金光隆志のコンサル転職Q&A

[第6回] 思い出に残るプロジェクトを教えてください(後編)

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【質問】 
思い出に残るプロジェクトを教えてください(後編)

Macに向かってじっとデータを眺めている先輩。僕は何の気なし に「三谷さん、何やってらっしゃるんですか」と声をかけました。


「ん?社員の意識調査の分析。一応やんなきゃいけない集計は終わったんだけど面白いことに気づいてさ。深堀れないか考えてるんだよ。ほら、このグラフ。なんか気づかない?俺にはこれこれ(何か忘れた)に読み取れるんだよ。この仮説をサポート出来ないか他の切り口での分析を試してるところ」

「俺は言われたことだけで手一杯でそんな余裕全くないです」「で、いつまで言われたことだけやってるつもり?言われたことしかやんないでいると、言われたことしか出来ないやつと思われて言われることがどんどん増えて、益々も出来なくなるよ。生データさわってるんだからなんか違う切り口で気づくはずだろ。お前にパッケージなんて誰も求めてないさ。一枚でいいのに。分析一枚。近藤の下でやってるんだろ? 何か試して相談してみろよ。近藤だってそのほうが助かるんだから。」

なんか当たり前のことを言われただけのように思いますよね。でも当時の状況の僕には天啓であり最高のアドバイスでした。一枚でいいんだ。相談していいんだ。それって助けになるんだ。。

余談ですが、生データって本当においしいです。仮説思考が身についてくればどんな生データを見ても二つ三つの仮説を導く分析やらサブロジックやらなんてすぐ思いつくようになります。もちろん当時の私にはそんな力はなかったですが、それでもデータを弄繰り回していれば普通の知性を持っている人なら誰にでもインスピレーションは生まれます。誰にでもです。

仮説をもたずに分析することを戒める人は多いですが、僕は、仮説が立てられないうちは弄繰り回せばいいんだよとアドバイスします。そうやって何度となく思いがけない発見を経験しましたから。プロジェクトの方向性を変えてしまうレベルの分析だって出したことあるんですよ。弄繰り回してるうちにね。僕はこれを探査型分析と名づけてもっともらしく正当化していました(笑)

で、弄繰り回しているうちに一枚の相関グラフが偶然出来てしまいました。その相関関係にはっきりした理由は見出せなかったのですが、そこに相関があるならこっちにもあるかもって。そしたらまた緩やかな相関が。さらに。。とやっているうちに5枚くらいの相関グラフが出来てしまった。

翌日僕は期待をもちつつも自分ではロジックが見出せなかった負い目から恐る恐る近藤さんに「こんなんでちゃったんですけど」みたいな感じで見せにいきました。近藤さんは5枚のグラフを数分パッパとめくっては戻りまためっくては、を無言で繰り返した後おもむろに、これってこう読むんじゃないか、といいながらグラフの順番を入れ替え、ロジックを語ってくれました。で、「だとしたら5枚はいらなくてこれとこれと、後一枚こんなの作ってごらんよ。いいじゃん、カネコちゃん。面白いよ」と。

嬉しかった。っていうか「うっそ、マジ、こんなんでいいの?」みたいな(笑)次のミーティングで近藤さんはこの3枚を自分のパッケージとは別にプレゼンしてくれました。そこでどんな議論がなされたか今となっては詳細を思い出せない、っていうか殆ど理解してなかったですが、ミーティング終了後、マネージャーのリックがGood jobと言ってくれたのは鮮明に覚えています。

そして、その分析をきっかけに競合他社分析のサブモジュールをリックが直で僕にアサインしてくれたのです。それはほんの小さなというか本筋とはあまり関係のないようなモジュールでした。常識的に言えば、わざわざマネージャーが入社一ヶ月そこそこの学生上がりの僕に手を煩わせずとも近藤さんに預けて僕を下請けにし続けることで事足りたはず。でもリックはそうはせずにチャンスをくれた。恐らくはコンサルが二人だったから、あと1人、サブモジュールなら足かせのアソシエイトでも直接面倒を見る余裕があったのだと思います。

で、とにかく僕はようやくメンバーのはしくれに認められたという思いで感無量でした。先輩たちのサポートは今まで通りやりつつ自分のモジュールも持ったので時間的にはさらにきつくはなりましたが、全く苦ではない。近藤さんは聞けば何でもアドバイスをくれるしリックも週に2回は進捗の打ち合わせをしてくれる。そしたらヘレンケラーでもちゃんと前に進むんです。自分で考えることが出来るようになる。知識なんて殆どなくてもね。

一人でインタビューしてくるって経験もさせてもらいました。一発目はメチャクチャ緊張したのを覚えてます。なめられないようにスーツ新調したもんな。形も大事です(笑)ミーティングでもたどたどしくはあってもプレゼンする機会が与えられ、自分で考えた分析が議論されるようになるから、他のパートだってある程度は理解できるようになり、少しは議論にも参加でき、ゆっくりとではあるけど着実にチームの輪の中に溶け込めるようになりました。

プロジェクト自体大きくないし短期で一通りの戦略アウトプットを出すという性格のものであったため、新人の僕でも一旦チームの輪の中に入ってしまえば全体像が見えやすく、ラッキーなことに僕は最初のプロジェクトでしかもかなり短期間にBCGでの仕事の進め方を一通り学ぶことが出来たわけです。

最終報告後、経緯は分からないけどクライアントから僕のサブモジュールに関連するイシューをさらに深堀りするための小さなフォロープロジェクトが発注されました。メンバーはリックと遠藤さんと僕。僕はまたそこでもみっちりしごいてもらうことができました。

はじめは嫌だなと思ったプロジェクトでしたが、結局はその後長きにわたり僕のバックボーンとなってくれたプロジェクトです。何度も俺やっぱり駄目かなと思ったけれど、最初あれだけやれたじゃないか、もう少し頑張ってみよう、って。精神的な支えにもなった。僕はコンサル時代に一度としてプロジェクトアサインを選り好んだことがないんです。一概にいいことなのかどうかは分からない。でも、この最初の経験があったから、どんなプロジェクトでも自分に出来ることがあるし吸収できることがあると前向きに考えるクセがついたのだと思います。

おかげで僕は実に多様な業種、プロジェクトタイプをコンサル時代に経験することができました。マネージャー以上になるとどうしてもある程度の専門性が必要になってくるから、業種やプロジェクトタイプはいやおうなしに偏ってきます。発想も硬直してくるんです。パターンにはめてしまいがちというか。でも、コンサル時代に幅広い経験を積んでおけば、それらが無限の発想の源となってくれます。本当です。

そんなこんなで、まあコンサル第一歩は終わってみればとても素晴らしい経験であったわけです。 ちなみに、文中に出てきた三谷さんってのは今アクセンチュアで統括パートナーとしてご活躍中のご存知三谷さん。今でも年賀状下さるんです。ほんと面倒見のいい素敵な先輩でした。

遠藤さんっていうのはローランドベルガー会長の 遠藤さん。すっかりご無沙汰してますが、遠藤さんにもほんとメチャクチャしごいてもらいました。きっと遠藤さんの頭の中では俺なんてまだ出来損ないのひよっこのままなんだろうなあ。

そしてちなみにこのプロジェクトのオフィサーで、僕をヘレンケラーと名づけた方は、現在ATカーニーでご活躍の島田さん。島田さんも実は学卒でBCG。東京事務所の最年少オフィサー記録はまだ破られてないんじゃないかな。事務所始まって以来、学卒初のオフィサーでもあられました。

島田さんにはその後も何度も怒鳴られましたが、それでも見捨てず僕を使い続けてくれました。ちゃんとした仕事をすればほめてもくれて。飲みにも誘って下さって。怖いんだか優しいんだか。一番ほめられたのは京都でカラオケ連れてってもらったときかな。お前仕事と違って歌はプロレベルだなって(苦笑) いやはや、今考えると僕は最初からすごい人たちに囲まれてたんですね。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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