金光隆志のコンサル転職Q&A

[第34回] ケースの考え方、アプローチや頭の鍛え方など教えてください

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【質問】 
いつも楽しく拝見しています。コンサルを目指している商社マン25歳です。面接でケースを議論するとのことですが考え方、アプローチや頭の鍛え方などお教えいただけますか。宜しくお願いいたします。



・マーケットサイズの出し方

・日本で1年間で消費されるミネラルウォーターの量

・日本全国にあるガソリンスタンドの店舗数

皆さんこんにちは。すっかり秋ですね。

私事ですが、今年は久々に京都の秋を楽しみにいこうかなと^^

さて、ケース議論の為の考え方や頭の鍛え方ということですが。例題に示されているような推計モノの基本であれば、めちゃくちゃ簡単ですよ。小学校高学年くらいの子にも出来るようになります。むしろ小学生の方が頭が柔らかいから得意かもしれませんね(笑)

難しく言えば推計の為の関数を創出するということなわけですが、要するに因数分解して掛け算足し算するだけのこと。どのくらい細かく因数分解すればよいかで、多少のコツというかセンスが問われます。

例えば。日本での1年間ミネラルウオーター消費量。
「国民一人当たり消費量×人口」ってのが一番シンプルな因数分解ですね。でも、国民といっても色々です。赤ちゃんから老人まで、さらに男女差など、デモグラフィック属性によって随分消費量も違いそうですね。

それじゃあ、っていうことで、年齢帯別男女別に細かく積み上げていくのも一つの手ですが、時間がかかりそうです。年齢帯ごとの消費量を細かく推計するほどの材料も普通は持ち合わせていないでしょう。

そこで一例として、もっとざっくりと、でももうちょっと深く因数分解して、生活シーンを想像しつつ(この辺は多少センスです)、自分の小遣いで外で買う消費(個人消費)と家庭で使う消費(家庭消費)との2つに大別してみましょう。

小遣い消費の方は、対象となる人口がざっくり言って5000万人くらいかと。労働者人口+10代後半というイメージです。男女差はどの程度か。よくわからないし、とりあえず分けて考えないで進めます。

5000万人のうち、何割くらいの人がミネラルウオーターを買って飲んでいるでしょうか。コンビニ店頭での清涼飲料コーナーにおける棚割りシェアや身の回りの人を見た生活感等から、10%くらいかなと仮置きしておきましょう。では、その人たちがどれくらい飲んでいるか?ものすごくざっくりした因数分解ですから、1日に300mlというのは平均値としては強すぎる仮定かなと思います。多分平均すれば1週間に1.0L程度。

さて、これで年間の個人消費量は推計されました。
個人消費量=対象5000万人×10%ユーザー×1L/週×52週=2.6億リットル
次に家庭消費です。世帯数4000万というのは常識ですね。

では、何割くらいの家庭がミネラルウオーターを買っているか。これも生活感からして、とりあえず半分くらいかなと。家庭では、最近料理に使うところなども増えてますし、健康への配慮から家庭ではお茶か水を常備しているところも多いはずです。

では、その家庭でどれくらい消費されるか。家庭をもっている人なら自分の家の冷蔵庫なども想像しつつ、あるいは子供の頃を思い出しつつ。多分ざっくりした平均値でいえば週に2Lくらいかなと。かなりアバウトな読みですが、他に論拠とすべき材料も持ち合わせていませんので。

さて、これで年間の家庭消費は推計されました。いやー簡単かんたん。
家庭消費量=対象4000万世帯×50%ユーザー×2L/週×52週=20億8000万リッ
トル
随分と家庭消費が多い推計になりました。個人消費との推計差にやや不安はあります。いずれにせよ、この因数分解と数字の仮定によれば、年間20.8億+2.6億=23.4億リットルと推計されます。

さて実際は?2006年の国民一人当たり平均消費量は18.4Lだそうです。国民は1.3億人程度。すると、18.4L×1.3億人=23.9億リットル

びっくりするくらい推計と実数が一致していますね。
いんちきじゃありませんよ(笑)。推計してから答えをググってみました。

まあここまで一致するのは単なる偶然です。推計で大事なのはオーダー(桁)を間違えないことです。例えば、2億Lと推計した人と50億Lと推計した人がいたら。一見誤差は2億リットルと推計した人の方が少ないようですが、さにあらず。実数は凡そ2.4×(10の9乗)です。10の9乗というのがオーダーです。
2億リットルという推計は、2.0×(10の8乗)。
一方、50億リットルの方は、5.0×(10の9乗)。
推計ロジックとしては、後者の方が、より妥当である可能性が高いのです。

蛇足ですが、オーダーを考える際に私は7?9の数字は、0.7とか0.9として、ケタ(10の何乗)の方を一桁繰り上げて考えるようにしています。1と2の差は倍数で言って200%。でも9と10の差は110%程度。乗数的には誤差です。9と10はケタが違うというより同じ桁と考える方が妥当なのです。この辺は対数発想のある人にはわかり易いと思います。

さて、話が少し横道にそれましたが、要は、推計しやすく且つ出来るだけ少ない因数に分けて考えるのが、ざっくり推計のコツなのです。これだけのことです。

ついでにもう一つの例題にも取り組んでおきましょう。これは多少難しいかも知れません。
最も単純な推計ロジックは、
(対象国土面積÷単位面積)×単位面積当りガソリンスタンド数。
私はこれ以外に大して有効な因数分解が思いつかないのでこれでいきます。
先ず、対象国土面積。

日本は約38万平方kmで、そのうち平野部は20%くらいだったと記憶します。
つまり対象面積は38万平方km×20%=7.6万平方km。
次ぎに、単位面積と単位面積当たりガソリンスタンド数。感覚的に、何キロくらい走ればガソリンスタンドが見つかるでしょうか。市街地と幹線道路、都市部と地方部等で違いはあると思いますが、そこまで細かく推計する自信がありません。なので、とりあえず全部ひっくるめて、2km走れば1軒見つかると仮定してみます。

相互に2kmの距離となるのに、最小の単位は三角形です。これを積み重ねて出来る円に近い形として、6角形を作ります。中心+6角形の各頂点(6つ)がガソリンスタンド。つまりざっくりと最小単位として半径2km園内、約12平方kmに7軒と仮定します。

これで推計は終わりました。いやー簡単かんたん。
対象国土面積7.6万平方km÷12平方km×7軒=44,333軒となります。
さて正解は。ウィキによれば、2005年時点で、フルサービス約43,000軒、セルフが4,900軒だそうです。これも、結構近い数字で推計できました。オーダー(桁)は間違っていません。

いかがでしょうか。こういうの、誰でも出来ると思いませんか?そうです。誰でも出来ます。筋の良い因数分解さえ思いつけばよいのです。この、「筋のよい」という部分は若干慣れが必要かもしれません。

例えばさっきのガソリンスタンド数。年間のガソリン消費量から割り出していこうというロジックだと、結構苦戦します。車の台数、一台当りの月間消費量、ガソリンスタンドの一軒当り月間供給量(必要売上高)、あたりから計算していこうというロジックになると思います。まあこれでも出来ると思います。一番悩むのはガソリンスタンド1軒当り月間供給量でしょう。割り出すには、例えば何人くらいが常時働いていて時給いくらのバイトで何時間稼動で、オーナー含め食っていくためにはいくら稼がなければならなくて・・・みたいなことを推計せねばなりません。はっきり言って面倒です。見誤るリスクも高くなります。

「筋のよい」因数分解とは、最も正しく推計しやすい因数で且つ出来るだけ少ない因数に分けること。これにつきます。とはいえ少なすぎるとその因数で想定する値(平均値)を見誤りますのでご注意を。

訓練としては、色々身の回りのものを推計してみるとよいのではないでしょうか。何でもよいのです。年間ポテトチップ消費量とか。トイレットペーパー消費量とか。フォークギター販売数量とか。簡単なものから徐々に自分でも最初は途方にくれそうなものまで。筋のよいロジックから筋悪なロジックまで、1つにつき複数の因数分解ロジックを考える訓練がよいと思います。いまどきネットで答えはすぐわかりますから、検証も簡単です。して、大体10くらい試してみれば、もうコツは掴めると思いますよ。

ケーススタディには他にも色んなパターンがあります。皆さんが慣れておいたほうがよいのは、よりビジネスに即したケーススタディです。簡単なレベルだと、グラフを見せて、ここから読み取れることを議論しましょう、とか、割合に本格的なビジネスケーススタディまで。様々です。

割合に面食らうのは、簡単なグラフとか数表を見せられて「何を読み取るか」を問われるケースかもしれません。

でも、実は簡単です。そのグラフなり数表なりから、現象面として何が起きてるかをそのまま読み取り(例えば○○の売上が増えて××が逆に減っている、とか)その上で、その現象面の原因を推察させるのが、大抵の場合の出題者の意図です。して、その原因を考えるコツが、「物事を分けて考える」という因数分解発想です。あるいはセグメントに分けて考える発想です。

この手の問いも、パターンをいくつか経験してしまえば、あとは若干センスというか「筋のよさ」が求めらる程度のものです。但し、さっきの推計問題に比べて、中々自分ひとりで問いを出して考えてみる訓練はやりにくいかもしれません。受験時代を思い出し、予備校に通うのも手です。キャリアインキュベーションさんにもそのような訓練をしてくれる講座があると思います。受けておくのは花丸でお勧めです。

昔も同じようなことを申したかも知れませんが、今一度はっきりいっておきます。コンサルファームで出される程度の、短時間で答えて議論するケーススタディは、本当のケース(プロジェクト)に比べるべくもないほど、浅いものでしかありません。

訓練で何とでもなるのですから、訓練しておいたほうが絶対に得です。そんな付け焼刃な訓練なんて、と思われるかもしれませんが、それで何とかなってしまうのだからいいじゃないですか。むしろ、本当はコンサルに向いてるのに、この程度のしょーもないケーススタディに不慣れなために他の候補者より見劣りするなんて思われるほうがバカバカしいことだと思います。

断っておきますが、ケーススタディがしょーもないであって訓練がしょーもないのと違いますよ(笑)。訓練は結構頭の体操的にもよいことだと思います。不慣れだと最初は苦戦します。ケーススタディには、分析的に考えるという行為のエッセンスというか初歩が割りと詰まっています。コンサルティングに限らず、分析的に考える力というのはとても大事です。しかも発散思考に比べて鍛え易い。にもかかわらず、初歩すら鍛えられていない人があまりにも多い。コンサルファームがいつまでたってもケーススタディでの初期面接をやめないのは、このためです。未だに殆どの人をここで振るいにかけてしまえるからです。

キャリアインキュベーションのメルマガ読者の方々には、こんなところで振るいにかけられる愚は避けて頂きたい。頑張ってください。ご健闘をお祈りしております!


補足:
荒井社長より、「例えばミネラルウオーターの場合、業務用市場はどう考えるのか」とのご指摘がございました。さすがです。やはり、キャリアインキュベーションでの関連講座やセミナー受講を強くオススメします。

ミネラルウオーターにおける業務用市場は、消費量としては大きくないと思います。
レストラン等で消費者に販売している市場は、数億L未満なはずです。(本文中に個人消費で推計した数字より、更に小さくなります。試してみて下さい)

浄水器を使っての料理向けや顧客サービス向けまで含めると、相当な量になるかもしれません。が、それは家庭消費とて同じこと。そこまで広げて市場を推計するなら、もっとざっくり推計するロジックがよいかもしれません。例えば、家庭で何らかの浄水設備を持っている【浄水設備普及率】は簡易なものまで含めると3割を超えていると思います。

その家庭では、一日に必要な水分摂取量の約半分近くは料理用を含め浄水で賄っていることでしょう。そして人間は一日に約2Lくらいの水分を摂取しています。

よってその場合の、ざっくりした国民一人あたり年間浄水摂取量は、一人当たり一日2L×浄水普及率30%×浄水による水分摂取率50%×365日=110Lとなり、ミネラルウオーター消費量の推計より、桁が一つあがります。つまり、広く浄水消費量を推計せよという場合には、販売されているミネラルウオーターの市場を、極論すれば無視しても大きくは(桁は)見誤らないということになります。

この辺は、最初から求められる推論というよりも面接官との議論の中で深めていく類の事項になると思います。もちろん最初からここまでロジックを展開して、面接官を唸らせることが出来れば、それに越したことはありません。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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