若干間が空いてしまい申し訳ございませんでした。長い冬が終わり、ロンドンにも半年振りに美しい青空が戻ってきました。今回は3月末で終了した2学期を振り返って、科目紹介と様々なイベントの様子をお届けしたいと思います。
【科目紹介】
Finance(1学期からの続き)
前期からの継続科目で学期の前半で終了しました。M&A,International Finance, Option等個別のトピックをケース+レクチャーの形式で学びました。M&Aの授業ではM&Aが生み出す付加価値が双方の会社の株主にどのように配分されるかを理論と過去のM&A事例(類推)の両面 から検証しました。International FinanceではP&Gのケースを使って、グローバル企業の資金調達を取り扱い、異なる市場での借入や債券発行条件の比較に為替・金利・カントリーリスクをどのように織り込むかという点を論じました。
London Business Schoolではコア(必須)科目での15週間および引き続いてのFinance2(選択科目)で一通 りFinanceの基礎を固める方針を取っています。私はFinanceのバックグランドはありませんが、基礎を押さえた分かりやすいカリキュラムだと感じています。一方、2年次にFinanceを引き続き取る学生は非常にレベルの高い授業についていくのに必死のようです。殆どのビジネススクールで1年次がキツイと言われる中、London Business School でFinanceを専攻する学生については完全に逆のようです。
Marketing
前半の5回の授業でマーケティングのフレームワーク(3C分析・4P)を学び、後半の5回で4P(promotion/pricing/place=distribution/product)の個別 の論点を取り上げました。授業はすべてケースで行われ、教科書のほかにHBR等のリーディングがあります。私が予想していた以上にフレームワークを重視したアプローチで授業は進められ、『マーケティングを科学する』という教授陣の方針が見て取れました。私は前職のマンション開発の仕事の中で広告代理店の方々とお付き合いすることも多かったのですが、当時無意識で考えていたことや代理店の方々から受けていた提案等をマーケティングのフレームワークの中で改めて整理することが出来ました。
印象に残っているのは妊娠検査薬をB2B向けに製造する企業がB2Cマーケットにエントリーする際にmultiple targeting strategy(1つの製品で複数の顧客をターゲットすること)を採用した時の話です。妊娠検査薬の潜在顧客は妊娠の可能性(自覚症状)がある方々ですが、全く違う顧客セグメントに同一の商品を全く異なるメッセージで提供したそうです。片方は『満面 の笑顔で微笑む赤ん坊の顔』の箱、もう片方は『早くて簡単』と書いた無機質な箱でした。製薬会社が非常に上手に顧客をセグメンテーションし、商品をポジショニングしたかという良い事例だと思いました。
Operation and Technology Management
オペレーションの授業は毎回ケースを交えて以下の三部構成で進められ、非製造業出身の私には面 白い授業でした。
1) Operation Strategy とBusiness Strategyの整合 Operation の強みをどのように生かして競争優位を築くか。デル・コンピューターやSouthwest Airlinesのケース等を取り上げました。Operationの授業と前期学んだStrategy(M・ポーターの世界)の橋渡しをする導入部です。
2) Operationの基本指標(Throughput Rate/Waiting Time/Cycle Time/Lead Time等)の計算方法・解釈の仕方・改善方法等を製造業・サービス業の異なるケースを通 じて学びます。後述する体験学習もここに含まれます。
3) Just in Time/ Supply Chain Management/ IT(ERP)等の個別 論点を学びます。
オペレーションの第4回の授業はoperation process improvement 、いわゆる『改善』の体験学習でした。教室内に資材購入・生産・品質管理・出荷のラインをデザインし、LEGOのような部品を複数工程で組み立てて製品を作ります。1日を20秒間に置き換え、オペレーションを走らせては1ヶ月ごとに問題点および改善策を議論し、オペレーションを改善させる過程を体験します。出荷・生産・在庫・品質等の数値は工程毎のDATA入力を通 じて一元管理されており、月毎のパフォーマンスをリアルタイムで確認できるようにシステムが組まれています。授業の後には月毎のデータを元に収益性に影響与えた要素や、教室で繰り広げられた改善手法等をレポートにまとめていきます。
<体験学習の意図>
(1)授業で習ったコンセプトを実際のオペレーションで理解する(ボトルネック・サイクル タイム・品質管理等がどのようにオペレーションのパフォーマンスに影響し、収益性をどのように変動させ得るかを体験する)。
(2)別個の役割を演じる従業員(学生達)の意見を集約し、問題点や次への改善策を導き出すマネジメントプロセスを理解する。 リアルタイムで情報が得られるため、DATAに基づく分析とそれに基づく問題把握・改善策検討が可能で、非常に勉強になりました。オペレーションの経験が少ない学生には有意義な授業でした。
Decision Risk Analysis
私が今期の授業の中で一番面白いと思った授業で、他の学校ではDecision Scienceと呼ばれることも多いと思います。不確実な状況下で求められる経営判断をどのようにモデル化し、期待リターン・リスクを数値化して判断から曖昧さを取り除く事がテーマです。モデル化するためのロジック・ExcelのAdd-inn機能等のツールの使い方・データの分析・解釈の方法を学びます。London Business School はFinanceとStrategyが有名ですが、Decision Science も非常に優秀な教授陣が多いようです。
トピックは大きく分けて以下のとおりです
1) 回帰分析
2) リスク分析(@RISK)
ビジネスクラス・エコノミークラスの座席数配分の意思決定のケースを取り扱いました。 シュミレーションに影響を与える変数を整理し、それぞれの確率分布を定義することで意思決定にリスクを織り込む方法を学びます。
3) ディシジョン・ツリー(Excel Precision Tree) リゾート開発のケースで将来の経営判断(Decision)と不確実性(Variability)を時系列順にディシジョン・ツリーでモデル化し、目の前の問題について期待リターンとリスクに基づいて意思決定する手法を学びます。Financeのオプション(特にReal Option)と重複する部分が多い分野です。
4) 資源配分=最適化問題(Excel Solver) トマト関連商品製造企業が限られた原材料(トマト)を利益率・コスト・需要・品質基準の異なる複数の製品ラインにどのように分配するかというケースを取り扱いました。 複数の制約条件の中で最適解を見つける方法を学びます。
Business Ethics
ビジネス倫理の授業です。日本人の私は『そもそも30年近く生きてきた人に倫理を教えることなど出来るのか』という質問からはじめてしまいますが、終わってみると非常に面 白い授業の1つでした。 他の授業同様、1つの答えを導くのではなく、利益と倫理が相反する局面 で経営判断をする者は何を念頭において判断を下すべきかをケースを通 じて議論します。 学生の意見も育った国の環境や文化に影響されている部分が大きいせいか、日頃大人な学生が珍しく感情的に議論をしていた授業でもありました。授業は前半に個人の職業倫理・後半に企業の社会貢献を取り扱いました。
【2学期中のイベント】
China Venture Business Event (Asia Club)
2月末にはAsia Club 主催で"China Venture Business Event"と題したパネルディスカッションが行われました。EMBA(エグゼクティブMBA)の学生のルート等を使い、3名のパネラーに参加頂き、簡単なプレゼンテーションとパネルディスカッションをして頂きました。
パネラーを紹介すると、
・ UK Venture Capital (中国投資ディレクター)
・ UK Consulting Company (中国進出コンサルティング)創業者
・ CSRC研究員
の3名でした。更に中国在住経験のロイター通信の特派員の方にパネルディスカッションの司会をお願いしました。
イギリスの他のMBA生徒の交流
先日ロンドン在住の社会人・学生の集いに参加してきました。ロンドン在住20年以上の方から他のMBA学生まで幅広い層が参加しており、学校の中で会う方々とは少し違う方々にお目にかかることが出来ました。イギリスで名前の通 っている他のMBAは殆どが1年制のプログラムで、学生達はLBS生よりも更に厳しいワークロードをこなしているというのが印象です。
次回は春休みに行われたJapan Trip / China Trip の模様をお伝えします。