お話したブループリントをブラッシュアップするプロセスからも分かる通り、ベインキャピタルでは実態を解像度高く理解しているが故に、計算されたリスクが取れますし、実行確度の高い戦略と実行計画が作れます。私の印象では、他社ファンドはよりハンズオフなので、ベインキャピタルほど解像度高く、経営や現場の実態を把握するのは難しい側面があるのではないでしょうか。ハンズオフなやり方は、日本市場では難しい側面があるように感じます。というのも、欧米の様にファンドと経営者の距離間が近く協働するカルチャーが必ずしも醸成されていないのが日本市場の一側面だと感じるからです。だからこそ、BCEPの様なプログラムは、日本ならではの価値がある様に思います。

BCEPに対する社内での理解があるからこそ、良い経験を積むことができる

徳渕様の後に、2号社員、3号社員の方が入社されましたが、その間にBCEPで何か変化したことはありますか。

BCEPをより良いプログラムにするために私たちが意見を述べることも多々ありましたが、プログラムの大きな流れは一貫して変わりません。

変化したことと言えば、ベインキャピタル内でBCEPへの理解が進んだことです。私が入社した当初は、BCEPという公式プログラムが立ち上がる前でしたので、他のメンバーからすると少し不思議な存在だったようです(笑)。しかし、彼らとコミュニケーションの機会が増える中で、私たちが将来的には転籍して投資先の経営に当たる人材であり、キャリア志向性が異なる点や、より投資先に深くコミットする点など立ち位置の違いを理解してくれるようになった様に思います。また、一緒に仕事をしていく中でディールチーム、ポートフォリオグループのメンバーが担当すべき領域と、BCEPメンバーが育成上積極的に担当すべき領域が更に明確化されるようになりました。それによって、仕事しやすくなりましたし、効果的に経験を積めるようになりました。2号社員、3号社員と話すこともありますが、ずいぶんと洗練されてきたようです。

求められるスキルなど適性などはありますか。

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BCEPでは、ファイナンスでの知識や実務経験、ファンド投資先で経営した経験等は必須ではありません。一方で、コンサルティングファームで一定以上の経験があり、ファクトベースでの意思決定、問題解決、分析スキルが土台としては必須です。加えて、事業会社での経験があれば更にプラスになります。

必要なパーソナリティとしては、人間的にマチュリティが高いことが一番大事です。ファンドと投資先はどうしても立場の違いから一定の摩擦はどこかで生じますので、BCEPのメンバーが両者の橋渡しを担うことが一つの期待値になります。また、経営改革中は、投資先にとってタフな決断の連続です。ですので、橋渡しを担うBCEPメンバーが「この人が言うならやってみよう」と思っていただけるような信頼関係を築くことも大事です。謙虚であり、感情的に安定していて、学ぶ姿勢を忘れない、そんな人間として成熟していることが必要かと思います。

ご自身の中長期でのキャリア展望を教えてください。

まずはプロテリアルのCTrOとして結果を出すことに尽きます。その先は、またその時に考えます。一つ言えることは、今後もグローバルな環境で日本の製造業を盛り立てる役割を担っていけたら嬉しいとは思います。

最後に、BCEPに関心を持つ候補者に向けて一言お願いします。

経営者としてもちろん「個の力」も大事ですが、株主と健全な関係を保ちつつ、より本質的な経営改革と推進することは、今後経営者にとって一層大切になっていくだろうと感じています。その考え方に共感し、一緒に新しい経営者のプラットフォームを作りたいと思って下さる方に参画頂ければと思います。

プロフィール

写真:徳渕 夏樹 氏

徳渕 夏樹 氏
株式会社プロテリアル 執行役員 最高経営改革責任者

新卒で米系システムインテグレーターにおけるCAD/CAM/CAEエンジニア職を経て、マッキンゼー東京、シカゴ事務所にて製造業を中心にオペレーション改善のプロジェクトに従事。その後、インフィニオン・ジャパンにて車載半導体事業部の責任者、ウォルブローのアメリカ本社にて燃料システム事業部の責任者を歴任。ラッセル・レイノルズの東京オフィスにエグゼクティブ・サーチての経験も有する。
慶応義塾大学理工学部機械工学科卒業
HEC経営大学院(フランス)MBA

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