金光隆志のコンサル転職Q&A

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[第7回] 思い出に残るプロジェクトを教えてください(中堅コンサルタント時代)

【質問】  思い出に残るプロジェクトを教えてください(中堅コンサルタント時代)

前回の新人時代の話、長すぎましたね。思い出ばなしになるとつい冗長になってしまって。これからはできるだけコンパクトにまとめます。。


さて、まったくの新人時代から少し慣れてきてパートを任される機会も増えてきた頃の話をしましょうか。僕には一つの悪い癖がありました。本質を抉り出そうとするあまり、思考がどんどん現実を離れて空回りをはじめるんです。

概念的なレベルで考えを深めるのは悪いことではありません。むしろ非常に付加価値の高い作業です。が、同時にとても難度の高いスキルであって、一つ間違えると一般論に陥りがちで、それだと付加価値ゼロです。それを避けようとすると今度は抽象論のワナが潜んでいます。それも付加価値ゼロ。

コンサルタントに求められるのは抽象論と現象論の中間くらいなコンセプトを創出することです。あらゆるプロジェクトは、それぞれになんらかのコンセプト化がなされます。コンセプト化は、個別具体的な顧客のビジネスの状況に即して行われるので、殆どの場合は一度限りのアウトプットです。ですがその中で汎用性の高いものが創出されることもあり、それが所謂「経営コンセプト」として世の中に広く受容されていくわけです。

話がわきにそれますが、コンセプトには大雑把に言って4種類あります。一つはフレームワーク。例えばマッキンゼーの7Sモデルなど。ある経営課題を考えるのにどういう分析や視点・視座を据えればよいかを体系的に整理したものがフレームワークです。フレームワークがしっかりするとマネジメント精度が向上します。

二つ目はアプローチ・方法論。例えばリエンジニアリングなど。ある経営課題を解決するのにどういう手順で進めていけばよいかを標準化したものがアプローチ・方法論です。方法論を確立することで誰にでもどの組織でも一定以上の成果が期待できます。三つ目は法則です。例えばBCGのエクスペリエンスカーブなど。

ビジネスにおいて普遍性の高い「経営コンセプト」として広く世に知られた法則は少ないですが、個別具体的な現象におけるメカニズム解明を行ったら、全く異なる商品・市場においても類似のメカニズムが働いていることを発見するケースはよくあります。そういったものは仮説の源としてファームの中で共有化され、多くのプロジェクトで確認されればコンセプトとして発表されていきます。法則の発見は戦略的打ち手の成功確率をあげたり結果を予測するのに有用です。4つ目は打ち手のパターン化です。

上記の3つを複合することで打ち手そのものを体系化したり概念化することが出来ます。BCGのPPMやアドバンテージマトリクスなど、法則やメカニズムに基づいて、現象のダイナミズムや将来予測をシンプルにパターン化し、かつ打ち手のオプションを体系的に整理することにある程度成功しています。

。。。とまあ僕の思考はこんな具合につい概念レベルでの整理や操作に走ってしまう(笑)だけど、一足飛びに概念レベルで整理したり説明したりするのは全く説得力に欠けます。力の足りないうちはなおさらです。自分自身が空転してしまうのですから。

この自分の癖がパフォーマンスに悪影響を及ぼしていると決定的に気づかされたのはBCGに入社してから何年も経ってからのことです。

あるプロジェクトに同期と一緒にアサインされる機会がありました。二人とも事例研究を命ぜられたのですが、彼のほうは同業他社の過去の歴史から示唆を抽出するモジュール、僕の方は他業界の同種事例を探してそこから示唆を抽出するモジュール。テーマは販売チャネルの整理・統合に伴うポリティカルクライシスとそのマネジメント。

難易度でいうと本来は他業界事例研究のほうが簡単。どんな切り口で事例を選ぼうが示唆を出そうがかなりの自由度がありますから。クライアントの立場で考えても、同業他社についてはよく知ってるし突っ込みどころ満載ですが、他業界のことは知らないのだからどんなアウトプットであれわりと素直に示唆を聞いてくれます。

ところがプロジェクトが始まってみると同期のほうは粛々と前に進むのに自分は全然前に進まないしアウトプットがまとまらない。

今考えると笑ってしまうのですが、僕は事例選びでいきなり躓いていました。事例なんて本当はなんだってよかったんですよ。たくさん資料があってインタビューとかもし易いような事例を見つければいいだけ。事実があればそこには必ず背景があり、従って因果の理由も存在し、よってなんらかの示唆は得られるはずなんです。これ、事例研究における鉄則ですよ。覚えといて損はしません(笑)

ところが僕は、切り口から考え、その切り口にあった事例を探そうとしたり、できる限り状況が近い事例を探そうとして上手くいかず前に進められずにいました。たまりかねたマネージャーから、ビジネスの事例でなくてもよい、歴史や社会現象から示唆を抽出してくれてもいいんだといわれ、益々迷走。

記憶が定かではないのですが、確か革命プロセスにおけるオルグ間の相克とレーニンの行った政党マネジメントみたいなところまで遡ろうとしてたんじゃないかな。僕の頭の中では、抽象化すれば当時の顧客の状況とロシア革命の間には立派な共通の構造が見えていたんだと思います。でもこんなもん客に説明するつもりだったのかな。ここまでくれば立派にわけわかんない奴だよね(爆)

で、結局マネージャーと相談してフツーの他業界における販売チャネル併合事例を二つ選んで調べることになりました。ところが事例を選んでからもなかなか前に進みません。僕の目には事例が普通すぎてクライアントの示唆になるものなど何も見当たらないのです。まあレーニン引き合いに出す視座の高さからしたらそうなるわな。

最終的にはなんとかパッケージに纏めたのですが、迫力や説得力の差は同期のアウトプットと比べれば歴然。客観的に言って僕のアウトプットのほうが捻り出した示唆は深かったのですが、捻り出した感が強く現場感には欠けていました。一方同期のほうは、非常に丁寧に事実を積み上げつつそこから言えることを背伸びなく抽出してまとめていました。

クライアントにとってありがたかったのはどちらなのか。同期のほうに決まってます。これからやろうとしている販売チャネル統合にはどんな反応が待ち受けているのか、それはどのくらいの現実的リスクなのか、具体的に失うものは何か、リスクに直面したときにどんな打ち手のアイデアがありそうか、などなど。

クライアントは今見えていないリスクのリアリティを知りたかったわけです。もちろん、リアリティを踏まえた上でリスクの発生するメカニズムが明らかにされ、そのメカニズムを前提とした成功確率の高い打ち手が考案されればベストです。

でもね、リアリティの欠けたメカニズム分析やパターン認識なんて正しいかどうかではなくそれ以前に説得力はゼロ。この説得力ゼロというのが実は作業が前に進まない本質的理由でもあるのです。

僕の同期は実際のプロジェクト過程においても事実を調べ積み上げていくことから進めていきました。一方僕は結論に近い切り口や仮説や示唆を少ない情報から何とか得ようと躍起になっていました。

事実は人に、へーなるほど、といわせる力があります。そして人の頭を自動的に働かせ始めます。なぜそうなったのか?とか、だとすると、とか。そして事実という共通の土俵をもった上で仮説や示唆を議論することが出来ます。次に何を知りたいかとか何を解明したいかも明確に出てきます。そうやって小さな事実やその因果などを積み上げていくと、全体として大きくて複雑な物語を描くことが出来るのです。

逆に切り口や仮説や示唆は、論拠の無い段階で先鋭化して提示すればするほど人の思考を止めてしまうだけなのです。でなければ、そうもいえるがこうもいえるね、みたいな空中バトルが展開されるか。

また難しい言い方をしてしまった(笑)要はミーティング終わった後に、次のステップに進めるようになっているか同じステージに留まったままになっているかの違いが生まれるってことですね。

「お前と角田(僕の同期)でさ、別に大した力の差なんてないんだよ。俺から見たらおんなじ。むしろお前のほうがよく考えてる。でもな、角田のほうが俺が考えられる材料をよく集めたんだよ。だからアドバイスしてやれるし角田も前に進められたんだ。お前は独り相撲。で、俺からのインプットが得られないから益々泥沼にはまってく。その進め方の点で角田のほうがプロジェクトメンバーとしては手堅く安定感あるわけ。わかる?」

このアドバイス、僕にとってだけでなく、あらゆるコンサルタントに通じると思ってます。コンサルタントのうちは仮説の前に事実をよく観察すること、その事実観察からパターンやメカニズムを発見することを大切にしてください。

仮説思考が大事だ、というアドバイスをする人は多いですが、リアルの観察を抜きにした仮説なんてゴミですよ。そういうゴミの仮説をプロジェクトの初期にえらそうに振り回すマネージャーやオフィサー、実は少なからずいたりするので気をつけてください。

オフィサーやマネージャーなら必ず仮説は持ってます。経験豊富なんだから当たり前です。でもそれを最初からコンサルに投げてはいけないの。コンサルに投げるべきは仮説じゃなくて適切な論点、質問です。

思い出に残るプロジェクト、ってお題からだいぶ離れてきましたね。 過激な発言になってきたし、今日はこのへんにしときましょうか(笑)

あ、そうだ。6月30日にCDリリースです!
【アーティスト名】RAISE
【タイトル】「RAY~閃光~」
【販売】徳間インディーズタワレコ、HMV、など大手CDショップで買えます。
よかったら聴いてください(^^)

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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