金光隆志のコンサル転職Q&A

[第17回] ITコンサルと戦略コンサルでは 頭の使い方が全く違うというのですが...

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【質問】 
私の先輩が昨年戦略ファーム(金光さんのいらっしゃった会社)へ転職しました。先輩曰く「ITコンサルと戦略コンサルでは頭の使い方が全く違う、無から有を生み出す、考えて考えて考え抜かなけりゃいけない」などと言うのですがよくわかりません。私も戦略への転進を考えています。どこがどう違って大変なのかお教えいただけますか。(ITコンサルタント4年目のAさんより)

皆さんこんにちは。GWはいかがでしたか?

この原稿を書いている時点では未来形ですが、おそらく私はごくふつうの日常をすごしておわっていることと推察します(涙)。

さて、ITコンサルと戦略コンサルのアタマの使い方の違い、ですが。扱うテーマや内容が違うのでアタマの使い方が異なるのは当然といえば当然と思いがちだけど、きちんと違いを説明するのは案外難しい。それどころか抽象的に考えてみると結構共通点があったりします。それでも私自身、ITコンサル出身の新人と一緒に働いたりコーチングした経験から言ってジュニアのうちはやはりかなり頭の使い方が違うのだろうとは思います。

抽象的な比較は後回しにして先ずは具体的に考察していきましょう。

例えばある消費財メーカーから、「わが社は営業における情報管理や活用が弱い。ITを活用して営業パフォーマンスを向上させられるのではないか」と考えたクライアントがいるとしましょう。こんなアバウトな問題設定は現実にはありえませんが(笑)まあ説明のためのケーススタディということでご勘弁下さい。

このように経営者から相談を受けた場合、ITコンサルは最初にどう考え始めますか?何から着手しますか?

おそらく、このクライアントの営業における情報システム活用の現状を理解すべく、営業部門とIT部門に、現在の営業業務の流れ、システム構成、現場での利用実態などをヒアリングするのではないでしょうか。そして顧客情報、製品情報、売上等実績情報のDBのどこが弱いのか、受発注管理等の業務プロセスにけるシステム化のどこが遅れているのか、などを解明するのではないでしょうか。僕がITコンサルならそうします。

そして仮に僕がベテランのITコンサルなら、その業界の標準やITの進化に照らし合わせてたちどころに大まかな課題設定とシステム改革の方向性が見えるのだろうと思います。これはある種の仮説思考。ここまでくれば、顧客側の予算との兼ね合いで、実際どこまでどのようなシステム改革を行うかの大まかな提案をし、システム提案に基づいて具体的な要件定義の作業に入って、最終的にはシステム構築・プログラミングに落とし込む、という一連のITプロジェクトマネジメントに入っていけるのでしょう。プロジェクト全体における作業量で 言えば前工程の改革方向性の策定よりも要件定義以降の後工程の方が圧倒的に多いはずです。

一方戦略コンサルの場合。そもそも営業における情報活用が優先課題なのか、という次元で経営者に議論をふっかけるのが常套手段だったりしますが、そんな答えではインチキですよね(爆)。最終的にはIT活用に解決策を落とし込む前提でプロジェクトを進める場合を想定しましょう。それでも戦略コンサルの場合、ITコンサルと全く違うところから考え始め、分析を着手するはずです。

すなわち、戦略コンサルの場合には、システム課題に先立って、営業パフォーマンスにおいて何が最大の戦略課題なのかを先ず解明しようとするでしょう。戦略課題といってわかりにくければ、改善機会と考えても結構です。その為に先ず様々な営業パフォーマンス分析を行います。時系列分析、バラツキ分析、相関分析など各種分析です。この時点でITコンサルと戦略コンサルではやることも考えることも全く違うともいえます。

とはいえ、ベテランであればある程度答えの方向性の察しはついています。ある種の仮説思考。メーカーの場合、製品別売上高や営業マン別売上高の分析などは大抵すぐできます。が、末端小売りにおけるセルスルーの実績はリアルタイムには殆ど体系的に把握できていません。その結果様々な機会損失を起こしています。ここに宝の山があります。

例えば、調べてみると小売り間での自社インストアシェアに大きな落差があったりします。さらに調べてみると自社がシェアの高い顧客は当該製品カテゴリーでの末端小売り価格が比較的定番価格で安定しているのに対し、シェアが低い顧客では当該カテゴリー商品は特売のようなチラシの目玉商品になることが多く、自社製品がそこに十分食い込めていないため他社にシェアを食われていたり。

さらに分析を進めると、末端小売価格の競合相対ポジションと相対シェアの間に相関があったり。そしてシュミレーションしてみると、小売り顧客ごとの商談における価格条件設定を小売りの実態にそくして適切に行うことで、売上も粗利益も現状より大幅に改善できることがわかったり。ちなみに多くの場合は売上よりも粗利益改善に大幅な改善機会が存在します。粗利益倍増のチャンスなんてざらにありますから。

こういうことを調べて分析していく過程では様々な散在データを力技でカキ集めることになります。インストアシェアを体系的には把握できていなくても過去にワンショットでデータをとっていたり、すべての小売りではなくとも部分的には時系列でデータをとっていたり。あるいはそのものずばりじゃなくても、例えば卸からの出荷データで擬似的に把握できたり。100%じゃなくて70%の精度で構わない。それによって改善機会を特定し証明することが大事。証明できれば、何のデータをどう活用することが重要で、じゃあそのデータを体系的に集めるには、精度を上げるためには、どのようにデータを収集し管理することが必要かがわかります。

そしてそのデータを活用してどのように営業プロセスマネジメントを行えばよいのかのマネジメント改革への示唆まで得られます。そしてこの後にシステム改革の方向性が見えてきます。戦略コンサルの仕事はここまで。具体的なシステム提案まではしないし出来ません。よって、戦略コンサルが先に入ってアドバイスしている場合にはここまでの答えをベースにクライアントがITコンサルかシステム会社に発注して、先ほどのITコンサルのプロセスに入ることになります。

乱暴ではありますがこのように具体的にコンサルが考える中身を見てみると、ITコンサルと戦略コンサルが随分違いそうだという感覚はつかめるのではないでしょうか。ですが、経験を生かしてある種の仮説思考を行うことで解決策立案までの時間を大幅に短縮する。そこにプロフェッショナリティが存在し、初期のヒアリングや簡単な分析でもってシニアが仮説を考えるまでの前工程は短くて、そのあとジュニアが汗をカキカキ大変な量の仕事をこなす(笑)。そういう抽象的な意味においては冒頭で申し上げたとおり、ITコンサルも戦略コンサルも仕事の流れやアタマの使い方はかなり似ているとも言えます。

実際、戦略コンサルの場合でも同じ業界で同種のテーマで結構なコンサルティング経験があるようなプロジェクトの場合、無から有を生み出すどころか最初から答えが見えちゃってることも少なくありません。ITコンサルにせよ戦略コンサルにせよ経験豊富なシニアならかなり広範なテーマでプロジェクト初期に精度の高い仮説を持ててしまうものなのです。でも、ジュニアの視点からみると、「広範」の程度が全然違います。プロジェクト一つ一つが全然違うものに見えてしまってもおかしくない。実際にも戦略コンサルが扱うテーマは千差万別。ベテランになれば実際に全く違っていても他の経験からのアナロジーが結構できたり、少なくとも何を考えるべきかの筋は大体見えるようになります。

戦略コンサルではこの域に達するまでが大変で、従ってジュニアのうちは「無から有を生み出す」という感覚を持つのだと思います。もっと言えば、創造的な戦略コンサルタントであれば毎回新しい発見や進化を求めて具体的な細部の違いに注目します。あそびというか曖昧さというか、答えを決め付けないマインドを持っています。細部の違いにこそ真に革新的な戦略インサイトが潜んでいるのを知っているからです。戦略コンサルにおいても同種の答えが量産されるようになっている中、個人的には皆さんには創造的な戦略コンサルになることを目指してほしいなと思っています。

さて最後に。Aさんはラッキーな方です。なぜならITコンサルを先に経験しているからです。その逆、即ち戦略コンサルからITコンサルへの転職は現実には相当難しい。ITコンサルをやることで、業務、会計、システムといった企業の基本インフラを既にある程度学んでおられることと思います。これは戦略コンサルを行ううえでも大きなアドバンテージです。業務や会計がわかっていれば、現場にスムーズに入っていけるはずです。具体的で現場感のある分析が出来るようになるはずです。細部の違いに気づけるはずです。

また、これからの時代ITのわかる戦略コンサルは貴重です。IT技術やネットワーク社会の進化は益々加速しています。複雑系の科学の経営への応用も近い将来はじまるでしょう。一方で戦略マネジメントにおける情報テクノロジーの活用はまだまだこれから。自信を持って転職してもらえたらと思います。

では今日はこのへんで。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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