金光隆志のコンサル転職Q&A

[第16回] コンサル業界はプチバブルなのか

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【質問】 
コンサル業界はプチバブルなのか

皆さんこんにちは。桜がキレイに咲き誇ってますね。不思議と心がはずみ、何かいいことが起きるような、新しいことを始めたくなるような。そんな気持ちにさせてくれます。


さて、コンサルティング業界はプチバブルなのかというご質問ですが。うーむ。。私見で言わせて頂きますと。違うと思いますよ。今のところは。。

この質問にきちんとお答えするには、バブルとは何ぞやということを定義しておかねばなりませんね。バブルって何でしょう。わかったようでよくわからない。正式な定義などあるのかしら。ま、話を進めるためにここで私なりの定義をしておきましょう。

先ずは本来の意味でのバブル経済について。バブルというからにはとても景気がいいわけです。でも景気がいいだけだとバブルとはいわない。泡のごとくはじけて消えるリスクがあるわけですよね。何でか。経済においては、将来の成長だの価格上昇だのをアテにして(期待して)信用取引を行います。資本主義における経済成長は信用拡大によって成り立っていると言っても過言ではない。

ですが、この仕組みには、いつしか皆が確たる根拠もなく将来期待を共有し、その結果実態の伴わない需要膨張が起こるリスクが内在しています。これがバブル景気の本質だと思われます。皆が信じている間は信用拡大(需要拡大)が続きますが、いつしか誰かが「これやばいのと違う?」と思いはじめ、需要が縮退し、それによって実際に成長や価格上昇が止まると、皆が信用不安に陥り、不安が不安をよぶ連鎖がはじまり、市場が一気に崩れる。この現象がバブル崩壊。だと思います。

80年代後半の日本のバブル経済は日本経済の将来成長を過剰に期待した資金需要に対し、日銀がマネーサプライをこれまた過剰に供給することで、実需のない金が金融に出回り、余った金が実態経済と関係ない土地や株に向かうことで、それらの価格が上昇し、その価格上昇が市場において益々根拠のない将来成長や価格上昇期待を生むことで巻き起こったものでした。ちなみに、このとき「これやばいのと違う?」と言い出したのは他ならぬ日銀さんでしたね。マネーサプライを引き締めるなんて言ったものだから需要が縮退するのは当たり前で、その上実際に引き締めたから金は減って、需要は益々縮退し、そして信用不安が広がり市場は崩壊し。。。という笑うに笑えない政策ミスでありました。

ながながと語りましたが、要は実態の伴わない需要膨張がバブル景気ということでしょう。バブルという現象の本質についての理解が進んだところで、本題のご質問に移りましょう。コンサル業界はプチバブルなのか。私は多分違うとお答えしました。なんでか。今の需要は、「まだ」実態が伴っていると思うからです。

かつて、コンサル業界がバブったことはありました。比較的最近(といっても随分前ですが)で言えば、「リエンジニアリング」が流行ったころです。リエンジニアリングとは、ビジネスオペレーションを根本から見直しゼロベースでプロセスを再構築することで劇的に経営効率が向上する、という手法です。この手法自体には罪はありません。リエンジニアリングという手法の大元は、実はボストンコンサルティンググループが80年代の半ばに提唱した、タイムベース競争というコンセプトです。

このコンセプトは当時の日本企業(特に、自動車業界やエレクトロニクス業界)の世界における圧倒的強さをBCGが独自に研究し、解明したメカニズムをもとに構築した経営戦略コンセプトで、極めて実証的なコンセプトであります。また話が長くなってしまうのでものすごく乱暴にエッセンスだけ言っておきますと、ビジネススピードを上げることによってあらゆる経営効率が劇的に向上する、というコンセプト。

例えば生産速度があがると生産資本回転率が上昇します。よって生産コストは下がります。抱えなければならない在庫は減り在庫コストは下がります。開発スピードがあがると予測すべき需要が期近になります。需要予測が正確になります。また他社より迅速に需要を満たしますので、販売機会を逃すリスクが減ります。などなど。。。

で、BCGは、日本はこれを結構ガンバリズムでこなしているけどビジネススピードをあげる手段としてビジネスプロセス改革が有効だと宣言しました。天才です。でも天才はビジネスがへたくそ(笑)。手法だけをとりあげて売り出した競合が「リエンジニアリング革命」というとてもキャッチーなネーミングの本を出し、世界中で売れまくりました。リエンジニアリングという手法だけが世間に根付き、本質のタイムベース競争というコンセプトは学者の間では賞賛されましたが一般にはさして知れ渡りませんでした。余談ですが、タイムベース競争の論文はHBR(ハーバードビジネスレビュー)という学術雑誌において、栄えあるマッキンゼー賞を受賞しています。これもかなり笑えます。

横道にそれすぎました。で、このリエンジニアリングですが、世界中の企業がこぞって自社にも導入しようとしました。確かリエンジニアリング革命という本には産業革命以来の革命だ、とか書いてありましたから(爆)皆がこぞって導入しようとしたのもうなずけます。そして、リエンジニアリングは手法化されていましたから、本家本元以外のコンサルティング会社でも形の上では真似ることができました。実際皆こぞって「うちもリエンジニアリングできます」と言っていた。BCGでさえ、最初はタイムベース競争戦略で売ろうとしてましたが、結局リエンジニアリングという手法名で売るようになったのです。

ところがこのリエンジニアリング。実際に導入するには大変な労力と痛みが伴います。でも企業側は、お手軽にこの手法さえ導入すれば自社も劇的な経営改革が行えると勘違いしてました。だから、労力や痛みの伴うプロセス改革の提言を行うと途端にアレルギー反応を示し、当たり障りのないプロセス変更だけを実施しようとする企業があとを絶えませんでした。

コンサルティング会社側にも問題がありました。詳細なフローチャートを書ければリエンジニアリングのコンサルティングが出来ると勘違いしていた会社が殆どで、特にシステム系のコンサルティング会社などは、システムを売り込むためのフローチャートじゃないのかと思えるほど、戦略的インプリケーションのない、つまりプロセス改革へのインサイトがないようなフローチャートを量産しておりました。

ちまたには、実態の伴わないリエンジニアリングの導入があふれました。どこのコンサルティング会社も好景気で人手が足りず、どんどん新人を採用していました。ところが高いコンサルティング料を払って導入してみたものの、ちっとも効果が現れない企業が続出。コンサルティング会社は批判され、リエンジニアリングはもとより、コンサルティングそのものへの需要が一時期縮退。コンサル会社側では人手が余り出しました。しかも急場で採用してきた新人達はリエンジプロジェクトしか経験しておらず、他のコンサルが出来ない人が殆ど。レイオフが進みました。リエンジバブルはこうして崩壊しました。

ひるがえって、今の状況を見てみますと。確かにどこのコンサルティング会社もひっぱりだこのようです。人手不足でどんどん新規採用を続けているようですね。一見バブル期にも似ています。それ以上の需要の盛り上がりかもしれません。でも今のところバブルじゃないと思います。なぜならバブルのような「実態の伴わない信用買い」はまだ起こってなさそうだからです。私も現場を離れて久しいので確たることは申せませんが、コンサルティングビジネスが新しいステージに入ったのではないかと理解しています。

今巷でPPMやリエンジのような流行コンセプトや手法が存在するわけではない。大前研一さんのようなスターコンサルが再び現れたわけではない。ITバブルのときのWebコンサル達のような実力のない新興勢力がのしてきているわけでもない。

コンサルティング会社を使う企業が増えてきているのも確かですが、それ以上にリピート需要の数と規模の両方が大きくなっていることが、今のコンサルビジネスの成長の要因だと思われます。リピートということは、少なくともそれ以前のコンサルティングに満足しているからリピートするわけです。「実態の伴った信用買い」だと思われます。

ではなぜコンサルティング結果に満足しているのか。昔に比べて何かが大きく変わったのか。ここからは完全に私見ですが、コンサルティングの質が変わりつつあると理解しています。一つにはコンサルのアウトソーシングビジネス化。経営スタッフレベルで、企画は外部にやらせたほうが効率的という考えが定着しつつあります。とりわけ新規事業に近いものの企画の場合、自分達がよくわかっていない市場について素人考えで企画するより色んな会社や事業をみている外部に任せたほうがよい、という判断です。

もう一つの大きな流れは効果の見え易い現場改革系のコンサルティングの質の向上。この流れの大元は先述のリエンジニアリングです。リエンジニアリングという流行自体はあだ花に終わりましたが、リエンジニアリング以降、オペレーション改革のコンサルティングは一つのカテゴリーとなり、各コンサルティング会社が経験と実績を長年かけて積み重ねていく中で、即効性・実効性の高いノウハウを構築しています。ファームとしてノウハウを築けば現場改革系のコンサルティングは戦略コンサルティングに比べるとコンサルタントにとってもやり易い。極論すれば多少気がきけば誰でもある程度出来るようになります。効果も出しやすい。

しかもファーム側にとっておいしいことに、現場改革系のプロジェクトは総じて規模が大きい。戦略だとせいぜい数人で出来てしまいますが、現場改革は大きければ十名以上の動員が必要になります。当然コンサルフィーは高くなりますが、効果をある程度数字で示せますので、クライアント側は効果に比べて高いとは思わない。おそらく今この現場改革系のプロジェクトが市場における一つの主流となりつつあり、プロジェクト規模が以前より平均的に大きくなり、それが一番の要因でコンサルティングファーム側も人手不足になっているのではないかと思われます。

さてさて、ではこの好景気はいつまで続くのでしょうか。成長は徐々に鈍化していくでしょうが、実態の伴った市場拡大であり、コンサルティングビジネスが内容的にも新しいステージに入ったわけですから、急激に需要が縮退することは考えられません。

唯一ありえるリスクは急拡大によるコンサルタントの質の低下。パートナークラスの量産による質的低下が最も懸念されます。パートナーは本来一朝一夕につくれるものじゃありませんが、需要が増えるとプロジェクトをこなさなければなりませんから「ちょっとまだかな」という人でもパートナーにしてしまいがちです。それでも下がしっかりしていればプロジェクトはなんとか回ります(笑)。これからコンサルタントになられる皆さん方自身の成長にかかっているとも言えるわけです。

では、おあとがよろしいようで。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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