金光隆志のコンサル転職Q&A

[第21回] 将来プロ経営者になりたいが戦略コンサルのキャリアはどのように役立つ?

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【質問】 
将来プロ経営者になりたいと考えています。戦略コンサルのキャリアはどのように役に立ちますか
(27歳メーカー経営企画の方より)

みなさんこんにちは。なんだか夏もあっという間に過ぎていってしまいました。夏らしいことなーんも出来なかったなあ・・・。毎年のことですけど(苦笑)


さて、プロの経営者に将来なりたい、ということですが、プロの経営者ってなんでしょう。
ご質問にお答えするには、所謂「経営者」と「プロの経営者」の違いを定義しておく必要がありますね。

経営者において最も重要な資質はリーダーシップの発揮です。これは所謂経営者であってもプロの経営者であっても変わりありません。ですが、プロの経営者には、もう一歩踏み込んだリーダーシップが求められます。「変革」のリーダーシップです。もちろんどんな経営者にも変革のリーダーシップは必要ですが、プロは変革の為に雇われるのが通常です。プロの経営者、すなわち変革のプロ、と考えても大きな間違いではありません。

変革のプロは、かなりの確率で変革を成功させる必要があります。じゃなきゃプロとしてはやっていけなくなります。業種は殆どどんな業種でも扱えなくてはならない。もちろん、ある特定業界に強いプロ経営者というのも存在します。例えば医薬・医療業界で何社も経営者として渡り歩いている人。あるいは、ルノーの中で色んな国の子会社を変革してきたカルロスゴーンのような人もいます。小売りなどにもその道のプロが存在しますね。

ビジネスオペレーションやビジネスフォーマットが固定的な業種で、なおかつ産業規模が大きいと、そこでのプロとしてやっていくことが可能です。彼らも高い変革スキルは持っています。おそらくは一つの業界に留まらないスキルです。ですが、それ以上に業界スキルの高さが突出しており、彼らの市場価値としては、特定業界でのほうが高いということだと思います。

話を戻しましょう。プロの経営者とは、変革リーダーシップのプロです。では、変革の為に必要なスキルや資質とはどんなものでしょうか。皆さんわかりますか?

何が一番重要なスキルか。プロの経営者に聞いても人によって答えが違うだろうと思います。当然です。皆それぞれ得意技が違いますから。それでも私は、個々の個性とは別の次元で最重要スキルがあると考えています。一定以上の確率で変革を成功させるには不可欠な力です。それは、的確かつ明確に課題の優先順位を示し、優先順位に従い絶対に解決させる力です。歩むべき方向へと松明を灯し続けるリーダーシップの発揮です。

なーんだ、そんなことか。と思った方。そうなんです(笑)。そんなことが、変革の局面ではとても難しいことなのです。プロの経営者に聞いても、これを最重要スキルに上げる人は少ないかも知れません。彼らにとって、これは意識することではなく、もはや第二の本能になっているからです。逆に言えば、それほど変革において不可欠なことなのです。

変革を必要とする会社では課題は山積です。解決時のインパクトの大小、解決にかかる時間、難易度や成功確率、失敗時のリスクの種類や大きさ、などなど、様々なプロファイルの課題が渾然一体となって存在しています。何が課題か・何から手をつけるべきかについて、皆が違う意見を持っています。あるいは何も意見がない、という最悪のこともあります。

そして何をやるにしても色んな声が社内外から出てきます。そんな状況下で、すばやく重要課題を見定め、秩序立てて解決に打って出なければなりません。相当にクールでクリアな思考力と決断力、社内外にシンプルに説明する力が必要なのです。

第二に重要なスキル。それは、ビジネスアイデアの豊富さ・柔軟さです。これも当たり前に聞こえるかもしれませんが、当たり前というほど簡単なことではありません。ビジネスアイデアとは、商売ネタのことではありません。色んなタイプの課題に対して解決アイデアが思い浮かぶこと、一つの課題に対していくつもの解決策オプションやアプローチが思い浮かぶこと。変革の途上で出くわす様々な困難や予想外の事態にもあわてず迅速に対処できること。それがここで言うビジネスアイデアの豊富さ・柔軟さです。

常識的な打ち手から突拍子もない打ち手まで、色んなアイデアが湧き出てくる人ほど、効果的な打ち手にたどり着きやすい。それ以上に効果的なのは、思考枠・判断枠の大きさを柔軟に取れることです。

あまりいい例ではないですが、例えばかつてのような売れる商品が出なくなった・商品開発力の低下が業績低迷の原因だ、と整理したとして、商品開発力をどう回復させるかを考えるのが普通ですが、商品開発をやめる、という次元で思考をすると全く違う解決のオプションが見えてきたりしますね。

自社はプロデューサーに特化して、全ての機能を調達・オーガナイズする、とか、世界中のローカル商材からライセンシングする、とか。他にも色々。ともあれ変革においては、多かれ少なかれ既存のやり方とは別次元で発想することが求められます。硬直的なビジネス思考ではプロ経営者は務まりません。

プロの経営者とは変革のプロであり、変革において最重要なスキルは、優先課題の見極めと不屈の実行力、及び豊富で柔軟なビジネスアイデアである、という話をしてきました。人的リーダーシップのスタイルは人によって様々であり、そうであるべきです。ですが、知的リーダーシップにおいては、この二つが不可欠なスキルです。そして、変革において決定的に重要なのは、人的よりも知的リーダーシップの方なのです。

余談になりますが、オシムジャパンは楽しみですよね。明確に課題を認識しています。課題解決に向けて独創的な練習法を取り入れています。従来の慣習に囚われないメンバー発表の仕方。クラブチームへの明快な説明と協力依頼。などなど、これまでのところ、変革のプロとして見事に知的リーダーシップを発揮しています。日本のサッカーは本当に変わるんじゃないでしょうか。そう期待させてくれるリーダーの登場だと思います。

さて、ここまで話してくれば、本題に対する私の解説など、もう先を言わずとも賢明なる皆さんには殆ど見えてしまっていることと思います。戦略コンサルファームにおいては、プロの経営者が備えるべき資質のかなりの部分を集中的に訓練されます。通常のビジネスマンにとって、変革に携わるチャンスというのは滅多にありません。もしかすると一生に一度もないかもしれない。

ですが、戦略コンサルにとっては、変革を考えることこそが日常なのです。渾然一体となった課題を紐解き、優先順位を付け、解決策アイデアを提示する、のがお仕事なわけですから(笑)。もちろん戦略コンサルとて本当の意味で変革の全体に責任を負って取り組むわけではない。プロの経営者になるには、実際に経営者となって変革のリーダーとなる経験を積むことが不可欠です。

変革の全体とは化け物です。普通の神経じゃ出来ない、ちょっと人間業じゃないところがあります。ぶっちゃけて申せば、戦略コンサルを10年やったって、そう簡単にはプロ経営者は務まらないと思う。でも10年やれば、知的リーダーシップの素養としては十分です。あとは実践を積み重ねてシビアでリアルな判断力をつけていけばいい。狡猾さを覚えていけばいい。

知的リーダーシップの素養が出来ている、というのはプロの経営者になっていくにあたって、ものすごいアドバンテージです。そして、私の知る限り、知的リーダーシップを鍛えるのに戦略コンサル以上の仕事は存在しません。先ずはシミュレーションで優秀な戦闘力を磨いてから、というキャリアプランは悪くないと思います。逆に、早く経営者の道に進みたいならそれでもいい。例え数年でも密度の濃い戦略コンサル経験を積んでおけば十分意味があります。

そしていざ、魑魅魍魎の跋扈するリアルワールドの戦場へ。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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