金光隆志のコンサル転職Q&A

[第37回] コンサルティングから投資ファンドへの人材流失が続いていますが...

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【質問】 
最近さらにコンサルティングから投資ファンドへの人材流失が続いていますが金光さんはどう思われますか?(25歳 戦略コンサルタント)

さて、投資ファンドへの人材流出をどう思うか?  ん?どう思うか??
まあ正直どうも思わない(笑)のですが、その時代ごとの花形産業にコンサルティングから人材がどっと流れ込むのは、昔からの定番な流れであります。ちょいと前はITであったり、Webコンサルであったり、その前は投資銀行であったり。


儲かりそうで、かつ、ちょいとイマっぽくてカッコいい感じの業界に転職、ってだけですので、ほんとに、それ自体どうってことではないです。コンサルティングは潰しが効くというのが最大のインプリケーションでしょうか。

投資ファンドといっても色々種類はありますね。ベンチャー中心のファンド、再生中心のファンド、M&A中心のファンド、不動産投資ファンド、などなど。何回か書いたことがありますが、コンサルに一番近い・スキルが活かし易いのは恐らく再生ファンドではないかと思います。近いといっても全然ホントはかけ離れてますが。でも、実際、一番人材流出が多いのも、再生中心のファンドなのではないかと推察します。

以下は私の個人的な意見なのですが、本当の意味での再生というのは、事業家にしか出来ません。コンサルタントに出来るのは、再生プランをかくことくらいです。事業の全責任を負って、更には自らも相応のリスクを負って、意思決定から日々の業務マネジメントまで行った経験のある人でないと、再生なんかできるわけない。さらに言いますと、投資行為に関してすら少々乱暴な手段も含めて考えられる人じゃないと、再生において大した成功は生まれません。

ご質問には直接関係ないかもしれませんが、ちょいときわどい、従ってエキサイティングな(笑)話をしましょう。

もともと業界中堅クラスの会社で再生しなきゃならないような会社というのは、大抵の場合、傷だらけ・膿だらけなのです。表面的に見えるものの裏に沢山の傷・膿が存在します。がん細胞の増殖が進んでいる場合も多々あります。というか、がんの進行なんて当たり前。

通常の再生投資ファンドの場合ですと、株価や業績、歴史や現在の業況を見て投資検討案件を絞り込み、具体的検討にあたっては、デューディリプロセスにたっぷり時間をかけ、投資するかどうかの判断を行います。結果的に投資にこぎつける案件というのは、デューディリプロセスを通過した比較的優良そうな企業や、腐っても鯛みたいな企業の案件です。

更に、大抵の場合は、投資判断をしてからあとに、実際の再生プロセスを推進する人材の人選や募集を行います。社長交代はせずスタッフだけを入れることも多い。既存経営陣との協調路線をウリにするファンドすら存在します。まあこれでもいくつかの案件に投資していくと、ポートフォリオとして見ればそこそこのファイナンシャルパフォーマンスが残るのだから、別にいいと思います。社会的意義もあります。

でも、良いか悪いかは別にして、事業家が行う投資判断はまるでこのような典型的ファンドのプロセスとは異なります。事業家が再生的な企業を買収する場合、腐りきった鯛みたいなものに突っ込んでいくことが案外多い。しかもデューディリにはそんなに時間をかけない。事業家は例えば、再生が必要な企業には表面に出てこないような簿外債務が沢山あることを判っています。ある程度覚悟しています。判った上で、事業そのものに見込みがありそうなものを目敏く素早く目利きします。ぼろぼろな会社のほうが判断し易い面はあります。

合理的に考えてここまでぼろくなってるのはおかしいだろう、という企業こそ、むしろ目の付け所。合理的じゃないことが起こっているからそうなっているわけで、そこを合理的にするだけで随分と、場合によっては見違えるほど良い状態になったりもします。そして、再生を任せるに値する事業家がいるかどうかを次に(あるいは同時に)考えます。

再生を任せるに値する事業家とは、自分から「この企業を俺にやらせろ、成功させる自信がある」と言ってくるような野心家であり真の戦略家です。本人にも投資リスクをとらせることが結構ありますし、そうでない場合ならたっぷりとストックオプションを付与します。その辺まで目処がたったら、買収価格交渉もそこそこに、素早く投資の意思決定を行います。

通常の投資ファンドではありえないようなスピードで意思決定します。ほんとにぼろぼろだったら価格交渉も楽だったりします。そして、あとから想定外の簿外債務や問題等が出てくるのは折り込み済みで、そんな簿外は、個人資産で消してしまったりします。

再生に当たらせるときは、見込んだ事業家に基本的には全権を委ねます。余計な口出しはしないし周囲にもさせない。任された事業家は、大いに暴れることができます。亡霊のような簿外の心配は要らないし、もとがぼろぼろだからどんな大手術をするにせよ気分的に楽です。「もうそれしか手がないだろう」と思えますから。

いささか誇張してはおりますが、雰囲気としてはこんな感じで間違いありません。して、事業家の行う再生投資の場合は、結果が見えるのも早いです。例え一時期本当に苦しくても、その後うまくいくものは行く雰囲気がすぐに出るし、その逆も真です。ダメそうだったらとっとと撤退を考えます。そんなすぐにうまく売り抜けることは出来ないけれど、基本指針としてはそうです。

一方、投資ファンドの場合は、どっちつかずな案件がかなり多い。表面上非合理なことは少ないが、業績が低迷しているような中途半端な企業の再生が一番やりにくい・難しいかもしれません。

また、想定外な債務や問題などはしっかり行ったデューディリの結果として想定外なんだから、当然織り込んでいません。業績が順調に回復してきたと思ったら突然悪夢が訪れることもままあるのではないでしょうか。事業家とは違って、裏で(個人で)解決する、なんてこともできません。

解決のために訴訟を起こさないといけないような事態になったらほんとに最悪。株価が回復しない、しばらく上場出来ない、等など、悪いことが連鎖的に起こります。世間を知らないボンボンのまま投資ファンドなんかにいくと、こういうことが多々起こってもおかしくないです。

さて。ご質問の趣旨から随分離れたことを書いてしまいましたかね。ご質問が曖昧(笑)だから、まあ許してください。私が申し上げたかったのは、企業再生ってホントに面白いしエキサイティングだけど、今の再生ファンドブームってどうなのよ、ってことかも知れません。

ギリギリの勝負や個人の人生をかけた経験、本当にもうだめだ、というところまで追い込まれた経験、そして出来ればその後に訪れる成功の経験、つまりは真に事業家としての経験がない人に、再生なんて出来ません。会社でサラリーマンやってその後コンサルをちょっとやって、投資ファンドにいく、っていうキャリアは、別に否定はしないけど、私には何の興味もあこがれもない。

ご質問の方は、25歳戦略コンサルですよね。それだけ若ければ逆に、今から投資ファンドに行って暫く丁稚奉公するのも悪くはないです。所詮あなたはまだまだ一流大学を出たばかりで世間知らずのぼんぼん。今すぐ事業家になる、という選択肢は考えにくいでしょう。10年くらい投資ファンドを経験して、その後自分でも実際事業をやってみるのはいいキャリアだと思います。

逆に同じく、10年くらいコンサルやってみるのもいいと思う。一生コンサルってのもいい。コンサルは究極のボンボンビジネスです。世間の上澄みの上澄みだけで商売を行いますから。上澄みの上澄みだけで商売できる人なんて、定義によりというかトートロジーですが世の中に殆どいません。自分がどれほど恵まれているか、貴重な経験をしているかを知るべきです。

そしてその後、事業家になるなら底辺を覗いてごらんなさい。というか、底辺をどっぷり経験するといい。間違いなくあなたには、事業家として成功する素地が生まれるでしょう。リアルなギリギリの経験と、高度な戦略スキル。それこそが優れた事業家の資質なのですから。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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