金光隆志のコンサル転職Q&A

[第14回] 30歳官僚です。戦略コンサルへの転職を考えています...

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【質問】 
30歳官僚です。戦略コンサルへの転職を考えています。 何かアドバイス下さい

みなさん、こんにちは。相変わらず寒いですね。お体気をつけて頑張ってく ださい。


さて、ご質問についてですが、官僚から戦略コンサルへの転職というのは昔から決して珍しくありません。というか、志願してこられる方は結構な人数いらっしゃいます。基本的にはとても向いていると思います。ですが、いくつかの点には十分ご注意ください。

先ず申し上げておきたいのは、戦略コンサルは完全に民業でありビジネスだということです(笑)。いや、笑ってる場合ではなくて大真面目にそうなんです。世直しするのが役目じゃなくて、クライアント固有の課題やニーズにお答えするのがコンサルです。

「今の時代はマクロな枠組みや制度によって規定できることは以外に少ない。個別企業レベルのビジネスの集積が経済であり、そこに直接関与することで経済がよく出来るのではと考えた」みたいな志望動機をおっしゃる方が思いのほか多い。信じられないかもしれないけど本当です。

こういう発想の方を採用することは少ないし、採用されても結構苦戦なさいます。極論しますと経済がどうかなんて個別企業にとっては外部要因であって、経済がよかろうが悪かろうが自社は生き残り成長し儲けよう、というのが企業のインセンティブです。

上述のような目線の方は、クライアント企業の収益という次元になかなか密着できない。ものごとを抽象的に捕らえすぎる傾向があります。ビジネスを完全に計算可能なものと捕らえる傾向があります。いや、計算可能であるべきだと考える傾向がある、といったほうが適切でしょうか。森羅万象を説明できる方程式を追い求めてしまう、そんな感じです。

ビジネスは解らないことだらけの中で判断していくものです。完全解なんてありえません。近似解で我慢してください。もちろん近似解を出すためにモデル化思考力は必須です。でも、「近似解」を出すためのモデル化です。個別具体 的な現象をある程度説明できるモデル化思考です。多くの要因を所与として、解析したい部分だけにフォーカスしたモデル化です。解析したい部分とは、収益性や競争優位性に決定的に影響を及ぼしている具体的な現象です。

ここでいう現象とはサプライサイドでいえば実際のビジネスのやり方やその競争企業間の差異。デマンドサイドでいえば顧客の意思決定の仕方や基準やその優先順位。それらを、結果としての収益性やシェアの関数として説明できるように可能な限りシンプルなモデルを考えること。乱暴なくらいシンプルなモデルで考えるのがコツです。精緻化はそのあと。シンプルなモデルである程度説明できていることが判明してから精緻化していけばいいのです。

絶対ダメなのはその真逆の発想。世の中なんでもそうですけどビジネスは特に、何もかもを変数と考えてしまうと何もかもわからなくなります。そんでわけわからなくなって、誰もが言っているような言わずもがななステレオタイプなことを最後にシンプルに言ってしまいます。

ああ。話しが随分抽象的になってしまいました。官僚の方のこと言えませんね、私も(笑)。具体例で話さないと伝わりにくいとは思うし経験しないとわからないことだとは思いますが、一応アタマの片隅にでも置いておいてください。

さて、次に申し上げたいこと。それは、戦略とは捨てることだ、ということです。さっきの話を切り口を変えて申し上げてる感じですが、少し違うことを申し上げています。官僚の方に限らないのですが、官僚出身の方は特に、捨てるのが下手です。あれもこれも、少しでも可能性を感じると残したがる。8割ダメなものをダメと断じれない。

行政とは本質的にはどこまで福祉的配慮を行うかの枠組みですから当然といえば当然ですよね。でも個別企業が戦略的成功を収めるには色々な意味での絞り込みが不可欠です。その企業にとって絶対に負けない市場の選択とそこへの十分な資源配分。その企業にとって絶対に遂行可能なやり方や方法論への徹底した熟練。あらゆる組織は時間とともに自然とエントロピーを増大させていきます。それは当然でありそこに新たな成長の可能性も存在します。

でも停滞の可能性も存在するのです。そして、クライアントは程度の差はありますが上手くいってないからコンサルティングを依頼してこられます。エネルギーを無駄に分散させており、それが制御不能になっているからこそ上手くいかないのです。先ずもって無駄な枝をカットし、エネルギーの流れを力強くてよどみがないものに整える必要があります。制御可能な範囲を増大させる必要があります。思い切った絞り込みや切捨てをしないと、エントロピー増大の力にあがらえません。大企業においてはその力はものすごいです。だからこそ多くの大企業が停滞してしまうのです。本来の意味での戦略が求められる所以です。

さてさて。注意点ばかりじゃ否定的に聞こえてしまうかもしれないので、官僚出身の方のアドバンテージについても話しておきましょう。

これまでと相反することを申すようですが、官僚の方のマクロな目線というのは本来戦略思考に不可欠なものなのです。マクロな目線といってわかりにくければ、構造的に考える視点とでも申しましょうか。益々わかりにくいか...(笑)

例えば、当該事業自体の魅力度や事業特性を判断するには個別企業だけを見ていてはダメで、産業全体のバリューチェーンや業界内競争構造を捉えることが不可欠です。また、戦略判断の時間軸は、たとえ環境の変化が加速している現代においても3年程度は必要ですし、マクロには5年先を見据えておかねばなりません。

5年先なんてこのデジタル化時代には所詮不確実さ、なんて訳知り顔で言ってるとろくな戦略たてられません。官僚出身の方はもともとこのくらいでかく考えることをずっとやってきているので、ビジネスにおいてもマクロな発想にはすっと入ってこられます。

一方、企業でやってこられた方はどうしても近視眼的になりがちです。コンサルになるのは大抵20代か30代でしょうから、企業内においてそんなマクロ思考や判断を求められるポジションは経験していません。

マクロ思考といえども分析的に考える力が基本ですが、どうも見ていますとマクロ思考にはマクロ思考の独特な分析センスが必要なようです。とりわけ長い時間軸で考えるということにはその傾向があります。センスがないとチープでこれまたステレオタイプの発想しか出てこない。ちなみに、どんな分野においてもマクロ発想にセンスがある人というのは世の中で極めて少数派です。だからこそ、とても貴重な能力なのです。

もう一つ、官僚出身の方のアドバンテージといえるのは、組織調整能力に長けている人が多いと思います。技術系官僚の方の場合は逆なんですけど。企業といえど、ポリティクスへの配慮は不可欠で、これに鈍感だといくらいいこと言っても全く相手にされません。官僚は政治家や民間団体に徹底的に配慮しないと仕事にならないでしょうから、きっとあらゆる状況においてポリティクスを考えるのは条件反射に近いのではないでしょうか。

企業内ポリティクスにも驚くくらい敏感な人が結構います。敏感なのはとてもよいことです。それをわかった上で、べき論をどう通すかを考えるのはコンサルタントの重要な能力の一つです。官僚出身の方に陥ってほしくないのは、配慮しすぎる失敗です。捨てられない思考性癖にも一脈通じていますが、この論点固有の課題としては、本来言うべきことはわかっているのに、言うのを躊躇ったりトーンを落としすぎたりすることです。言いたいポイントがぼやけてしまうと元も子もありません。言うべきとを通すために配慮するのだ、というスタンスでやっていただけると官僚出身であることの強みがすごく活かせるのではないかと思います。

以上、官僚からコンサル志望のかた向けにつらつらと書かせていただきましたけれど、コンサルを志望される方には全員覚えておいてほしいなと思います。 では今日はこのへんで。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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