■会社休職から渡航準備へ
慣れ親しんだ「アンダーセン」という名前が、とうとう日本でも消えた。思えば強烈な1年間だった。個人的には留学準備としてGMATやエッセイをのうのうとこなしていたわけだが、米国では同時多発テロが発生し、まもなくエンロンの破綻と司法省追訴に起因する当社(アンダーセン)の世界的解体が進行、日本でも当社の業界内再編が余儀なくされた。結局、新しい電話での応対文句、「KPMGの高橋です」とは言い馴れぬ うちに、当社と自分自身の新しい船出に8割の期待と2割の不安を抱きながら7月5日、会社を去ることとなった。休職とはいえ、4年半勤め上げた会社の最終日 - 涙は見せぬ という密かな誓いはもろくも崩れたが、同僚による暖かい壮行会をもって社会人生活をひとまず締めくくることができた。感慨にふける間はなく、遅れに遅れた渡航準備の開始である。
既に渡米してサマープログラムを受講しているカーネギーメロン大学同期から毎日のようにEmailが配信されており、自分の準備がいかに遅れているか実感できる。航空券は予約済みで、7月25日渡航の予定。一番安かったデルタ航空、アトランタ経由の長旅だ(東京からピッツバーグへの直行便はない)。残された時間は10日間。荷物のパッキング・配送からVISAの取得、現地でのアパートや中古車の手配、そしてセメスター間で実施すべくお楽しみ旅行計画の策定など、やることは盛りだくさんである。
■回想 ~ 合格通知から決断、"Welcome Weekend"の参加まで
考えてみると、受験から現在の渡航準備に至るまでアッという間であった。早めの準備をして去年の11月30日(First Deadline)までに提出し、1月26日にEmailで合格通知を受け取った。最終決断はネゴって4月一杯までにしてもらったが、いろいろと個人的なリサーチを繰り広げ、結局2月中にはGSIA(Graduate School of Industrial Administration、カーネギーメロン大学ビジネス・スクールの名称)に行くことを決意した。その間、Admission Officeや在校生の方々とやりとりをしたが、対応が極めて早く、また丁寧だったのが印象深い。
学校側へのコンタクトで特に興味深かったのは、4月末にGSIAで開催された「Welcome Weekend 2002」というイベントへの参加だった。今年初めて開催された3日間に亘るイベントだが、合格した生徒や合格したが他校との選定に迷っているような生徒を対象として開かれるもので、要は「GSIAを知ってもらう」という趣旨のものだ。3泊4日の強行スケジュールで渡米し、アパート探し・契約も兼ねてイベントに参加してきた。面 白かったのはMock Class(擬似授業)と呼ばれるもので、実際の教授陣が30分程度の授業を実施するもの。10以上の授業が用意されており、各自好きなクラスに参加できた。Prospective Studentsから活発に発せられる様々な質問に教授がつまる場面もあり、さながら本物の授業のようだった。また、卒業生によるパネル・ディスカッションも面 白かった。ファイザーのディレクターやマッキンゼーのパートナー、IT企業の起業家等が参加されていた。
特に記憶に残っているのが韓国人のProspective Studentによる「GSIAで学んだことはどのくらい役に立ったか?」という質問。月並みなものだが、戦略系のコンサルなどを志望する私にとってはマッキンゼーの方の回答は注目。答えは「下っ端のときに非常に役に立つ。しかし、Positionがあがるにつけ、さらにUpper-Level Managementとしての戦略的な視点が必要になるため、GSIAで学んだこととは違う能力が要されるようになる。」-予想どおりの回答だった。いつだったか会社の上司より、"MBAはMasterでもなくBusinessでもなく、Administrationに過ぎない"という言葉を頂いたが、それが何となしに思い出された。が、もともと「戦略を学んで戦略の仕事をやる」というよりは、むしろ「現場を学んで自ら戦略にもちあげる」というプロセスを志向していたから、GSIAが自分の狙いに合っていると再確認できた。
■渡航準備の締めくくりへ
私の場合、25日に渡航して、29日にはQSRP (Quantitative Skills Review Program) と呼ばれる数学のサマースクールが開始する。(カーネギーメロン大学のサマースクールの内容は次回予定。)どうやら渡航後も相当バタバタしそうだ。今思うと、せめて1週間前の渡米にしておけばよかったと思う。が、それはとりあえず置いておき、今は渡航前準備に専念。愛する日本生活もあと10日。今のうちに美味しい日本酒、日本食を楽しんでおく。友人、家族ともしばしの別 れである。