金光隆志のコンサル転職Q&A

[第8回] 思い出に残るプロジェクトを教えてください(最終回)

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【質問】 
思い出に残るプロジェクトを教えてください(最終回)

しかし暑いですね。 皆さん体調には十分気をつけて。思い切り夏を楽しみましょう♪ ん?


さて、長かった(?)このシリーズも今回でおしまいです。 今回はとっておきのお話をさせてもらうよ。乞うご期待(笑) ってか今回は成功物語だから単なる自慢話に聞こえるかもしれないけど(爆)

新人時代、ジュニアコンサル時代ときたから、今回はシニアコンサル時代。ここで言うシニアコンサルってのは、マネージャーの見習いレベルの頃。所謂シニアじゃないです。所謂シニアは、マネージャー・オフィサークラス。

で、その昔BCGでは、QCL(クオリファイドケースリーダー)という制度がありました。 ワールドワイドでマネージャーと承認するかどうかを試す期間でマネージャーロールを任されつつ、給与はコンサルと変わらない、というとても過酷(笑)な時代であります。 でも、このQCL時代に飛躍的な成長をする人が結構いたんじゃないかな。僕の場合は明らかにそうでした。

その昔(こればっかりですみません)BCGでは50%システムといって、コンサル一人が同時に二つのプロジェクトにアサインされていました。QCLなりたての頃はプロジェクトマネージャー(以下プロマネ)ロールとコンサルロールを半々で、なんてこともあったわけです。
僕はまさにこの半々アサインを通じて、信じられないような急成長の体験をしたんです。

コンサルファームに入られると、よく「目線の高さ」みたいな話を聞いたりされたりすると思います。経営者の目線で考えろ、とか、ケースリーダーの立場でプロジェクト全体の視点から考えろ、とか。これ、言葉では理解できても実際にはなかなかわからないものなんですよね。でもね、なったらわかるんですよ。そんなこと言っても元も子もないかもしれないけど、結構すごい話だから聞いてください。

僕のジュニア時代ってのは、不安定な仕事ぶりでした。報告会の5日前に一枚もアウトプットがないなんてざらでした。たまりかねるケースリーダー。呑気な僕。そんでもって、ものすごい議論やら口論(笑)をした翌日の朝に突然コンプリートパッケージをケースリーダーに提出し、びっくりさせてました。ケースリーダーは、なんでもっと前にこれが出せなかったのかといぶかしがる。

でも狙ってたわけじゃない。当時の僕にはそれしか出来なかったんです。すごい仕事を連発したかと思いきや突然大崩れをすることもあったかな。そんなわけで、僕をQCLにするにあたっての上層部の判断は、決して花丸でってわけではなく、危なっかしくて恐る恐るではあるけれどだめもとで試してやるか、って感じだったと思う。僕自身は決して自信があったとはいえないけど、絶対出来るとは信じてた。信じるものは救われるからね。

最初のプロマネロールは僕の馴染みのあるテーマで、しかも比較的簡単なプロジェクトに100%でアサインされました。タイムマネジメントで若干の苦労をしましたが、別にどうってことなく終わった気がします。ここで何か取り立てて大きな学習をしたとかって記憶はない。強いて言えばマルチクライアントプロジェクトでしかも全て報告書の中身はクライアントごとに違うって種類のプロジェクトだったから、大量の報告書を作成する訓練にはなったのかな。自覚的な学習の記憶といえばそれだけです。

変化に気づいたのはその直後のアサインです。 そこで僕は50%をプロマネロールで、50%を死にかけてたプロジェクトの助っ人としてコンサルロールで、二つのプロジェクトにアサインされました。

この死に掛けてたプロジェクト、1.5ヶ月の戦略監査でイシューを特定してそのあと解決策立案のフェーズへ移るという予定で進められていたのですが、監査フェーズが3週間たった時点でまだ全然イシューが見えてない状況。おいおい残りあと3週間、実質2週半だぞ、と(笑)。僕はもちろんコンサルロールだから全体じゃなくてパートアサインされましたが、助っ人なので他のパートの面倒を見ることもミッションでした。要はプロマネ補佐役。

先に結果を言っとくと、僕は見事に自分のパートをすんなり終わらせ、ほかのパートについても実質リードをし、プレゼンでは社長の覚え目出度く、結局解決策フェーズは僕がプロマネとしてやることにまでなりました。今思い出しても痛快です(笑)

ほんの3ヶ月ほど前まではジュニアロールで、しかもアウトプットを出すのに報告会直前まで四苦八苦していた僕が、ですよ。この3ヶ月で例えば飛躍的に分析力が向上したとか頭が良くなったとか、ありえません。若干パッケージを書くスピードは上がってたかもしれないけど、苦し紛れに一晩で書いちゃう力はジュニア時代にもあったしね。

何が変わったのかって、スキルじゃない。立場だけ。立場がパートだけを考えればよい立場から全体を見渡す立場に変わった。それだけです。

これね、経験しないと、言葉だけで説明してもなかなか伝わらないと思うんです。僕自身未だに何故なのかよくわからず不思議な部分もあるし。出来るだけ分析的に事態を解明してみようとは思うけど、あくまで半分は仮説だと思って聞いてください。

成り立てプロマネとコンサルでは別に経験値に差があるわけじゃないよね。脳のCPUが上がるわけでもない。つまり考える力は同じってこと。思考の量・質ともに変化はない。考えるべきことのスパンが違うだけなんです。より具体的に考えてみましょう。一枚の紙にプロマネとコンサルがイシューブレークダウンを行うところを想像してほしい。

どちらも、立てられる問い(イシュー)の数は同じ。プロマネはプロジェクト全体のイシューブレークダウンをします。だから一つのモジュールに立てる問いは凄く少ない。というか、そもそもどうモジュールを分けるか、から考えます。全体を解明し全体のロジックを組み立てるためにどういうパーツが欲しいのかを考えます。

この時点で、全体から見て不要だと思うイシュー、あったらいいけどなくてもまあいいかってイシュー、自分が全体を構成するにあたって絶対に解明しておきたいイシューってのがあるはず。で、前者二つは「捨てる」んですよ!一つのモジュールで何を解明して欲しいかってのは凄く絞られてます。っていうか絞らざるを得ない。でも、その絞ったものは絶対欲しい。あとはNice to Haveです。この絞ったイシューというのは、プロジェクト全体のイシューを考え抜き突き詰めた結果出てくるものです。

一方コンサルは。全体のイシューはマネージャーから説明受けて、「ふ~ん、そっか。」って聞き流してます(笑)。それは冗談としても、自分で全体を考えるわけじゃない。ぼんやりと理解しているにすぎません。そして、自分が与えられたモジュールのイシューブレイクダウンに励みます。マネージャーから与えられた自分のモジュールの大論点がどういう意図で立てられているか、殆どの場合はわかってないです。

わかってるつもりになってるけど、全体を自分で考えてない限り解るはずありません。さらに言えば、マネージャーがどの論点を「捨てた」のか、全く意識してないはず。マネージャーは自覚的か無意識かはともかくも多くのイシューを捨てているんです。ここですよ、ここ。これを解ってない。

だからコンサルは彷徨います。どうでもいいイシューを勝手に掘り下げます。肝心の大論点の真意を解らず自分流に解釈して変な仮説たてたりします。

でも、たった一度でもプロマネロールをやると、プロジェクトの論点はどう絞られるのかを経験します。異質の次元で思考する経験をします。全体を考えるところから入ります。全体を考えられる人がプロマネなんじゃないよ。全体を考える役割がプロマネ。もちろん基本的なコンサルとしての力は必要だけどね。

僕は先ほど言った死に掛けプロジェクトにアサインされた直後、先ずマネージャーと長い時間話しました。自分のモジュールではなく、全体について。どういうテーマか、何に答えようとしているか、どのレベルの答えが欲しいと考えているのか。などなど。議論を通じて僕が助っ人に入るモジュールのイシューセッティングも少し変わりました。これらを通じて僕は恐らく全体の中の部分、という目線で確実にイシューを自分のモノにしたんじゃないかと思います。

次に、僕の前にそのモジュールを担当していたコンサルと話をしました。どういう問いがマネージャーから立てられたか、どういうイシューブレークダウンを行っているか、現状何がわかっているのか、なにが出来なくて困っているのか、等など。見事にずれてましたね(爆)どうでもいい分析にやたら時間をかえていたり、マネージャーの意図を履き違えて理解していたり。幸いにして彷徨ってただけのことはあって(笑)沢山の情報は集めてあったから、僕はすぐさま軌道修正に入ることができました。

いや、出るわ出るわ宝の山。助っ人に入った最初の1週間は、こまめにマネージャーと全体感をすりあわせつつ、とにかくMustの問いにだけはさっさと大筋をつけてしまいました。全体がわかっているから余計なことは一切考えてません。常に全体にとって何が欲しいかを意識してモジュールを進めてますから。大筋をつけてしまったあとは、他のパートを少しサポートしつつマネージャーと話して、あと何があればもっとクライアントにインパクトあるパッケージが作れるかを考えました。

上手くいったものもあれば、監査期間では辿りつけなかったイシューもある。でも全体に必要な最低限のものは仕上がってるから、何の心配もいらない。報告会で「こういうイシューも本来は解明する必要がある」ってプレゼンすることで、その後の仕事のバジェットが大きくなる可能性すらあるわけよ(笑)

繰り返します。僕はこの間にコンサルとしてのスキルが向上したわけじゃない。頭が急に良くなったわけじゃない。考えられる頭の容量や質はいっしょ。ただ、「何を考えるか」が決定的に変わっていたいただけ。僕は、このコンサルロールをやることで、逆にマネージャーとして求められるスキルを理解した気がします。

ありていな言葉でいえばディレクションセッティングなんだけど「どういう背景で何が欲しいのか」を時間をかけてコンサルが理解するまできっちり話をする価値はすごく大きいってことです。何を捨ててるのか、まで伝えられたら一番いいんだけど、コンサルを混乱させてしまうことの方が多かったかな。こっちは結局マネージャー時代を通じてあまりうまくいきませんでした。

とはいえ、僕は明らかにコンサル時代よりマネージャー時代のほうが、ハイパフォーマーになれましたね。僕をQCLに恐る恐るしたBCGは正解だったんじゃないかな(笑)

どうでした?とっておきの話。当たり前すぎたかなあ。。でもね、ほんとやってみて初めてわかるってとこあるよ。もしみなさんがコンサルになられてある程度経験を積んできたら、是非一度、全体を考えるってのをプロマネとじっくりやられることをお勧めします。時間の無駄におもえちゃうのが下の立場の悲しいとこなんだけど、そこは勇気をもって、だまされたと思ってお試しあれ。

うまくいかなかったからって怒らないでくださいね。 僕だって仮説ですから、未だに。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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