金光隆志のコンサル転職Q&A

[第38回] 投資銀行からコンサルは成功する可能性がありますか?

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【質問】 
外資投資銀行28歳です。中途入社し3年が経ったところですが、今回いきなり大規模なリストラが始まりました。私は対象外ですが将来が不安です。コンサルタントへの転身も考えていますが、IBからコンサルって成功する可能性がありますでしょうか?

こんにちは。早くも3月ですね。寒さが緩くなってきたけれど、今度は花粉が気になる季節になってまいりました。どうも冬から春は苦手です。。


ところで、先日本屋に行きましたら、売れてるみたいですね。「地頭力を鍛える」。前々回のコラムで私も良書としてご紹介させて頂いた本なのでちょっと嬉しくもありますが、一方で、テーマや内容の本格さからしてそこまで一般に売れる類の本なのだろうか、と不思議な気もします。時代なのでしょうかね。

さて、投資銀行(以下IB)からコンサルへの転身ということですが。成功するか否かは、全くもってあなた次第です!とまあ、また、身も蓋も無い回答から入らせてもらうわけですが、これはもう本当にそうなのですから仕方ない。「地頭力」を鍛えるポテンシャルは十分お持ちでしょうから、成功できるか否かはコンサルになってからの努力と創意工夫次第なのだと断言しておきましょう。

その上で、注意と申しますか、兜の緒を締めていただくために、若干のアドバイスを差し上げたいと思います。

最近の動向は存じ上げないのですが、数年前までの私の経験で申しますと、コンサルにおけるIB出身者の採用率は決して高くなかったと記憶しています。また、採用した方も、最初の1,2年は総じて苦戦というか、ポテンシャルの割りに力を発揮できない人が多かったと思います。

IB出身者と言ってもご出身の部門は様々ですので、本来は一概に言えないはずなのですが、一概に言えてしまいそうな傾向が確かに存在しておりました。

その傾向は何かと申しますと、IB出身の皆さんはものすごい大雑把なのです(笑)。
もう少し言いますと、コンサル業務において大事なところでものすごい大雑把。逆にどうでもいい部分で精緻というかものすごい細かかったりするのも傾向かも知れません。

仮説の論拠やロジック展開が雑なのはわかります。IB出身者に限らず大体において最初はそうですから。でもIB出身の人は、そもそもの仮説からして大雑把というか、はっきり言ってものすごいチープなことを平気で言ってしまう場合が多い。

私は何度かIB出身者とのプロジェクトチームミーティング中に笑いで噴き出してしまった記憶すらあります。マジバナですよ、これ。彼・彼女はさぼっていたわけでなく、一生懸命考えてきて、その結果として緊張した面持ちで、でも堂々とした感じで、ものすごいチープなことをおっしゃる。そりゃ申し訳ないけど笑いますって。天下のBCGが、こんなことを自信満々堂々と発言するスタッフをクライアントの前には怖くて出せない、と思ったこともあります。

もちろん頭が悪いわけじゃない。東大法学部からハーバードMBA、そしてIBを経てBCGへ、みたいな人が、頭悪いわけがないでしょ。むしろ相当いいです。スペックだけで言えば私なんかよりよっぽど高スペック。そんな頭のいい人が、信じられないくらいチープなことを言ってしまう。軌道修正しようと思って色々議論しホワイトボードに大まかなコンセプトや議論の要点を纏めてやると、次のミーティングでは殆どそのホワイトボードを清書しただけ、みたいなスライドを真顔で持ってきたりする。うっそー、まさか、と思うでしょう?ホントです。似たような経験を何度もしましたから。

IB出身者と、何度かこの辺りのことを議論させてもらったことがあります。彼・彼女ら曰く、IBでは殆ど脊髄反射で仕事していたから、ものを深く考えたことが無い。とか。IBのM&A部門では、これくらいのものを戦略と呼んでいたんで、戦略ってこういうものだと思っていた。とか。

どうやらIBとコンサルでは、頭の使い方や使いどころが相当異なるようです。どっちの頭の使い方がいいとか悪いとかっていう優劣の問題ではありません。逆にコンサル出身者がIBにいくと「判断が遅い」とか「屁理屈の前にどうやって動かすかを考えろ」とか言われて、鈍い奴だと思われるのかもしれません。

IBの業務について私は不案内ですので、真偽の程はわかりません。ですが、IBとコンサルでは付加価値領域・性質は全く異なります。色んな面で真逆とすら言えます。

IBはBSで仕事しますが、コンサルはPLで仕事します。IBはリスクテイカーですが、コンサルはリスクを回避します。IBのソリューションは高度に洗練されたシステマティックかつ専門性の高いものですが、コンサルのソリューションは泥臭くてシステマティズムからはかけ離れたものです。コンサルがM&Aプロセスに関わるのはプロセスの両端ですが、IBはその間です。などなど。全部極論ですよ、もちろん。

付加価値領域が真逆な上に、IBもコンサルも、どちらも相当なプロフェショナルワークだと思います。異なる強烈なカルチャーが存在し、仕事上・思考上のプロトコルも異なる。そして、プロとして通用するには徹底した熟練・修練が求められると思います。その熟練こそが成功の鍵なはずです。

ということは、どちらか一方で成功すればするほど、即ち熟練度が上がっていることを意味しますので、逆にはもう一方への適合性からは離れていっている、とも言えます。

元々の適性がよりどちら向きか、という事と無関係に、IBでの成功がコンサルワークへの適合の阻害要件になり得るという帰納的推論は、かなり強引なロジックですけども当たらずとも遠からずでしょう。

しかし、恐れるに足りません。あなた自身が、新しいことへチャレンジすることに喜び・楽しみを感じられれば、必ず道は開けます。コンサル的頭脳は必ず獲得できます。最初のうちは、過去の習慣・思考性癖が勝って、中々上手くいかないかもしれない。でもそれはあなたに才能が無いからではないのです。

少しずつでも良い、日々の進歩を感じて、そこに喜びを見出して欲しい。同期入社が先にどんどん活躍していくとしても、気にすることはありません。成長曲線は人それぞれです。自分自身の進歩だけを確かめていけばよい。

実際、IB出身者は、苦しい時期を乗り越えると、とても優秀なコンサルタントに成長することも多いのです。IB的頭脳・スキルとコンサル的頭脳・スキルの両方を獲得し、それらを縦横無尽に使いこなせるようになれば、スペシャルな存在にすらなり得ます。

コンサルとして上の立場に上がれば上がるほど、IB時代の経験が生きることと思います。そこから更にまたIBに戻っても、これまたスペシャルな存在になりえるのではないかと推察します。

話は少し逸れますが、私はそろそろコンサルティングの世界にも新たなパラダイムが生まれるのではないかと思っています。産業としての最初のパラダイムは恐らく、初期のブーズアレンに代表される技術コンサルティングでしょう。その約20数年後、マッキンゼーに代表される業務オペレーション改善コンサルティングが台頭します。

そして更に20年後、1960年代に大きな転機を迎えます。BCGの創設者ブルースヘンダーソンが、経営戦略という概念を精緻化し具体化していきます。戦略コンサルティングの幕開けです。今やどの大手ファームも、自らを戦略コンサルティング会社と定義していることからも、このパラダイムシフトがどれほど大きなものであったのか、お分かり頂けるかと思います。

戦略コンサルティング以降、小さな地殻変動はいくつか起こっています。リエンジニアリング、SAP、SIPS、等々です。これらが台頭した頃はパラダイムシフトを起こす可能性も期待も存在しましたが、結果的にはどれも、戦略コンサルティングの一分野に収斂されるか、一時の流行に終わっていきました。

しかし、確実に地殻のズレは引き起こしています。しかも、これらには一つの潮流さえ存在します。あと10年も経たない内に、大きなパラダイムシフトが起こるかも知れません。私には次のパラダイムに関する仮説がありますが、それは内緒にしておきます(笑)。そこでは、IB的頭脳・スキルも大いに役に立つのではないかと思っています。

話が少し逸れるどころか全然関係ない話になってしまいましたね。すみません。纏めておきましょう。IB出身のあなたがコンサルとして成功する可能性は十分ありますし、将来は中核的な存在にだってなれるかも知れません。でも、成功するには、先ず過去のことは棚においておくことです。

IBで揉まれたことに自信も誇りもお持ちだとは思いますが、純粋に、本当に新人として、過去の経験や栄光、エキスパティーズを一度忘れてコンサルに取り組むならば、日々の進歩に喜びを感じられるなら。あなたはきっとコンサルとしても成功できますよ。しかも、そこから先のあなたには如何様にも可能性が広がることでしょう。

恐れず、成功を信じて頑張ってください。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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