金光隆志のコンサル転職Q&A

[第23回] ケースインタビューってどんなものですか?

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【質問】 
29歳ボストンに留学中のMBAです。コンサルティング会社でのサマーインターンを考えています。インターンを獲得するためのケースインタビューってどんなものですか?何か対策はありますか?

みなさんこんにちは。いよいよ今年もあと二ヶ月。あっという間ですね。ラストスパート頑張りましょう。


さてさて。先ずはケースインタビューって何かですが、簡単に言いますとケーススタディを用いて面接官と議論をすることです。ケーススタディとは、典型的には、モデル企業における具体的なビジネスの状況を情報として与え(ケース)、それについて、課題認識、問題点仮説立案、論点・イシュー分析、解決策やオルタナティブの立案、などを行う(スタディ)ことを言います。ビジネススクールへの留学経験がある方などにはおなじみのものですね。

ビジネススクールで用いられるケースの殆どは、教授自らがかなり詳細に題材を取材し、十ページ以上にも及ぶ状況説明と経営数値等の参考データがつけられています。問題は書いてありません。課題設定から自分で行うことになります。正解や教授の公式回答・見解というものもない。教授は色々な観点から生徒に問いを発したり、違う考えの可能性を示唆したりして、学生の思考や発言を促します。相互に議論する中で、様々な視点やものの考え方を知り、ビジネス思考における幅と深さを身につけさせていくことを目的としているようです。

これに対し、コンサルティングファームが面接などで用いるケーススタディでは、大幅に簡略化されたケースを用いて、それについて質問を与え、数分程度考えてもらった上で面接官と議論を行います。議論の時間は15分~30分程度でしょう。ケースといっても様々です。ある程度具体的なビジネスの状況を設定して問題点やイシューを考えてもらうパターンもあれば、一枚のグラフだけを見せて、そこから読み取れることや言えることを考えてもらうパターンもあります。

さて、ではコンサルティングファーム側はこの簡略化されたケーススタディで何を見ているのか。というか、何が見れるのか。端的に言いますと、思考の瞬発力とクセ、及びインタラクティブなコミュニケーション力の3つです。

逆に申しますと、複雑な思考や深い思考の力については殆ど見ることができません。片鱗くらいは垣間見えることもありますが、たかだか数分考えてもらって数十分議論するくらいでは深い思考の出る幕はありません。もっと言えば、あまり深く考えこんでいると思考の幅やスピード感についての悪い印象すら与えかねません(笑)。思考の瞬発力と深い思考力で何が違うのか。もう少し突っ込んで解説しておきましょう。

瞬発力であれ深い思考であれ、思考を構成する要素は基本的にはほぼ同じです。重要なものだけ上げておきます。パターン認識力、分析的思考力、インサイト、及びこれらを効果的に発動させるためのメタ思考力(何を考えるべきかを考える力等)です。これらの構成要素がうまく機能すれば、効果的・効率的に思考することができます。ですが思考の瞬発力と深い思考力とでは、機能のさせ方・必要な資質が異なります。

瞬発力に必要なのは、慣れ、即ち日頃の訓練による脳神経反射です。どこまで向上するかは頭脳のCPUにも多少は拠りますが、IQ130以上あれば問題なくかなりなレベルまで伸ばせるはずです。ビジネス思考という領域にターゲットを絞って鍛えるなら尚更です。

一方、深い思考力については、相当程度、才能がものを言うのではないかと思います。深い思考力によるアウトプットの最大の特長は、独特な論理あるいは極限まで推し進めた論理に基づく鋭いインサイトです。そして鋭いインサイトによる最終的なアウトプットは、新しいパターンの発見です。

この辺のことはご質問には直接関係ありませんのでこれ以上は突っ込まないでおくとして、ケースインタビューでは、この深い思考力については殆ど見ることが出来ない・見られない、という点だけ再確認しておきましょう。

本題に戻ります。ケースインタビューとは何か、何を見られるのか、については一定の理解を頂いたとしまして、ではその対策について。最近はそのテーマでの勉強会や講習会まであるようなので、それらに参加されるのもよいと思います。はっきり言っておきましょう。勉強会や講習会を受けておく効果はかなりあると思われますよ(笑)。

皆さんも受験前には沢山の模擬試験や問題演習を経験されたと思います。それらの効果はどうでした?それと同じことです。本格的に思考力を鍛えることなくそんな付け焼刃に頼るようじゃすぐにメッキが剥がれる、と思いますか?さにあらず。多くの演習・経験を通じて、問題のパターンを知り、それに対する解法のパターンを知る。学習とはそういうものです。とりわけ瞬発力系の思考力を鍛えるには最も効果的な方法論です。

さらに大袈裟に言えば、科学とは、広い意味での情報(素材・質料)の中にパターン(形相)を見出す、ということに他なりません。ちょっと大袈裟過ぎましたが、要は勉強会や講習会に参加することを恥じたり躊躇う必要なんて全くありません、というのが私のメッセージです。目的完遂のためには、先入観に囚われずあらゆる手段や可能性を試す、というのは素晴らしい行動だと思います。

さて、対策として勉強会や講習会をお勧めするのはメタ思考による回答としては優れていると思う(笑)のですが、それだけではいんちき臭いし、ボストンではそんな勉強会など存在しないかもしれませんので、もう少し内容レベルで具体的な指南を行う感じでお答えしておきましょう。

先ず、現象に対する原因を常に考えるようにしてください。インタビューで用いられるケースは単純なものですが、そうは言っても状況設定・課題設定に対し考えられる原因は恐らく一つではありません。むしろ単純なだけに色んな可能性があるはずです。直線的に掘り下げる前に原因仮説の幅だしを行うべきです。3~6つの仮説を立てるのが一つの目安でしょう。仮説思考に慣れていないうちはフレームワーク(マーケティング4Pとか)を活用してもよいでしょう。

次に、各仮説の蓋然性を、与えられた情報やビジネス常識に照らし、推論力を用いて検証してみてください。もしこうならばこういうことになるはずだ・なっているはずだ、しかるにこの情報によれば、あるいは常識的に考えるとこの場合そうじゃなさそうだ、ということはこれが原因である可能性は低いな、みたいな、探偵的な推理・推論力です。それによって仮説に優先順位が付くはずです。

その次に仮説を検証するアプローチを考えます。最後に、優先度の高い(蓋然性が高い)原因仮説に対して解決策仮説まで考えることが出来れば完璧です。これがワンセット。ケースインタビューによってはこの全てのプロセスを求められるだろうし、逆に最初に仮説だけを問われるかもしれません。でも、議論が求められるかも知れない全体像をこのように認識しておくだけでも、インタビューの受け答えは随分違ってくるはずです。

ちなみに、ケースによっては、ある課題(例えば製品Xのマーケットシェアが低下している、とか)に対して、検討すべき論点と仮説を考えて下さい、というような場合もあり得ます。この場合でも、先に仮説の幅だしをしてクイックに仮説の優先順位を立てた上で、そこから逆に論点を仕立て上げていくほうが有効です。MECEを意識して最初から機械的に論点を展開することだけは避けるべき。仮説を立てた後に、漏れがないようにMECEで論点を補足するほうがよいでしょう。

インタビューの受け答えについてもアドバイスしておきます。大抵の場合、最初にあなたが考えたことの説明を求められると思います。ここでは、あなたの思考プロセスが見えるように説明するのがよいと思います。そのような説明は、あなたが論理的、あるいは分析的に考える人だ、という印象を与えます。

また、思考プロセスが見えることによって、面接官は質問がしやすくなります。あなたの思考プロセスに潜む矛盾や跳躍を突こうとするでしょう。恐れることはありません。指摘の内容によって、補足説明をする、反論をする、もしくは矛盾等を認め、なるほどそうですね、だとするとこういうことになるでしょうか、といった感じで議論を展開すればよいのです。あなたの思考プロセスをベースに質問する、ということは、既にあなたの議論の土俵にのっかてくれているわけです。あなたにとって答えやすいはずなのです。

最悪なのは、面接官にとってあなたの思考プロセスが見えず、あなたの土俵で質問を発することに困難を感じて、面接官自身の全く違う切り口から質問を浴びせられることです。議論の土俵が相手のものになってしまうわけですから、これは圧倒的に劣位な立場なのです。こうなってしまった場合には、一旦相手の議論の土俵に乗りましょう。

とにかくインタラクティブに議論をすることを心がけてください。議論を発展させるように心がけてください。勝ち負けのパラダイムではなく、その場で面接官と一緒により良い仮説や答えにたどり着くことが目的だ、というパラダイムでいてください。そうすれば精神的にも楽でしょ?(笑)議論を発展させる力は面接官に好印象を与え、高い評価に結びつきます。逆にずっと議論がかみ合わないようだと、どちらの考えが正しいとかじゃなく、単純に印象はかなり悪いものになってしまいます。

ケースインタビューは今やコンサルティングファームに入るためには避けて通れないものとなっています。面接官が上の立場に立っていて、そこから色々アタマの具合を試される、というふうに考えると、あまり気持ちのよいものではありませんね。緊張もするでしょう。

でも安心してください。アタマの具合はあなたと大差ありません。ビジネス思考がよく鍛えられているから鋭い質問も発してきますが、面接官だって最初からそんな鋭い人だったわけじゃないことを、私はよーく知っています。試されるのはアタマのよしあしじゃない。

要は、面接官があなたと一緒に働きたいと感じるかどうか。それを一番左右するのは、発展的なコミュニケーションが出来たかどうか。そのポイントは、面接官と一緒に考える、というパラダイムになれたかどうか。最も大事なのは、そこです。ご健闘を祈ります。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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