金光隆志のコンサル転職Q&A

[第30回] 影響を与えた人や尊敬する方のエピソードを教えて2

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【質問】 
金光さんのビジネスキャリアに大きく影響を与えた人や尊敬する方についてお聞きできますか。出来れば3人くらいの方のエピソードを教えてください (2)
(26歳 戦略コンサルタント会社 アソシエイト)

みなさんこんにちは。

今回も引き続き私が影響を受けた/尊敬している人について、ということで、お話させていただきます。

既にこのコラムでも何度も言及してきたので繰り返し感はありますが、やはりBCGの創業者ブルースヘンダーソンに受けた影響は多大です。

ブルースヘンダーソンの経歴は華々しいもので、私の記憶が確かなら、バンダービルト工科大学、HBS卒業、35歳でウエスティングハウス上級副社長、更にADLの上級副社長を経て、45歳でBCGを設立。設立後3年を待たずBCGの代表的なコンセプトとなる累積経験量の法則、ポートフォリオマネジメント手法を発見・確立。その後も10年以上にわたり世界のビジネスリーダーに影響を与える、様々なコンセプトや洞察を発表。それまでのコンサルティング業界には存在しなかった戦略コンサルティングという分野を切り開き、BCGを一気にトップコンサルティングファームに仲間入りさせました。

ヘンダーソンのすさまじい業績を前に今の自分を省みるのは、へこむばかりでまるで意味の無いことなのですが、比較的近い場所・時代に居ながら、世界を変えるほどの偉業を成す人物と自分とは、これほどまでに格差があるものかと。。

以前にもお話しましたが、学生時代に偶然ヘンダーソンの著書「経営戦略の核心」を読んで衝撃を受けて以来、ずっと私はヘンダーソンに憧れ、その発想に近づこうと、密かな努力を続けていました。

BCGに入社して最初に私が行ったこと。それは在庫のあった「展望」(英:Perspectives)を創刊号から最新まで、全部集めることでした(笑)。「展望」とは、BCGが不定期に発行している経営イシューに関する洞察のエッセイ集なのですが、初期のころのものは殆ど全てヘンダーソンの著作でした。前述の「経営戦略の核心」も、Perspectivesの中から代表的なエッセイを選出し、ヘンダーソン自身が書籍用に加筆して作られたものです。

「展望」の発刊は恐らく今でも続けられているのではないかと思います。私が在籍していた頃は、世界中のパートナーやマネージャーがコンセプトシート的なもの(名前忘れました)を社内でのナレッジマネジメント用に書き溜めていて、その中から厳選されたものが、「展望」の候補となり、発刊に向けてさらにブラッシュアップされたものが、最終的に「展望」として世に発表される仕組みになっていました。この仕組みにのって発刊される「展望」の多くも、深い洞察に充ち溢れていてよみごたえ十分でした。

が。ヘンダーソンが書いた展望は、時代の違いを差し引いても次元が違います。本当に次元が違うという感じです。喩えとしての適切さはともかく、カールマルクスとその後に続くマルクス主義者、さらにその後に続くポストモダン以降の細分化した思想化達くらいの次元の違いです。なんて言い方しても今の人にはピンとこないでしょうか(苦笑)。

ヘンダーソンは常に具体的・同時代的に動き、考えていました。だからこそ彼は、論文や書籍ではなくエッセイというスタイルを選んだのだと思います。実際に経営者が直面している個別具体的な問題からスタートし、より本質的な問いを発し、個別事象の背後にある構造やダイナミクスを洞察しようと格闘し続けていたのだと思います。注意深く読めば、ヘンダーソンの展望には論理の飛躍が多々見受けられます(笑)。ですが、彼にとって重要だったのは論理的整合性や厳密さなどではありません。同時代の経営者と同時代的に格闘し、経営者を刺激し、思考を促す「洞察」そのものだったはずです。

エッセイですから、様々な経営課題や当時の産業課題について、体系的にまとめることなく、文字通り洞察したことを書き散らかしています。ものすごいスピード感でです。今の展望が一つ発刊される間に、ヘンダーソンはおそらく10くらいは書きおろしたのではないかと思います。もちろん、BCGの規模も時代も展望発刊システムも異なる複雑な現在と、ヘンダーソンのワンマン時代を比べることに余り意味はありませんが、そうだとしても、ヘンダーソンの生産性というかプロダクトアウトスピードはすさまじいです。

ヘンダーソンのエッセイがとても刺激的である理由はここらにありそうです。論理ではなく洞察(インサイトといった方がピンとくるでしょうか)そのものを、生々しいままで提示されたら。そりゃ痛いです。論理はあっさり飛び越えられてしまっているので、読んでいるこちらが考えさせられます。一つのエッセイを読むだけでもその思考のスピード感がひしひしと伝わってきます。手当たり次第書いているものを追いかけると、尚更です。

私は、ヘンダーソンが洞察にいたる思考そのものに迫ろうと、エッセイを長年かけて何度も何度も読み返しました。でもね、それは無理ってもんです。洞察なんだから。それを論理的に理解しようとしたところで、ヘンダーソンの発想そのものとはまるで違います。

そのかわり、熟読したおかげで、ヘンダーソンのちょっとした言葉の背後まで見えたのではないかと思います。タイムベース競争論やプロセス・ケイパビリティ論など、ヘンダーソンの時代の後に出てきた経営戦略コンセプトも「ヘンダーソンがあそこで語っていたことを膨らましている」みたいな感じで。ここまでくるとほんとにマルクス主義者ならぬヘンダーソン主義者ですが。

私が、コンサルタントとしてまだ半人前のころ、ヘンダーソンばりに本質や構造を見抜こうとあがき、プロジェクトで空回りしていたのは、以前にもお話したとおりです。

構造だけを抽象的に考えることは最も陥りやすい思考の失敗であり、具体的事象に立脚しつつ構造を思考するにはちょっとしたコツとコツを踏まえた上での相当な熟練が必要です。

さてさて、そんな大天才ヘンダーソンを敬愛してやまない私ですが、ヘンダーソンの魅力は戦略家としての凄さだけではありません。ヘンダーソンのもう一つの顔。それはベンチャー企業家としての顔です。

45歳という、ベンチャー企業家としては決して若くない年齢で独立したヘンダーソンは、机と電話一つから事業を始めたそうです。もちろん、ADLで上級副社長まで務めた上での独立だから、クライアントのアテもなく、ということではなかったでしょう。それでも最初のうちは、コンサルティングではなく市場調査的な小さな仕事ばかり。

ヘンダーソンがすごいのはここからです。例え市場調査の仕事でも手を抜かない。全ての依頼に対して、単に調査結果をまとめるだけでなく、必ず経営への示唆を、頼まれてもいないのに勝手に考えて、それをレポートに加えるということを続けていました。少しづつ信用を積み重ね、クライアントの数も増えていきます。そして、ついに運命の発見!累積経験量の法則。

驚くことに、この経営戦略論の歴史に燦然と輝く発見は、やはり市場調査の仕事の中からであったというのです!確か半導体メーカーから、価格動向についての依頼を受けて、分析をしているなかで、産業全体の累積生産量と価格に相関があることに気づき、それを様々な産業でも検証してみると同様の結果に。そこからより直接的に単位コストと累積生産量の相関性に行き着き、累積経験の法則として、世に広く知らしめることとなったそうです。

どうですか、この愛すべきベンチャー魂!!45歳で上級副社長の地位を捨てて独立だなんて、カッコいいじゃないですか。小さな仕事でもコツコツ丁寧にやるなんて、クライアントのために対価以上の付加価値を返すなんて、頑固職人のようじゃないですか。そして、そんな小さな依頼の中から歴史を塗り替えるような大発見と大仕事をやってのけたなんて、勇気百倍みたいなサクセスストーリーじゃないですか!!

ヘンダーソンはきっと、頭でっかちな思想家とは程遠い、せわしなく考えせわしなく動く、茶目っ気たっぷりな行動家だったのではないかな。

ベンチャービジネスにどっぷりな今でも、私にとってヘンダーソンは、ぶっちぎりNo1のスターでありアイドルです。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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