金光隆志のコンサル転職Q&A

[第24回] ベンチャーキャピタリストになるには...?

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【質問】 
将来ベンチャーキャピタリストをめざしています。日本のベンチャー及びVC業界をどう思われますか。また、ベンチャーキャピタリストになるにはどのような経験やスキルが必要だと思われますか(27歳男性より)

みなさんこんにちは。年の瀬ですね。飲みすぎ騒ぎすぎに注意しつつ、一年を楽しくしっかり締めくくってまいりましょう♪


さて。ベンチャーキャピタリストを目指しておられるということですが。ごく最近の日本のVC事情はさほど詳しくないのですが。難しいですよーベンチャーキャピタリストってのは。

先ず、わかっているようでよくわからない「ベンチャー」の定義をしてみましょう。

ベンチャーと中小企業って何が違うのでしょうか。実は非常に曖昧です。広い意味での中小企業の一部、という見方もある一方で、伝統的な政府統計の定義からすると全然中小企業とよべないベンチャーだっています。そして、私の考えでいきますと、これは全く別の概念。企業を分類するさいに、むしろ座標軸としては直交する概念だと思っています。
つまり、ベンチャーには大企業もあれば中小企業もあるってこと(笑)。

じゃあベンチャーって何か。厳密には私も定義できません。ですが、概念的には整理できます。先ず、ベンチャーには、(1)既存の世の中にはない革新的な技術や事業アイデアが存在します。そして、(2)その技術や事業アイデアを実際に事業化し、大きな事業へと育成し、世の中を変革しようという野心を持った企業家が存在します。この二つが存在する企業家集団がベンチャー企業。以上が私の定義です。

資金調達の形態がどうだとか、会社の大きさがどうだとか、それらは二次的なこと、もっといえば関係ないことです。わかり易い極端なイメージとして、金持ちが自己資本で最初から大きな組織規模でベンチャービジネスを始めることだってあり得るでしょ?(笑)

では、ベンチャーキャピタルとは何か。簡単に言えば、上述のベンチャービジネスに勝算ありと踏んだ投資家が、リスクを承知の上で投資することです。但し、どの程度のリスクを承知で投資するのかによって、ベンチャーキャピタルとしての性格が異なると思います。

ベンチャーキャピタルの最も典型的なイメージは"エンジェル"でしょう。エンジェルとは、自らもかつて企業家として事業を起こし、様々な苦難・経験を経て成功を成し遂げ、財産を築いた人々で、新しい時代のアイデアや才能に恵まれた企業家に投資をして、成功すれば大きなリターンを得ようと考えている人々のことです。一般的にエンジェルは、未だアイデアでしかない段階や事業を立ち上げて間もない段階、シード~アーリーステージ段階の超ハイリスクベンチャーに投資をします。


ベンチャーキャピタルといっても様々なタイプがありますが、このエンジェルにこそ、ベンチャーキャピタリストのエッセンスが詰まっていると思います。

エンジェルは、何を見て投資しているのか。彼らが見れるのは3つだけです。大元の革新的技術やビジネスアイデア。それらに基づく将来事業プラン。そして企業家自身。逆に言えば、現在ビジネスが上手くいっているのかどうか、これは見ないし見れません。だってまだ殆ど事業が始まっていない段階で投資判断するのですから。

ではそこで何を目利きしなきゃならんのか、大事な事項だけでもすごい数になります。ざっと書き上げていってみましょうか。

技術やビジネスアイデアは本当にどれくらい革新的なものなのか。それらは世の中を変えていくほどカスタマーに求められ普及していく商品やサービスに転換できるのか。競合障壁(真似されない等)は存在するか。どれくらいの期間、その優位性は持続可能か。事業シナリオは描けているか。明確な将来ビジョンは存在するか。成功すれば最終的にどれくらいのマーケットを創出できるのか。競合はどれくらい出現しそうか。勝てるのか。収益は何時くらいにどれだけ出せそうか。どのくらいの期間でどのくらいの企業価値に成り得るのか。事業シナリオ実現に向けた詳細ステップはどのくらい具体的に描けているか。成功までの各段階でどれくらいの資金需要が発生するか。各種判断のマイルストーンはどこか。事業家に、事業家としての資質や経験は十分備わっているか。信用できる人間か。などなど。もっともっとあります。とても書ききれません。

しかもシード段階ですと確たる事項は殆どありません。見えません。絶対にダメだというのは分かるでしょう。でもいけるというのはわかりません。当然ながらポートフォリオ投資が基本です。が、どんなに目利きしてもアーリー段階のベンチャーですと投資した100社に1社も成功しないでしょうからかなり資金体力がないとできない。ものすごいリスキーです。普通の神経じゃ出来ないとすら思います(笑)。ベンチャーキャピタルの本質とはこういうものです。

翻って日本のベンチャー事情やVC業界はというと。
残念ながら、未だ本格的なベンチャー起業家やエンジェルは殆ど存在しないという印象です。鶏と卵ですが、本格的な起業家がいないと本格的なエンジェルは出てこない。本格的エンジェルがいないと本格的な起業家は生まれにくい。育ちにくい。

日本的VCにいたっては更に惨憺たる状況でしょう。数千万円程度の資金を、ちょっとよさげな企業にバラバラと投資するだけ。出来るだけ少ない金で出来るだけ株式シェアを保有する、もしくはもう殆ど上場が見えているような企業のおこぼれにあずかるように、ちょこっとのシェアでもいいから出資させてもらう。などなど。VC企業の全部が全部ってことではありません。各VCで見ても全部が全部そういう投資だということでもありません。

でもね。お里が知れてます。
本格的な起業家として大成功した人が、起業というものの怖さや難しさ、不確実さ、それらを恐れず前へ前へと突き進むエネルギーと世の中を変えていくオルガズム、確率はとても低いけれど大成功したときの莫大なリターン、そういったものを全部わかっていて、愛していて、求めていて、場合によっては、成功した人間の社会的責任という意識までももって、次の起業家に賭けてみる。そんな人がやってるキャピタルって日本にどれくらいあるのでしょう。むしろそれとは正反対な人達がやってるVCが殆どなのですから、そんなところに大した起業家が集まるはずもありません。

私は冒頭あたりで、どの程度のリスクを覚悟するかでVCとしての性格が異なる、と申しました。どういうステージのどういうニーズにこたえるキャピタルなのか、タイプがあります、という意味なのですが。ぶっちゃけていいますと、本格的なエンジェルやそれに順ずるキャピタルが存在すれば、あとは中途半端なキャピタルにすぎません。初期のリスクマネーこそが本格的な起業家・将来成功するであろう起業家にとっては大変なのです。事業がある程度うまく拡大していけば、ほっといても応援団は増えていきます。というより周りがほっといてくれません(笑)。追加必要資金だって、極端に言えばどうとでもなります。そして、本当に応援してくれる人に、本当にコミットしてくれる人に、恩返しのつもりで株をもってもらったらよいのです。

随分とご質問から話がそれてきてしまいましたね。
ベンチャーキャピタリストに必要な資質やスキル。煎じ詰めると、本格的エンジェルのような経験やマインドがあること、ということになってしまいます。でもそれって余りにもハードルが高い。それでも僕は、それに近い経験やマインドを備えて欲しいと思います。

本格的なベンチャービジネスの立ち上げを経験してほしい。成功するか失敗するかはともかく、です。出来れば自分で、といきたいところですが、創業に近いメンバーということでもとりあえずよしとしましょう。でも、ほんとは自分で立ち上げて欲しい(笑)。創業者と創業メンバーとでは相当経験できることが違うからね。失敗も知って欲しいけれど、それよりも成功のオルガズムこそ体験してみてほしい。ものすごい急成長して瞬く間に周りのセカイが変わっていくのを身をもって体験することです。

一つの会社で全部は経験できないかもしれないから、複数の会社でそれぞれ経験するのでもよいと思う。その上であなたが、本当にベンチャービジネスというものを愛せるか、興奮を覚えるか、成功の感覚を掴めたか。それでもって、自分がベンチャーキャピタリストになれるか・むいているかどうかがわかってくるのではないか、と思います。

ある業界に精通するだとか専門領域を持つだとか。ファイナンシャルスキルを身につけるだとか。事業プランが読める・書けるだとか。二の次だと思います。失敗するベンチャーの目利き力も二の次です、多分。ほとんどのベンチャーが失敗するのですからキャピタリストになれば、いやというほど「いけると思ったのに失敗した、なんでだ」という経験や学習をするのでしょうから(笑)。

大切なのは、ベンチャービジネスへの愛であり興奮であり成功感覚だと思います。猛反論もあるでしょうが、あえて極論しておきましょう。ベンチャーキャピタリストというのは、一生において大成功を収める企業と一社でも出会えればよいのです。すべての失敗を癒してくれるほどの大成功が一つでもあればいい。さらに言えば、大成功が存在するなら小さな成功なんてたくさんの投資の中にちょこちょこ混ざっているはずなのです。

いやほんと、今回はものすごい極端な話をしてしまったかもしれませんね。あくまで参考意見と了解ください。ベンチャービジネス経験が未熟な私の個人的な見解であって、他にも色んな意見やアドバイスがあるだろうと思います。ぜひ聴いてみてください。

最後に、戦略コンサルの経験は生きるのか、について少しだけ言及しておきましょう。
二の次ですが間違いなく、生きますよ。戦略コンサルを経験した上で、十分な資金力があって大型ロットの投資を中心に行うような本格的VCに進まれるのは現実的なキャリアとして悪くないと思います。でも勘違いしないようにね。戦略コンサルで百戦錬磨だったからって、キャピタリストとしてはひよっこからはじまるのです。たまたま成功案件がでたとしてもそれはラッキー。それ以外に沢山の失敗をするはずです。

戦略コンサルを経験する一つの落とし穴は、ここかもしれない。成功させるのが当たり前の世界から失敗するのが当たり前の世界に、どうしてもアタマが切り替わらないことも多いようです。戦略スキルを生かせるとはいえ、事業の距離感で言えば戦略コンサルとベンチャーキャピタルはかなり遠いのです。まあ基本的には全く別の事業なのだと思っておいたほうが良いかもしれませんね。

では今回はこの辺で。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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