金光隆志のコンサル転職Q&A

[第36回] 2008年春に読むべきお薦めの1冊

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【質問】 
2008年春に読むべきお薦めの1冊を教えてください。

皆さん、明けましておめでとう御座います。楽しい正月を過ごせましたか?


私、「今年の正月は寝正月!」と決め込んでいたのですが、突如荒井さんよりこのコラムテーマを命じられ、慌てて本屋に駆け込み寝正月返上となってしまいましたー。

正直申し上げて最近は、一般書を殆ど読んでいません。仕事に直接関連する本や雑誌を月に数冊読む程度。時折仕事に直結しない本も読みますが、それは大体専門書やある程度の専門知識がないと読めないものばかり。あるいは完全な娯楽・趣味の本。ということで、皆さんにオススメ出来るような本をここんところめっきり読んでないなあ、との反省のもと、本屋に駆け込んだわけです。

久々に一般ビジネス書のコーナーを物色しての所感。
相変わらず多いですねえ、思考法モノ。発想法モノ。して、その殆どがコンサルやコンサル出身の人によって書かれている。売れるからこそ次々に新刊が出るのでしょうし、それぞれいいこと書いてあるのだと思います。しかし。私個人としては、思考法や発想法はもういいから、それらを使って、新しいビジネスコンセプト提唱なり面白い実証研究発表なりってのを、期待したい。

残念ながら数時間の物色では、私が期待するような一般ビジネス書には巡り合えませんでした。仕事に直結する本では結構面白いのを見つけましたけどね。

とはいえ、一般ビジネス書でもちょっと皆さんにご紹介しておこうかなという本はございました。思考法に関する本です。
「地頭力を鍛える」細谷 功 著 東洋経済新報社

これ、ずばり
「面接試験の定番問題に3分で答えが出せるようになる!」
と、コピーがつけられています!!!
これはもうコンサルを目指す皆さんなら読むべきじゃないでしょうか。1600円で面接ノウハウが身につくなら安いもの。それどころか、面接ノウハウ以上のものが得られるのではないでしょうか。

話の中心は、「フェルミ推定」についてですが、その「フェルミ推定」を基軸にしつつ結構コンパクトかつ体系的にコンサルの様々な思考法が解説されています。コンパクトでありながら本質的かつ重要なことをなことをこれだけ的確に解説している手腕は見事です。広範かつ良質な参考文献が紹介されていますので、著者がしっかりとした調査や思考法に関する研究を行った上で執筆しておられることが窺えます。

「フェルミ推定」というのは、例の「日本におけるミネラルウオーター消費量は?」みたいな、答えの見えない問題に概算で推定値を出す思考法のことです。私はこのフェルミ推定を「小学生でも出来る」などど言って、結構イージーに紹介・解説してしまいましたが、細谷氏はこのフェルミ推定が、思考力(細谷氏の言葉では地頭力)全体の中でどう位置づけられるか、どうやって応用できるか、どうやって鍛えられるかを、実例を適度に交えつつ丁寧に論じておられます。

まあ、コンサルファームの面接で出される類の推定問題なら、ちょっと訓練すれば本当に小学生でも出来るようになります。だから、皆さんにも簡単にできるようになります。この本を読まなくても出来るようになります(笑)。

が、しかし。この本でも言われている通り、面接の問題が解けるようになったからといって、フェルミ推定的な思考力・発想力が普段のビジネス思考において実践的に使えるようになるわけではない。

この本の優れているところは、フェルミ推定的な思考力がいかにビジネスの現場で、とりわけコンサルプロジェクトの現場で、使われ得るか・効力を発揮するか、について、経験や前提知識のない人にもわかるように、解説されている点です。加えて、繰り返しになりますが、仮説思考・フレームワーク思考・抽象化思考といった、コンサル思考法の基本について、コンパクトにも関わらずかなり正鵠を射た解説がなされている点です。

著者の試みは、相当程度に成功していると思います。
所詮、実践を積まないことにはこの手の思考力は鍛えられてはいきませんが、本で学べる範囲の多くは、この中にあります。さらに言えば、コンサルになってある程度プロジェクト経験を積んでから、再びこの本を読み返せば、より深い理解や新たな発見なども得られることでしょう。
この本に関連する本として、もう一冊紹介しておきましょう。

「物理学者はマルがお好き」ローレンス・M・クラウス 著 ハヤカワ文庫

細谷氏の参考文献にも挙げられているこの本を、私がはじめて読んだのは、もう10年以上前(原題「物理の超発想」 講談社)のことなのですが、それはもう大変な刺激を受けました。今でも時々読み返すほどの愛読書の一つです。

物理に全く興味の無い人や全く苦手な人には、ちょっと手を出しづらいかも知れません。でも、そんな人でも、最初の2章までを少し我慢強く読めば、目から鱗であることを約束します。3章まで読めば、物理的発想の現場的本質を十分に堪能できます。そして、驚くこと無かれ、この本の3章まででかかれていることの本質は、ほぼそのままコンサルティングの現場にもあてはまることなのです。

特に第1章「まず明かりのあるところを探せ」には、戦略コンサルにとっての発想法全てが書かれてあるといって過言ではないです。本質に関係ないと思うものをばっさり捨てるという発想。有効範囲に留意しつつ、解析的に扱えるモデルでいけるとこまでいく、という発想。解析的に扱えるモデルでいくのは、逆に言うとそれしか他に方法がないからだ、という現場の真実(!!)。などなど。

私は随分と昔にこのQ&Aコラムで、戦略コンサルにおける分析・モデル化と物理の分析・モデル化は酷似している、というお話をしたことがありますが、そのココロは、この本を読んだことから来ているのです。あっと。種明かししてしまった(笑)。

ちなみに、第二章「数は究極の道具」において、フェルミやフェルミ推定についても言及されています。

3章まででも十分刺激的ですが、物理に興味のある人には、是非全てを読んで頂きたいと思います。数式は殆ど出てきませんから数学アレルギーの方でも物理的興味さえあれば論旨はかなり追えるはずです。私は普段、本に線を引きながら読むような恥ずかしい(笑)ことはしないのですが、この本は赤線だらけ。わずかな種類の思考道具によって、現代物理のフロンティアまで辿り着けることに、私は心底感動し、著者の力量に感服しました。

さて。最後にもう一冊。あまり期待せずに買ってみたら意外と面白かった本。

「ダメなら、さっさとやめなさい!」セス・ゴーディン著 マガジンハウス

薄い本で、すぐ読めます。一見啓蒙書に近くて、昔の私ならちょっと馬鹿にしてたような類の本ですが、啓蒙書にしては逆説的でちょっと魅力的なタイトルではありませんか?

もうちょっと頑張れ、とか努力しろ、というメッセージのタイトルがついた啓蒙書は多いと思う。あるいは、成功を信じよう!的な(笑)。実際、問題意識の持ちよう次第ではグッとくるかもしれません。本屋でたまたま見かけて興味を持たれたら、読んでみて下さい。

その他今回買った中では、「行動経済学入門」リチャード・セイラー著 ダイヤモンド社、 「網状言論F改」 東 浩紀 編著 青土社、等も結構面白いですが、まだ途中までしか読んでいませんし、経済学関連の書籍や思想関連の書籍についてはいつかまとめてまた機会があればオススメをご紹介したいと思います。

それでは皆さん、本年も宜しくお願いします。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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