金光隆志のコンサル転職Q&A

[第43回] 夏休みに読む1冊

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【質問】 
26歳商社勤務です。戦略コンサルタントを目指しています。秋からの転職活動に備えてこの夏休みに読むべき1冊をアドバイスいただけますか。

暑いですね!祭りやら花火大会やら、すっかり夏らしいイベントが続々と目白押しですね。

今年は東京湾花火大会くらいは見たいなあ。。

さて、夏休みに読むべき一冊。どれくらいの夏休み期間があるのかにもよりますが。
そろそろ、私がずっと、いつか皆さんにお薦めしたいと思っていたことがらや参考文献などをご紹介しようかなと。

私の知的バックボーン。というほど大げさなものではないですが、私がずっとコンサルタント時代に拠り所としてきた思考の源泉には3つの系譜があります。
第一はもちろんBCGコンセプト。第二が物理的思考。そして第三が、本日紹介する資本主義批判/現代思想・批評。

3つの系譜に共通するのは、物事を原理的に考えるということ。当たり前だと思っている常識に批評の目を向けること。ものごとや現象の中に新しいパターンや構造を見出し、そこから様々な予測やインプリケーションを導くこと。です。

BCGコンセプトや物理的発想については、折りに触れ、色んな形でその一端をご紹介して参りました。しかし、この第三の資本主義批判/現代思想・批評については、殆どご紹介することもその発露を直接的にお見せすることも出来なかったし、してきませんでした。

理由はいくつかあります。この第三の発想法が最も根本的で原理的で、ビジネス発想に直接結びつくものではないから。そして、ある程度まで自分の発想力に反映させる上で、3つの中で最も蓄積・訓練・忍耐が求められるものであるから。従って、かなりの関心・好奇心を持てないと、とても続くものではないから。

それでも私が、いつかは皆さんにご紹介しようとずっと思っていたのは、まさに最も根本的・原理的なところで、私の批評的な視線を支えてくれてきたのが、この発想法だったからです。

その威力は計り知れません。本格的にハマってしまうと、そもそもコンサルタントという職業そのものに疑問を感じてしまうリスクもありますが。。。

今日のところは、その世界への導入として、比較的入りやすいマルクス資本論とその批判的読み直しをご紹介しましょう。

マルクス資本論は殆ど全ての人がご存知でしょう。そして、恐らく、殆どの人が読んだ事はないのではないでしょうか。

それは、たった一度きりの人生における大きな損失です。(笑)
第一部「資本の生産過程」の第一編(商品と貨幣)、第二編(貨幣の資本への転化)を読むだけでも、あなたは一気に、経済とは何かについての原理的・本質的な思考へと誘われることをお約束します。

マルクス資本論は非常に難解だという風潮はあると思います。古くさい思想を今更学んでも、という思いもあるかもしれません。どちらも間違いというか、そんなことはありません。確かに、資本論は簡単ではありませんよ。本当に一言一句を理解するには、それこそ広範かつ深い教養が必要なのでしょう。しかも大著ですから読破出来る人は限られているかもしれません。でも、あくまで経済の書ですから、ちゃんと一定の知力を備えていれば、ある程度は絶対読めるのです。第一部の第一編第二編だけなら、なおさらです。

マルクスは、商品(と貨幣)という、皆が当たり前のものとして受け入れているものの分析から論を始めます。恐らく最初読むと、何でこんな当たり前のことをくどくどと、回りくどく?と思う事でしょう。それこそが落とし穴であり、マルクスの卓越した視点です。

価値とは何か、交換とは何か、皆が当たり前のこととして受け入れているものや事象に、原理的な思考のメスを入れること。「驚き」の視線を向けること。

この、原理的な思考からはじまる、マルクスの思索。資本主義メカニズムの本質、それが内在させている暴力性と人間疎外性は、現代においても全く変わりはないのです。現代社会の諸現象、諸問題の殆ど全ては、本質的にマルクスの深く広範な思索の中で予見され得たものか、形を変えて露出しているものなのです。全く余談ですが、現代日本のニートとはルンペンプロレタリアートの最終形もしくはその変形態だと、私には思えてなりません。

もちろん、マルクスは革命家であり、資本論は労働者闘争への指南書です。資本家サイドに立つコンサルタントが、マルクスから学ぶなんて、ちゃんちゃらおかしな、倒錯した発想かも知れません。しかし私は、先ず、あらゆる知的活動を行う若い人には、マルクスという偉大な思想家の思考に触れて欲しいのです。マルクスの思索力と認識力と行動力のほんの1%を手にするだけでも、我々の生き方に大きなインパクトがあるはずです。

そこから更に、本格的な資本主義の批判的分析に興味を持つ人が現れるならなおさら素晴らしい。好むと好まざるとに関わらず、我々は資本主義という巨大にして強力な社会経済システムの中にいます。容易にはその代替システムは生まれないし、見つからない。だからこそ、今自分はどういう社会に生きているのか、どのような他者が、どんなふうに生きているのか。どんな生き方の可能性がありえるのか。そうしたことへの視線は持って欲しい。マルクスの考えた階級の闘争とは違うかもしれないけれど、我々にも闘争のきっかけや道はあるのか、ということに意識をもってほしい。

マルクス資本論を現代において批判的に読みなおす作業は、様々に試みられています。ここでは、資本論を理解するための補助線としても有効な著作者、作品をご紹介しておきましょう。
柄谷行人。彼に対する様々な批判や立場はありますが、間違いなく天才です。
彼以上の資本論の読み手を探すのは難しい。その、本質を抉る思索力、誰もが理解できるほどに無駄が無く研ぎすまされた論理化力、文章力。驚異です。マルクス資本論にいきなり入り辛い人は、まずは『マルクスその可能性の中心』『隠喩としての建築』『言語・数・貨幣』『探求1』『探求2』などを読まれるのも大変よいでしょう。『マルクスその可能性の中心』を読むだけでも資本論がはるかに読みやすくなることは請け合いです。そして最終的には彼の思索の1つの集大成とも呼ぶべき『トランスクリティーク』まで読んでほしい。勇気を与えられることでしょう。

柄谷を通じて、様々な哲学(とりわけカント)、言語学、社会学、現代思想家、同時代の批評家をしることになると思います。興味を持った人はどんどん広がっていって欲しいと思います。今をときめく(?)東浩紀などにも繋がって行くことでしょう。

さて。こんな本を読んだところで、コンサルタントにとってほんとに何か役に立つのか?直接的に役に立つかと言えば全くNoだし、そういう結果はあまり期待しないで頂きたい。(笑)純粋に興味・関心を持ってくれたら嬉しいです。

だけれども。1つの業界の構造や経済メカニズムの洞察、その中の一企業の構造的課題抽出や戦略立案、それらをどのようにインプリメントしていくかの方策、などなどをコンサルタント的なエピステーメにおいて行うことは、ものすごく乱暴にいいますと、いとも容易いことに。なるかもしれませんよ!

プロフィール

金光 隆志 氏

京都大学法学部、ボストンコンサルティング グループ マネージャー、ドリームインキュベータ取締役を歴任後、現在音楽を中心に活動。 映画・ビデオなどへ楽曲をプロデュース・提供し、05年春にはアルバムリリース予定。NYにてライブハウス・クラブのプロデュースも手掛けている。
また、従来のキャリアの延長で経営人材育成・派遣や経営支援等も行っている。ASPIREAL代表。Directors代表。RAISEプロデューサー兼ボーカリスト、camino(ロックバンド)エグゼクティブプロデューサー

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