金光隆志のコンサル転職Q&A

[第19回] ...コンサル時代にどうやって仮説思考を身に付けたか?...

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【質問】 
BCGの内田さんの「仮説思考」を読んで大変参考になりました。金光さんはコンサル時代に仮説思考のスキルをどのように身につけられたか、どのように進化させられたかお教え頂けますか。(27歳女性から)

みなさんこんにちは。だいぶ暑くなってまいりましたね。僕は毎年なぜか夏に調子がいい。あんまり好きな季節ではないはずなのだけれど(苦笑)。きっと回りがみんな活動的で開放的になっていろんなことが起こるから僕にもその波が伝播するのだろうと自己分析しています。まあそんな説明的自己分析はさておき、今年もよい夏になることを願って。皆さんもお体に気をつけて、頑張って下さい。


さて、仮説思考。内田和成さんの「仮説思考」(東洋経済新報社)を読まれたということですが、僕も出版早々に拝読致しました。本当に素晴らしい内容で、あらゆるビジネスパーソンにお勧めしたい。ビジネスにおける仮説思考をここまで実践的かつ具体的に、しかも一般論ではなく固有の切り口で伝授してくれる本はいままで存在しなかったと思います。この手の思考法ものの本は読み飽きた(笑)という方にも是非一度読んで欲しいです。

さてさて。こんな素晴らしい本が世に登場したあとに、私が仮説思考について更に一体何を申せましょうか。これは遠慮やお世辞などで申しているのではありません。BCGさんからリベートもらっているわけでもありません(笑)。

第三者的な立場で申します。仮説思考を身につけていくにあたって、現在のところ内田さんの「仮説思考」ほど確かな指南書は他に存在しません。先ずはこの本に書かれた内容をしっかり理解し、日々のビジネスの中で実践していって欲しいと思います。それがビジネスにおける仮説思考習得への最短の道です。

ということで、仮説思考法をいかに身につけるべきかについてはこの本で言われていることをしっかり実践しマスターしてください、というのが僕のメッセージです。ここから先は、ご質問の通り、私自身がどう身につけたか、あるいはどう身につけたかというより、どんな仮説思考がなぜ身についたか、を少し話しさせて頂こうと思います。

人は誰しも思考性癖を持っています。例えば抽象的な概念を操作するのが得意(好き)か具体的なアイデアを考えるのが得意か。この思考性癖は、なかなか変えることは難しい。どちらも決定的な弱点にならないレベルには修練・補強が必要ですが、得意不得意が逆転することは殆どないと思います。で、私は明らかに前者を得意とするタイプ。

仮説思考力についてもしかり。私自身のビジネスにおける仮説思考の源泉は、若いころから積み上げていったコンセプト思考力やその引き出しの数だと思います。それらが根っこにあって、長年実際のプロジェクトやビジネスを通じて経験的に学習していった具体的なことがうまくかみ合うようになって、自分の仮説思考力は花開いた。そんな風に認識しています。どういうことか。

僕はBCGで若手の頃から、コンセプトを勉強するのが大好きでした。BCGでは「展望」(英名:Perspectives)というビジネスコンセプトについてのエッセイが不定期に発行され、マーケティング資料として世界中の顧客や潜在顧客へ無料で送付されていました。「展望」は小さな冊子で、しかもほんの数ページほどのものなのですが、これがほんとにすごい。特に、ブルースヘンダーソンというBCGの創設者が書いていた初期の頃の展望は、その時代時代における最先端の具体的ビジネス課題に対する深い洞察に満ちていて、刺激的でした。

創刊は1960年代後半でしたが、私はBCG入社早々に、その「展望」の創刊から直近のものまで全部をBCGから持って帰り、何度も何度も繰り返し読んでいました。暗記するためじゃないですよ(爆)。ビジネスを原理的に考えるとはどういうことか、具体的な事象からいかにして斬新かつ汎用性のあるビジネスコンセプトが導き出されるのか。それらを学びつつ、願わくば「展望」の著者の思考プロセスを追体験すること。これが目的でした。

週末読むだけではとても満足できないけれど、若い頃は夜の2時3時までプロジェクトのために時間を費やすのがザラでしたので、平日読めるのはその後。それでも読んだ。ビジネス思考の本質を究めたいという蒼々しいまで(笑)の向上心と「展望」の圧倒的な面白さ。その相乗効果で、本当に何度も徹夜してしまい、朝寝坊までしでかす始末。オフィサーから「おまえこのままではダメだ」と言われても、読むのはやめられなかった(苦笑)。

知識として読むだけなら全部読んだとしても数日で読み終えられる程度のボリュームです。思考性癖が具体的アイデアを好むタイプの人なら、ここで「展
望」を読むのは終えて、日々の具体的ビジネスの中で応用できる場合にコンセプトをあてはめて使う・考える、という実践的な方向へと進むのだと思います。

でも私の場合は、「展望」の中のビジネス思考そのもを深く掘り下げて解明し理解すること、発想の源まで探っていくことを目的にしていましたので、熟読です。何度も、何年も読み返し、最終的には自分なりに論を発展させたり、著者の思考の甘い部分を批判的にチェックしたり、さらにはBCGの戦略コンセプト発展の歴史を自分なりに体系化したりもしてみました。

学者じゃあるまいし、こんなことして何の役に立つのか。ほんとその通りかもしれない(笑)。でも私にとっては日々役に立つかどうか、は重要ではなかった。なんていうと当時のオフィサーの方々から大目玉くらいそうですけど。もっと長期的な展望・野心があったのです。戦略論における天下のBCGに入った以上は、自分もいつか戦略コンセプトを生み出すくらいのことはやりたい。ブルースヘンダーソンの魂を受け継いでいきたい。そんな青くさいビジョンを持っていたのです。小泉チルドレンならぬBCGチルドレンでした(爆)。

さて、それで。こんなことしていた私は結局どうなったのか。もともとの思考性癖に加えて、いつしか骨身の芯まで、ビジネスの本質を考えるという性癖がついていました。もう少し具体的に言いますと、起こっている現象の背後にあるメカニズムや構造、諸々の要因のダイナミックな相関関係を理解する。分析的な視点と同時に関係論的な視点から、ものごとの全体をシステムとして理解する。顧客の常識からはじまりつつ常にその常識を疑う。出来るだけシンプルかつ斬新な切り口で方向性に関するコンセプトを提示する。などなどです。

もちろん若い頃はなかなかうまくいきませんでした。経験も浅いのに抽象化して思考をしていると、往々にして的外れになりがちと思われます。ですが実は原理的に考えている以上は決定的に的外れというのは以外に少なく、抽象化が過ぎる、という問題を起こしがちなのです。抽象化が過ぎるとだんだん一般論に近づいていってしまいます。これが俗に言う「下手な考え休むに似たり」です(笑)。

ですが、プロジェクトの経験を積む中でだんだん抽象と具体のバランスがとれるようになっていきます。さらには、知識としてではなく知恵として身につけてきたBCGのコンセプトや戦略アイデアが、縦横無尽に引き出せる引き出しとなって、具体的ビジネスの状況を理解するのに役立つようになっていました。
ぴったりそのままでなくとも発想の源になってくれたり、ほんの少し切り口をかえることで当該状況にフィットしたり。

たとえて言えばBCGの大小さまざまなコンセプトは私にとって切れ味のよい信頼すべき包丁となっていたのです。私は包丁それぞれの特徴を非常にデリケートなところまで理解し、基本的な使い方のみならず常識に囚われない独創的な使い方までできるレベルに使い方を身につけ、数多くのプロジェクトという素材を料理する経験を積むことで、どんな素材ならどんな道具でどう料理できるのかが、瞬時に判断できるようになっていったのだと思います。

もっと言えば、私にとって仮説とは常に、個々の要因と同時に全体システム的な構造までであり、その構造的な見方こそが自分の仮説思考の優位性であり、その構造的な視点の源は、若い頃からのBCGコンセプトの探求であった、といえると思っています。っていうかそう思いたい(笑)。

あまりに個人的な話になりすぎたかもしれませんね。仮説思考を身につけるという目的においては人にこの方法論をお勧めしようという気もあまりありませんし。

仮説思考をどう身につけたか、についてあと少しだけお話させて頂きます。僕が本格的に仮説思考を出来るようになったのは、実はプロジェクトマネージャーになってからのことです。もう少し言うと、仮説思考を方法論として意識的に使うようになったのが、その頃からです。その頃までだってもちろん仮説は考えていましたが、僕は結構決め付けるのが嫌なタイプで、最後の最後まで粘ったり違う可能性を考えたりアイデアを暖めたりするのを好んでいました。

メンバーとしてやっているうちは、自分のパートを自分でハンドルしてればよいので、そんなアプローチでもなんとかなりました。でもマネージャーはそうはいかない。メンバーを適切に導かなければいけない。いやがおうにも早い段階から仮説を提示してやらないとメンバーは路頭にまよってしまう。

マネージャーなりたてのころは、現場に近いメンバーこそがいい仮説をもてるはずだという仮説のもとに、自分の仮説はあえて隠してある程度までメンバーに自主的に考えさせるというジーコ流放任マネジメント(爆)をしていたこともありました。でも、多くの場合それだとメンバーは苦戦する。で、最後にしんどい思いをするのは私(苦笑)。ということで、私も早い段階から仮説を提示してやるというアプローチを取り入れました。

面白いことに、このことによって私自身の仮説思考力も一段レベルアップし、メンバーからも仮説進化がでてくるようになったのです。常に仮説をオープンにし、日常的にそれを進化させていくというアプローチ。経営者から明日報告を求められるとしたら、今の段階でどんな仮説を言うか。それを常に数枚のパワーポイントに纏めるイメージです。仮説を紙におとして書く、というのは重要です。

頭の中ではそれなりのことを考えているつもりで話してみると言えたりすることも、いざ書いてみると案外チープだったり実は曖昧にしか考えてなかったり、人に伝えるのが困難であったり、ということがわかります。その事実を自分につきつけることで、強制的によりしっかりした仮説へと自分を導くことが出来ます。

また、常に仮説を持って進める癖がつけば、仮説検証のフィードバックも早くなり、仮説進化のチャンスが増えると同時にフィードバック経験を通じて仮説の精度がどんどんよくなっていきます。仮説思考力も経験の関数なのだということを私は学びました。

はてさて。
今回はあんまりみなさんの参考にはならなかったかもしれませんね。。とにかく仮説思考習得には内田さんの「仮説思考」を熟読してみてください。いまそれに勝るものはないですので。
では今日はこのへんで。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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