金光隆志のコンサル転職Q&A

[第20回] ...BCGの東京事務所はなぜ強いのですか

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【質問】 
海外にいますと、グローバルのBCGの中で日本の強さが際立っているのがよくわかります。BCGの東京事務所はなぜ強いのですか。(ボストンにMBA留学中の男性より)

みなさん、こんにちは。真夏ですねー。山、川、海、花火、祭り♪

暇があれば行きたいものです・・・・

さて、日本でのBCGの強さの秘密ということですが。確かに。今は天下ですね。僕が在籍していた間にも既に相当強くなっておりましたが、今は大げさに言えば一人勝ちみたいな感もあります。何故かというのは正直よくわかりませんが、現在の強さの秘密を定性的に解明するだけなら簡単なことです。

とはいえ、きちんと理解して頂くために、少し回りくどく見ていきましょうか。先ず、戦略コンサルティングファームの競争優位の源泉・メカニズムは何かを考えてみましょう。例えば。ワールドワイドでのノウハウや方法論、あるいはそれらの共有の仕組みは優位性の源泉か?答えはNoだと思います。

もちろんこれは大事なことだし、各社での差は存在しますが、もしこれが優位性の決め手でありBCGがこの点ですごく優位ということなら、BCGは東京事務所だけじゃなく世界中で圧勝しているはずですからね。でも、きくところによれば、そういう訳ではないようです。

では次に、人材の質(地頭の良さとか)は優位性の源泉か?これも同じく、BCG東京事務所だけが特別優れた人材を獲得しているという仮説には少し無理がありますのでNoでしょう。ではでは日本におけるBCGに存在して、グローバルのBCGには無いものって何なのでしょうか。

ものすごくシンプルに言ってしまいますと、戦略コンサルティングファームの競争優位の源泉・メカニズムとはシニア層の厚さ、より厳密にはシニア層のコンサルティング累積経験年数の総和なのです。単純すぎますか?でも真実。コンサルティングの累積経験年数によって何が違ってくるのか。あたりまえですが、コンサルティング能力が違ってきます。

コンサルタントにとっての大事なスキルの一つに仮説構築力があるというのはご案内の通りですよね。喩えて言えば、沢山の患者さんを診てきた町のお医者さんとインターン上がりたての一流大学卒の若いお医者さん。地頭に関係なく全然診断能力に差がありますよね。コンサルタントも同じこと。仮説構築能力は明らかに経験の関数なのです。経験豊富なシニアが揃っている事務所は、優れた問題解決力を持った事務所だと断言できます。

累積経験年数の意味するところはこれだけではありません。少し鶏と卵ですが、累積経験年数の差は顧客の数あるいはそれ以上に顧客とのリレーションの深さの差となって表れます。どんなビジネスであっても、顧客ベースというのは一朝一夕に出来るものではありません。長年の付き合いの中で熟成され、構築された信頼関係は簡単には壊れません。何もくどくど言わなくても大体わかってもらえるコンサルタントほどお客様にとって便利というか頼りになる存在はありません。長年付き合っていると、ほんと話あまり聞かなくてもちょっと症状みるだけでそのお客さんのどこが悪いのかわかってしまいますから。だからお客さんはあんまり浮気しなくなります(笑)。

信頼関係の輪というのは乗数的に増えていく傾向もあります。所謂紹介・照会。大企業のトップ層ともなればそれこそ幅広い交流関係を持っておられます。色んなところでみなさん繋がっておられます。信頼関係とはそのお客さん同士の輪の中に入れてもらえることをも意味します。更に言えば、直接交流関係がないところでも、「あの会社が長年付き合ってるコンサルタントなら」という目に見えない信用力にも繋がっていくのです。

そうした、累積経験年数の長いシニアが沢山いるファームというのは、恐らくはジュニアの指導においても秀でているでしょうし、ファーム全体で安定した顧客ベースがあれば、ジュニアにとっても経験を積みやすい環境でしょうし。更に抽象的な次元で言えば、ファームとしての様々な意思決定も経験豊富なシニアが大勢いるほうが正しく出来る、という効果もあるでしょう。シニアの累積経験年数総和というのは、コンサルティングファームの競争力の最も信頼できるものさし・バロメータといえます。

さて。その観点から言いますと。BCGの東京事務所には14、5年以上のコンサルティング経験を持つシニアパートナーが何人もいます。10年以上ならごろごろいます。正確な比較は私も知る由もないのですが、おそらくは、BCGのワールドワイドで比較しても東京事務所のシニア層の厚さは一歩抜きん出ているでしょうし、国内で他のコンサルティングファームと比較すると雲泥の差でしょう。

逆に15年選手が一人もいないファームだってあるんじゃないでしょうか。そうしたファームは、いくらワールドワイドでは強くとも、日本で競争力をつけるには相当の時間がかかります。BCG東京に競争力で追いつくためには(シニアをヘッドハンティングで大量に採ってこれない限り)10年以上かかってしまうのです。これ、ものすごい差ですよね。

BCG東京だって、今の競争力を構築するのに、実は20年近い歴史を要しているんです。1980年台に入るまでは、BCG東京はワールドワイドのお荷物だったと聞きます。その頃はそもそもコンサルティングビジネスがまだ日本に根付いていませんでしたが、それでも、競争相手でしっかりクライアントベースを構築しているところは存在しました。

1980年代初頭に、最初の転機が訪れました。その後日本を代表するエクセレントカンパニーへと成長していく企業から、本格的な競争戦略の受注に成功しています。当時のBCG東京は、それこそ事務所の総力を挙げてこのプロジェクトに取り組み、見事クライアントからの信頼を勝ち得たそうです。僕の知る限り、全てはここから始まっている。この仕事を通じて、当時の東京事務所で初めてといっていいほど、本格的な全社戦略立案に取り組んでいます。当時のエース級の人たちがこの仕事で戦略立案のノウハウを実地に身につけたことと想像します。

そしてこの会社から継続的に仕事の発注がくるようになり、徐々に自力をつけていきます。この会社自身もその後飛躍的な成長をとげていき、その成長と共に歩むチャンスを得たBCG東京事務所は、継続的に最先端の戦略課題に取り組むチャンスをもらえたことになります。自力をつけ始めたBCG東京は少しづつ大企業のクライアントベースを広げていくことにも成功しました。この転機となったクライアントが、その後セミナーやその他の様々な機会においてBCGを宣伝してくださったことも大きな追い風でした。

実は1980年代後半にBCG東京は大きな分裂を経験しており、一時的に組織規模が縮小しました。しかし、このクライアントの仕事を経験した主力メンバーが殆どBCGに残りシニアとなっていった為、壊滅的なダメージを受けることなく、1990年代に再び成長を始めたのです。

一方でBCGのワールドワイドも、1980年代の後半から積極的な拡大に打ってでています。それまでのBCGはほんとに個人商店の集まりみたいなブティックファームで、まるで商売ッ気がなかったのですが、新CEOは優秀なコンサルタントであると同時に優秀なリーダーでもありました。1960年代半ばから1980年代半ばまでの20年で16事務所しかなかったBCGを、任期中の10年たらずで倍以上の事務所を世界に持つ、文字どおりグローバルファームへと成長させてみせたのですから大したものです。

グローバリゼーションは、戦略ファーム、とりわけ個々の事務所にとって、優位性の決め手ではありませんが、間違いなく長期生存条件の一つです。東京事務所がグローバル化及びワールドワイドでの成長の恩恵を受けていたのは言うまでもありません。ファイナンシャルな余力やグローバルでのノウハウ蓄積・交換なくして個々の事務所が単独で成長するのは現代のコンサルティング市場においては至難です。ですが、繰り返しますが今の東京事務所の日本における圧倒的強さはこのグローバル化とは別のところに、東京事務所自体のシニア層の厚さ・累積経験年数総和の量に起因しています。

さて。話が横道にそれましたが、要点を纏めておきましょう。BCG東京の強さの秘密。それは一朝一夕に出来たものではありません。諸先輩の努力や素晴らしい顧客との出会いなどの幸運に支えられつつ、長年の間にシニアが育ち、そのシニアがBCGを去ることなく今を支えている。圧倒的なシニアの累積経験量が、スキル、クライアントベース、信用力等様々の点で他のファームから一歩も二歩も先を行く源泉となっている。この何十年もかけて構築された優位性に立脚する今のBCGの強さは、それこそ一朝一夕に揺るぎそうにはありません。

最後に一つ。語っていないことがありますよね。BCGの東京事務所には経験豊富なシニアが沢山いるとして、なんでシニアのみなさんは、この間やめずにBCG東京を支え続けているのか。真の理由は外部にいる以上解りません。解らないけれど、今のシニアはみんな私の直接の先輩や同僚だった人たち。みんな素晴らしい人たちだと断言できます。

人としてお互いが素晴らしいからこそ、いいシニアチームが形成できている。お互いを大事にし合っているからこそ、責任感とコミットメントをもってお互いがBCGという場を大切にしている。私がいた当時からそうでしたし、いまや益々チームとしてお互いの関係を熟成されていると思います。BCG東京ではクライアントだけでなく社内でも素晴らしい信頼関係が構築されているはずです。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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