金光隆志のコンサル転職Q&A

[第39回] 同業へ転職する際、注意するポイントとは?

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【質問】 
私は金融機関から戦略コンサルへ転職し、現在マネージャーの33歳です。今のファームよりメジャーなところからハンティングされ転職を検討しています。同業へ転職する際の注意するポイントなどあればアドバイスいただけますか。

みなさん、こんにちは。

まだ寒い日が多いというのに、桜がかなり咲いてますね。今年もろくに花見出来ないのかなと懸念する今日このごろです。

さて、メジャーなファームへの転職ということですが。いいんじゃないですかね、前向きな気持ちでの転職であるならば。自分が今よりも力を発揮できる環境を求めて転職するならば。マイナーからメジャーだろうがメジャーからマイナーだろうが、あなた自身が納得の上で、もっと頑張れると思える転職ならば、私は賛成しますよ。

注意するポイントなんてあんまりないのではないかと思います。怖れず、難しく考えすぎず、自分を信じて飛び込むのが一番いいですよ、きっと。ファーム間のレベル差で最初は全く通用しないかも、とか。前職でのやり方が染み付いていて、転職先でのやり方やビジネスフォーマットに中々適応出来ないかも、とか。大した問題ではありません。そんな問題は直面して当たり前です。努力によって克服せねばなりません。

あえて転職上の注意点としてありきたりなことを挙げるなら、プロフェッショナルの心構えとして最も基本的かつ根本的な、職業倫理上のイシューでしょうか。

戦略コンサルにとって職業倫理上突き当たるイシューには様々なものがありますが、競業禁止則が最重要ではないかと思います。これは突き詰めると中々に難しい問題で、客観的な線引きが出来ない、したがって、個々人の判断というかスタンスに委ねざるを得ない事項です。

1例を挙げましょう。あなたは前職で1年前にAビールの中期商品戦略に関わるコンサルティングをやっていたとしましょう。転職後にKビールの商品戦略プロジェクトにアサインされたら、あなたはどうしますか?1年じゃだめ?

では前職での経験が2年前だったらどうします?3年前だったら?

前クライアントから個別に契約上、競合へのコンサル禁止条項が盛り込まれていない場合、一般的にはファームとして包括的に、退職後1年か1年半の競合へのコンサル活動禁止が、雇用契約に盛り込まれていると思います。従って、2年以上経っていれば、法的には問題が無いことが多いでしょう。

しかし。いいのでしょうか?

あなたの頭の中には、Aビールの商品戦略イシュー、そのイシューに対してどの部門の誰が当時どう考えていたか、そして、自分たちがどういう分析をして、どんな提言をしたか。Aビール幹部はそれをどう受け止めたか。賢明なるあなたは、それらを全部克明に記憶しておられることでしょう。従ってAビールの状況や当時の提言を念頭に置いて、Kビールに対しても見事な戦略提言をすることが出来るかもしれません。転職後のファームにおいて、評価を上げる絶好の機会になるかもしれません。でも、いいのでしょうか。

ビールは寡占業界です。しかも商品戦略は、市場での戦いに直結しています。どこか1社の戦略を正確に知ってしまえば、それに対してどうポジショニングすべきかは容易に答えが出ますし、その結果、先の1社の戦略優位性に対して少なからず打撃を与えることになるはずです。

あなたは、傭兵のごとく、ケイヤクは切れてるのだから今日の味方は明日の敵さ、と割り切る事ができますか。否という答えを出すならば、じゃあ何年経っていれば許されると考えますか?

もう一例考えてみましょう。あなたは前のファームでA製薬の臨床開発スピードアップの為のプロセス改革を行い、同じくB~D製薬においても同種のプロジェクトを経験しました。その結果、あなたは製薬業界に対するコンサルティングのちょっとした専門家になることができました。転職後、1年経って、今度はE製薬から同種の依頼がありアサインされる事になりました。あなたはどうしますか。

前職の時ですら、同種プロジェクトを何社にも対してやっています。実際製薬会社側も、この種のプロジェクトに手慣れている、つまりは専門性を持っているということで、依頼が集中していく傾向にあります。一般的にプロセス改革においては、市場戦略とは違って同種テーマで複数企業を手がけていることを、クライアント側自身が評価する(好む)ことも多いと思います。

このような場合、アサインを受けてもOKでしょうか。そんな気もします。しかし、もしたまたま前職で手がけたA製薬と今回アサインされたE製薬が、同種の新規作用機序による抗ガン剤新薬開発スピードを競っていたとしたら、どうでしょうか?更に具体的に、例えばA製薬においては当該新規作用機序の抗ガン剤の開発正否が、5年後の収益性を大きく左右する、戦略的に最重要な開発であったとしたら?

更に考えてみましょう。あなたはE製薬のプロジェクトに入るまでは、A製薬との直接的な競合に気付いていませんでした。アサインされてしばらく経ってから、同種の新規作用機序による大型新薬で、両社が開発スピードを競っていると知ったのです。その時点であなたはどう対処しますか?

長々と事例を出してきましたが、ご質問頂いた方だけでなく皆さんはこれらをどう判断しますか?きっと人によって答えは違うはずです。違ってよいのか?という問いは無効なのです。これまで見て来たとおり、法的に客観的な線をひく、ひこうとする事自体が、倫理上の問いを引き起こすからです。

とはいえ、あまり難しく考えすぎないほうがよいでしょう。あなたがコンサルタントとしてキャリアを積んできている以上、この手の問いには常に直面してきたはずだからです。むしろ、実際は転職した場合のケースよりも、同一ファーム内において、高い職業倫理観を持続することのほうが(本来は)難易度の高いことであろうと推察します。同一ファームなら、上層部がその手のことをある程度判断してアサインしてくれているだろう、という前提のもと、あなた自身はあまり考えずに来たかもしれません。

転職の場合はあなた自身である程度は判断せねばならなくなるでしょう。が、要するに、ちょいと怪しいなと思ったら、率直に上層部に話せばよいことだと思います。つまり一人で悩んだりせず、経験豊富なシニアに相談すればよいのです。むしろ相談すべきです。それによって、極論を言えば、あなたが個人的に判断した場合に前職でのクライアントから、あるいは前職ファームから訴えられるリスクを軽減することにも繋がるのです。

前職ファームで得た知見/ノウハウについても、同様に職業倫理上のイシューが存在します。例えばあなたが、前職ファームのナレッジマネジメントのデータベースからファイルをCD-Rなどに焼いて持ち出したとしましょう。これはさすがに知的財産の窃盗にあたると思います。

では、そのナレッジが頭の中に入っていて、そのノウハウをあなたが転職先のプロジェクトで活用したとしたら?これは窃盗とは言えないかもしれません。

では、そのノウハウを少しあなた流に発展させて、その上で転職先のファームで共有したら?恐らく法的には問題にならないと思います。問題に出来ないというか。しかし、問われるのはやはり職業倫理です。どこまではOKでどこからはNGか。あなた自身で判断するしかありません。

戦略コンサルタントにとって、最も重要な資質とは、高潔なプロフェッショナル意識だと思います。

クライアントに対して付加価値を付ける上で妥協しない意識。クライアントの最重要機密を扱っているという自覚と責任。そして、戦略において決定的に重要な意思決定やアクションを指南しているという自負。これらプロフェッショナル意識や高度な職業倫理観を持ち続けることが、いかに大変なことか。

長期にわたり真のプロフェッショナルであり続けられる人は、ほんのわずかです。そんなプロフェッショナルになることを目指して転職してください。そうすれば、あなたの転職は、あなたに、あらゆる意味においての成功をもたらしてくれるはずです。

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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