【質問】
戦略コンサルタントの存在意義って何でしょうか？（30歳／MBA留学中）
新年、はやくも１ヶ月が過ぎましたね。いやー、早い。早く感じるのは私だけかな。。一日一日をもっと大切に生きなきゃな、と思っている今日この頃です。
さて、戦略コンサルタントの存在意義は何か？存在意義ときましたか！
このご質問の背後には「戦略コンサルタントは世の中に必要なのか？」という命題も潜んでいるのかと推察致します。
面白い問いなので、ぜひ現役コンサルタント、特に若手の方々にも伺ってみたいですね。
私の答えは簡単。だけど、簡単すぎてそのまま言っても理解されないだろうから、ちょっと回り道して哲学してみましょうか。
存在意義／存在理由を哲学的あるいは倫理学的に突き詰めると、最もラジカルな立場では、あらゆるものには存在意義／理由は無い、ということになるんじゃないかな。
単独存在ではね。
解ります？
ものすごく単純化して考えてみましょう。もしこの宇宙に、生命体があなた一人しかいなかったとしたら。あなたの存在理由は？無いよね。
宇宙における生命とその継続を担う、というふうに考えるかもしれませんが、既にそこには、人間固有の神学的発想が潜んでいます。宇宙には何か目的がある、という立場をとっているからです。まあ、あるのかもしれないし、無いのかもしれない。生命体があなた一人だったとしたら、それは別にどっちだってよいことです。というか、あなたが唯一の生命体だったら、絶対にそんなことは考えない。なぜなら言葉が生まれないから。ここで、宇宙を神と読みかえれば、神は言葉も与える、ということになるかもしれないけれど、どうでもいいよね。
えらい回り道してるな。。このまま論を続けると本一冊ですまなくなるから、一気に話を短くしましょう。
本当は相当厳密にやらないと意味がないというか論理が矛盾だらけになってしまうのですが、細かいことはどうかお気になさらず。
とにかく、単独で存在を取り出しても、そこに存在意義など無い、というか、考えてもしょうがないこと、というは理解頂いたとします。
さて、じゃあ、そこに、もう一人の生命体がいたらどうでしょう。
それでも、ただいるだけだったら、あなたの存在意義には、何の変化もありません。存在意義のない個別の生命体が、この世にそれぞれ独立して二人いるだけ、と言う状態ですから。
じゃあ、その生命体とあなたとの間にコミュニケーションが生まれたら？
もしかすると、相手にとってあなたの存在意義が生まれるかもしれません。「相手にとって」という部分が重要です。
例えば、その相手が、あなたの事を愛し、あなたと一緒にいたいと思ったら。
そうです。相手があなたのことを必要、と考えたとき、初めてあなたに存在意義なるものが生まれるのです。
存在意義とは、単独存在を取り出して考えても、あまり意味がありません。必ず他者がいて、初めて問いうることなのです。神様と自分の関係、みたいに考えるにせよ、やはり神という他者を想定しているのです。
まあ乱暴に平たく言ってしまえば、人間関係がなきゃ存在意義なんてない、というか考えてもしょうがないってことです。「関係」というのが非常に重要なわけです。
はい、ここでご質問に戻りましょう。
戦略コンサルタントの存在意義。それは相手（クライアント）が必要と思うかどうか次第。以上！
ん？煙に巻いた？いえいえ、そんなことはありませんよ。これこそが単純にして深遠なるお答えです。「戦略コンサルタント」の部分をあらゆる存在に置き換えても成立する真理命題です。
戦略コンサルタントって世の中に必要かどうかを、いくら戦略コンサルだけを世の中から切り離して単独で取り出して考えてみたところで、答えはありません。
どれだけすばらしい戦略を考えようが、どれだけ画期的なコンセプトを打ち出そうが、誰からも必要とされなかったら意味がない。存在理由はないのです。そもそも、誰からも必要とされないなら、すばらしいだの、画期的だの、自分で言ってるだけなはずで。
逆に、どれだけ自分ではつまらない戦略だ、と思っても、それをすばらしいと評価してくれる人がいたら、そこには存在理由が生まれます。
大上段に構えて申しますと。
存在意義とは、他者のために真摯に生き、行動したときに、初めて生まれ得るものです。
「他者のために」です。そもそも人間である以上、自分のためにだけ生きるというはほぼ不可能。仙人のように森の中で自給自足で生きていく、というのでもないかぎりはね。
仕事も全て、他者のための行為です。他者のために行為・奉仕するから、結果としての対価を得るのです。当たり前のことなんだけど、以外に忘れている人も多い。ちゃんとわかってない人まで含めると、もしかすると大多数の人がそうかもしれない。
それくらい、「他者のために」生きるというは、難しいことなのかもしれないですね。誰しも自分が可愛いから。でもね、自分が本当に可愛いなら、幸せになりたいなら、「他者のため」に生きてみると案外簡単に自分も幸せになれるかもしれないな、と思います。
また少し脱線してしまいました。
「戦略コンサルタント」はクライアントのために、戦略や経営課題の解決策を提言する、その実行を支援するのが仕事です。その提言や実行支援が「役に立つ」と思われるからこそ、存在し得る。逆に言えば、「役に立たない」コンサルタントは淘汰されます。存在意義がないからね。
コンサルティングファームには、「クライアント至上主義」的な意味合いの理念が明文化されているところも少なくありません。BCGには、"Client comes
first"という理念がありました。（今もあるだろうけど）
まさにその通りなのですが、少し考えてみてください。そんなの当たり前じゃないですか？そう。当たり前。にも関わらず、わざわざ明文化しているのです。
何故か。
当たり前だけどとても大事だから？それもある。
他のどんな職業よりもそれが大事なことだから？Agreeはしないけど、そういう考えもあるかも。
でも、実はね。なんでわざわざ言わなきゃいけないかというと。
みんなすぐ忘れるからですよ（笑）
もう少し控えめに言うと、コンサルタントってともすれば傲慢に考えてしまいがちな仕事なんです。傲慢な考えはClient comes firstの対極です。その戒めとしての明文化。
例えばあなたが一生懸命に分析して、ついに色んなことが解明できた、答えが見えたと思ったとしましょう。あなたは、当然クライアントもわかってくれる、喜んでくれる、と思うかもしれない。
でも、そんなに甘いものではありません。
解り易く説明しなければ伝わらない、というレベルでさえ、ちゃんとできない人も多い。自分はこんなすごいことを考えたんだ、どうだ～！とでも言いたげな、サプライヤーロジックな説明しか出来ない人がいかに多いか。はっきり言ってそういうコンサルはアホですね（笑）
たとえ解り易く説明できても、受け手が頭でわかっても心では納得できない、というケースは非常に多い。社内での立場によって受け取り方も全く変わってくるわけですから、満場一致で皆が拍手喝采なんてことのほうが稀。
だから、人によって色んな理屈をつけたり、細かい部分をついて反対されるようなことは多々起こりえます。提言がその人の利害に直接関わってしまう場合はもちろん、それまで自分が信じていた方向と違う方向を提言をされた場合などにも、心理的反発は起こります。
そのときこちらがどう反応するかで、あなたは存在意義のあるコンサルタントか、それとも無いコンサルタントかが分かれます。
残念ながら、「なんで解ってくれないんだ、邪魔ばっかりして、あのアホ」みたいに思ってしまうアホが結構います。
若気の至りというか、正直私もそういうことはありました。断言します。それは3流のコンサル。存在意義無しです。
じゃあ、どう行動すべきなのか。
詳しい処方箋はあえて書きません。皆それぞれに考えて欲しい。それぞれの答えがあるはず。
立脚すべきはただ一点。
「相手のために真摯に考え、行動する」
このシンプルな理念にのっとっていれば、あなたは存在意義のある戦略コンサルになれるだろうし、どんな困難も乗り越えられるはずです。
戦略コンサルタントの存在意義は？という問い方ではなく、存在意義のある戦略コンサルタントとは？どうすれば存在意義が生まれるか？という問い方。
期待されていた答え方では無かったかもしれないけど、結構大事な視点だと思いますので、記させて頂きました。
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