金光隆志のコンサル転職Q&A

[第32回] 新卒で戦略ファームに入社してベンチャー企業への転職を考えています...

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【質問】 
新卒で戦略ファームに入社しました。今ベンチャー企業への転職を考えています。注意しておくべきポイントなどお教えいただけますか(28歳 戦略コンサルタント)

皆さん、こんにちは。夏真っ盛り!!なはずなのに、あんまり夏って感じがしないのは私だけなのでしょうか。。


さて、ベンチャー企業への転職における留意点ということですが。
例えば、入社前のベンチャー選びにおける眼の付け所といっても、あなたがベンチャーへの転職に何を求めているのかによって、変わってきます。一般論として何かをアドバイスするのはとても難しい。

一例をあげましょう。ベンチャー企業といっても様々です。例えば事業ステージで言っても、まだ立ち上げたばかりで創業段階にあるベンチャーから、ある程度事業基盤も出来つつあるミドルステージのベンチャー、更にはIPOも視野に入るようなレイトステージのベンチャーまで。あるいは、資本形態で言って、個人の創業者や創業メンバーで殆どの株式を所有しているベンチャーから大企業が新規事業の立ち上げとして行っているベンチャーまで、あるいは複数株主からの資本が入っている場合でも、事業パートナーからの出資比率が高いベンチャーもあれば、ファンドからの投資が中心であるベンチャーまで。

分類学的(笑)には様々な形態のベンチャーが存在します。どんな形態のベンチャーに転職するのか、というのも眼の付け所といえば眼の付け所ですが、一般論でどれがいいとか悪いとかはありません。

とは言え、ここで論をたてていくにはあくまで一般論で話さねばなりませんね。最後は個別具体的な状況下、自分固有の判断軸で判断するものだということを留保した上で、少し前に議論を進めましょう。

先ず。ベンチャーへの転職には様々な、恐らくはあなたが想像している以上のリスクが伴うものと認識してください。そのインプリケーションは、念には念を重ねて、十分に裏をとった上で転職を決意すべきだ、ということです。

企業体力が脆弱なために、今順調でも、少し市場環境が変わったり、突然大手が参入してきたりで一気に経営が不安定になる。そんなことは日常茶飯事です。というより、これなどは留意すべきリスクというのも憚られる、ごく当たり前なこと。後々にこういう次元だけで悩めるなら健全な転職であったというべきでしょう。ベンチャー転職先選びに際して、まずはそこを目指すべきです。
現実には転職前にもっともっと様々なリスクを念頭において考えねばならない。

例えば。
収益はまだこれからだけど、事業拡大は順調。変な背景もなさそう。自分のことを将来の経営者候補として雇いたいと言ってくれる。実際自分が入って戦略的なテコ入れをすれば、IPOも狙えるのでは。と思ったら、裏では創業メンバーだけがExitを考えていた。最近少しは減ったものの、相変わらずこの手の話もよく耳にします。
まあこんなのも序の口です。

例えば。
表面的には売上も利益も成長しているように見えて、不良資産を山ほど抱えているベンチャー。そんなベンチャーは山ほど存在します。

例えば。
大企業との取引も多く、ユニークな技術力を持っていてなかなか優良。IPOも視野に入っている。と思ったら、裏で実は反社会的勢力とのつながりが存在している中堅企業。そんな企業もかなり存在します。
などなど。

総じて言えば、ベンチャー企業はベンチャー企業であるが故に十分な外部的ガバナンスが利きません。トップをはじめ、そこで働いている社員個々の人間性そのもの、志や倫理観次第で、ベンチャー企業の内実などどうにでもなってしまうものなのです。
あなたが健全な目的と意志でベンチャーへの転職を考えているなら、あなたは先ずもって、そのベンチャーで働いている人間の、とりわけトップ層の人間性そのものを目利きすべきなのです。

言い方は悪いですが当たり障りの無い、山っ気が少なそうな人より、人として足りない面もはっきりしているが人を惹き付ける何かを持っている人の方が、成功しているベンチャーやベンチャー上がりの経営者には多いかもしれません。本物のカリスマも存在します。ですが、最終的には人望を失ったりメッキのはげる人の方が圧倒的に多い。一方、一見頼りない、あるいははったりの全くきかせなさそうな人がやっているベンチャーには、実際上手くいかないベンチャーが多いでしょう。ですが中には、表面的な頼りなさとは裏腹に芯のしっかり通った、優秀な経営者も存在します。

そこら辺りが人の目利きの難しいところなのです。端的に言って目利きはしきれない、と思った方がよいでしょう。それでも、一つのアドバイスとして、もしあなたが、トップや周囲の人の人間性に少しでもひっかかりを感じるところがあったなら、おかしいな、と思うところがあったなら。私はその会社への転職はお勧めしません。もしかするとあなたの思い過ごしやあなた自身の人間の器の方が小さすぎて、相手の凄さを見抜けなかった、という結果になるかもしれません。が、そうではなく、結局その転職は上手くいかない確率の方がはるかに大きいでしょう。そこまで判った上で、覚悟の上であれば、あとはあなた自身の固有の基準でもって転職するかどうか判断すればよいと思います。


ベンチャー企業を見る際にもう一つ、一般論として留意するならば、その会社が売上をたてているかどうか、プラスのキャッシュフローを生んでいるかどうか、生んでいないならばどのくらいの期間、キャッシュフローがマイナスの状態が続いているか、売上を上回る成長によるマイナスフローなのか、オペレーション赤字の状態が続いているだけなのか等を、よく吟味すべきです。

先ず、資本体力も十分にないのに売上不足な上開発先行型で進んでいる企業は、倒産する確率が圧倒的に高いですから、転職先としてお勧めはしません。それが判った上で、他の判断軸でもって選ぶならそれはそれでOKと言いたいところですが、それでも私はお勧めはしません。この手の会社に転職し、倒産しても何かが残る、とは考えないほうがよい。開発先行型で進みたくとも目の前のキャッシュ不足をなんとかせねば、というドタバタに終始し、殆どが中途半端に終わることでしょう。一方、十分な資本力を背景に売上が立たない中開発先行で進んでいる会社なら、上手くいかない確率の方が高いですが、覚悟や目的意識次第では、転職もありかもしれません。

売上を上回る成長によるキャッシュフローマイナスというのは、成長事業においてはごく当たり前な姿です。しかし何であれ、長期間売上が立たずキャッシュアウトが続いている事業や会社は、健全な状態ではないのです。99%以上上手くはいきませんから、そうした会社に転職されるなら、その点を覚悟の上で、ということになると思います。

長々と申しましたが、これまでの話を要約しますと、

1)ベンチャーにはあなたが想像している以上に様々なリスクが存在している
2)とりわけガバナンスが利かないことによる潜在的なリスクが大きい
3)売上の無い(少ない)赤字ベンチャーにはダメベンチャーが多い

これらを十分認識した上でベンチャー転職を考えてほしい、ということです。

転職された後の留意点についても一般論として少しお話しておきましょう。ベンチャー企業に転職されたら、きっと色んなことが起こります。その殆どが、「こんなはずじゃなかった」と思うことだと予想されます。
例えば。
ほぼ全てのベンチャー企業において、経営管理機能が脆弱です。売上や事業運営に直結しない間接部門・機能に対して十分なリソースが割けるベンチャーなど殆ど存在しません。成長力が高いベンチャーほど、内部管理が追いついていないことが多い。そして、もしかすると、その辺に長けたあなたは、あなた自身の望む望まないに関わりなく、経営管理について色々気づき、てこ入れしようとする中で、いつのまにか経営管理ばかりをまかされるようになるかもしれません。

あるいは。
あなたは戦略的な鋭い視点で、経営の方向性について、従来路線と違うことを思いつき、それを進言したとしましょう。全く理解されないどころか、反感を買うだけの結果に終わるかもしれません。トップだけでなく、社員のほぼ全員から、冷たい眼で見られるかも知れません。ベンチャー企業において、戦略や論理といったものが、すんなり理解されることは、殆どありえません。そうした企業では戦略論より具体的事業アイデアが賞賛され、求められます。社長が真に参謀を欲している場合を除いて、スタッフの戦略論はベンチャーの社内的には無力かも知れないのです。ベンチャー企業において、戦略は会社経営そのものであって、会社経営は社長そのものなわけです。既存路線の否定は社長の否定に直結します。感情論だけでなく実体論としてもそうなのです。
などなど。

冒頭の繰り返しになりますが、環境の変化等で、思ったように事業が進まない、急に経営が苦しくなる、などは日常茶飯事です。そういうレベルでの「こんなはずじゃなかった」を恐れる人には、ベンチャーはお勧めしません。そこは覚悟した上でも、もっと色々「こんなはずでは・・・」がオンパレードするのがベンチャーの世界なのです。

さて。
私はベンチャーを否定するものではありません。むしろベンチャーを賞賛したい。でも、誰にでもお勧めする、という気にはとうていなれないのも本音です。あなた自身がベンチャーを起こすなり、経営を本当に任されるなら、挑戦するのをお勧めしたい。だけれども、言葉悪いですがサラリーマンとしてベンチャーへの転職を考えておられるなら。よほど経営者を信頼できるなり、経営者から信頼されるなり、という背景や根拠がないと、あなたが思い描いているようなベンチャーライフとはかけ離れた現実に悩むかも知れないのです。

よくよく、あなた自身が将来何をしたいのか、それは様々なリスクを負ってでもやりたいことなのか、今転職すべきなのか等を考え抜いた上で、判断してください。

恐らくは戦略コンサルタントのあなたが想像するよりはるかに、ベンチャーとは文字通り冒険なのです。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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