金光隆志のコンサル転職Q&A

[第35回] ケースの考え方2

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【質問】 
先日はマーケットサイズの考え方は目から鱗でした。有難う御座いました。それとセットでよく「○○の売上を2倍にするには?」と聞かれます。この2倍ケースでは何がポイントでしょうか。是非教えてください。(29歳/公務員)



・日本国内でのミネラルウオーターの売上を2倍にするには?

・30歳男性の着メロサービス売上を2倍にするには?

みなさん、こんにちは。

さて、今回も引き続きケース対策に関してのご質問です。

「売上を2倍にするには」系の質問は、慣れてないと一瞬面食らうかもしれませんね。これをまじめに考えるなら、ものすごく難しい質問です。最高難度と言っていい。誰にでも簡単に2倍にする方策が思いつくなら、既に企業がやってますって。

でも、逆に言うと、ケースとしてはものすごく簡単なのです。正解が存在しませんから、何をどう論理展開したって構わないのです。いや、むしろ奇抜な論理展開を試みて、面接官を困らせてやろう位に思って頂きたい(笑)。

その辺の、真のポイントは後述することにして先ずは、この手の売上2倍系の質問をされて、頭が真っ白になってしまわない為の処方箋を簡単にご説明しておきましょう。

どんな切り口から考え始めても構わないのですが、恐らく皆さんはある種のフレームワークや論点展開で体系的に考える術を持っておくことに安心感を覚えられることと思います。

フレームワークにしろ論点展開にしろ、それも決まった方策があるわけではありません。むしろ、そこにもクリエイティビティがあってしかるべきなのですが、ここでは、比較的経営学に馴染みがなくても使いやすいアプローチ・考え方の例をご紹介しておきます。

製品×市場という切り口において、売上を増やす方向性は大きく分けて4つ存在しますね。製品と市場それぞれについて、既存を深堀るのか新規を開発・開拓するのかの2つの道があり、その掛け算で4つです。田の字の4次元マトリクスです。

既存の製品・既存の市場にどのくらいの開拓余地が残されているのか。それをマクロ感で考察するところから出発しましょう。

1)その製品が市場に導入されてから十分な時間がたっているか?
売上2倍系の質問で出される製品市場は、大抵の場合十分時間も経ち成長ステージ的には成熟期に達しているものが殆どでしょう。ミネラルウオーターにしろ、着メロにしろ、そうです。

2)では、十分に市場浸透していると言えるか?
物差しに基づく比較感が必要です。ミネラルウオーターについては、日本国内の他の清涼飲料カテゴリーとの比較感で言えば、それなりに浸透していると言えるでしょう。但し、海外との比較感で言うと消費者当りの消費量は未だ少ないかもしれません。

一方着メロの方は、30代男性における利用と、女性や10代20代若者層における利用にはかなりな差がありそうです。莫大なホワイトスペースが存在しているかも知れません。

3)十分浸透していないなら、その阻害要因は何だろうか?
ある企業の商品であれば競合の観点も必要ですが、ここでは関係しません。アンメットニーズを考えるというアプローチが有効でしょう。アンメットニーズとは、その製品を購買・消費するにあたっての、ユーザーにとっての不具合、不満、障害などのことです。

着メロを例にとって考察してみましょう。
30代男性にとって、着メロを使う上での不具合、不満、障害はどんなことが考えられるでしょうか。単純に携帯の機能や使い方に関するリテラシーが低いという人、案外いそうですよね。30代男性が使いたいような楽曲が十分揃っていなかったり、すぐにたどり着けなかったりというのもあり得ます。

最大の障害と思われているものの一つに、仕事中にヒットソングやポップスの着メロがなるのを嫌う、というのがあろうかと思います。これは、意識・社会慣習(ソーシャルノーム)の問題です。本来であれば、ここで詳しく調査・分析を行い真のアンメットニーズを探るというアプローチが必要になりますが、ケース議論においては、いくつかあり得そうな事を思いつけば十分でしょう。

4)その阻害要因を取り払うことは可能か、どのくらいのインパクトがありそうか?
30代男性の使いたい曲が無い・見つからないという要因にアプローチするなら。例えば彼らが10代20代前半の頃のヒット曲を集めてわかりやすく提供してあげると・・とか。実際CDではそういうコンピレーションボックスが製品化されていて、信じられない高値で結構な人が買っています。直メロにもそういうことがあるかもしれません。

仕事中に鳴るのを嫌うという要因にアプローチするなら。例えば、仕事中に鳴ってもいいと思うものを提供する、むしろ鳴らしたい理由を与える等は考えられないでしょうか。集中力が高まる着メロとか、アイデアを誘発する着メロとか。あるいは、スケジュール管理機能とバンドルしたアラーム着メロとか。まあ大したアイデアはすぐ思いつきませんが、3)で大きなアンメットニーズがありそうな場合は、それを解決することは売上げに大きなインパクトをもたらすはずです。

既存製品・既存市場の考察で、長くなってしまいました。
1)現在の成長ステージ
2)市場への浸透度合い
3)浸透が低い場合はその阻害要因
4)阻害要因の解決策、というワンセットを考えると、ある程度体系的にアプローチすることが可能という一例をご紹介しました。

さて、売上2倍系のケースにおいて、既存製品・既存市場の深堀りだけで十分だ、ということはあまりありそうにありません。むしろ、新製品や新市場、新アプリに打って出る必要がありそうなケースが殆どです。

ここでは、シーズ側から機能・効能を幅だしするアプローチとニーズ側からオケージョン×ベネフィットのマトリクスで考えるアプローチの二つを紹介しておきます。これらは、典型的には新商品開発や新アプリ開拓における一次アイデア幅だしにおいて、効力を発揮するアプローチです。

ミネラルウオーターを例にご紹介します。
水にはどんな機能・効能が考えられるでしょうか。日々の水分補給や脱水症状の解決。美容に関心のある人ならナノ化した水による肌の保湿やデトックス効果なども思いつくでしょう。

最近は、ナノ水の吸収性の高さが体内エネルギー消費効率を大幅に改善し、免疫力を向上させる効果も注目されています。意外に知られていませんが、ナノ水にはかなり強力な殺菌作用もあります。活性水素を含む水には抗酸化作用があります。

水の効能として他に、冷却効果、洗浄効果、植物などの育成促進、などなど。沢山あります。ミネラル成分には、もちろんミネラル補給の効能があります。より積極的に、成分によっては疾病予防効果もあります。

ミネラルウオーターを自然水として狭く定義するのではなく、ある程度の加工も含めて考えるなら、機能・効能に着目して、様々な新商品・新アプリの可能性が見えてくるはずです。

一方のニーズ側からのアプローチはどうでしょう。ユーザー(とりあえず消費者としましょう)によって、生活のどうゆう場面・シーン(オケージョン)において、どういう動機や目的(ベネフィット)で消費されているか・されうるかを体系的に幅だししていくと、やはり様々な可能性が見えてくると思います。

朝起きてから夜寝るまでの間に、およそ水分を摂取する機会としてどんな生活シーンがあるでしょうか。起き抜け、食事時、仕事や勉強の合間、スポーツの前後、夜の酒の後、風呂上り、寝る前、等など、本来はもっとクリエイティブに定義するべきですが、ここでは考え方を理解してもらうために典型的なもののみ挙げてみましたが、それぞれのシーンごとに、色んな動機や目的で水分を採ることと思います。

単純な水分補給に始まり、より積極的に脱水症状の回復、目覚まし、気分転換、気合を入れるために、美容のために、等など。これもクリエイティブに発想してみると、色んな動機・目的が見えてくることと思います。

こうした作業を通じて、
1)今の製品によって、市場(使用シーンや目的)で新機軸や斬新な提案を行う 2)今の市場に対して、ミネラルウオーターの周辺も含めた新規商品・改良商品を投入する 3)新規の商品・アプリでもって新規の市場に参入するという3つの新事業機会を考察することができます。
どれが正しいか、どのアイデアが良いかということより、既存製品・既存市場の隣接領域や新領域をどううい視点や切り口で見つけることが出来そうか、というのがポイントです。

随分長々と説明してしまいました。要するに、売上2倍系の質問においては、既存製品・既存市場の深堀りに加え、製品・市場マトリクスにおける3つの新領域にも視野や検討スコープを広げ、その発想の源としてシーズからの機能・効能幅だしとニーズからのオケージョン・ベネフィット幅だしは有効なアプローチ、ということをお話してまいりました。

これらはあくまで、考える道筋・方法論の一つであり、他にも沢山のアプローチ方法が考えられます。ユーザーセグメントを切り分けてホワイトスペースを探すのもいいし、マーケティング4Pで、製品・価格・プロモ・販売チャネルにおける改善機会を考えてみるのもいい。ポーターのFive Forcesで考えることだって出来ます。冒頭にも申しましたが、正解は存在しませんし、よっぽど筋悪では無い限り何をどう論理展開したって構わないのです。

実際、売上2倍系の問題による面接において重要なのは、最初にあなたが何を考えたか、よりも、その後の面接官とのディスカッションなのです。

大抵の場合、面接する側も、結構いい加減に出題しています。面接がいい加減なわけじゃないですよ。出題の題材自体について「何でもいい、適当に」ということです。じゃあこのいい加減な質問を通じて何を見ようとしているのか?

とりあえず突拍子も無い問いに対してどう反応するか見てみよう。考え方を答えさせて、それに応じて色々質問や議論をふっかけ、その反応を見てみよう、というのが出題意図なワケです。

ちなみにこのケース面接に限らず、コンサルファームでの面接・面談においては、意地悪な質問をしたときの相手の反応を見てみる、というのが常套手段です。私がBCGに入社したばかりの頃によく言われたのが、「本音や本質に迫りたければ、色々丁寧にお伺いするのじゃなくて少々乱暴に、後ろからボカンと不意打ちで蹴っ飛ばしたときの相手の反応を見るのが一番いい」ということでした。いやー、昔のBCGってほんと野蛮でありました(笑)。

話が少し逸れましたが、ともかく、この売上2倍系の質問というのは、最初に何を答えるかよりも、その後の面接官の鋭い質問やいやらしい質問にどう対処していくか、というのが真のポイントです。思考力や思考性癖だけでなく人間性についての判断も行っている、という認識を持っておいて頂きたい。

相手の質問や議論に上手くのっかりつつ自分の論理を展開出来る人の方が、好まれます。
どんなにあなたが自分の考えに自信があろうとも、面接官の質問が馬鹿げて聞こえようとも、面接官より自分の方が賢いと思おうとも。頑なに自分の考えに固執する人や意地悪な質問に怒り出す人(あからさまじゃなくても結構いますよ、そういう人)対抗意識むき出しに、屁理屈に屁理屈で返す人、など等は嫌われます。はっきり言ってコンサルプロジェクトという中では一緒に働きたいタイプの人ではないですから。

皆さんには論理とユーモアのわかる人であって頂きたい。
意地悪な質問なんて、ユーモアなのですよ(笑)。「鋭いですねー」とか「意地悪ですよねー」とか言って、挑発には乗らずあっさりかわしつつ、質問や議論の本質部分について、建設的に乗っかって議論を発展させればよいのです。

「なるほど、それについては考えてなかったですが、そうだとするとこれこれこういうことになるでしょうか」とか。反論するなら、きちんと相手の意見を受けて展開した上で、出来ればアウフヘーベンする。

例えば「なるほど、今のご意見を踏まえるとこれこれこういうことになろうかと思いますが、一方でほにゃらかほにゃらかでしょうから、そうではなくむしろちょめちょめということになるのではないでしょうか」とか。

2倍系の問題には色んなアプローチ方法があり、分析的思考と発散的思考の両方を駆使する必要があります。本気で取り組めば、何日でも考えられるような問題です。
それをたった数分考えさせて議論しましょう、という設定なのですから、あまり難しく考えないで、発想を楽しむ・議論を楽しむ、という心持ちで臨めばよいと思います。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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